2014年06月14日

中山信弘先生のご講演

先週の土曜日に「著作権法」などの著作で有名な知的財産法の大家,中山信弘先生のご講演を拝聴した。

極めて分かりやすくかつ熱意あふれる講演で,とても感銘を受けた。

特に印象的だったのは,どうせ権利濫用で切ればいいのだからフェアユース規定など必要ないと思っていたのだが,そうではないという話であった。

グーグルは法的にグレーな行為を行い続け,多数の訴訟を抱えながらも,自らが正義と思う行動を行い,訴訟で勝ち続けることで,現在の地位を築いた。
日本企業も,グレーな行為を避けるばかりでなく,大胆な挑戦を続けていかなければ,今後日本はダメになる。
そのために著作権法が足かせになるようなことだけはあってはならない。
フェアーとされる行為は許されることを法律上,明らかにしなければ,企業を委縮させ,著作権法が足かせになる恐れがある。
そのようなお話であった。

我々弁護士も「法的にグレーだからやめておいた方がいいよ」などと安易なアドバイスをしがちである。
しかし,きちんとリスクを判断し伝えながらも,正義であると思ったことは積極的に勧められるような,大胆で挑戦的な弁護士になりたいものである。
70歳にお近いと伺った中山信弘先生が日本を変えようとする熱意にあふれているお姿を拝見し,40歳になったばかりの自分が挑戦心を失うわけにはいかない。
そう強く感じさせる講演であった。


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posted by 内田清隆 at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2014年05月07日

話の下手な弁護士〜「対決」から書面中心の「口頭弁論」 

 テレビドラマの影響によるものだと思われるが,「弁護士=話が上手」というイメージが強いようだ。しかし,実際は意外に弁護士は話が下手なのである。

 裁判,特に民事訴訟では,ほとんどが「書面主義」である。
 「口頭弁論」期日と呼ばれ,建前としては,口頭で議論を戦わせる場とされているにもかかわらず,現実には,「本日提出した書面の通りです」とだけ述べ,「口頭弁論」は書面を交換するだけで5分で終わる場となり下がっている。
 そのため,私も含めて多くの弁護士は,実は,書面を書くのは上手であるが,話は上手でもないのである(もちろん,話が上手な弁護士も多いが,それは,裁判で上手になったものではない。)。

 しかし,どうも,これは昔からそうであるようだ。

26.5.7 ブログ.jpg

 先日読んだ「日本人と裁判」という本によると,鎌倉時代から,日本の裁判は書面審理が中心の何年もかかる手続きであった。
 そして「対決」と呼ばれた口頭で議論を交わす場は,書面審理の補助としてだけ運用されていたそうだ。
 今の日本の裁判とあまり変わりがない。

  私も,法廷で堂々と弁論するテレビでみる弁護士に憧れていたところもあり,「口頭弁論」が「書面の通りです」という場になっていることに納得がいかないでいた。
 しかし,考えてみれば,口頭より書面の方が「あれを言い忘れた」というミスを防げるし,後から振り返って何が議論されたか正確に分かるといったメリットも多い。
 書面による議論と口頭による議論のバランスが大事なのであろう。

 とはいえ,文書を書くのは上手だが,話は下手というのでは,弁護士としての魅力に欠ける。
 裁判が書面主義であっても,堂々と口頭で意見を述べる能力は磨きたいものだ。


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posted by 内田清隆 at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2014年04月09日

他人の契約書をコピペしていいの?〜契約書の著作権

契約書案を作るときに,誰かが作った契約書を少しだけ修正して,契約書案を作ってもいいのであろうか?
「契約書」に著作権があるのであれば,無断複製として著作権侵害になる。
一方で,「契約書」に著作権がないのであれば,自由に利用しても問題ないということになる。
では,「契約書」に著作権はあるのであろうか。

結論からして,基本的に著作権はない。
誰かが作った契約書を少しだけ修正して契約書案を作っても原則OKである。

古い裁判例であるが,

東京地裁昭和40年8月31日判決は,「(契約書案には)思想は,何ら表示されていのであって・・・著作権の生ずる余地はない」「契約条項の取捨選択にいかに研究努力を重ねたにせよ,その苦心努力は,著作権保護の対象とはなり得ない」として,船荷証券の原案という特殊事例であるが,契約書には著作権がない旨を述べている。

東京地裁昭和62年5月14日判決においても,「(契約書案の内容は)思想または感情を創作的に表現したものであるとはいえないから,著作物ということはできない」として,契約書案の著作物性を否定している。

著作権法の大家,中山信弘先生も,その判決に対する解説において
「作成に多大な労力や知識を必要とするとしても,契約の内容に関する苦労であり,表現についての創作でないことが多い。」として,著作権法で保護されるのは,創作的表現である以上,「契約書は著作物とならない場合が多いと考えられる。」
「相当特徴ある表現がなされていない限り…著作物性は否定される」(ジュリスト・989号・106頁)と結論付けている。

何時間も考え抜いて作りだした契約書案を他人が自由に利用できるというのは,悲しいものがある。しかし,逆に,他人が作った契約書案をコピペできないとなすれば,とても大変だ。
そう思うと,契約書の文案に強い著作権を与えないというのはバランスのよい結論なのであろう。


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posted by 内田清隆 at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2014年03月05日

オリンピックと「金」の話〜アンブッシュマーケティング

 ソチオリンピックでは,羽生結弦選手が見事に「金」メダルを獲得したところであるが,本ブログはマネー=お「金」の話。

 2020年のオリンピックの開催地に東京が選出されたこともあり,オリンピックを利用した宣伝や広告を考える業者は少なくない。

 しかし,JOC・日本オリンピック委員会は,「・・・オリンピックのイメージ等の無断使用…は法的にも罰せられます。」とホームページに堂々と表示し,公式スポンサー以外の便乗広告=アンブッシュマーケティングを厳しく取り締まる姿勢を明確にしている。
http://www.joc.or.jp/about/marketing/noambush.html 
「オリンピック」「がんばれ!日本!」「TOKYO2020」等については商標登録されており,これらを無断で商標として使用できないことは当然である。
 しかし,「オリンピックのイメージ」を無断使用することは法的に罰せられるのであろうか。
 「おめでとう東京」「日本選手、目指せ金メダル!」「日本代表、応援します!」といった表現までもすべてNGになるとの報道もされたらしいが,本当であろうか。

ウソである。

 問題となるのは不正競争防止法であろうが,同法2条1項2号は,著名な商標等表示と同一若しくは類似のものの使用を禁止するに過ぎない。「オリンピックのイメージ」が「著名な商品等表示」でないのは当然だ。
 また,同法2条1項1号は,「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を禁止するが,それも「商品等表示を使用」する場合に限られるのであり,「オリンピックのイメージ」の利用はこれに含まれない。

 もちろん,状況によっては不正競争防止法違反になる場合があることは否定できないが,正確には「・・・オリンピックのイメージ等の無断使用・・・は法的にも罰せられることが,あり得ないわけではありません。」であり,少なくとも「罰せられます」といい切ることは明らかに誤りである。

 公式スポンサーから多額のお「金」を払ってもらうために,誇張した表現を用いてでもアンブッシュマーケティングを取り締まろうとしているのかもしれない。
 しかし,JOCから訴えられるかもしれないと思っては,中小企業はオリンピックをイメージするような広告は一切できなくなってしまうのであり,JOCの態度は不当に委縮効果を与えている。
 まさか,JOCも地元商店街が「●●選手・金メダルおめでとう!」というセールをすることまで,禁止したいわけではないだろう。

 どこまで許されどこから許されないのか,責任ある団体としてJOCは納得できる基準を明確にすべきであろう。


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posted by 内田清隆 at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2014年02月10日

映画「カーズ」に見る米国裁判〜「所払い」と「32,000$」

 先日,ディズニー映画「カーズ」のDVDを子供と一緒に見ていたところ,
街を壊した主人公のマックィーンが,刑事裁判にかけられていた。

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カーズ [DVD]  http://p.tl/3G_d

 その刑事裁判では,裁判官のドックハドソンが,「街追放」という判決を出そうとしていたところ,急きょ現れたカルフォリニア出身の美人?女性弁護士サリーの熱意あふれる弁論により,最終的には「社会奉仕命令」という判決が下されたのである。

 アメリカの刑事裁判において社会奉仕命令が出されるということは知っていたが,日本にない種類の判決であり,少し違和感を覚えた。
 それ以上に違和感を覚えたのが,当初出されようとしていた「街追放」という判決である。

 「遠山の金さん」や「大岡越前」では,よく,善良な町民が「江戸所払い=江戸追放」の判決を受けていたが,アメリカでは今でも所払いなどという判決はあるのだろうか?
 そう思い,少し調べてみたところ,「所払い」は現存するようだ。ある弁護士がブログに,最近,「ヒューストンカウンティからの追放=所払い」という珍しい判決を受け,ジョージア州最高裁は,同判決を合法であると維持したと書いていた。
http://www.houstonda.org/houston-county-law-school/banishment-from-houston-county.html
 さすが,アメリカ・・・という思いがする。

 また,それと同時に驚いたのは,サリーの弁護料である。設定からすると,国選弁護人のようであるが,その弁護料は3万2000ドル=320万円以上である。
 日本では,本件のような軽微な案件の国選弁護人の報酬は10万円はしないし,私選弁護人だとしても100万円でもあり得ない額である。
 
 そのようなアニメを見て育つアメリカの子供たちは,裁判に対する考えも日本の子供たちとは違ってくるのだろうなあと思った。


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posted by 内田清隆 at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2014年01月30日

英文契約書由来の完全合意条項の恐ろしさ

欧米の影響が増しているせいなのか,近年,英米法上の口頭証拠準則(Parol Evidence Rule)を具体化した完全合意条項が入った契約書を目にすることが多い。
典型的には以下のような条項である。

第○条 完全合意条項
本契約は、本件に関し、甲乙間の完全な合意と了解を取り決めたものであって、口頭であると書面であるとを問わず、本契約以前に成立した甲乙間の合意、了解、意図などの全てに優先し、取って代わるものである。
 

この条項に従えば,契約書締結以前の約束はすべて無視されることになる。

そのため,「○○ということで契約を結んだんじゃないか!証拠のメールもあるぞ!」と言ったところで,契約書に入っていなければ,効力がないということになる。

例えば,平成18年12月25日の東京高裁判決の事案では,
X社がY社に
「契約書の条項と条件は、他の会社との間の契約の条件と完全に同一です。」
「他の取引先と貴社の条件よりも有利な条件で契約を締結した場合には、必ず契約を見直します。」
と書面を送付していた。
にもかかわらず,この約束が無視されたため,Y社は,「他社と同じ条件にするということで契約を結んだんじゃないか!証拠の書面もあるぞ!」と主張した。
しかし,裁判所は,完全合意条項が存在するもののY社の主張する条件は契約書に載っていないということを理由として挙げ,Y社の主張を排斥した。

これは特に中小企業にとって恐ろしい条項であろう。すべての条件が盛り込まれたきちんとした契約書を作るためには,費用と時間が必要だ。しかしながら,それだけのコストをかけられない場合も多いし,信頼関係があるのでその必要はないと考えることも多い。
にもかかわらず,完全合意条項があると,契約書に載っていない条件は,すべて存在しないということになってしまうのだ。

安易に完全合意条項付の契約を結び,大きな不利益を受けないように気を付けないといけない。


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posted by 内田清隆 at 16:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書作成

2014年01月21日

契約書案は作るべきか,作らせるべきか 〜作成者不利の原則

「さあ契約を結ぼう」という時に,最初の契約書案を自ら作成すべきか,相手方に作成してもらった方がいいのか・・・悩ましい問題である。

典型的な契約であれば,過去に使った契約書を使いまわすことですむかもしれない。
しかし,特殊な契約の場合に,新たに契約書案を作るのは,結構手間がかかる。だとすれば,当然,作ってもらった方がよいということになる。

しかし,最初にできた契約書案が交渉のベースになる。
最初の契約書案を相手方が作ることになれば,当然その内容は相手方に有利にできているであろう。
そうすると,その後の交渉の主導権を相手方にとられかねない。
だとすれば,相手方が言い出す前に,「今度の契約ですが,こんな案でどうでしょうか?」と先に契約書案を作ってしまった方が有利ということになる。

英米法では,Contra Proferentemの原則=作成者不利の原則に基づき契約書は解釈されるといわれる。
文言があいまいで,二つ以上に解釈される契約においては,その契約書案を最初に作成したものが不利に解されるという原則である。
(正確には,同条項により利益を得るものに対して不利に解釈されるとされることが多いが,利益を得るものは通常は作成者である。)  
日本ではあまりいわれない原則であるが,民法改正において議論されているし,信義誠実の原則の一つとして,日本でも適用されない原則であるといえないこともない。
それを考えると,最初に契約書案を作ると不利になるということもまたあるのかもしれない。


結局のところ,契約書案を先に作るべきか相手方に作らせるべきかは,状況次第であり,状況を分析してどちらが得かを判断するしかない。
もっとも,力関係からして,「先に作りたくてもできない」ということも多い話ではあるが・・・。


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posted by 内田清隆 at 10:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書作成

2014年01月15日

建物の写真,ブログに載せていいの?

「当社の建物の写真を勝手にお前のブログに載せるな!」という苦情を受けたことがある方もいるかもしれない。
他人の建物の写真を,自身のブログやホームページなどに勝手に載せてもいいのであろうか?
結論からすると,基本的に構わない。

建物には著作権が生じる場合がある。しかし,著作権法46条には以下ように規定する。

(公開の美術の著作物等の利用)
第四十六条  ・・・建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。 ・・・
一 ・・・
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合

つまり,建物の著作権は,その建物と同じような建物を建築する場合など以外は,自由に利用が可能なのである。

また,有名な建築物にはパブリシティ権という厄介な問題も付きまとう。
しかし,パブリシティ権は,人について生じるものであり,建築物といった「物」には生じないというのが最高裁の判例である(http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/78754293.html)。

そのため,自分で撮影した他人の建物の写真をブログにアップすることは,原則として,法律上問題はないのである。
勝手に使われるのは気分が悪いようにも思えるが,誰もが自由に撮影できる建物について,あまり権利を及ぼされては,行動の自由が制限される。そう考えれば,合理的なのかもしれない。

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posted by 内田清隆 at 09:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2013年12月18日

弁護士はいつ忙しい?

「師」が「走る」と書いて師走である。
世間は何かと忙しいところであるが,弁護士はどうなのであろう。

「弁護士さんは忙しい時期ってあるんですか?」などとよく聞かれるが,年末は忙しいイメージがある。
「何とか今年中に決着をつけたい!」という思いから,新しい相談が入るからである
(年末に相談を受けても,年内に解決するのは困難ではあるのだが…)。
 
では,1月はどうかというと,これも意外に忙しいイメージがある。
 年末年始の休みによく状況を考えて,やはり弁護士に依頼し,はっきりさせようと決意される方が多いためだ。
 
では,春はどうかというと,寒い雪の季節は我慢していたが,暖かくなってきたこともあり,このままにはしておけないとして,弁護士に依頼される方も少なくない。

では夏はというと,夏休みの間に色々な人と話すことで,心を新たにし,このままにはしておけない と決意し弁護士に依頼を・・・,秋はというと,暑い夏が終わり,寒い冬になる前にこのままにはしておけないと決意し弁護士に・・・ ということで,弁護士はいつでも忙しい状況ともいえる。

しかし,一方で,年末は慌しいから年明けに・・・,年明け早々から争うのも嫌だから・・・,春はいい季節だから争いたくない・・・,暑い夏は争う気力が出ない・・・,ということで,弁護士に相談に行かない理由はいつでも作れる。

というわけで,弁護士の忙しさは,季節によらないというのが実態のようだ。

 

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posted by 内田清隆 at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2013年11月27日

パテントトロールとテキサスの蛮行

表向きは,ソフトウェア開発などの事業を行っているようだが,実は,個人などから特許権を買い集め,特許権侵害を理由に大企業から損害賠償金を得ることで生計を立てる中小企業や個人,通称「パテントトロール」が米国で大活躍をしている。

先日受けた日弁連の研修によると,米国ではパテントトロールによる訴訟が急増しており2010年には特許侵害訴訟の29%に過ぎなかったものが,2013年には62%に達しているとのことであった。

米国特許訴訟では多額のコストがかかる。特にe-ディスカバリーと呼ばれる文書の開示手続に費用がかかる。1000万件の書類の提出を余儀なくされ億単位のコストがかかるということもよくあるということである。
パテントトロールに訴えられた大企業はその莫大なコストを負担するが,実体のないパテントトロールはそのコストを負担しない。そう考えれば,特許を買い取り,負けそうな事件でも訴訟を提起し和解に持ち込むというのは合理的な戦略なのかもしれない。

パテントトロールは全米各地を放浪し,勝てそうな裁判所を探して,そこで訴訟を提起するそうだ。テキサス東部地区の裁判所では,数年前まで原告が90%という圧倒的な勝率を誇り,多数のパテントトロールを引き寄せていたらしい。

私はパテントトロールには好意的であったりする。中小企業が知力を武器に大企業に戦いを挑む姿は悪いイメージではない。
昔テキサスに住んでいたとき,ちょっとした揉め事に遭遇したところ,友人が銃をもって走ってきたことがあった。「自らの手は自らで守る」「政府や大企業の庇護はいらない」アメリカンドリームを愛する,個人の自由を何よりも愛する古き良き?アメリカがそこにあった。

現在の米国のパテントトロール跋扈状況は異常であろうが,米国だけは,力の弱い発明家の個人が夢をもてる国のままであってほしい。


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posted by 内田清隆 at 21:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2013年11月16日

競業避止義務特約の有効性の判断ポイント

従業員が退職後,ライバル会社に就職するのを辞めさせたい!というニー ズはかなりある。
私自身もそのような裁判に何度か関わったことがある。

そのときに,いつも問題となるのが「ライバル会社で働くことを禁止する」といった就業規則や誓約書,すなわち競業避止義務特約である。

契約は本来自由であるはずである。
しかし,競業避止義務特約は職業選択の活動の自由を制限するものであるため,一定の場合にしか有効にならないのである。

この点,経産省が,過去の裁判例を詳しく分析し,有効性判断のポイントをあげている。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html#kuwashiku

乱暴にまとめると以下のとおりである。
・会社に営業秘密等の守るべき利益がないとダメ
・従業員すべてはもちろん特定の職位にある者すべてを対象と している場合はダメ
・競業避止義務期間が2年以上となっているとダメ,1年以下にすべき
・競業を禁止するかわりに手当等の代償措置が設定されていないとダメ

これらはなかなか厳しいもので,数年前に読んだ本と比較してもそのハードルは上がっているように思える。
中小企業において,従業員によって誓約書を使いわけ,それにふさわしい代償措置を準備するというのは容易な話ではないだろう。

当然のことではあるが,ライバル会社に転職されないように,「よい会社」にするというのが一番大切ということであろう。


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posted by 内田清隆 at 20:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題

2013年11月05日

財産開示の効用と限界

「財産開示」制度利用すれば,差押えることができる財産の所在が分からなくても,相手方を裁判所に呼び出し,財産の所在を聞き出すことができる。相手方が嘘を述べた場合には過料の制裁もある。

しかし,その過料の制裁額は,わずか30万円である。ずる賢い相手方であれば,嘘をついて30万円を支払い,差押えを逃れようとするはずである。

しかも,その30万円は,刑事罰としての「罰金」ではなく,過料に過ぎない。刑事罰の罰金であれば,支払をしないと労役場留置といって刑務所に入れられ労働をしなければいけなくなる。しかし,過料の場合は,税金と同じで,支払をしないと財産の差押えを受けるだけである。差押を逃れるために嘘を述べた者に対する罰が差押だけでは意味がないと思われる。

実際に,財産開示期日に嘘をついて差し押さえを逃れて,過料の制裁を受けたものの,それすら踏み倒している者を目にしたこともある。

このような制度では実質がないとして,現在,改正が議論されているわけであるが,もちろん現制度がまったく意味がないわけではない。

裁判所に呼び出され,自分の財産がどこにあるかを言わなければいけないというのは非常に苦痛だ。

しかも,嘘をつくと低額とはいえ罰則があるにもかかわらず,嘘をつくというのは良心がある者にとってはなかなかできるものではない。そのため,実際には財産開示制度を利用すると,任意で支払をする人も少なくないのである。

とはいえ,数百万円であればそのような「良心」に基づく対応も期待できるところであるが,数千万円以上の話となれば,良心も期待できない。

早めの改正を期待したいものである。 


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posted by 内田清隆 at 10:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2013年10月31日

死者のパブリシティ権

前回の記事でも書いたが,最高裁判決によると,
有名人の写真や氏名を広告に利用することは一定の場合許されない。
いわゆるパブリシティ権である。

 では,死亡した有名人の場合はどうなのであろうか,死者にパブリシティ権があるのかという問題である。

 この点について,明確に判断した裁判例は知られていない。

 関連する裁判例としては,名誉毀損が問題となったものであるが,死者に対する遺族の敬愛追慕の情は,一種の人格的法益として法の保護の対象となり,これを違法に侵害する行為は不法行為を構成するとしながらも,死後44年余を経ているという状況から,慰籍料の請求は認められないとした裁判例がある程度である。
(東京高裁 昭和54年3月14日http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/499D61694B682F1949256CFA0007B9C6.pdf

 最高裁は,パブリシティ権の本質を人格権としてとらえている。だとすれば、有名人が死亡すれば,人格が消滅する以上,パブリシティ権も消滅すると考えるのが自然であるのかもしれない。
 しかし,人格権は相続されないとしても,死者に対する名誉侵害が違法になる場合があるのであるから,死者に対するパブリシティ権侵害も違法になることはあると考えるべきなのが自然のように思える。

 とはいえ,著作権のように死後50年で権利が消滅するという規定がない以上,何年間死者のパブリシティ権が保護されるのかはっきりしないし,どのような条件で保護されるのかもはっきりしない。

 アメリカでは,死者のパブリシティ権について各州ごとに一定のルールが確立しており,死者のパブリシティ権ビジネスに多くの弁護士も関わっていると聞く。
 日本においても,法律ではっきりすることが必要であろう。


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posted by 内田清隆 at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2013年10月21日

物のパブリシティ権

 最高裁判決(http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/53415247.html)によると,有名人の写真や氏名を広告に利用することは一定の場合許されない。
 いわゆるパブリシティ権というものである。

 では,人ではなく,有名な「物」,例えば世界的に有名なスポーツカー,著名な建築物などを利用することはできるのであろうか,物のパブリシティ権と呼ばれる問題である。

 この点は,下級審でも判断が分かれていたのだが,最高裁平成16年2月13日判決(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120716670381.pdf)は,法律上は「物」となる競走馬の名称の使用について,
 物の名称の使用など,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法,著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その反面として,その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にしている。
 上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。

と判示して,物のパブリシティ権の存在について否定した。

 「あの伝説の競走馬,オグリキャップがついに復活!」と広告に用いることができるというわけである。

 最高裁によればパブリシティ権は「人格権に由来する権利の一内容」である。そして「人格権」は法的に保護されるが「馬格権」なるものは法的に保護されない以上,オグリキャップにはパブリシティ権がないということである。
 人と馬とを差別し,人を優遇するものであるが,法律をつくるのが人である以上,馬の権利は無視されてもやむを得ないということであろうか。

 もっとも,最高裁の判例が述べるように,場合により著作権法,商標法,不正競争防止法違反となる場合もあるので,注意が必要なことはいうまでもない。
 特に需要者に広く認識されている商品表示を,自社と何らかの関係があるかのように利用することは不正競争防止法違反になるので注意が必要である。


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2013年10月15日

みずほ銀行問題とキリストと親鸞

 みずほ銀行が暴力団関係者に対して融資をしていたという問題について,ある弁護士がブログに,「不正発見主義(不祥事はどうしても発生してしまうが,これを早期に発見して自浄能力によって解決し公表すること)にウエイトを置く」が重要であり,そのためには「敗者復活戦」や「報告者に対する報奨」が認められることが大切であると書いていた。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2013/10/post-b0b9.html 

 功利主義的な人間観に立てば,不正を発見した場合に
   それを伝えるメリット<それを隠すメリット
であれば,それを伝える人はいない。
 そうであれば,不正を伝えることに対して「報償」を与え,不正を伝えるメリットを増やすべきであり,また不正に関与した人間にも「敗者復活」の道を与え,不正を伝えることによって生じる不利益を小さくすることが必要であるということであろう。

 そう思うと宗教というものは,不正を告白するための見事なシステムを作り上げているのだと思う。
 キリスト教においては,自己の罪を悔い改め,それを告白すれば(特にカトリック教会においては,いわゆる「懺悔」を行えば),神はこれを許す。つまり,不正を伝えることで許され天国にいけるといった,十分な「報償」が与えられるということだ。
「もし、わたしたちが自分の罪を告白するならば,神は真実で正しいかたであるから,その罪をゆるし,すべての不義からわたしたちをきよめて下さる」(ヨハネの第一の手紙第1章9節)

 親鸞が歎異抄において「善人なおもて往生とぐ,いはんや悪人をや」(善人でさえ浄土へ生まれることができる,まして悪人は,なおさらだ)と説くのも,どんな罪を犯した人間であっても「敗者復活」することが可能であると説き,告白する強さを人間に与えようとしたのであろう。

 HONDAには「失敗表彰制度」があり,一番失敗した社員には「社長賞」まで与えられたという。そのような制度があれば,「失敗」を積極的に告白するようになるかもしれない。
 しかし,「私は横領しました!」といった不正を告白させるために,横領した人に賞を与えるというわけにもいくまい。

 そうなると本当に重要となるのは,「不正に関与した人間は『償い』はとらなければいけない,しかし,必ず『赦し』は得られる」という一種宗教的な信頼感なのかもしれない。


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posted by 内田清隆 at 09:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感