2024年02月27日

有名商品(ブランド商品)を広告に使えるか

フェラーリの自動車をあるいはエルメスのバッグといった有名商品を、広告に使うことは許されるだろうか?
非常に難しい問題だ。

商標法
もちろん、有名商品の登録商標を、商標的に使用すれば、すなわち、商品の出所を表示するために用いれば、当然に商標法違反である。
まずは、商標を写さないように、あるいは写すとしても意匠的効果や装飾的効果だけをもたらすようにして商標的に使用しないことは当然必要である。

パブリシティ権
では、商標的に使用しなければ大丈夫なのであろうか。
物のパブリシティ権侵害http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/78754293.htmlについては、最高裁が明確に否定しており、一般論としては、心配する必要はないであろう。
もっとも、過去には認めていた裁判例も多数あり、最高裁がパブリシティ権侵害になるといったような、専ら他社商品の有する顧客吸引力の利用を目的とした場合まで不法行為が成立しないのかは明確ではない。
ただ、他人の商品を利用して、そのような広告を作ることは常識的には考えられないであろう。

意匠権・著作権
意匠権については、類似形状商品の製造・販売等が禁止されるだけであるので、意匠登録されている商品を使用しても意匠権侵害にはならない。

では著作権はどうであろうか。
工業製品については、原則として意匠権で保護されるべきものであるため、著作権が認められないとするのが一般の裁判例ではある。
そう考えれば、著作権侵害も心配することはないことになる。

しかし、工業製品であっても創作性があれば美術の著作物にあたるとする知財高裁の裁判例http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/164829131.htmlも存在する。その考えによれば、特別な形をした商品の広告利用は、著作物の複製として著作権侵害にあたることにもなり得る。

そのような場合、いわゆる写り込み(著作権法30条の2)として許容されないかが問題となる。
しかし、写り込みは@著作物の利用により利益を得る目的A分離の困難性B著作物が果たす役割などから正当な範囲内といえる場合にだけ許容されるものである。
広告においては、@有名商品を利用して利益を得る目的は明らかであるうえ、A意図的に有名商品を利用しているのであるから分離は極めて容易であり、写り込みとして許容されづらい。

そうなると、個人的には、著作権侵害という結論はあり得ないと思うが、著作権侵害が成立するかについては、学説・裁判例を注視する必要があり、簡単には判断できないというのが妥当な結論なのかもしれない。

不正競争防止法
不正競争防止法2条1項1号により、広く認識されている他人の商品等表示を使用し、他人の営業との混同を生じさせる行為は、違法となる。
一般論としては、他社の商品を広告に利用しても、営業の混同が生じることはないため、不正競争防止法違反にはならないといえるであろう。
しかし、使用方法によっては、誤解が生じることはあり得るため、注意が必要なことは確かだ。
(他人の著名な商品等表示を「自己の商品等表示として」使用すれば同2号の問題になるが、広告では普通、そんなことはない。)


他にも一般不法行為の成立も検討が必要かもしれない。
知的財産権の問題は得てしてそうだが、多数の法律が問題になる上、明確な回答がない場合が少なくない。
明確な回答がなければ委縮効果をもたらし、表現の自由が侵害されることになる。
積極的に立法で解決していくことが重要であろう。

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posted by 内田清隆 at 15:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2023年11月17日

カリフォルニア州弁護士が教える英文契約書講座

カリフォルニア州弁護士が教える英文契約書講座
というタイトルでYouTubeを始めました。 

willとmayといった助動詞の使い方といった基本中の基本から、


thereinやthereafterといった契約書独特の用語の説明などを、

おもしろおかしくやっています。

「こんな講座、必要としている人いるかな・・・」「誰も見てくれないのでは・・・」という思いもあるのですが、ユーモアを交えながらシンプルに分かりやすくして、軽い気持ちで見ることができるようにという思いでやっておりますので、ご笑覧いただければ幸いです。

軽い気持ちで始めたものの、やってみると意外に手間もかかり、いつまで続くか分かりませんが、しばらくはやっていくつもりです。


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posted by 内田清隆 at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2023年10月21日

とても便利な「法令用語日英標準対訳辞書」

法務省は、法律用語をどのように英語に翻訳するべきかについてのサイトを作成している。
https://www.japaneselawtranslation.go.jp/en/dicts/download
いわば公定訳であり、非常に参考になる。

全単語が網羅された「法令用語日英標準対訳辞書」は無料でダウンロードすることも可能だ。
https://www.japaneselawtranslation.go.jp/en/dicts/download

読んでみると色々と面白いのだが、日本語では難しいが、英語では簡単になる単語がたくさんあることに気付いた。
意匠design 複製物copy 風説rumor 評決vote  労役場workhouse 督促demand 謄本copy 煤煙soot and smoke 聴取hearing 審問hearing 思料するconsider 情を知ってknowingly 支弁payment 減殺reduction 毀棄destruction 勧奨encouragement 永小作権farming right等々、英語だとずいぶん簡単な言葉になる。
特に、囲障fence 準則rules 威力forceなどは日本語では無意味に難しい言葉を使っているなあと感じさせられた。

その他、本文main clause 補正correction 正本original 成年者adult 引渡delivery 廃棄物waste 任命権者appointer 準ずるequivalent 積み立てるreserve 立会いattendance 等々難しい単語ではないものの、英語にしろと言われたらなかなかできないなあと思わせられる単語も多い。
博徒habitual gamblerなど見事な訳だ。

残念ながら素晴らしい試みにもかかわらず、そこまで知られていないようにも思える。
法律用語を翻訳する必要が生じた場合には、まず確認したいサイトだ。


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posted by 内田清隆 at 17:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2023年09月07日

メタバースのアバターはバーチャルコートの夢を見るか?〜宇宙際弁護士の誕生

宇宙際弁護士.jpg

https://www.youtube.com/@HoushouMarine/aboutより

宝鐘マリン氏(画像)は、「宝石、宝、お金が大好きで、海賊になって宝を探すのが夢で、 海賊船を買うのが目標で今は陸でVTuberをしている」そうである。
※VTuber=「2D又は3Dのキャラクターを使って活動しているYouTuber」(大阪地裁H4.3.31)

同マリン氏に対する
「仕方ねぇよバカ女なんだから 母親がいないせいで精神が未熟なんだろ」
という発言が名誉感情(人格的利益)を害する違法行為になるかについて訴訟で争われた。

平成4年3月31日、大阪地裁は、同発言は表面的にはマリン氏に向けられたものであったとしても、「アバターの表象をいわば衣装のようにまとって」活動する中の人の名誉感情を侵害する違法行為であるとの判決を下した(判タ1501号202頁)。

これは、「VTuberにとっては、アバターは『服』のようなものであり、アバターというファッションを全身に纏っているという感覚に近」く、アバターが「中の人」の実際の顔を全く反映していなくても、彼女・彼の「肖像」と認めることに障害はない・・・とする原田伸一朗氏の論文を意識したものと理解されている。
※知的財産戦略本部
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kanmin_renkei/dai2bunkakai/dai1/siryou5.pdf
※「サイバネティック・アバターの法律問題」
https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr411-20230629-keiomatsuo.html

確かに、生身の人間の名誉感情を現実世界で侵害する行為であれば、現行法上違法行為になることに特に異論はないであろう。
しかし、VTuberには、キャラクターこそがVTuberの本体であって、「人間」がその背後にいてキャラクターを操作しているわけではない(「中の人」はいない)という設定を遵守する「キャラクター型VTuber」も存在する。
そのようなVTuberのアバターであっても保護が必要だと考えれば、「中の人」の人格権侵害ではなく、アバター固有の人格権を考えるべきであろう。

もっとも、そのようなアバター固有の人格権は、現実の宇宙空間=uni-verseで保護されるべきものではなく、超越宇宙空間=meta-verseで保護されるべきものであり、アバター固有人格権侵害はメタバース裁判所(バーチャルコート)で救済が図られるべきなのかもしれない。
旧来型の現実の宇宙空間における裁判所は、物理的現実としての生身の人間の人格権だけを保護し、アバター固有人格権は超越宇宙空間のバーチャルコートで保護するという役割分担だ。

日本の弁護士は、日本法だけでなくもっと英米法や中国法など外国の法律を勉強し国際弁護士を目指さなければいけないと言われることがあった。
しかし、これからは、現実の宇宙空間の法律だけではなく超越宇宙空間の法律にも熟達した宇宙際弁護士inter-universal lawyerを目指さなければいけなくなるだろう。

宇宙際弁護士2.jpg https://optimizemyfirm.com/personal-injury-metaverse/

宇宙際弁護士3.jpghttps://youtu.be/PxWBmngmJtQ

※既に多くの法律事務所がmetaverseに支店を有しているが、現在のところ扱っているのは現実空間の法律だ。

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posted by 内田清隆 at 13:36| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2023年07月27日

謎の法律業界用語集4

以下の記事の続き
謎の法律業界用語集1
http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/39406502.html
謎の法律業界用語集2
http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/39416916.html
謎の法律業界用語集3
http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/54066903.html

書証
 「証拠となるべき文書」の意味で普通使われる。文書の証拠→文書証拠→書証と略されるに至ったらしい(文書を証拠資料とするための証拠調べ手続というのが本来の意味らしいが、あまりその意味では使われない)。
 とにかく、噛みやすくて発音しづらい用語で、話す前に若干緊張してしまう。「骨粗しょう症訴訟、書証の証書で勝訴」という早口言葉を普段から練習して、いざというきに噛まないように備えたい。

赤い本
 赤本といえば、一般には毎年発行される大学入試の過去問題集のことを指すことが多いが、法律業界では毎年発行される「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」を指す。交通事故訴訟で損害額を算定する際には必ず必要となる本だ。
 表紙に「赤い本」と書かれており、「赤本」でなく「赤い本」が公式だが、どちらの名称もよく使われる。
 ちなみに「青本」も必携。私は集めていないが「緑本」「黄色本」もあるらしい。揃えると戦隊ものになりそうだ。

期(き)
 法曹界における業界経験年数をはかる物差し、それが「期」である。
 法曹になるためには、司法研修所を卒業する必要があるが、昭和22年に司法研修所に入所した「1期」以下、すべての法曹には「期」がつけられている。平成13年に司法研修所を出た私は「54期」、令和5年には「76期」が生まれる。
 「自分の方が期が上」「あの人の期って知ってる?」「期にこだわらない」といったように用いる。
 「キ」と聞いて「木」でも「気」でもなく、「期」が出てくるようであれば法曹関係者と考えてよいだろう。

懈怠  
 義務を怠ることを意味する言葉。業界では、「けたい」と読む。
 「任務懈怠」=任務を怠ること、「通知の懈怠」=通知をし忘れること、「懈怠約款」=支払を怠った場合に適用となる約束、といった用語で用いられる。
 昔、「かいたい」と読んだら、「『けたい』と読むんですよ。これくらいは、常識ですよ!」と笑われたことがあるのだが、改めて辞書を引くと「かいたい」という読み方もあるらしい・・・。

期日
 裁判所で開催される当事者が出頭して行われる手続の日を、業界では、まとめて「期日」と呼ぶ。
 弁護士が「その日は期日がありまして…」と言えば、裁判所に行く予定があるという意味であるし、裁判官が「次回の期日までに・・・」と言えば、次回裁判所に集まる日までにという意味である。
 非常によく使われるため、もはや業界用語だと分かっていない人も多い。
 
ブル弁
 ブルジョワ弁護士の略。歴史を感じさせる用語だ。大きな会社の企業案件を担当し高収入を得ている弁護士を指し、軽蔑的に用いることもあるが、羨望や親しみを込めて用いることもある。
 初めて聞いた時、ブルっている、ブルブル震える情けない弁護士の事なのかと思ってしまった。

スタッフ
 法テラスに常時勤務する「スタッフ弁護士」のことをいう。語源は謎である。原則としてお金のない人のための扶助事件や国選事件だけを扱い,その代わりに法テラスから給料をもらう、一種の公務員弁護士である。
 昔は「スタッフ弁護士」と呼んでいたと記憶しているが、最近では「スタッフ」と短縮されることも多い。狩野英孝の「スタッフゥー」の影響でホストを想像してしまうので、正式名称で呼ぶべきであろう。


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2023年04月01日

4月1日 民法改正!〜柿もタケノコと平等に

2023年4月1日、重大な改正民法が施行された。
ついに、隣の家の樹木の枝が境界線を越えて出ている場合に、その境界線を越えた枝を、切除することが一定の条件で許されるようになったのである。

今までも、隣地の所有者に「切除させる」権利はあったが、侵害を受けている側が「切除する」権利はなかった。
そのため、隣地の所有者が切除に応じない場合には、多額の費用をかけて裁判をしなければ切除させることができなかったのである。
隣地から勝手に境界線を出てきた枝を切除するために、自らが費用を負担して弁護士を頼んで、裁判所に出頭し・・・。「割が合わない!」として泣き寝入りする人も多かったはずである。

実は、今までも、境界線を越えて出てきた「枝」は切除できないが、境界線を超えてきた「根」は切除できるという謎のルールがあった。
そのため、隣地の竹から伸びてきたタケノコは勝手に取ってしまっていいが、隣地の柿の木から伸びてきた枝になった柿は勝手に取ってはいけなという、豆法律知識がよく本などで紹介されていた。
しかし、本改正により、長年望まれてきたタケノコと柿の間の平等がようやく実現するというわけだ。ダウンロード.jpg

とはいえ、喜んでばかりもいられない。
明治二十九年に「隣地ノ竹木ノ根カ疆界線ヲ踰ユルトキハ之ヲ截取スルコトヲ得」と定められて以降、私が子供のころから不合理と言われ続けてきたにもかからず、改正されるまで、何十年もかかったのである。

実際のところタケノコや柿が問題になることはそう多くはない。現状として圧倒的に多い問題は、不法駐車の問題である。自分の土地に他人の自動車が不法に駐車されている場合、法律的にはこれを勝手に動かすことが原則としてできず、裁判をしないといけない。
しかし、明らかに廃棄された自動車を動かすために、弁護士を頼んで、裁判所に出頭し・・・、「割が合わない!」として泣き寝入りする人も多い。
タケノコや柿の問題より、こちらの問題の方が重要であるが、新たな法律ができるのはいつの日になることやら・・・。


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2022年11月29日

財産開示の効用と限界2

「財産開示」制度を利用すれば、差押えることができる財産の所在が分からなくても、相手方を裁判所に呼び出し、財産の所在を聞き出すことができる。しかし罰則が軽すぎて何の意味もない・・・と10年ほど前に、このブログhttp://uchida-houritsu.sblo.jp/article/79947907.htmlに書いたことがある。

ブログを書いた7年後の令和2年に改正民事執行法が施行され、同法により、正当な理由なく裁判所出頭しなかったり裁判所で虚偽の陳述をした場合には、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という、それなりに重い罰を科すことが可能になった。

まだ正式な統計データは多くは発表されていないが、以降、財産開示の申立ては急速に増えており、警察でも相当数の件数の告訴を受理しているそうである。

しかしながら、正直いって、現在も実効性には相当の疑問がある。
それを知ってか、財産開示期日に出頭しない人は半数近くに及んでおり、申立件数の増加に合わせて、期日に出頭しない人の割合も増えているらしい。

一つの問題点は、「正当な理由」を捜査機関が甘く判断するなどして、熱心に起訴していないことだ。
例えば、裁判所からの付郵便送達(手渡しではなく郵便での連絡)の場合、裁判所からの通知を見てないといった言い訳を真に受け、不出頭に正当な理由がないとはいえないとして起訴をしないことが日常化している。
日弁連のアンケート結果https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/activity/civil/reiwa_questionnair_bunseki_kekka.pdf
にも問題点として指摘されているが、全国的にある問題のようだ。

ニュースhttps://www.yomiuri.co.jp/national/20220817-OYT1T50067/によると、財産開示手続の無視について刑事告発をしても起訴がなされず、検察審査委員会が起訴相当の議決をした例まであるらしい。この例からも、捜査機関の不熱心さがうかがえる。

裁判所から支払を命じられても支払わらず、裁判所から出頭を命じられても無視する人の言い訳を、なぜ捜査機関が真に受けるのかと思う。
しかし、そもそも「正当な理由」がない場合に刑事処分を科すというやり方ではなく、出頭しない場合には警察が裁判所に引っ張ってくる制度にするなど法自体を改正する必要があると思う。

「逃げ得」は許さない社会にしなければ、日本人の良心は損なわれてしまうであろう。
早めの改正を期待したいものである。


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posted by 内田清隆 at 21:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2022年06月21日

同性婚訴訟・日米判決の違い〜結婚は死を超えるもの?

本年6月20日,大阪地裁は同性婚を認めないことは憲法違反に当たらないという判断を示した。
https://www.call4.jp/file/pdf/202206/d27041ab04ff5452f38d3caf5c17b0dd.pdf
の6頁によれば,
異性間の婚姻は、男女が子を産み育てる関係を社会が保護するという合理的な目的により歴史的、伝統的に完全に社会に定着した制度
であるが,
同性間の人的結合関係にどのような保護を与えるかについてはなお議論の過程
であるそうだ。

同性婚を認めないことは憲法違反に当たるとした札幌地裁令和3年3月17日判決も結婚に対する考え方は似ている。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/200/090200_hanrei.pdf
の40頁によれば,
婚姻とは,婚姻当事者及びその家族の身分関係を形成し,戸籍によってその身分関係が公証され,その身分に応じた種々の権利義務を伴う法的地位が付与されるという,身分関係と結び付いた複合的な法的効果を同時又は異時に生じさせる法律行為
であるそうだ。

これらと比較すると,同性婚を認めないことは憲法違反であるとした有名な2015年6月26日米連邦最高裁判決は,だいぶ雰囲気が違う。
https://www.supremecourt.gov/opinions/14pdf/14-556_3204.pdf
の28頁によれば
No union is more profound than marriage, for it embodies the highest ideals of love, fidelity, devotion, sacrifice,and family.
In forming a marital union, two people become something greater than once they were.
As some of the petitioners in these cases demonstrate, marriage embodies a love that may endure even past death.

どんな結合も結婚ほど深淵ではない。結婚は,愛,貞節,犠牲,そして家族の最高位の理想を具体化する。
結婚をすることで,二人の人間は以前より偉大になる。
今回の申立人の何人かが示したように,
結婚は死さえも超える愛を具体化する

ものであるそうだ。

私は同性婚には肯定的であるが,結婚が米国最高裁がいうほど素晴らしいものであると裁判所で訴える自信は正直ない。日本人の限界であろうか・・・


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posted by 内田清隆 at 18:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2022年06月17日

独禁法違反で食べログに画期的な賠償命令

ニュースによると,昨日,東京地裁は,食べログに対して,独占禁止法に違反して優越的地位を乱用しているとして,3840万円の損害賠償金の支払を命じる判決を出した。

キャプチャ.PNG

原告側が作成した引用のサイトによると,食べログが一部のチェーン店だけ恣意的に点数を下げているという訴えである。

これだけだと分かりづらいが公正取引委員会の報告書56〜58頁にある通り,有料会員には良い点数を与え無料会員には点数を下げるなど,「飲食店に・・・自らに都合のよい料金プランに変更させるなど,正常な商慣習に照らして不当に不利益を」与えていないかが背景的な問題点であったようだ。


この東京地裁判決は,かなり画期的なものだ。
おそらく原告は,優越的地位の乱用として禁止される「不公正な取引方法」のうち一般指定4項「取引条件等の差別取扱い」,つまり食べログが原告に対して不当に不利な取扱いをしたとして訴えたのであろう。

しかし,このような訴えは一般的に非常に困難だ。不公正な取引方法のうち,例えば,共同の取引拒絶(1項),抱き合わせ販売(10項),再販売価格拘束(12項),などであれば,何が禁止されている取引方法であるかは,それなりに明確だ。

一方で,不当に不利に取り扱ってはいけないという第4項の規定はかなりあいまいで,何が不当な取り扱いにあたるのかの認定は非常に困難だ。

そのため,一般に裁判所は同項の適用には消極的であり,私も何度か同項に違反するという主張を裁判所でしたが,いずれも相手にされなかった。
にもかかわらず,今回の東京地裁判決は,積極的に第4項を適用したという点で重要なものだ。


また,上記の通り,有料会員だけが高い点数を受けているという批判が背景にあるにしても,報道からすると,それは,あくまでも裁判の背景としてあったにすぎない。

裁判において原告は,お金を払っていないから嫌がらせを受けたという主張はしていないようだ。つまり,食べログに不当な目的があったという主張をしているわけではない。

そうすると,裁判所は,不当な目的がなかったとしても,一方的に点数を変更することを違法としたわけであり,その点でも画期的だ。

中小企業の代理をすることが多い私にとっては,独禁法で訴えられるより,訴える方が多い。そういう意味で,新たな武器の登場は喜ばしいところだ。

※ニュースを見ての感想であり,実際の裁判の内容は確認しておりませんので,主張内容や判決内容など間違いがあるのかもしれません。


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posted by 内田清隆 at 11:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2022年05月09日

言語を絶滅から救え!〜金沢流弁護スタイル

言語の絶滅
2021年2月2日ブラジルでカワイブ語の最後の話者が,同年3月7日ロシアでアレウト語の最後の話者が,同年9月25日アメリカでヨクツ語最後の話者が死亡し,これらの言語を話せる人が消滅したそうです。
「浅井タケ」の死亡により樺太アイヌ語の母語話者が消滅したのは1994年でした。

現在世界の言語は約7000種類。ユネスコによれば,半分以上の言語が,数十年のうちに絶滅する恐れがあるそうです。
赤色の点が絶滅しそうな言語が話されている地域ですが,世界各地に広まっています。
日本でもアイヌ語と八丈語に点が打たれています。

ブログ挿入地図.png

https://miro.medium.com/max/1400/1*2HB92jBDH5EUrPdjFjKXpA.png

殺し屋の英語とAIの勝負
言語学者の間では,英語は「殺し屋の言語(killer language)」といわれています。グローバル化による英語の一極集中により多くの言語が消滅に追いやられているからです。
はっきりとしたデータはないものの,世界のインターネットの60%が,テレビ放送の70%が英語になってきているそうです。

しかし,「この勢いは今後も続くだろう,やっぱり英語の勉強は必要だ」と思うのは早計です。むしろ,ツールとしての英語の価値は今後確実に衰退していくはずです。
英文契約翻訳専門のAIがあるのですが,その実力は,確実に既に大半の人間を超えています。将棋界では,私にも負けていたAIが10年で藤井聡太棋士でも全く敵わないレベルに達しました。そこからして,10年もすれば技術的な翻訳では人間はAIに敵わなくなるでしょう。そうなれば,テレビでもネットでも英語を日本語に翻訳するのに誰も困らなくなるわけですから,ツールとして英語を覚える必要はほとんどなくなります。
そうなると,グローバル化によって英語一強時代が進んできましたが,これからも同じとは限りません。

想像を絶する世界の言語
戦前の日本では,横書きの文字を右から左ではなく,左から右にも読んでいましたが,世界にはもっと驚くべき読み方をする言語があります。
北アフリカのベルベル人の一部が用いているティフナグ文字は,上から下ではなく,下から上に読み進めるのだそうです。
どのように読むのか想像もできませんが,上から下にものを読む人間にはない,独特の思考回路をもつであろうことは間違いないでしょう。

ブログ挿入図.jpg

https://urlzs.com/Tzxoy
※3世紀ごろまで広く利用されていたティフナグ文字。現在でもモロッコの小学校の一部では教えている。


さらに,驚くべきことに未解読文字であるが古代エーゲ海で栄えたミノア文字は,渦巻き状に読み進めたのではないかと推測されています。
直線的な思考型の人間にはもちえない,円環型の思考方法をもっていたのでしょう。

ブログ挿入写真.jpg

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c7/Diskos.von.Phaistos_Seite.A_11-Aug-2004_asb_PICT3371.JPG

※クレタ島で発見された謎のミノア文字で書かれた「ファイストスの円盤」。紀元前1600年頃製作。

グローバル化で注目されるローカル
そもそも,私が言語の絶滅状況を知ることになったきっかけは,ユネスコをはじめ,多くの人々が生物多様性ならぬ言語多様性を守ろうとする運動を積極的にしているからです。
その運動により,以前であれば,その価値を認められずに消滅していた言語が,大きく価値を認められるようになってきているわけです。
そして,その運動は,グローバル化により,世界中で行われるようになってきました。
これは,「他と違うこと」「少数であること」「独特であること」の価値が,グローバル化により世界が一つに向かおうとしているからこそ,認められるようになってきているからなのではないのでしょうか。
関東出身の私ですが,「いじっかしい」「あらあらっと」「がんこな」といった金沢弁を法律相談で使うことがあります。それは,その言葉でしか表現できない何かがあるからなのでしょう。
まだ,どんなものか想像もできませんが,将来的には,グローバルに流行している弁護士のやり方を金沢に持ち込むのではなく,金沢流弁護士スタイルを世界に発信していきたいと思っています。


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2022年03月28日

「甲の都合で解約した場合」 

ある会社が
「都合で内定を取り消した場合,手数料を支払う」
という内容の契約を人材紹介会社と締結した。

その後,その会社は紹介を受けた人物に内定を与えたが,すぐにその人物の問題行動が発覚したため内定を取り消した。
その場合,その会社は,手数料を支払う必要があるのであろうか?
東京地裁が令和2年11月6日に出した判決の事案である。

その訴訟では,裁判所は,内定取消は不相当であり「都合で内定を取り消した場合」にあたるとした。内定取り消しが,不相当であれば,それはそうだろう。

判例時報2501号の解説では,紹介を受けた人に大きな問題があり,内定取消が相当な場合ならどうかについて検討されていた。
判例時報では,そのような場合でも会社は内定を取り消さないこともできるのであるから,「都合」で取り消したことに変わりはないという解釈もあり得るとされていた。

理論的には,その通りなのかもしれない。
契約書を文字通り読めば,変な人だから採用を続けると都合が悪いとして内定を取り消すのは,「都合による」内定取消そのものだ。

しかし,感覚的には納得しづらい結論だ。
変な人の紹介を受け,変な人だから内定を取り消しても,紹介料だけ払わないといけないなんて・・・

改めて見直してみると,「都合により解約する場合」と記載があり,「都合」とは何かが定義されていない契約書は珍しくなかった。

契約を締結するときには,よくよく気を付けたい事項だ。


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2022年02月13日

「第三者意見募集制度」〜自分とは違う世界 

2014年,知財高裁は,アップル対サムソン事件の審理の際に,Frand宣言に関して広く専門家からの意見を募集し,判決の参考にした。

裁判官といえども,すべてのことを知っているわけではない。
そこで,専門家の意見を幅広く聞こうとしたわけだ。

同判決の時点においては,法律はなく,事実上行われたにすぎなかった。
しかし,改正特許法により本年4月から,「第三者意見募集制度」という正式な制度として,裁判所は,広く一般に対し,意見を求められることになった。


先日,ベトナム人技能実習生が死体遺棄に問われている事件で,弁護団がホームページhttps://孤立出産.jp/ で,広く,出産直後の母親の精神についての専門的知識・経験をもっている人などの意見を求めているのを知った。

確かに,裁判官の知らない専門的な意見が必要となるのは,特許事件に限らない。
男性である私にとっても,出産した直後の母親の精神を知ることは難しい。


「裁判官は世間を知らない」などと批判されることがある。
しかし,どんな人間でも,知っている世界はごくわずかだ。
にもかかわらず,そのごくわずかな自分の身の回りの世界の常識で,すべてを判断しようとしがちだ。

しかし,多様性(ダイバーシティ)の重要性が謳われる現代,多様な価値観を認めること=自分の常識では判断できない世界があることを素直に認めることは大切だ。
そして,自分とは違う世界の人の意見を素直に聞く耳をもたなければならない。

そのために,「第三者意見募集制度」はとても有用であると思う。


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posted by 内田清隆 at 17:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2021年11月24日

石川県林業公社へ山を貸している方へ!

当事務所(担当:弁護士上田晃一朗)にて,公益財団法人石川県林業公社による分収造林事業に関する裁判で興味深い判決を得ました。
http://www.uchida-houritsu.com/%e7%9f%b3%e5%b7%9d%e7%9c%8c%e6%9e%97%e6%a5%ad%e5%85%ac%e7%a4%be%e3%81%b8%e5%b1%b1%e3%82%92%e8%b2%b8%e3%81%97%e3%81%a6%e3%81%84%e3%82%8b%e6%96%b9%ef%bc%8c%e5%bf%85%e8%a6%8b%ef%bc%81/


その裁判では,林業公社との長期契約が終了した場合,切られる前の樹木の所有権は誰に属するのかといった珍しい点が争点となりました。

土地所有者の中には,既に契約延長の合意をした方も今から契約延長に合意するか決めようとしている方もいらっしゃると思います。

石川県林業公社へ山を貸している方,ぜひ,ご参考にしてください。


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posted by 内田清隆 at 20:35| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2021年11月10日

ワクチン接種を従業員に強制できるか?

新型コロナウイルスの流行の中,それに関連する法律相談を多数受けた。
その中でも難しい問題だと感じたのが,ワクチン接種を従業員に強制できるかという問題であった。

もちろん「強制」といっても,腕を捕まえて,ワクチンを無理やり打てるわけではない。
ワクチンを打たなければいけないというルールを作り,ワクチンを打たない従業員を不利益に取り扱うことができるのかという問題である。

結論からいえば,現状,日本では,不利益に取り扱うことは違法になると考えられる。

予防接種法上,ワクチンを打たないことに罰則はなく,ワクチン接種は努力義務に過ぎないことを理由に,強制できないという意見がある。
しかし,これは決定的な理由にはなり得ない。

お酒を飲んで仕事をすることに罰則はないが,多くの会社は,従業員に対し,仕事に来る前に飲酒をしないよう強制している。
法的には何の罰則もなくても,従業員に上半身にシャツを着ることを強制することは可能であることは当然である。
法律上の義務があるかどうかと,会社内でどのようなルールを作ることが許されるのかは,直接には関係がないのである。

一番,強い理由は衆議院の付帯決議であろう。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/kourou95509A0BDB55A3044925862400328414.htm
予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案について衆議院は,
「新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行うこと。」
と付帯決議を行い,明確に「職場」での「不利益取り扱い」は許されないと述べ,しかも「決して許されるものではない」とまで強調している。

また,厚生労働省も
「職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていないことを理由に、職場において解雇、退職勧奨、いじめなどの差別的な扱いをすることは許されるものではありません。」
と,「職場」でワクチンを「受けていないことを理由」とする「差別的な取り扱い」は許されないことを明言している。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q1-15

 衆議院の付帯決議にも,厚生労働省のQ&Aにも直接的な法的拘束力はないが,法律を解釈するにあたり,重要な指針になることに争いはない。
 そう考えると,やはりワクチンを接種しないことを理由に,不利益な取り扱いはできないというのが現状といえそうだ。

 そうなると,世界中の多くの国の民間企業で,ワクチンを打っていない人について一定の施設に入ることを認めないとしているが,日本では,少なくとも従業員に対して,そのような不利益を課すことは違法になるということだ。
 「ワクチンを打つかどうかは個人の自由!邪魔は許されない!」という発想である。


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posted by 内田清隆 at 09:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題

2021年09月14日

注目が集まる意匠権〜製品は「見た目」が9割

新規デザインを保護する権利である意匠権(design patent)が近年注目されているという話をセミナーで聞いた。
私は今まで,意匠権をめぐる紛争だけには関わったことがなかったので,意匠権が注目されているというのに少し驚いた。

調べてみると,確かにアメリカでは,2010年から2020年にかけて,意匠権の認可件数が2万2799件→3万4877件と約1.5倍に急増している。 
https://www.uspto.gov/web/offices/ac/ido/oeip/taf/us_stat.htm
  
一方,日本では,同じ期間に意匠権の登録件数は2万7438件→2万5873件と逆に若干減少していた。しかし,特許権の登録件数が22万2693件→17万6933件と大幅に減少していることと比較すれば,日本でも意匠権は少しは注目を集めているのかもしれない。
file:///C:/Users/%E5%86%85%E7%94%B0/AppData/Local/Temp/01-03-2.pdf

https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/syutugan_toukei_sokuho/document/index/202103_sokuho.pdf 


意匠権が注目されたきっかけは,例のアップル対サムスンの訴訟であるという。
私もブログ
記事1http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/48328583.html
記事2http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/57797121.html
に書いていたが,2011年から世界中で争われた両者の訴訟は,2018年まで続いた。

2018年5月24日にサンノゼの米連邦地方裁判所判決は,サムスンに約5億3900万ドル(約590億円)の支払を命じたが,うち意匠権侵害が約5億3330万ドル,特許権侵害についてはわずか532万ドルに過ぎなかった。
このように意匠権侵害で多額の損害賠償が認められる傾向は,2012年以降ずっと続いている。
この傾向を見て,「意匠権は意外に使える!」という認識が高まったというのである。

アップル対サムソンの訴訟で,意匠権侵害に多額の損害賠償が認められたのは,i-phoneが特に「見た目」にこだわった製品であったというのも理由の一つかもしれない。しかし,そもそもiPhoneが「見た目」にこだわっているのは,意匠の重要性が増しているからであろう。
また,意匠権侵害で多額の損害賠償が認められたのは,一般人が行う陪審員裁判において,見た目を比べればよいだけの意匠権侵害は,技術に関する難解な文言の解釈を必要とする特許権侵害よりも認められやすかったからであるとも言われる。
内田ブログiPhone.jpg
しかし,これも,分かりやすく・簡単な「見た目」を重要視する社会の傾向を表しているのであろう。

アメリカに比べ日本では,意匠権への注目度はまだまだ低い。
「中身」も大切だが「外見」も大切だ。中身がよければよいという思想に固執し,取り残されないようにしないといけない。


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posted by 内田清隆 at 17:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法