2015年11月06日

江戸時代の破産 〜「あさが来た」の山王寺屋

NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」でヒロインの姉が嫁いだ両替商は倒産し,姉は悲劇的な生活に陥った。
そのシーンを見ていて,何やらいやなものを感じた。
借りたものを返すのは人の義理ではあるが,どれだけ頑張っても返せなくなるときもある。そのときのために破産制度がある。破産をすれば,ぜいたくな暮らしはできなくなるとしても,普通の日常生活は送れる。
にもかかわらず, 世間で余りに破産を悲劇的に描くため,破産を恐れて自殺する者がいなくならないのでは・・・などと感じた。

江戸時代においても,破産(当時の言葉でいう「分散」)は,実際のところさほど悲劇的なものではなかった。

明治初頭に作られた全国民事慣例類集の485頁以下に,各地の分散した者の取り扱いが書いてある。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/786945

なかには,
「表町に住むことを禁ずる」
「分散人は町村にて賤視し同等の交際をなさざる慣習なり」
「分散人は大に権利の劣る者としてその生涯は人の長たる職には選任さられざる」
「大いに権利の劣る者にて集会の席に発言することあたわず。婚姻することなくあるいは縁組せしものも離縁して交際を絶つ」
「多く他国へ出ることなれども,その町内に住居すれば大に権利の劣る者とし,尋常の交際をなさざることなり」
などという厳しい処遇が書かれているものもある。

しかし多数は,
「挽回の方法を付与する」「身代持直しを取り計らう」
「いったん『松前稼』と称し北海道に渡って身代を持ち直し帰る者あり」
「町村の交際において別段権利の劣るなき習慣なり」
「分散せし者も別段権利の劣ることなき例なり」
「分散せし者も別に権利の劣ることなく自ら謙遜して人の風下に立つ習慣があるのみ」
「町方にては・・別段賤視することなし」
とあり,さすがに大手を振っては歩けないにしても,人並みの生活は送ることができていたようである。
時代や場所で取り扱いが異なっており確実なことは言えないが,江戸時代においては破産者に対する制裁は緩やかであり,厳しくても所払いされるに過ぎなかったというのが通説である。

また,日本においては17世紀から,破産者はもっている資産をできる限り処分し破産をすれば,「免責」,すなわち,それ以上の返済をしないでよくなることが通例であった。
イギリス・アメリカが19世紀になって,フランス・ドイツが1990年代になって免責制度を取り入れたことを考えると,異常に早い。
破産は,破産者に罰を与えるためのものではなく,経済的更正のチャンスを与えるためのものであったわけだ。

つまり,江戸時代より,日本は破産者に寛容な社会だったのである。

「破産をすると選挙権を失うのでしょ?」「破産をしたら,周りの者にそのことが分かり,今の場所に住めなくなるのでしょ?」などと質問を受けることが多い。
しかし,弁護士・会計士など限られた職業につけなくなることを除けば,破産者に対する懲罰は存在していない。
失敗しても,再起を図るチャンスが与えられているのである。


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posted by 内田清隆 at 16:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2015年02月08日

財産開示手続の問題点

平成15年の民事執行法改正において,債権者の申立により債務者を法廷に呼び出し,保有する財産を開示させる制度,「財産開示制度」が創設された。

裁判で勝訴しても,相手方が任意に支払わない場合に,相手方の財産がどこにあるのか分からないと差押えすることもできず,判決書も紙切れ同様となってしまう。

それでは,司法手続の意味がないということで,債務者の財産を国家権力を行使して開示させ,金銭債権の強制執行の実効性をあげようとする制度だ。

しかし,ある統計によると開示される割合は3分の1に過ぎない。私自身も相当数財産開示の申立を行ったのだが,実効性には問題があると感じた。というのも罰則は最大で30万円の過料の制裁でしかない。過料の制裁に処してもらい,繰り返し申立を行い「開示しなければ永遠に過料の制裁が繰り返されますよ!」という気迫を見せることで支払を受けたこともある。しかし,財産開示申立にそれなりの弁護士費用もかかった。債権者の経済的利益だけを考えると,プラスになったともいえない状況であった。

同様の手続きについて,フランスでは検察官が金融機関から債務者の財産に関する情報の提供を受けられることになっており,米国やドイツでは債務者が出頭を拒否すると監獄に収監されることになり,財産開示は実効的になされている。

裁判で支払命令がでても現実には支払われないというのであれば,裁判をする意味もない。そのような状況が続けば,司法に対する信頼も揺らいでしまう。そう考えると財産開示手続の実効性の確保は重要な問題だ。

改正について議論はなされているのだが,なかなか前に進まない。
ベストの制度を考えるのは難しいところだが,もう少し実効性を高めることは容易な話だと思う。難しいことを考えずに,まずは変えてみる必要があると思うのだが・・・。


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posted by 内田清隆 at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2013年11月05日

財産開示の効用と限界

「財産開示」制度利用すれば,差押えることができる財産の所在が分からなくても,相手方を裁判所に呼び出し,財産の所在を聞き出すことができる。相手方が嘘を述べた場合には過料の制裁もある。

しかし,その過料の制裁額は,わずか30万円である。ずる賢い相手方であれば,嘘をついて30万円を支払い,差押えを逃れようとするはずである。

しかも,その30万円は,刑事罰としての「罰金」ではなく,過料に過ぎない。刑事罰の罰金であれば,支払をしないと労役場留置といって刑務所に入れられ労働をしなければいけなくなる。しかし,過料の場合は,税金と同じで,支払をしないと財産の差押えを受けるだけである。差押を逃れるために嘘を述べた者に対する罰が差押だけでは意味がないと思われる。

実際に,財産開示期日に嘘をついて差し押さえを逃れて,過料の制裁を受けたものの,それすら踏み倒している者を目にしたこともある。

このような制度では実質がないとして,現在,改正が議論されているわけであるが,もちろん現制度がまったく意味がないわけではない。

裁判所に呼び出され,自分の財産がどこにあるかを言わなければいけないというのは非常に苦痛だ。

しかも,嘘をつくと低額とはいえ罰則があるにもかかわらず,嘘をつくというのは良心がある者にとってはなかなかできるものではない。そのため,実際には財産開示制度を利用すると,任意で支払をする人も少なくないのである。

とはいえ,数百万円であればそのような「良心」に基づく対応も期待できるところであるが,数千万円以上の話となれば,良心も期待できない。

早めの改正を期待したいものである。 


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posted by 内田清隆 at 10:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2013年09月25日

野蛮な動産執行の意義

 売掛金を支払わない相手方の経営する店舗の動産を差し押えし、その店舗にあるものをごっそり搬出したことがある。
 商品だけでなく、商品棚まで搬出したため、すぐにその店舗には、『臨時休業』のはり紙がなされた。
 その様子を見ていた新人事務職員が「なんか野蛮ですね・・・」とぼそりと言ったのが印象的であった。
 確かに、困惑する店員さんたちを無視して営業中の店内から次々と物品を運び出し、急遽閉店に追い込むというのはスマートではない。野蛮なのかもしれない。

 しかし、動産執行の意義は、この野蛮さの中にある。中古品価格が低迷する現在、大型の機械といった特殊なものを除き、動産に高い値段がつくことは少ない。そのため動産を差し押さえても大したお金にならないのが通常だ。

 だが、野蛮な動産執行を行うことで、相手方に対して、いつ持っている物を強制的に奪われるかわからないのだということを理解させ、任意の支払へと向かわせるというのが動産執行の意義というわけである。

 支払を命じる裁判所の判決が無視されることがないようにすべきである。
 そのためには、動産執行はもっと野蛮でもいいのかもしれない。

 とはいえ弁護士とは因果な職業である。


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2013年09月02日

取引先訪問時の現場チェックのポイント

債権回収においては取引先の経営危機の早期発見が重要である。
そのためには取引先を訪問した際に,現場をしっかりとチェックすることが重要だとよく言われる。

ビジネスロージャーナル9月号によると
1事務所,工場が整理されておらず散らかっている
2従業員に元気がない
3倉庫に返品らしき在庫が多数ある
4社員とは思えぬ者がウロウロしている
5芸能人・政治家と撮った写真が所狭しと並んでいる
などが危機のサインとしてあげられていた。
1〜3は分かるが,4・5が面白い。

社員でない者がウロウロしている会社ってどんな会社?と思った方も多いであろうが,先日最終的に倒産した会社で支払方法について話をしてきた方が,「よくわからない人がいて,一応名刺はもらったものの何者だか分からなかった。」と言っていた。同じような話はよく聞く。
不思議なことではあるが,倒産間近となると得体の知れない者が会社をうろつくということはよくあることなのかもしれない。

5は危機のサインなのだろうか?確かに以前,所狭しと芸能人と撮影した写真や芸能人の絵やサイン,芸能人からもらった物などが置かれている会社の破産に関わったことがあったが,破産する会社でよく目にするということもない。ただ,珍しいことをしているだけでも注目すべきだということなのであろう。

いずれにせよ,大切なことは注意力であろう。ぼんやり訪問するのでなく注意深く観察し,取引先の細かな変化を見逃さないことが重要だ。


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2013年01月10日

保証人からは書面をもらえ!  

 「何かあった場合には『俺が個人的に保証をする』と社長が言うので,ある会社にお金を貸した。
 会社には資産がないけれども,社長個人には資産がある。
 その資産を差押えできないか」
という相談を受けたことがある。
 残念ながら,結論からいえばできない。

 「保証」は書面でもらわないと効力がない。
 そのため,いかに社長が「保証する」と言っており,その内容を証拠としてテープで取っていても,保証契約は効力が生じないのである。
 民法446条  保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
        2  保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

 
 ずいぶん前のブログにこんなことを書いたことがある。
 危険サインが出ている業者から担保などを取り付けるのは非常に難しいですが,個人保証を取付け,担保の設定を受けることは強力な債権保全の手段となりえます。
 もちろん親,親族,友人などの個人保証を取り付けることができればそのほうが良いのですが,社長個人であっても,個人保証を取り付けることができれば,それだけ優先的に支払ってもらえる可能性が高まります。

 
 間違ってはいないのだが,保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
 個人保証を取り付けるときには,必ず書面でもらうことが重要である。


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2011年06月16日

建設業法と債権回収3

 「私的自治の原則」というものがある。
 会社同士の争い・個人同士の争いは,国は関与しないという原則だ。
 借りた金を返さないのは悪いことである。しかし,国が関与してくれて,その悪い人を捕まえてくれることはないし,強制的に返すよう命令してくれることもない。
  裁判所も国の機関である。私的自治の原則のもと,裁判に勝っても,裁判所がしてくるのは,不当に支払をしない相手の財産を差し押さえる権利を認めてくれるだけである。
 裁判所はそれ以外には何もしてくれない。
 支払をしない相手に支払うよう催促をしてくれたり,財産を隠し持っていないか調べてくれてたりするわけではないのである。

  ところが,前回に説明した通り,建設業では,下請代金が払ってもらえない場合,行政が債権回収に協力してくれる(ことになっている)。
  これを使わない手はない。

 一つの方法は,知事又は地方整備局長あてに建設業法に基づき公正取引員会へ措置請求などを求める申立てをすることだ。
 それにより役所が動けば,実際に措置請求がなされなくても,役所の指導により下請代金が払われる期待は高い。

 もっとも,一般に都道府県は建設業法に基づく申告の対応に熱心ではない。
 しかし,都道府県が動いてくれない場合には,公正取引委員会へ直接に措置請求を申し立てるという方法もある。
 独占禁止法45条2項により,措置請求がなされた場合には公正取引委員会は事件について必要な調査をしなければなあらないと規定されており,申立が放置されることはない。

 なんでもそうだが役所は文書での申立てを嫌がる。
  文書があれば,証拠に残り,放置することは不可能になる。
 そのため,必ず,きちんとした文書で申し立てをするべきであろう。

 しかし,もちろん熱意も必要だ。
 文書を出して,あとは役所に任さればいいなんていう気分でいたら役所は動かない。 
 文書を出したうえで,さらに担当者と面会をして,熱意を伝える,それが役所を動かすためには重要になる。

 そんな制度はたくさんあるが,建設業法による下請代金確保も役に立つにもかかわらず,あまり利用されていない制度だ。
 積極的に利用していきたい。

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2011年04月07日

建設業法と債権回収2

  前回に説明した通り,建設業では,下請代金が払ってもらえない場合,行政が債権回収に協力してくれる。
  実際に行政が協力してくれなかったとしても,法律でそう決まっていることには大きな意味がある。

 多くの建設業者は,多かれ少なかれ,公共工事の受注を受けるなど,行政とのかかわりを持っている。
 そのような建設業者にとって,「行政に通告するぞ!」と警告されること自体がいやなことである。
 実際に,通告してしまっては,逆に開き直られる恐れもある。
 「通告するぞ!」といわば脅かしながら,実際には通告しないで支払ってもらうのが理想である。

  しかも,下請代金の支払いが遅れた場合,遅延利息は年14.6%と非常に高い(建設業法24条の5第4項,建設業法施行規則14条)。
  実際に,これだけの利息を付けて支払ってもらうことは難しいかもしれない。
 しかし,「支払いをしなければ,これだけの利息を付けて支払ってもらいますよ!」と言えば,相手に与えるプレッシャーは小さくはない。

 下請法と同様ではあるが,建設業法も,上手にその規定を利用しながら,債権回収に用いたいものである。

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2011年03月29日

建設業法と債権回収1

 債権回収は,私人の問題であるため,原則として,行政は協力してくれない。
 そのため,取引先が代金を支払わなかったとしても,裁判をするなりして「自分で」何とかするしかない。
 「民事不介入の原則」のもと,債権回収という私人同士の問題には,いかに相手方が不誠実であっても行政は不親切なのである。

 確かに,対等な力関係の企業同士の取引の問題であれば,代金を支払ってもらえなかったとしても「自己責任」とすればよい。
 しかし,明らかに強い立場にある会社が,その立場を利用して弱い会社に代金を支払わないような場合にまで,「自己責任」としては,公正な競争社会は実現できない。

 そこで,建設業法では,強い立場にある元請会社が下請会社に代金を支払わない場合には,一定の場合,債権回収に行政が協力してくれるのである(建設業以外の場合には下請法が同様の規定をおいている)。
 これを使わない手はない。

 行政は,代金を不当に支払わない元請に対して,指導・監督をしてくれることはもちろん,立入調査,発注者への立替払いの勧告,例はほとんどないが最終的には建設業法の許可の取消し課徴金納付の命令までしてくれることになっている。

 最近下請法については,行政が積極的になり活用しやすくなってきたが,建設業法については,行政が消極的で活用しづらい状況が続いている。
 しかし,法律はきちんとある。
 我々弁護士も,これをうまく活用していきたいものである。

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2011年03月04日

第三者から弁済を受ける場合の注意点

 先日述べた注意点以外にも第三者から弁済を受ける場合には注意しなければいけない点がある。 
 それは,民法474条が第三者は「債務者の意思に反して」債務の弁済をすることができないと規定している点だ。
 
 例えば、息子の借金を父親が弁済したいと考えたとしよう。
 しかし,どれだけ望んだとしても,息子が「それは自分が払うから親父は払うな」という意思をもっていれば,父親は法的に有効な弁済をすることができないのである。

 父親が息子の借金を返したいのであれば,借金を返さないでいる息子が反対したって,父親が返済できるようにすべきではないかと思う。

 そんな意味で,民法474条は,変な規定なのだが,民法に書いてあるのだから仕方がない。

 債務者の意思に反した第三者の弁済は無効である。

 問題になることは少なく,通常は気にすることがない。
 しかし,問題になる可能性があるのであれば,第三者から弁済を受けるときは,本来弁済すべき人の意思を確認して,「第三者の弁済に反対しない」という内容の書面を残しておくべきだ。


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2011年02月17日

倒産しそうな企業から債権回収−否認権 

 債権回収の相談で,非常に多いのが
「取引先が明日にでも倒産しそうだ!このままでは,支払が受けられない,どうしよう!」
というものだ。

 結論からいって,倒産しそうな会社から債権回収するのは非常に難しい

 というのも会社が倒産した場合には,すべての債権者に平等に弁済をしなければいけないという公平の原則があるからだ。
 
 1億円の負債を抱えて取引先が破産し,取引先には1000万円の資産しかなかったとしよう。
 その場合,公平の原則からすべての債権者は平等に10%の配当しか受けられない。

 この公平の原則を守るため否認権というものが破産管財人には与えられている。
 1000万円の売掛金をもっていた債権者の一人が破産する直前に取引先からうまく1000万円全額の弁済を受けたとしよう。
 そんな場合には,「しめしめ,うまくいった」と思っていても,破産管財人から否認権を行使され,弁済を受けた金額をいわば全額没収されることになるのだ。
 そしてそのお金は,すべての債権者に平等の割合で分配されることになる。

 否認権を逃れる最善の対策としてはともかく少しでも急ぐことだ。
 破産しそうになるまで待っていないで,一日でも早く回収しなければならない。
 破産する前日に回収しても否認権は間違いなく行使される。
 しかし,破産の兆候があらわれる前であれば否認権は行使されない。
 「破産の兆候があらわれる前というのはいつ?」というのは難しい問題だ。
 しかし,一日でも早く回収していれば,それだけ否認権が行使される可能性が低くなることは間違いない。

 そのためには,日ごろからの債権管理が非常に重要になる。
 「言うは易く行うは難し」であるが,明日にでも倒産しそうという状況になっては,残念ながらたいてい手遅れなのである。
 

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2010年12月23日

保証人から弁済を受ける際の注意点

  民法では,保証人などの第三者が弁済をした場合には,第三者が債権者に代位できると規定されている(弁済による代位)。
  例えば,A社がX社に500万円の売掛金がある場合に,その保証をしていたY社がX社の代わりに250万円を弁済したとしよう。
 その場合,A社がもっていた権利のうち250万円分は自動的にY社に移転することになる。
 そればかりではなく,A社が持っていた担保を,Y社がA社の了解を得ずに実行できることになってしまう。

 これは,いずれもA社の望むところではないだろう。
 A社としては,残りの250万は当然にまず自分に支払ってもらいたいと思うであろうし,ましてや,勝手に担保権を実行されたりしてしまってはたまらない。

 銀行の貸付では,そうならないように,あらかじめ取引継続中は代位権を行使しないという特約が規定されている。
 
 しかし,一般の商取引ではそのような特約がなされていないのが通常であり,問題が発生する場合がある。
 本来支払うべき相手以外,特に保証人から支払いを受けるときには「代位権を行使しない」と一筆をもらうなどの注意が必要である。


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2010年12月14日

債権取立てをやくざに頼む恐ろしさ

前回説明したとおり,債権回収を暴力団員に頼むのは「ダメ,絶対!」である。

そんなことをすれば,法律違反になり,刑罰を受けるかもしれない。
しかし,一番の恐ろしさは,刑罰を受ける可能性ではない。
それは,暴力団員と強い関係ができてしまうことだ。

 暴力団員に頼んで債権はうまく取立てることができるかもしれない。
 それが理由で刑罰を受けることも避けられるかもしれない。
 しかし,暴力団員との関係は必ずできてしまう。それは避けられない。
 
 しかも,強い関係だ。
 あなたは,暴力団員の違法行為の共犯者になってしまうわけだ。
 そのため,それ以降,その暴力団員から頼みごとをされても断れない立場になってしまう。
 それが一番恐ろしいのだ。

 債権取立てを頼んだ後に,暴力団員は,なんやかんやと暴力を背景に「頼みごと」をしてくるだろう。
 そして,それが断れない関係となってしまえば,債権の取立てができても,最後には「骨までしゃぶられてしまう」ことになる。

 近くの友人が言うかもしれない。
 「自分は暴力団員に頼んでうまくいった」
 「ヤクザといっても信頼できる人だから大丈夫だ」
 「暴力団の上の方の人だから強い影響力がある」
 「うまく付き合えば大丈夫だ」・・・,
 そんな甘い話を信じて,暴力団と切るに切れない関係ができてしまい,ひどいことになってしまっている人を何人も見た。

 「債権回収に暴力団員を使ってもいい?」
答えはもちろん

「ダメ,絶対!」


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2010年12月10日

債権取立をやくざに頼むのは違法ですか? 

 「債権回収に暴力団員を使ってもいい?」と相談を受けることは少なくない。
  答えはもちろん,「ダメ,絶対!」である。
 「よく弁護士にそんな質問を・・・」と思うが,弁護士が相談を受けるぐらいだ。実際には,暴力団員を使って債権回収を試みている人は少なくないはずだ。

  そもそも債権回収に暴力団員を使うことは犯罪にもなる。
 弁護士以外の者が債権回収などの法律事務を報酬を得る目的で業とすることは法律で禁止されている。
 そのため,暴力団員にお金を払って債権回収を頼むことは,この法律に違反するとして,2年以下の懲役又は300万円以下の罰金になる可能性がある。

 しかし,暴力団員を使っていけない理由はこれだけではない。
 もっと,恐ろしい理由もあるのだが,それは次回。

【参考】
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)弁護士法第72条 
 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
 ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

(非弁護士との提携等の罪)弁護士法第77条 
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
・・・三 第七十二条の規定に違反した者


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2010年08月11日

債権回収の裏技−私製手形の活用

 債権回収の裏技として, 私製手形の発行という手段がある。

 「手形」というと,銀行に当座預金の口座を作って初めて発行できるというイメージだ。
 しかも,「統一手形用紙」にチェックライターを用いて記入するという厳格なものをイメージする。

 ところが,法律からいえば,手形の作成方法は自由だ。
 銀行と関係することなく,メモ紙に手書きで作ることもできる。
 作成手順は以下の通りである。 
 @ 「約束手形」という名前と「○○円」という金額を書く
 A 「単純な支払約束」 (上記金額をあなたまたはあなたの指図人に支払います)を書く
 B  満期,支払地,受取人,振出地,振出日を書く
 C  振出人の記名捺印をもらう。
 これだけで立派な約束手形の完成である。
 作るのに5分もかからないだろう。
 要するに,これこれのように,すべて手書きで作成すれば,立派に法律上は「手形」のできあがりである。

 この銀行の発行する手形用紙を利用せずに,独自に作成する手形を通称「私製手形」という。
 私製手形の場合には,一般の手形と異なり相手方が支払をしなくても,相手方が「不渡り処分」をうけて,銀行取引が停止されるということにはならない。
 しかし,通常の借用書とは異なり,「手形訴訟」という特別な訴訟手続きで,原則1回だけの書面審理で楽に早く判決を得ることができる。
 そのため,すぐに相手方の財産を差押えることができるようになるのだ。
 
 相手方が「来月には支払う」と言うはするものの信用できないときである。通常の手形の発行を受けられたり,公正証書を作成することができれば一番いい。
 しかし,それができないときには私製手形を作成してもらうというのも,債権回収において覚えておくべき案であろう。


 もっともこの私製手形には色々と問題がある。現在破産手続き中の旧商工ファンド(現SFCG)が,私製手形を借主の中小企業者に発行させ,訴訟を提起しては,強引に取立てをするということが社会問題になった。
 そのため同社の私製手形による手形訴訟は受け付けないという態度を東京地裁はとっており,それを肯定する最高裁の判決もあるようだ。詳しくは
 このように裁判所は,法律からするとおかしいのだが,私製手形については,「手形」として認めない可能性もある。

 しかし,悪徳金融業者との評判の高かった商工ローンが利用した場合ではなく,まっとうな会社が利用した場合であれば私製手形も「手形」として認めてくれる可能性も高いだろう。
 いずれにせよ作成する労力は,借用書であっても私製手形であっても大差はない。
 一方で,私製手形には強い効力が認められる可能性があるのであるから,債権回収目的で私製手形の発行を受けることには一定の意味はあるだろう。

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2010年07月09日

取引先倒産への最強の対応−取引信用保険

  取引信用保険をご存知であろうか?

 この保険に加入しておけば,取引先が倒産してしまい売掛金が回収できなくなっても,保険会社がその損害分を代わりに支払ってくれる。
 非常に心強い保険である。取引先倒産に対する最強の対応といえるであろう。

 取引先が倒産して,多額の売掛金が回収できなくなり,連鎖倒産になったケースを何度も見てきた。
 しかし,取引信用保険に加入してれば,連鎖倒産が防げるのだから,保険会社の回し者ではないが,ぜひ加入すべきだと思う。
 
 昔から取引信用保険は存在したのだが,最近,利用数が増えているのを肌で感じる。
 それなりの規模の破産事件では,その取引先の何社かは,取引信用保険を用いて回収に成功している。
 破産事件で配当率は多くても5%,配当がないときも少なくはない。配当率が3%なら
 1000万円の売掛金があっても 30万円
 5000万円の売掛金があっても150万円
しか回収できない。
 ところが,取引信用保険に入っている会社は,ほぼ全額回収してしまうのであるから,その差は歴然だ。
 担保を取っている銀行以上の回収率になるケースも多い。

 取引信用保険は,以前は,大企業しか利用ができなかった。
 しかしながら,最近では一部の保険会社からは中小企業を対象とした取引信用保険が発売されるようになった。

 また,法人会,商工会議所,業界団体などを通じて中小企業向けの団体取引信用保険に加入できる例も多い。

 ともかく役立つ保険であり,ぜひとも加入を検討すべきだろう。 
 唯一のマイナス点は,この保険が大きく普及すると,弁護士の仕事は大きく減ってしまうということか・・・。
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posted by 内田清隆 at 08:47| Comment(1) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2010年07月06日

取引先倒産!代金未収の商品はどうなる?

取引先が倒産した場合に,売掛金未収の商品を取引先から取り戻すことができるのか?

実践的には,とにかく急いで現地に行って,交渉により取り戻すよう努力すべきである。取引先から商品引揚げの承諾を受けることができれば,引き揚げることに法的な問題はない。
ただし,その場合でも,取引先が承諾したことを明らかにできるよう,承諾した旨の一筆をもらっておくべきであろう。後になって,勝手に盗み出したなどと言われたら大変である。

問題は取引先が承諾しない場合である。無理に引き揚げれば窃盗罪にもなりかねない。

このような場合には,法的手段による回収も可能である。
動産売買の売主は対象となった商品に対し先取特権を有している。
そのため,動産競売を申し立て,その代金から回収することができるのである。
以前は,差押承諾文書の提出等が要求され事実上利用できない制度であったが,現在では取引先の倉庫にあるような場合でも競売を申し立てることができるようになった。

もっとも,売買契約書,注文書,納品書等の先取特権を有することを証明する文書が必要となり,また,商品をきちんと特定する必要があり。実際問題として,利用は困難ではある。
詳しくはhttp://uchida-houritsu.sblo.jp/article/38470166.html

そこで,まずは,そのような権利があることを念頭におきながら,破産申立前であれば代表者又は申立代理人の弁護士,申立後であれば破産管財人に対して,商品の引渡しをするよう交渉して解決をはかるのが現実的であろう。

いずれにせよ,スピードとあきらめない姿勢が非常に重要であり,また,日ごろから取引先の信用状態に留意しておくことが重要なことはうまでもない。
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posted by 内田清隆 at 06:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2010年06月14日

債権者破産−債権回収の最終手段

 債権回収の最終手段,最後の大技,それが債権者による破産の申立てだ。

 破産といえば,「バンザイ」などと呼ばれる自己破産がほとんどだ。
 つまり,多くの場合,債務者自ら両手を挙げてあきらめ,破産手続きは開始される。

 しかし,それとは別に債権者破産というものもある。これは,債権者が種痘となり,営業を続けているものの支払不能に陥っている会社を強制的に破産させる手続きだ。
 「バンザイ」していない会社を破産させる手続きであり,激しい抵抗にあうことも少なくない。
 非常に強力な手段である。


 債権者による破産申立てが認められれば,その会社のすべての財産は,差押えられたのと同様の状況になる。
 さらに,裁判所が選任する破産管財人により,その会社の財産が隠されていないかも,念入りに調査される。
 その上で,全財産が現金化され,債権者への配当に回されるのだ。
 これほど,強力な債権回収手段はない。

 しかしながら,もちろん問題点も大きい。

 第一の問題点は,費用の高さだ。
 裁判所に納める予納金だけでも100万円以上,加えて弁護士費用やその他の経費がかかり,必要費用は多額になる。


 第2の,より重要な問題点が,うまくいく保証がまったくない,むしろ通常うまくいかないということだ。

 隠されている財産を探すといっても,見つからない場合の方が多い。
 しかも,仮に見つかっても,見つけられた財産は,お金に換えられ「すべての」債権者に平等の割合で配当される。
 そのため,5パーセントでも戻ってくれば良い方というのが実態なのだ。

 ある会社が,どれぐらい財産を持っているのか,どれぐらい債務を負担しているのかは,外部からの判断は不可能である。
 そのため,債権者破産はやってみないと,配当があるのか,あるとしてどれぐらいなのかは全く分からないのである。


 多額の費用がかかる上に,成功の保証が全くない,何とも恐ろしい手続きだ。
 そのため,実際に,申立てされる場合の多くは,会社の内部の状況を相当に理解しており,債権の額も大きい銀行による場合がほとんどである。

 しかし,債権回収の最終手段として,債権者破産があるということは,すべての会社が知っておくべきことであろう。

 逆に,債務を支払わないでいると,債権者破産を申立てられる可能性があることも,頭の片隅に入れておきたい。

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posted by 内田清隆 at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2010年06月03日

仮執行とその危険性−最高裁平成22年6月1日

最高裁判所第三小法廷平成22年6月1日 判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100601113248.pdf

 売却した不動産に有害なフッ素が含まれていたという事案であり,売主の買主への約4億6000万円の賠償を認めた控訴審を最高裁がひっくり返した判決だ。


 同裁判で,控訴審で勝訴した買主は,売主に対して「仮執行」を行い,約4億6000万円分の財産を差し押さえ,受けとった。
 
 本来,裁判が続いている場合には,差押えなどの強制執行はできないのが原則である。
 しかし,裁判が何年も続くのを待っていられないときもある。
 そこで,地方裁判所や高等裁判所で一回でも勝訴した者は,後に逆転敗訴した場合に受け取ったものを返すことを条件に,一回でも敗訴した者の財産を差し押さえるなどの強制執行を「仮に」できるようになる場合がある。
 それが「仮執行」だ。
 この裁判の控訴審で勝った買主は,その「仮執行」を行い売主の財産約4億6000万円を差し押さえたというわけだ。

 ところが,最高裁では控訴審の判断がひっくり返されてしまった。
 そのため,最高裁は,買主が仮執行により受け取った約4億6000万円の返還と平成20年11月27日からそれに対する年5%の利息の支払いを買主に命じた。
 
 これは痛い。
 4億6000万円は,裁判で負けた以上返すのは仕方がない。
 問題は利息だ。これだけでも,金額にして約3500万円である。
 いまどき,年5%の利息がつく銀行はないのであり,売主としては,高い利息で買主に4億6000万円を預けていたような結果になった。


 この裁判でも最高裁の判断には,1年半以上もかかっているようである。このように裁判には,どうしても時間がかかるため,仮執行は非常に有力な制度である。
 何しろ,早く現金が入ってくるのだ。
 しかし,リスクもあることをこの裁判が教えてくれる。仮執行をして後でひっくり返されると,多額の利息もつけて返還しなくてはならなくなる。
 金額によっては,非常に痛いことになるわけだ。裁判に逆転で負けた上に,高い利息分も負担することになる。まさに,踏んだり蹴ったりだ。
 弁護士としても注意が必要だ。


 なお,最高裁の判決では,
「売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては,売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべき」

「本件売買契約の当事者間において,それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできず,本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても,そのことは,民法570条にいう瑕疵には当たらないというべきである。」
とされた。

 土地を買った方としては,有害なふっ素が含まれていることを売主が知らなかったとしても,それで莫大な損害を受けた以上,その損害は売主にみてもらいたいと思うのが当然だ。
 しかし,最高裁は,売主が知らなかっただけではなく,売主も買主もふっ素などの有害物質が土地に含まれていないということを売買の前提としていなかった場合には,買主は売主に損害賠償を求めることができないとしたわけだ。

 仮執行の点ではなく,本来はこの判断こそが注目すべき重要な判断である。念のため,紹介しておこう。
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posted by 内田清隆 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理

2010年05月29日

債権回収の手段としての相殺

 ある意味、相殺ほど債権回収手段として間違いないものはない。
 
 銀行からの借入金を返済しないでいると銀行は、まず預金を借入金と相殺して、その分だけでも債権回収にあてる。苦労もなく間違いなく回収できる方法だからだ。
 
 では、一般企業でも相殺を債権回収に用いることはできないだろうか?
 
 一つの方法が反対債権を持つ会社と協力する方法である。
 例えばA社がC社に対する売掛金500万円の回収に苦労しているとしよう。
 そのときにC社に来月500万円を支払わなければならないB社と協力するのだ。
 そして、A社はC社に対する債権を480万円でB社に売り480万円を回収する,その上でB社は,C社と相殺をするのだ。
 B社はこうすれば20万円を得をする。A社は20万円を損したようにも思えるが色々な事情で回収が難しい事情があれば20万円ぐらい安いものだ。

 ほかにも色々と相殺は債権回収に利用できる。しかし,上の方法でもそうだが,相殺には,色々な法律問題が関係してくるので注意が必要だ。

 重要なのは債権回収の一つのオプションとして相殺という方法があることを常に頭の片隅においておくことだろう。

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posted by 内田清隆 at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理