2012年01月27日

無償で行う少数派株主の追い出し

 全体の株式の3分の1以下しか有していない少数株主の権利は驚くほど弱い。
 全体の3分の2以上を有している株主は,
・株主総会の特別決議で定款変更を行い,
・「全部取得条項付種類株式」(長い・・)に株式を変更し,
・少数株主の有する株式を強制的に「無償で」取得することが可能である。
 多数派は,いつでも少数株主を追い出すことができるのだ。

 もちろん「無償なんて納得できるか!」という株主は,裁判所に公正な価格を決めてもらい(会社法172条2項),その価格を受け取ることができる。
 しかし,もらえるのはお金だけであり,株式が無効化されることに変わりはない。
 しかも,その価格の決め方については明確なルールもない。会社が配当を中止し,決算書上で債務超過にしてしまえば,おそらくは,「無償」が公正な価格ということになるだろう。
 かくして少数株主は,一銭も受け取ることなく,株式だけを奪われてしまうことになるのである。

 全部取得条項付種類株式が導入された平成18年の会社法改正直後のことである。
 ある会社で創業社長が亡くなり,長男が社長になった。
 しかし,長男が所有していた株式は30%に過ぎなかった。そのため,他の株主であった相続人や従業員が結託し,長男を社長の座から追い落としたということがあった。
 さらに,その後すぐに,全部取得条項付種類株式を利用し,長男の所有している株式すべてが無償で会社に取得されてしまった。
 債務超過に近い会社であったため無償であっても仕方がないということで争わないことにしたのだが,所有する株式が一方的に無償で奪われてしまうという事実に何とも理不尽さを感じたものである。

 少数株主のもっている株式などほとんど価値がない,そう思うしかないのであろう。

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posted by 内田清隆 at 11:51| Comment(1) | TrackBack(0) | 商取引法

2011年11月23日

事業用賃貸借の中途解約と違約金

 期間20年,賃料月50万円でオフィスビルを借りたとしよう。
 その場合,中途解約をするには,残期間分の賃料を違約金として支払わなくてはならないと契約書に定められている場合も多い。
 すると,10年で解約し明け渡したとしても,
 50万×12か月×10年=6000万円
を支払わなければならなくなる。

 これは公平だろうか。
 明け渡した後,貸主がすぐに別の借主をみつければ,貸主は,そこから賃料50万円をもらえるようになり,賃料の二重取りができる。

 その問題を扱った東京地方裁判所平成8年8月22日の判決の事案では,
 貸主は,残期間3年2か月分の賃料額の違約金の支払いを求め,
 借主は「高すぎて不公平だ!」と主張し争った。
 最終的に裁判所は,「3年2か月分の違約金はあまりに高額すぎて,公序良俗に違反する」として,賃料1年分だけの違約金の支払を命じた(それでも1900万円だが…)。

 結構,良くありそうな問題で,自分も同じような争いにかかわったことがある。ところが,裁判例が少なくて,どうなるかよく分からない。

 ただ,上記裁判における賃料1年分の違約金というのも相当の金額である。
 借りる側としては,ともかく,賃貸借契約を結ぶ際には,中途解約時の違約金に注意である。

 経営が悪化して中途解約をしようとしても違約金が高くできず,最後は,会社も倒産…。そんなこともある。
 くれぐれも注意したいものである。


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posted by 内田清隆 at 14:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2011年10月31日

返事をしないと契約成立!?―商法509条

「・・・100万円をお支払いください。ご返事をいただけない場合には,申入れを承諾したものとみなしますのでご了承ください。」と脅しのような文書が突然送られてきたとしよう。

はたして,返事をしない場合には,承諾したものとみなされてしまうのであろうか。
答えは,もちろんNOである。
「返事をしないと承諾したとして扱われる」そんな横暴は通らないのが法律である。

ところが,これには,大きな例外がある。
それが商法509条である。
商法509条によると会社や事業者は,普段から取引がある者から契約の申込みを受けたときには,返事をしないと承諾したものになってしまうのである。

普段から取引がある者からの申し込みなのであるからすぐに返事ができるし,商売人は忙しいのだから申込者もすぐに回答が来ると期待するのが当然であるからなどと説明される。
結構恐ろしい規定である。

商売をする以上は,きちんとどんなことにも返事をすることが重要ということであろう。
そういえば,弁護士も事件の依頼の申し出を断るときは速やかに回答しないといけないと規定されている。

「断る返事」をするときこそ,迅速にしなければいけないという心掛けが重要なようである。


(参考)商法509条 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。2 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。


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posted by 内田清隆 at 19:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2011年10月21日

売買代金・請負代金の時効は2年ー民法173条

 先日,ある会社に対して数百万円の債権を持っている方が相談に来られた。
 普通であれば,間違いなく回収できそうではあったのだが,残念ながら1か月前に時効になっていた。
 時効制度は,何とも恐ろしい。
 
 商事債権の時効は一般には5年であるが,この例外については注意が必要である。

 特に注意が必要なのが,売買代金や請負代金は2年で時効になる場合があるということである。
 少し,金額の事でもめていれば,2年は割とすぐである。

民法173条は
 「卸売商人および小売商人が売却した・・商品の代価に係る債権」
 「注文を受けて物を制作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権」

の時効は2年と定めている。

 上記に当たる売買代金や請負代金等は2年間の間に支払ってもらうか訴訟手続きなどで時効中断させないと,消滅時効により,支払ってもらう権利がなくなってしまうのだ。

 2年はあまりに短い。そこで,この法律は,日常的な小額な代金は早期迅速に決済させようとする趣旨であり,会社同士の多額な取引には適用がないとする考えもある。
 そのような考えを受けて,近代的設備を備えた自動車修理工場の修理代金,印刷業者の印刷代金は,2年では時効消滅しないとする判例(昭和40年7月15日・最高裁,昭和44年10月7日・最高裁)もある。

 しかし,裁判例を見ていたら,業者同士の2億円以上の債権であっても,この条文により2年で消滅時効にかかってしまっている例(平成4年78月30日・東京地裁)もあった。
 2億円が時効で消滅してしまうのは何とも痛い。

 「売買代金,請負代金は2年で時効になる!」と思っていたほうが安心だ。


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posted by 内田清隆 at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2011年08月09日

取引先にケーキを買わせたら2億円の罰金!?

 平成22年1月に独禁法が改正され,「優越的地位の乱用」,つまり強い立場を利用して取引先に無理をやらせると課徴金の支払が命じられることになった。

 法律改正後,初めてのケースの課徴金は,何と2億円以上!

 公正取引委員会は,6月22日「マルナカ」というスーパーに2億2216万円の課徴金納付を命じたのだ。

 マルナカのしていたことは,商品納入業者に対して,
@ 新規開店にわたり商品の移動・陳列を無償で手伝わせた
A 主催の将棋大会やテニス大会に高額の協賛金を提供をさせた
B 季節が過ぎて割引販売した商品の仕入れ価格を一方的に減額させていた
C クリスマスケーキをノルマを決めて購入させた
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/11.june/110622marunaka.pdf
などというものである。

 確かに,優越的地位の乱用ではあろうが,現実問題,よく目にする行為である。それが,2億円という高額の課徴金の対象になるとは・・・。
 しかも,法律が改正された直後であったため,2億円で済んだだけで,本当ならば10億円を超える高額の課徴金が科される可能性もあったというのであるから驚きだ。
 「マルナカ」は,大きなスーパーではない。中小企業を一発で潰すような課徴金が科される可能性があるということだ。

 公正取引委員会は優越的地位の乱用に対して,厳しい姿勢で臨むことを公言しているし,実際に,相当に調査などに力を入れているようだ。
 優越的地位を乱用されている会社としては強力な武器を手に入れたといえるし,一方,乱用をしているといわれる恐れのある会社では,厳しいコンプライアンス体制の確立が要求されているといえよう。

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posted by 内田清隆 at 15:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2011年07月10日

商法526条の限界

 商売で物を買った場合には,商品受領後すぐに品質等に問題(瑕疵)がないかを検査しないといけない。
 そして,品質等に問題があった場合には,「直ちに」クレームを述べないと,後からでは,クレームを述べる権利,つまり損害賠償や代金の減額を求める権利はなくなってしまう(商法526条)。
参照 http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/38984762.html

 もっとも,これは契約によって,排除できる条項である。
 「商法526条は適用しない」という特約を契約で結んだ場合には,商品受領後,直ちに検査してクレームを述べなくても,損害賠償を受ける権利は失われない。

 東京地裁平成23年1月20日判決の事案は,土地を売買して1年半たった後に,調査により土壌汚染が発見され,土地の買主が売主に約1576万の損害賠償を求めたという事案である。
 土地の売主は,「買主が,土地の引渡しを受けた後にすぐに土壌汚染の調査をしなかったのだから,商法526条により,損害賠償請求は認められない」と主張した。
 最終的に裁判所は,「本土地引渡後といえども・土壌汚染等が発見され・た場合は,売主の責任と負担において速やかに対処しなければならない」という特約を商法526条を排除する趣旨であると解釈して,土地の売主に損害賠償を命じた。

 結構微妙な事案であったと思う。
 上記特約が商法526条を排除する趣旨であると言いきれるかは疑問の余地もある。

 いずれにしても商人間の契約において,商法526条を適用するのかしないのかを明確に定めておくことが紛争防止のために重要だ。


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posted by 内田清隆 at 11:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2010年10月26日

「常識」も「契約」になる?−最高裁平成22年10月14日

 契約書を結ばなくても,口頭でも契約は有効だ。
 しかし,平成22年10月14日の最高裁判決は,さらに一歩先をいく。
 契約書の条項に反した内容が,口頭での合意すらなくても,一般常識から契約の内容になるとしたのだ。

 その事件では,注文者が元請業者へ工事代金を支払うことを条件に元請業者が下請業者に工事代金を支払うという約束が書面においてなされていた。口頭でも,そのような話があったようだ。

 ところが最高裁は,
「下請負人が,自らは現実に仕事を完成させ,引渡しを完了したにもかかわらず,自らに対する注文者である請負人が注文者から請負代金の支払を受けられない場合には,自らも請負代金の支払が受けられないなどという合意をすることは,通常は想定し難い」
「したがって・・・当事者の意思を合理的に解釈すれば・・・(元請業者が)支払を受ける見込みがなくなったときは,その時点で本件代金の支払期限が到来することが合意されたものと解するのが相当である。」

と判示した。

 要するに,「注文者が元請に支払いをしない場合には工事代金はいらないよ!」と思う下請業者はいないのが常識だ。だから,書面上はそのような合意がされていても,「元請から注文者に代金が払われないことがはっきりしたときには,元請が下請に代金を払う」ということが,契約書にも口頭にも出てこなくても契約の内容になるとしたのだ。

 まったく常識的で妥当な判断ではある。
 しかし,「法律的にはどうなの?」という気がしないでもない。
 「常識」を共有し,強い信頼関係があるのであれば契約書を作る必要はない。契約書を作るのは,お互いの「常識」が同じであるという保証はないからだ。
 だとすれば,裁判所は,「常識」よりも「契約書」を重視すべきなのではないだろうか?
 日本の裁判所は,かなり常識を重視する。しかし,それは,日本人が「日本人としての常識を共有している」という幻想を持っているからではないだろうか?

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2010年10月22日

詐欺の手口を知れ!その6−「「絶対に間違いない」は間違いなく間違い?」

 「断定的判断の提供」を消費者相手の営業トークすることは法律で禁止されるようになった。
 「絶対もうかる」「間違いない話だ」「100パーセント保証する」といった「断定的判断」を消費者と契約を結ぶ際にした場合には,契約が結ばれたとしても消費者はその契約をいつでも取り消すことができる(消費者契約法4条)。

 わざわざこのようなことが法律で決められるほど,人間は,断定的判断に弱い。
 自信満々に,「間違いない」「100パーセント確かだ」と言い続けられると,最初は疑っていても,だんだんと信用してしまう,それが人間のさがなのである。

 しかし,商売人同士の商取引の世界では,消費者契約法は適用されない。
 だから,商売人同士のトークでは断定的判断の提供は禁止されない。そのため,「断定的判断」を提供されて,「だまされた」としても,一般消費者とは異なり,契約を取り消すことはできず,だまされた方が悪いとなるのが原則だ。

 「俺を信じてくれ,絶対間違いない話だ!」という話が間違いであったということで,裁判になるケースは非常に多い。
 世の中に間違いない話はない。にもかかわらず,「間違いない」を強調する人間を信じてよいのか,よく考えるべきだろう。

 「絶対」や「間違いない」という言葉に人間はだまされやすい。そこをつくのが詐欺師の常とう手段であることを忘れないことだ。

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2010年10月20日

詐欺の手口を知れ!その5−「愛しているのはお前だけ」

 人間だれしも「選ばれたい」「認められたい」「特別な存在になりたい」といった願望を持っている。
 「愛しているのはお前だけ」と言ってだますのは結婚詐欺師だけではない。商売の世界でも,人をだますときにまず使われるのは,相手方を「特別な存在」として扱うことだ。

 典型的なのが「ここだけの話で誰にも言わないでほしい」という言葉である。
 特別に信頼できる自分だけにしてくれる秘密の話。人間は,そのような話にくいつくようにできている。
 詐欺師が「誰にも言わないでほしい」とよく言う理由は,相手方が「特別な存在」であることを示すだけではない。詐欺師が恐れるのは人と相談され冷静になられるということである。そして「誰にも言わないでほしい」ということにより,人と相談されることも防止でき,効果的にだませるというわけだ。

「先方がどうしても○○さんにお願いしたいといっているんですよ!」
「これはまだみんなには言えない話なんだけど,○○さんだから教えるけど・・・」
などなど,詐欺師は,あの手この手でだます相手を特別な存在にしようとしてくる。

 「選ばれた!」「認められた!」と思って,うまい話しに飛びつかないようにしたいものだ。

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2010年10月18日

詐欺の手口を知れ!その4−「リーマンショックの思想革命でバーツ高騰!?」

 石川県産業展示館で十数人の前でその講演は行われた。
 「リーマンショックにより引き起こされた思想革命でタイの通貨であるバーツが高騰する」と自信満々に語る講演者に皆が引き込まれ,最終的には,「これは早くしないと」と多くの聴衆がバーツへの投資を決意した。

 少しデフォルメしているが,そんな話が実際にあった。
 講演を聞いて,バーツが上がると信じ込まされたA氏と話をした。
 「思想革命って何なの?」,「思想革命とバーツに何の関係があるの?」などと質問をすると,A氏は答えられない。
 そのうちに,A氏も「あれ?どういう話だっけ?つじつまが合わないなあ,おかしいなあ」といいだす始末だった。

 ここに詐欺のポイントがある。
 詐欺師の言うことは「訳が分からない」ものなのである。
 完璧なウソを人間はつき続けられない。だから詐欺師の言うことはどうがんばっても「訳の分からない」「つじつまが合わない」ものになってしまうのだ。
 
 にもかかわらず,人間は,簡単に詐欺師の言うことを信じる。人間は,詐欺をしない多くの人に照準を合わせて生活をしている。そのため,人間は,つじつまが合わない話をされても,その人間が信用できることを前提に,頭の中でつじつまをあわせるようにできているのだ。

 詐欺師の話は必ず「訳の分からない」「つじつまが合わない」部分がある。
 まず,そのことを忘れないことだ。
 
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2010年10月07日

詐欺の手口を知れ!その3 「秋限定のひやおろし」

 先日デパートの酒売り場で「秋限定 ひやおろし」と書かれた日本酒が売られているのを見つけた。
 店員から
「今しか味わえないおいしいお酒ですよ」
と言われ,心を揺さぶられた。
 さらに店員がダメを押してきた。
「ここにある在庫が切れたら終了ですよ」と。
 どうも残り3本で終了のようだ。
 次の瞬間には,誘惑に負けもうレジへと向かっていた。
 
「季節限定」
「今だけしか手に入らない」
「最後のチャンス」

 人間はこのような「チャンスを今この瞬間に限定する言葉」に悲しいほど弱くできているのだ。
 
 もちろん,詐欺師もこの言葉を利用する。むしろ,この言葉を利用しない詐欺師の方が珍しい。
 というのも,詐欺師の話は冷静になればおかしな話ばかりであるため,詐欺師が恐れるのは,まず冷静になられることなのである。
 冷静な友人に相談されたら,「そんな話は怪しい」と言われるに決まっている。そのため,詐欺師がどうしても避けたいのは誰かと相談して決められることである。
 だからこそ,詐欺師は,「今決めないとだめ!」と,すぐに決断を迫るわけだ。

「今日中に決めないとこの話はなくなる」
「今すぐ,300万だけでも入金しないと,別の取引先に話を取られる」

 と,詐欺師は,「チャンスを今この瞬間に限定する言葉」を繰り返し述べ,冷静な判断能力を奪おうとするのだ。

 優秀な経営者にはスピードがある。
 そのためであろうか,優秀な経営者こそ,迅速に決断をして,このような詐欺師にだまされたりするのである。

 @「チャンスを今この瞬間に限定する言葉」を詐欺師は必ず用いることを頭に入れ
 A重大な決断は一晩考えてからくだすor誰かと相談してからくだす

 そんな防衛策が重要ではないかと思う。

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posted by 内田清隆 at 13:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2010年10月04日

詐欺の手口を知れ!その2「クアラルンプール大学の教授」

 「自分を大きく見せる」。これは詐欺師の基本技術だ。

 学生時代,マレーシアを旅行中,クチンという街のバス停で,ひげを生やした中年の男に片言の英語で突然話かけられた。
 聞くと,その男は,クアラルンプール大学で経済学を教えているとのことであった。
 そして,「ある金持ちの家でトランプのカジノが行われている。二人で組めば絶対に勝てる,やりにいかないか」と誘われた。

 文字にすると,いかにも怪しい話である。
 ところが,私は,「マレーシア語だけでなく英語もできる」「クアラルンプール大学の先生である」ということで,すっかり信用できる人と思い込んでしまっていた。
 

 結局は断ったのだが,実に危ないところであった。
 その日の夜,安宿で相部屋となった日本人から,同じような話を信用してついていったら何十万もだまし取られたという話を聞いた。


 商取引の世界でも同じように学歴などを使う詐欺をよく目にする。
 「東京大学の○○教授の新たな発明」とか
 「京都大学で法律を勉強したので法律の抜け穴を知っている」
とか言ってだますパターンだ。

 「上場企業の○○社からも発注を得ている」
 「あの有名な○○社の○○社長と先日ゴルフに行った」
と有名な会社と取引があるといってだます詐欺師も少なくない。

 そういえば以前に多くの芸能人が「有栖川宮」と勝手に皇族になりきった人物にだまされるという事件があった。
 「うちの親は○○の会長で・・」「先祖が○○で・・・」
 などと,今でも家柄でだます詐欺師も多い。

 「高級車に乗っている」「高級な時計を身につけている」
など身なりでだますのも典型的な詐欺師のやり口である。

 いずれにせよ,「自分を大きく見せる」人には注意が必要だ。
 大きな人は,自分を誇大化させたりしないのだから。

 冷静になればクアラルンプール大学の教授がバス停で見知らぬ日本人をカジノに誘うはずもない。
 詐欺とは,冷静になれば「なぜだまされる?」と誰もが思う話ばかりなのだ。
 しかし,次回説明する「急がせる」テクニックなど、さまざまなテクニックとあわせて使うことで,人は簡単にだまされるのだ。

 「自分を大きく見せる話」が出たら,それが典型的な詐欺師の手口であることを頭の片隅にでもおいておくことが重要だと思う。

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2010年09月28日

詐欺の手口を知れ!その1 序

 詐欺にかかった場合ほど債権回収が難しい話はない。

 詐欺をした者は,将来的に「だましたな!金返せ!」と言われるだろうと準備している。だから,受け取ったお金は,すぐに隠してしまう。
 振込め詐欺の業者は,口座をころころと変える。そして,口座から下ろされたお金がどこに消えるのかを追求するのは極めて困難だ。
 しかも,詐欺師は,行方をくらます場合も少なくない。相手方の資産も分からず,住所も分からなければ,裁判で勝っても,債権回収は不可能だ。
 
 だからこそ,まず,詐欺の手口を知り,詐欺にあわないことが重要だ。
 そうすれば,詐欺をした者からの債権回収などという難しいことを考える必要もないというわけだ。

 取り込み詐欺師の弁護や振込め詐欺師の弁護を国選弁護事件としてすることもある。 
 また,詐欺師に対する損害賠償請求も何度もしてきた。

 そのうちに,「どの詐欺師もみんな一緒だなあ」と思うようになってきている。
 それもそのはず,人をだます方法は万国共通であり一つのテクニックとして確立されているのだ。
 そのテクニック,パターンを知ることで,だまされることは相当に避けれるだろう。

 文字にすると「そんな単純な話にだまされるほど俺は馬鹿じゃないよ!」と思う場合も多い。
 しかし,なめてはいけない。詐欺師はだますプロなのである。
 弁護士が詐欺師にだまされ腹を立てているのを目撃したこともある。
 「自分は頭が良くてだまされない」と思っている人こそだまされるというのはうそではない。
 
 表情,言い回し,身振り手振り,そんなもので,人は簡単にだまされてしまう。そのように人間はできているのだと思う。
 
 そう思って,決して油断しないことが重要だ。

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2010年09月13日

「議事録の作成」で会社を守れ!

 以前のブログにも書いたが,裁判の多くで争いになることは「言った」か「言っていない」かという問題である。
 そのような争いを避けるためには,きちんとした契約書を作成すればよい。しかし,すべての内容を契約書に盛り込むことは大変だし,不可能な場合もある。
 そこで役立つのが,「議事録」である。
 打合せで決まった内容を毎回,議事録としてまとめて,相手方に確認してもらい,サインをもらっておくのだ。
 その議事録作成をこまめにすれば,言ったか言わないかという不毛な争いの多くを避けることができるであろう。

 「いちいち議事録を作成するのは面倒だ」と思われるかもしれない。
 しかし,議事録はいざ裁判になったときに役立つだけではない。
 打合せ内容をまとめることにより,仕事を間違いなく,効率的に進めることができるようになる。
 何より,議事録を作成していくと,相手方と認識の違いが多数あることに気付かされるであろう。
 この認識の違いこそが裁判の源であり,トラブル発生の原因なのだ。
 面倒でも議事録をこまめに作成し,相手方との認識の違いをなくしておくことは,何よりも相手方との信頼関係の確立に役に立つ。そして,それにより,細かなトラブル発生を防ぐことができるのだ。

 個人対個人ならば仕方がない。
 しかし,企業対企業の争いにおいて「言った」「言わない」という非効率的な争いは,できる限り避けるべきであろう。

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2010年08月18日

「担当者のサイン」が訴訟から身を守る

 「担当者からサインをもらう」ことは非常に有効だ。

 8割以上の裁判で争いになっていること,それは要するに「言った言わない」の問題だ。
 
 「言った言わない」で争いにならないようにするためにきちんとした契約書を作っておけばいい。
 教科書的には,その通りだ。しかし,きちんとした契約書を作成するのは面倒である。
 また,契約書となると,「社長の決裁がいる」「本部の承認がいる」と言われ,無駄に時間がかかる場合も多い。しかも,場合によっては,承認がおりないということにもなりかねない。
 また,建築請負,プログラム製作,広告作成など最初の契約時点では完成物が確定していない場合も多い。
 そのような場合には,最初の時点の契約書に,すべてを盛り込むことは,そもそも不可能だ。

 そんなときに役立つのが,担当者のサイン入り書面だ。
 どんな書面でもいい,メモ用紙の裏に手書きであってもいい。ともかく担当者からサインをもらっておくことは非常に効果的なのだ。
 そして,それがあれば
 「そんな仕様変更は指示していない」
 「これをやってもらうことは最初からの約束で,追加して伝えたものではない」
 「この分は,無料でサービスすると約束した」
などと後になって「言った言わない」でもめることを防止しておくことができる。

 先日,外資系のコンサルティング会社に勤めていた方と話をする機会を得たが,訴訟社会で育った外資系の会社の人間は,「証拠を残す」という意気込み,「担当者からのサインでも絶対に取り付ける」という意気込みが全然違うという話だった。
 日本もこれから訴訟社会化は進むだろう。
 そのようなときに「言った言わない」という不毛な議論を避けるために担当者からどんな書面でもいいからサインをもらっておくことは非常に効力があるのだ。

 「契約書じゃなくて,手書きの書面にサインをしてもらっても効力があるの?」と思われるかもしれない。
 効力は非常にある。正式な契約書以上にある場合さえある。
 契約書はきちんと読まれない場合もある。しかし,むしろ簡単に作られた書面こそ,「真意」が記載されていると裁判官が考える場合も多いからだ。

 逆にいえば,発注をする担当者サイドとしては,簡単な書面であっても,安易にサインをしないよう気をつけておく必要があるだろう。

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2010年08月04日

下請法の利用方法A実践編−申告・ADR・訴訟

 下請法は,利用方法に限界がある法律ではあるが,親事業者にとって恐怖になる法律でもある。
 それを考えると,下請法とは,まず第一に,交渉で「下請法違反で訴えるぞ!」と暗に伝えるという伝家の宝刀として利用されるべき法律であろう。
 しかし,もちろん下請法は,伝家の宝刀としてしか利用できないというものではない。

取引を継続する場合
 下請法に限界がある理由は,今後も取引を継続をしたい親事業者に対しては,なかなか文句が言えないためだ。
 しかし,下請法違反の申告は匿名で行うこともできるし,匿名を希望すれば公正取引委員会は申告した下請事業者が誰であるか親事業者に分からないように手続きを進めてくれる。
 そこで,明らかな下請法違反があるが,親事業者にはどうしても文句を言えないという場合には,匿名の申告が有効になる場合がある。
 
 匿名で行政を動かすのは容易ではない。
 しかし,行政がすぐに動くことが期待できる場合−下請法違反が明らかな証拠がそろっており,それによる実損害額が相当額に及ぶ場合ーであれば匿名の申告も有効になる。

取引を継続しない場合
 今後,親事業者と取引を行う予定がないのであれば,親事業者のきげんをうかがう必要はない。下請法の存分な利用が可能だ。
 主な利用方法は3つ,公正取引委員会への申告,下請法ADRの活用,訴訟手続きでの利用である。

公取への申告
 取引を継続しない場合であれば,公正取引委員会への申告もしやすくなる。
 特に,下請代金の不当減額,下請代金の不当な支払拒絶などの場合には,公正取引委員会は,積極的に親事業者に行政指導を行う。
 一方で,親事業者者としては処分を受けないためにあるいは軽くするために,自主的に下請代金を支払うという場合も多い。
 申告により親事業者が厳しい処分を受けたとしても下請事業者としては意味がない。しかし,申告をするだけで,親事業者が拒絶していた下請代金を支払うことになれば,これほど意味のある手続きもない。

ADR 
 中小企業庁の委託事業として「下請かけこみ寺」では,下請法ADRと呼ばれる下請法違反に関する調停手続きを主催している。   
 http://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/pdf/tebiki.pdf
 要するに下請法違反については公機関における話合いができる環境が整備されているわけだ。

 調停という話合い手続には,間に入ってくれる人間次第で使える手続きにも全然使えない手続きにもなりうるというデメリットはあるであろう。
 また,公正取引委員会への申告とは異なり匿名ではできず,相手方に身分を隠して行うことはできないというデメリットもある。

 しかし,
@訴訟手続きと異なり非公開で迅速に行われる
A十分な証拠がなかったり言い分が対立していたりして公正取引委員会が動くことが期待できない場合でも利用できる
というメリットがある。
 ケースバイケースだが,ADRという公的な話合いの手続きも有効である場合も少なくないだろう。

訴訟手続き
 下請法違反が問題となる事件では,勝訴すれば,遅延利息は,年14.6パーセントになる。
 訴訟は,被告の対応により著しく長期化する場合もあるが,2年も訴訟をしていると利息だけ30パーセント近くになる。
 これが親事業者に与えるプレッシャーは大きいだろう。

 遅延利息以外について,あまり下請法違反の主張は,訴訟においてされてこなかった。
 というのも,例えば,不当な下請代金の支払拒絶や不当な受領拒否などは,下請法がなくても民法上も当然に不当な行為であるため,あえて民法以外に下請法を持ち出す意味がなかったのである。
 しかしながら,これからは訴訟においても,下請法はもっと活用できると思っている。それこそが我々弁護士の腕の見せ所であろう。

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posted by 内田清隆 at 07:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2010年07月28日

下請法の利用方法@−「伝家の宝刀」

 下請法には限界があり,下請事業者にとって,使いやすいものではない。
 しかし,親事業者にとって,下請法は恐怖になるものである。

 下請事業者としては,この点を認識して,下請法違反を「伝家の宝刀」として利用すれば,交渉で下請法を大きな武器とすることは可能である。

 下請事業者としては,親事業者に対して,強硬な態度をとることができる場合は少ない。
 また,親事業者を下請法違反で申告することにより親事業者の経営が悪化してしまえば,下請事業者も大きな損失を被る場合が多いだろう。
 下請法違反という「伝家の宝刀」は安易に抜いてしまってはだめなのである。抜くぞ抜くぞとちらつかせて交渉すべきだ。

 例えば,下請代金を支払うという段階になって急に親事業者が下請事業者に落ち度があったと難癖をつけ,下請代金を1000万円減額しようとしてきた場合を考えよう。

 「不当減額は下請法違反である」と真正面から主張しても,親事業者は,減額が正当であるとの主張を続け,話合いは平行線で終ってしまう。
 弱い立場にある下請事業者としては,結局は折れてしまう場合も少なくはないだろう。

 しかし,ここで上手に伝家の宝刀を使うのである。

「うちの顧問弁護士にもちょっと聞いてみたんですけど,下請法って法律があって,本当は,いつも下請代金の額や支払期日を具体的に書いた書面を発行しなきゃいけないらしいじゃないですか。でも,私らはそんな書面もらったことないんですよ。
 しかも下請法では,引渡しを受けた日から60日以内に下請代金を払わないといけないことになっているそうですが,今回はもう3か月もたっているんですよ。
 別に私らもきちんと今回の代金をもらえるなら法律違反だとうるさく言うつもりもないですけど,そんな法律違反をされて,しかも1000万円も減額するというのはどうしても納得できませんよ。」


 と,「下請法違反で訴えるぞ!」ということを,はっきり言うのではなく,暗に伝えて交渉をしていくのだ。
 そうすることにより,親事業者を威圧し,下請事業者に対する不当な行為を抑止できる場合も少なくないだろう。

 親事業者と今後も取引を継続していきたいと考える下請事業者にとって下請法は利用しづらい。しかし,そうであっても,下請法は「伝家の宝刀」として利用していきたい法律である。

 もっとも,下請法は伝家の宝刀に過ぎないものでは決してない。「実戦」にも十分に役立つものだ。
 次回は,実戦でどのように下請法が力を発揮するのかを説明したい。
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posted by 内田清隆 at 07:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2010年07月23日

下請法を侮るな〜1億円の支払勧告も!?

 下請法違反の罰金は50万円に過ぎないし,下請事業者が親事業者に反旗をひるがえし公正取引委員会に申告する可能性は少ない。 
 その意味で下請法に限界があることは事実である。
 
 しかし,親事業者としては,下請法を決して侮ってはいけない。
 下請法に違反し,それを申告されてしまえば,厳しい処分を受ける可能性は少なくないのだ。

 下請法に違反すると氏名が公表されてしまう。
 それはそれで厳しい処分だ。
 しかし,それで済むとは限らない。

 公正取引委員会は,下請法違反に対しては,指導や勧告ができるに過ぎない。
 しかし,その指導や監督はときに非常に厳しいものだ。
 公正取引員会の発表によれば,数1000万円は当たり前,ときには何億円という金員を下請事業者に支払うよう勧告しているのだ。
 公正取引委員会の勧告に従わなければ,課徴金の納付を命じられる可能性が高いし(下請法8条・独禁法20条の6),国が違法行為であるとお墨付きをしているにもかかわらず,これを無視すれば,民事上においても賠償請求されることは間違いないであろう。
 その意味で,公正取引委員会の指導・勧告には強い強制力があるのだ。

 もう一つ親事業者として注意が必要なのが下請法違反を国が力を入れて取り締まっているということだ。
 下請法は行政法であり,国が力を入れて取締りをしなければ,法律だけあっても意味はない。
 逆に国が力を入れて取締りをするとなると,強力に意味のある法律になる。
 近年,国の下請法違反の取締り強化には,驚くべきものがある。指導・勧告の数や調査の対象となる会社数ともに急増している。
 この傾向はしばらく続きそうであり,下請法違反をすれば,訴えられる可能性は年々高まっていると思うべきだ。

 うちの下請けは文句を言わないなどと嵩をくくることのできる時代ではないだろう。
 下請法違反をしているということは,下請事業者に弱みを握られているということだ。
 そうなれば,いざ下請事業者と争いになったときに非常に不利な立場となる。
 しかも,争いとならなくても,下請事業者の従業員によるあるいは自己の従業員による内部告発がなされる可能性も今後は高まるばかりであろう。

 下請法違反は世の中に蔓延している割に問題となる例は少ない。
 しかし,いざ問題となれば非常に不利な立場になることを親事業者としては認識しておく必要がある。

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posted by 内田清隆 at 16:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2010年07月17日

下請法は使えるの?−下請法の4つの限界@金沢

 下請法は,すばらしいことをたくさん定めている。
 しかし,その割りに使われてはいないイメージだ。
 
 一番の問題は,
 「そもそも文句が言える状況なら,最初から言ってるよ!」
ということだ。
 下請事業者は,弱い立場で文句が言えないため,親事業者の商品を買いたくもなくても買わされたり,協力金等の不明確な理由による支払をさせられたりしているわけだ。
 「それは,下請法違反ですよ!」と言われたところで,文句が言えるようになるはずもない。文句が言える状態なら,最初から,親事業者の商品をいやいや購入したりはしないはずである。

 もう一つの問題は,罰則の軽さである。
 下請法違反に対する罰則は,最大罰金50万円である。下請法違反で大きな利益を得ても,罰金は50万円に過ぎない。これでは下請法違反を止めさせる効果があるかは疑わしい。
 下請法に違反すると,罰金だけでなく,氏名が公表されるという処分を受ける場合もある。しかし,これも社会的信用の大きい著名な大企業であれば,抑止効果は大きいが,さほど有名でもない企業であると,どれだけ効果があるかは疑わしいところだ。

 金沢市の弁護士として感じるもう一つの大きな問題は,距離の問題だ。
 下請法違反の申告は,公正取引委員会にするのだが,その窓口は金沢市にはない。窓口のある名古屋に申告をしなければいけないのであり,距離の問題は大きい。
 もちろん郵送ですることも可能なのだが,役所を動かすには熱意が必要だ。何度も足を運んで説得しなければ,なかなか役所は動かないものだが,そういったことをするには,金沢は場所的に相当に不利だ。

 さらに問題がある。下請けが一番広く利用されている業界は建設業界であろう。ところが,下請法は建設業界には適用がないのである。
 同じような規定が建設業法にあるから問題がないといえば問題はない。しかし下請法の規制と建設業法の規制は微妙に違いがあり,混乱を生じさせている。
 あえて別の法律で規制する必要はないのだが,縦割り行政の弊害によりおかしなことになってしまっているのだ。


 結局,下請法違反はそんなに心配することないの?下請法は使えないの?と思われたかもしれない。
 確かに,下請法には大きな限界はある。
 しかし,決して無視していいものでも使えないものでもない。そのあたりは次回に説明しよう。
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posted by 内田清隆 at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2010年07月15日

下請法ってどんな法律?

 下請法は,要するに下請けいじめを禁止する法律である。
 
 本来,自由競争社会では,どのような取引をしても自由である。しかし,下請事業者が弱い立場であることを利用して,それにつけこむような取引は,自由競争社会であっても許されない。
 そのような取引は,「不公正な取引」として独占禁止法が一般に禁止している。その中でも,特に親事業者の下請事業者に対する弱いものいじめにつながる不公正な取引を禁止するのが下請法である。

 下請法に違反すると,行政処分の対象となり,氏名公表,罰金,勧告・警告を受ける可能性が出てくる。
 もちろん,民事上の違法行為となる可能性もある。
 以下の事例を見ると,氏名が公表されている会社には有名な会社も多く,親事業者となる会社にとっては注意が必要であるし,下請けをする会社は覚えておき,いざというときに使いたい法律である。
 http://www.jftc.go.jp/pressrelease/shitaukejiken.html


 まず下請法は
 ・ 発注書面の交付・保存(口頭での発注の禁止)
 ・ 受領後60日以内の代金支払
  (例えば,月末締め,翌々月末支払の禁止)
 などを親事業者に義務付ける。

 また,一般的に契約違反となる行為であるが
 @ 受領拒否 (注文した物品等の受領を拒むこと)
 A 返品    (受け取った物を返品すること)
 B 減額    (あらかじめ定めた下請代金を減額すること)
 C 支払遅延 (下請代金を支払期日までに支払わないこと)
 D 給付内容変更  
  (注文内容を変更したり,受領後にやり直しをさせること)
 などの行為を親事業者がすることを禁止する。
 圧倒的に多く問題とされているのは,不当な減額である。
 振込手数料や端数を引いて代金を支払う,出精金,協力金など良く分からない名目で一定額を引いて代金を支払う行為などは不当な減額として下請法違反になる。

 また,下請けいじめの禁止として,
 @ 買叩き
 (通常と比較し著しく低い下請代金を定めること)
 A 購入・利用強制
 (特定の商品を強制的に買わせたり利用させたりすること)
 B 利益提供の要請
 (下請事業者に不当に金銭,労務の提供等をさせること)
 を親事業者はすることができない。
 例えば,各支店ごとにノルマを設定し下請事業者にラーメンを買わせた例などが,下請法違反として公表されている。

 ほかにも下請法は,下請けいじめにつながるような多数の行為を禁止している。 
 このように下請法は,下請事業者にとって,非常に心強い味方になる法律だ。
 しかし,いくら下請けいじめを法律が禁止していてもそれだけでは絵に描いた餅である。 
 問題となるのはこの法律をどう使うのか,どう使えるのかだ。
 それについて次回から説明していこう。
  
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posted by 内田清隆 at 08:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法