2013年07月03日

ニコ二コ動画をサイトに埋め込むと著作権侵害?

 違法にアップされているニコニコ動画やYouTubeを自分のサイトやFACEBOOK等に貼り付け埋め込んでいる例をよく目にする。
 私自身もやってみたいと思ったことがあるのだが,弁護士として,違法な動画を自己のサイトに埋め込むわけにはいかないと思っていた。

 しかし,大阪地裁の平成25年6月20日判決によれば,違法にアップされたニコニコ動画を埋め込むことは著作権侵害にならないようだ。

 裁判所は
原告は,被告において,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックすると,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態にしたことが,本件動画の「送信可能化」(法2条1項9号の5)に当たり,公衆送信権侵害による不法行為が成立する旨主張する。
しかし,前記判断の基礎となる事実記載のとおり,被告は,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで,本件動画へのリンクを貼ったにとどまる。
この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。
すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり,被告がこれを送信していたわけではない。したがって,本件ウェブサイトを運営管理する被告が,本件動画を「自動公衆送信」をした(法2条1項9号の4),あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法2条1項9号の5)をしたとは認められない。

と判示した。

 要するに,違法な動画がアップされているニコニコ動画を自分のサイトに埋め込んだとしても,違法な動画を送信する主体はニコニコ動画であり,埋め込んだ人ではないのであるから,埋め込んだ人に著作権侵害は成立しないという判断だ。

 ニコニコ動画をサイトに埋め込むと,一見すると,その動画はサイトの一部になっているかのように見えるようになる。
 リンクを張ることが著作権侵害になるかという議論において,あたかもサイトの一部のようになっている場合には,著作権侵害になるという見解が有力に主張されている。
 それと同じように考えると,違法にアップされたニコニコ動画を埋め込むことも著作権侵害になりそうであり,大阪地裁の判断が出たとしてもグレーな問題であると思う。

 いずれにしても,大阪地裁の判断も,違法にアップされていることが明らかな動画を埋め込むことは,著作権侵害の幇助として違法になることを前提としており,気を付けた方が良いことはいうまでもない。

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posted by 内田清隆 at 15:48| Comment(0) | TrackBack(2) | IT法

2013年04月16日

グーグルのサジェスト機能に対する損害賠償命令

 ある人物が自分の名前をグーグルで検索しようとすると,
「〇山〇男、暴力団」「〇山〇男、犯罪者」
 といったように,サジェスト機能により犯罪行為を連想させる単語が検索候補にあげられることを不服としてグーグルを訴えたことは以前のブログでも紹介した。

 今朝の新聞によると,東京地裁は,昨日,本件につき,グーグルに対して,表示の差止と慰謝料30万円の支払を命じる判決を言い渡したようである。

 以前ブログで紹介した時点では,「仮」処分であったわけであるが,正式裁判によっても,差止が認められたというわけだ。

 報道によると,裁判所は、「表示によって男性の名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害に当たる違法な投稿記事を容易に閲覧しやすい状況をつくり出している」と指摘し,原告の請求を認めたらしい。

 裁判所の仮処分命令をグーグルが無視したため,原告は,困難な訴訟を提起することになり,ようやく勝訴判決を得たのである。
 弁護士費用だけでも30万円ではとても足りないであろう。
 にもかかわらず慰謝料30万円というのはあまりに低額に思える。 
 
 裁判所は,自己の出した仮処分命令をグーグルに無視されるという,いわば屈辱を味わっている。その上での判決なのであるから,もっと厳しいものであってもよいのではないかというのが感想だ。

 判決内容の詳細を知った後に,しっかりと判決の妥当性を確認したい。

 ちなみに「内田清隆」でグーグル検索をしてみると,サジェストされるのは,今現在では,「犯罪者」でも「悪徳」でもなく,「法律事務所」「弁護士」「ブログ」「facebook」であった。まずは,一安心である。
 「イケメン」「美男子」がサジェストされないことに対しては若干の不満も残るが,「内田清隆」で検索が行われた場合には「イケメン」をサジェストすべきだとグーグルを訴えても,残念ながら勝訴の見込みはないといわざるを得なそうである。

 
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posted by 内田清隆 at 09:01| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2012年11月08日

システム開発ができない特許庁

特許庁が,出願情報を一元管理するシステム開発に失敗し,54億円を無 駄に支出したことを会計検査院が指摘したというニュースを見た。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1005R_R11C12A0CR0000/

テレビのニュースによると,請負人の能力にも問題はあったが,契約締結以降 に,特許庁から新たな機能追加などが相次ぎ,それに請負人が対応できずシステム開発が途中でとん挫したとのことであった。

特許庁でもそうなのか!というのが素直な感想である。

システム開発,プログラム開発が途中でとん挫し,訴訟となるケースは後を絶たないが,そのほとんどで問題になるのが,「最初に聞いていなかった機能追加が相次いだ」という主張だ。
私が経験した訴訟でも,必ず出てきた問題だ。

システム開発業者は,決められた仕様に基づいてプログラミングをするわけであり,発注者としては,事前に必要な機能を明確にしなければいけない。
経済産業省も述べているし,どの本にも出てくる基本的なことである。
ところが,多くの企業が同じミスをし,特許庁までもが同じミスを してしまう・・・。

建築においても,図面で見るのと完成した建物では違うことがある。
ましてや,目に見えないシステムについては,人間の想像力には限界があり,
設計段階では実施段階が想像できないということなのであろうか。
発注者としても受注者としてもくれぐれも気を付けたい問題である。


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posted by 内田清隆 at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2012年10月22日

発信者情報開示の限界と効用

インターネット上,名誉毀損,プライバシー侵害がなされた場合,教科書的には,プロバイダに対して発信者情報開示請求を行い,名誉毀損などをしている発信者のIPアドレスなどを明らかしてもらうことになる。

ところが,この発信者情報開示請求というのは使い勝手がよくない。

発信者情報開示請求をすると,プロバイダは発信者に対して,情報を開示してよいか尋ねることになるのである。しかし,「あなたの書き込みが名誉毀損だから,訴えようとしている人がいるので,あなたの情報を教えてあげていいですか?」と聞かれて「どうぞ!」と答える人はいない。
 そうすると当然,プロバイダは慎重になる。発信者が何と言おうと名誉毀損は明らかだから開示するというケースは少ない。そのため,なかなか発信者情報の開示を受けられないのである。

これでは意味のない制度では・・・と思っていたが,先日ある弁護士の講演を聞いたところ,意味がないわけではないようだ。
発信者情報開示請求をすると,発信者に誰かが裁判の準備を進めていますという連絡がいくことになる。それにより、発信者が違法な書き込みを控えることが期待できるというのだ。

なるほど,確かにそういう使い方もある。それにしてもネット上の人権侵害の救済には手間と時間がかかる。もう少し簡単な制度とプロバイダの良心を期待したい。

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2012年10月15日

あなたを誰よりも知るグーグルは裁判所の言うことを聞かない 2

 ある人物が自分の名前をグーグルで検索しようとすると「〇山〇男、暴力団」「〇山〇男、犯罪者」といったように、サジェスト機能により,犯罪行為を連想させる単語が検索候補にあげられることを不服としてグーグルを訴えた。
 その結果,東京地裁はグーグルに対して今年3月19日にサジェスト機能の停止を命じた。ところが残念なことに,グーグルはこの決定を無視しているらしい。

  関係者によると,政府は,ビッグデータを利用したターゲットマーケティングを、厳しく規制していこうとしているらしい。
  しかし,日本法で規制しようとも,グーグルがそれに従うとは思えない。
 そうなれば、いかにビッグデータの取得や利用を規制しても日本人の新たなビジネスチャンスを奪うだけの結果になりかねない。
 ビッグデータのもつプライバシー侵害の危険性は驚くベきものがある。しかし、新しいものに過度に脅えることなく,上手に付き合うことが重要だろう。

 私の実家がある浦和は,明治時代に機関車に脅え,鉄道の通過を認めなかったため,埼玉の中心的地位を大宮に奪われた苦い歴史がある。
 その二の舞は避けたい。


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2012年10月10日

あなたを誰よりも知るグーグルは裁判所の言うことを聞かない 1

 どうして,アマゾンは,こうも自分の趣味を分っているのだろうと感心していた方がいらっしゃるかもしれないが,今,1番あなたのことを知っているのはグーグルかもしれない。

 グーグルは今年,プライバシーポリシーを変更し,あらゆるメディアが取得したデータをー元管理していくことに決めた。それにより一層,利用者の嗜好に合わせた広告を提供していくことになろう。

 グーグルの提供する便利な機能を使っていれば,あなたが昨日どこにいたのか,あなたが何を検索したのか,あなたが誰とメールのやりとりをしているのか,あなたがどんな文章を書いているか,グーグルはすべてお見通しである。

  グーグルはそのビッグデータと呼ばれる莫大なデータから,家族すら知らない,あるいはあなた自身すら気付いていない,本当のあなたを分析してくれる。
 そして,そんなあなたにふさわしい最高の商品を提案してくれるのだ。
 夢のような話である。


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posted by 内田清隆 at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2012年08月26日

アップルがサムスンに圧勝

 アップルVSサムスンのiPhoneなどの特許を巡る訴訟について,カリフォルニアの連邦地方裁判所の陪審は8月24日,サムスンがアップルの特許を侵害したとの評決を言い渡し,約10億5千万ドル(約830億円)の損害賠償を命じた。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM25025_V20C12A8MM0000/

 横綱同士のセメントマッチは,既に2点リードを許していたサムスンが5回裏に満塁ホームランを打たれたというところであろうか。

 世界中で行われている両者の争いは,どこかでバランスが崩れ,一方の勝利が見えてくれば,和解に向かうであろうとたびたびいわれていた。
 確かに,激しく争われる訴訟は,どちらも自分たちが勝てる!と思っているから行われる。そして,今回の評決を受けて,サムスンが自分たちの勝利に不安を感じるようになれば,世界中で両者が和解に向かうことが期待できる。

 しかし,激しく争われる訴訟は,大会社同士の争いであっても,合理的な経営判断を見失うほどの相手方に対する感情的な怒りが原因であることが多い。
 アップルのサムスンに対する感情的な怒りはおさまるのであろうか。なにしろその感情的な怒りの源であるスティーブ・ジョブス氏は,もうこの世にはいない。そうなると,その遺志としての怒りの感情は,簡単にはおさまらないのかもしれない。

それにしても早い判断であった。
陪審員は,
GALAXY S4 G(JX1049)の製品は特許番号381号の19項の特許を侵害しているとアップルは証明しましたか?
GALAXY 10.1(WI-FI)(JX1037)の製品は特許番号889号の特許を侵害しているとアップルは証明しましたか?

といった難解な700もの争点につき,判断している。評決全文
 
 この複雑な評決フォームをうめるだけでも,1日仕事だ。
 にもかかわらず,陪審員は,すべての争点についてわずか3日で判断し,この複雑な評決フォームをうめてしまったのだから驚くべきスピードだ。
 よほど悩まずにアップル勝ちという判断に及んだということであろうか。


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2012年07月02日

違法ダウンロードの罰則化

 著作権法改正によって違法にアップロードされた著作物をダウンロードすることが禁止されたものの,罰則がないためどこまでの意味があるのか・・・というブログ記事を書いたことがある。

 私と同じことを考えた人も多かったのであろう。著作権法改正案が本年6月20日に成立し,今秋10月1日からは,違法にアップロードされた動画・音楽などをダウンロードする行為に対し,懲役2年以下または200万円以下の罰金が科されることになった。

 著作権法については,多くの様々な問題点があるため,今後も改正が予定されているのだが,違法ダウンロードの罰則化だけが前倒しで実施された形だ。

 このような改正がなされたのはレコード業界の強い圧力によるものであり,十分な議論がなされていないという批判もある。しかしながら,違法にアップロードされた著作物をダウンロードすることを違法であると決めたところで,罰則がなければ,ほとんど意味がない。そう考えると違法ダウンロードに罰則を設けることは自然なことであろう。

 とはいえ,違法アップロードが野放しにされているような現状で,違法ダウンロードを取り締まろうとすることはかなり困難であろう。本気で取締りを行おうとすれば,警察権力の不当な私生活への介入を許すことにもなるだろう。

 そう思うと,法改正にどこまでの意味があるのかは,相変わらず疑問である。


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2012年05月21日

ステルスマーケティングの違法性

 以前「食べログやらせ」は違法か?で,いわゆるステマが違法かどうかについて,基本的には違法でないが,やりすぎたら違法になるかもしれないというものに過ぎないことを説明した。
 
 その後,消費者庁は本年5月9日に「食べログやらせ」問題を受けてと思われるが,ガイドラインを一部改定し,下記の例を問題となる事例として追加した。 

 商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120509premiums_1.pdf) 
つまり,代行業者に多数の投稿をさせ,「もともと好意的な評価はさほど多くなかった」場合に,「好意的評価を受けているかのように表示させること」は,問題であるということを明示したというわけだ。
 結局は,やりすぎると問題になるということであり,業者に投稿をさせること自体を取り締まろうというわけではない。
 
 しかし,好意的な評価が多いのであれば,わざわざ業者にお金を払って好意的な投稿をしてもらう理由はない。好意的な評価が「さほど多くなかった」からこそ,ステルスマーケティングを行うのである。そう考えれば,業者に投稿させることは,常に問題があると消費者庁は考えているともいえよう。
 
 とはいえ,消費者庁は,「具体的な表示が景品表示法上に違反するか否かは個々の事案ごとに判断されますので、御留意ください。」と指摘し,「違法となる事例」ではなく,「問題となる事例」とわざわざしており,どこまでやると違法になるのかははっきりしない。
 
 そもそも,不当景品類及び不当表示防止法は20条しかない法律である。そして,「実際のものよりも著しく優良であると示し・・・不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示を禁止しているに過ぎない(2条1項)。
 これだけの法律で,ステルスマーケティングが違法であるかどうかを判断しようとすること自体そもそも無理があるのではないだろうか。


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2012年04月27日

Googleドライブとクラウドの法律問題

 グーグルは,今月25日,5GBまで無料のオンラインストレージ「Googleドライブ」の提供を発表 した。
 現在私が愛用しているDROPBOXであると無料は2GBまでであるため,かなりお得感がある。
 オンラインストレージの抱える大きなリスクの一つは,その運営主体の倒産による情報の消滅だ。しかし,グーグルであれば簡単に倒産しないだろうと信用されるだけのブランド力があろう。
 そう考えると,愛用者としては,DROPBOXの今後が心配である。


 とはいえ,なかなか,仕事では,オンラインストレージなどのクラウドは使いづらい。
 
 法律的には,クラウドの利用が,個人データの「委託」にあたり,個人情報保護法22条に基づき,本人の同意がいるのではないかという問題がある。
 また,本人の同意がいらないとしても,クラウドサービス事業者の必要かつ適切な監督が求められる可能性もある。しかし,グーグルを適切に監督することなど実際上不可能だ。

 しかしながら,私が実際上,活用できない理由は,そのような法律的な問題点ではない。
 一番,気になるのは,セキュリティだ。
 友人からは,「個人が保管するより,グーグル等のクラウド事業者に保管してもらった方が安全だよ」と言われた。しかし,何の保証もしてくれないクラウド事業者に極秘データを預けるというのは,やはり抵抗がある。

 さらに,気になるのが,人的な問題である。IDとパスワードが盗まれてしまえば,グーグルに落ち度はなくとも,一瞬にして,すべての情報が奪われてしまう。
 「●●社は近く破産する」「●●は過去に重大な犯罪を行ったことがある」・・・,そんな法律事務所がもつ機密情報が私の事務所から一瞬にして流出するかもしれない。そう思うと,なかなか利用に踏み切れない。
 これにしても,クラウドを利用しなくても,泥棒に入られることを思えばあり得ることなのであるから,合理的に考えると,クラウドを利用しない理由にはならないのかもしれない。
 しかし,理性ではそう思っても,不安を覚えてしまう。

 毒見をさせるようで卑怯な気もするが,多くの会社が導入するようになり問題が生じないようであれば,私も仕事でもオンラインストレージの導入を検討することにしよう。


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2012年01月07日

「食べログやらせ」は違法か?

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

 昨日テレビを見ていたら,モザイクをかけられたある飲食店のオーナーが
「罪の意識が薄く,ついやってしまった」
と業者に頼んで食べログにやらせ記事を書いてもらったことを反省していた。

 しかし,やらせ記事を書いてもらうことは基本的に法的には「罪」にはならず,罪の意識は薄くて間違っていない。

 最近はやりのいわゆる「ステマ」=ステルスマーケティングの違法性の問題である。

 消費者庁は,「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」として,
ただし、商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。
という見解を示している。

 回りくどい言い方だが,要するに
 基本的には違法でないが,やりすぎたら違法になるかもしれないという程度なのである。

 米国では
、連邦取引委員会(FTC)が2009年12月に「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」 を公表し 
 広告主からブロガーに対して商品・サービスの無償での提供や記事掲載への対価の支払いがなされた場合、FTC法第5条で違法とされる「欺瞞的な行為又は慣行」として広告主は同法に基づく法的責任を負う
 との基本的に違法であるという解釈指針を示しているらしい。
 イギリスでもネットでやらせ記事に対して法的規制が行われ始めたと聞く。
  
 日本でも,何らかの法的規制は必要なのではないだろうか。サクラなんて昔からある話ではある。しかし,ネットを通じたサクラの影響力は昔のサクラとは比較できない。

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posted by 内田清隆 at 11:13| Comment(2) | TrackBack(0) | IT法

2011年12月27日

「ウィニー(Winny)」作成者に無罪判決

 ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が著作権法違反の幇助罪に問われた裁判で、最高裁は、今月19日、高裁の無罪判決を維持した。
判決全文 
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111221102925.pdf

 最高裁は,悪用が可能なソフトを開発・提供し,それが犯罪で使われた場合であっても,下記の一定の場合だけ,
@ソフトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合や,
A当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,

 当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。
 つまり,犯罪になると判示した。,

 @は,違法コピーをしようと準備している人に対して,違法コピーをさせるためにWinnyを提供する場合であり,犯罪になることは当然であろう。

問題はAである。
 Aは二つの要件に分けられる
  ㋐「例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合」
  ㋑「提供者もそのことを認識・認容している場合」
である。
 最高裁は,
結構な割合の人がWinnyを違法コピーに使うことが予想された場合で,開発者もそのことが分かって,受け入れていた場合は,犯罪になる
としたわけである。

 最高裁は,「Winnyのネットワーク上を流通するファイルの4割程度が著作物で,かつ,著作権者の許諾が得られていないと推測される」として,本件につき㋐の要件は満たすとした。

 しかし,開発者が
「もちろん,現状で人の著作物を勝手に流通させるのは違法ですので,βテスタの皆さんは,そこを踏み外さない範囲でβテスト参加をお願いします。・・・」
などとWinnyを著作権侵害のために利用しないように求める書き込みをしていたことなどから,㋑の要件は満たさないため無罪としたのである。

 結論には異存はないが,何とももやもやした判断方法である。
 「例外的とはいえない範囲の者」とは,いったいどれぐらいなのだろうか。
 10%だとどうなのだろうか,5%だとどうなのだろうか。極めてあいまいである。
 
 Winnyが違法コピーに使われることを開発者は予想していなかったはずはない。だから,開発者は,違法に利用しないよう呼びかけていたのだ。
 すると,最高裁は,違法コピーの認識はあったものの,例外的とはいえない範囲の者が違法コピーするという認識はなかったとして無罪にしたのだろうか。
 あるいは,違法コピーの認識はあったものの,そのようなことを認容まではしていなかったとして無罪にしたのだろうか。
 そのあたりもよく分からず,相当あいまいな判断である。
(ちなみに,最高裁は,「例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識,認容していたとまで認めるに足りる証拠はない。」といっている・・・)

 そんなあいまいな判断基準で,刑務所に行くかどうかが決まるというのは何とも恐ろしい。
 やはり,裁判所ではなく,法律により明確なルールを作るべきであろう。


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2011年12月23日

改正不正競争防止法

 改正不正競争防止法が,本年12月1日から施行された。

 大きな改正点は,
@刑事訴訟における営業秘密の秘匿
Aアクセスコントール等の回避装置の規制強化
である。

 @は,営業秘密侵害罪の審理において,公開が原則の刑事訴訟の法廷で営業秘密が明らかにされてしまう問題を克服するための改正である。
 営業秘密にかかわる刑事訴訟において,固有名詞を]で置き換えるなどして営業秘密を公開しないで審理ができるようにしたというものである。

 Aは,DVDディスクなどに施している複製を防止する技術や、ゲーム機などに施している複製されたゲームを起動させない技術などのアクセスコントロール(技術的制限手段)を回避するために使用される装置に対する規制強化である。 
 以前のブログでも紹介したが以前は,アクセスコントロールの回避機能「のみ」を有する装置の販売は禁止されていたが,そのような機能を有していても,他の用途にも用いることのできる装置の販売は認められていた。

 しかし,今回の改正により,この「のみ」要件を外し,アクセスコントロール回避機能をもつ装置一般の販売が禁止された。
 さらに,アクセスコントロールの回避装置の販売には5年以下の懲役,500万円以下の罰金という刑事罰も導入され規制が強化されている。

 主な狙いは違法な海賊版ゲーム等を使えるようにする装置,いわゆるマジコンの撲滅のようであるが,うまくいくのだろうか。
 自分が子供のころから,いたちごっこが続いているようであるが・・・。

 それにしても,アクセスコントロール回避装置規制に関する不正競争防止法のこの条文。何とか,もう少し分かりやすくしてほしいものだ。
不正競争防止法2条1項10号
営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を させないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下 この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能 を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を 当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)


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2011年11月30日

システム開発と商法512条 

 システム開発をするとき,最初の契約段階で,正確にどれぐらい開発に手間がかかるのかを見積もるのは難しい。
 実際にやってみると予定より大幅に手間が増えることは多い。
 そして,予定より大幅に手間が増えた場合の追加報酬について,金額はもちろん支払うかすら決めてないことを理由に,よくもめるのである。
 では,そのような場合,追加報酬を請求することができるのであろうか。

 大阪地裁平成14年8月29日の判決では,
商法512条から,約束がなくても「原告(ユーザー)には,仕様変更部分について相当額の追加開発費支払義務が生じる」
として,増えた手間分の追加報酬請求権を認めた。

 以前のブログ「有料と聞いていなくても報酬の支払義務はあります」でも書いたたが,商法512条により,商人に何かをしてもらえば,約束がなくても相当の報酬を支払わないといけない。
 そこで,大阪地裁は同条を根拠に追加報酬請求を認めたのである。

 もっとも増えた手間分の追加報酬請求が認められるのは「仕様変更」がなされた場合である。
 東京地方裁判所平成7年6月12日判決は,システム作成の過程で当初予定された3万5000ステップが,10万ステップになったため,商法512条を根拠に追加報酬を請求したという事例である。
 その事例では,「原告の受託業務の規模が3万5000ステップであることを前提として委託代金額が決定された事実はない」,よって10万ステップは原告の受託業務の範囲内であり,商法512条による報酬請求権は認められないと裁判所は判断した。
 当初の予想以上に手間がかかる業務になったとしても,その原因が「仕様変更」ではなく,単に見積りの甘さであれば,追加報酬請求権が発生しないのは当然だろう。

 問題は,何が「仕様変更」であるかである。
 システム開発契約では最初の段階で仕様が完全に決まっていることは珍しい。
 そのため,手間が増大した場合,どこからが仕様変更によるものかの判断はとても大変である。

 それにより仕様変更かどうかで裁判では長く争われることになり,ユーザーもベンダーも長く続く裁判に疲れきる・・・といったことが少なくない。

 システム開発においては,どのような場合が仕様変更で幾らの追加報酬が発生するのかを,最初からしっかり決めておきたい。


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2011年07月20日

プログラム著作物と氏名表示権

 以前に,コンピュータープログラムの著作権における氏名表示権が問題となった事件を扱ったことがある。

 氏名表示権とは,著作物の作成者が自分の名前を表示または表示しないことを求めることができるという権利だ。
 例えば,小説の作者は,その小説が刊行されるに当たり,氏名を実名で表示してくれということも,ペンネームで表示してくれということも,表示しないでくれと求めることもできる。
著作権法19条
著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。


 問題になった事件では,A社が,自己が作成したプログラムをB社に提供した。
 そのときに,B社が自由に販売することは許可したのだが,作成者をB社と表示して販売することは許可していなかった。
 にもかかわらず,B社が自己が開発したプログラムであるかのごとく販売しているため,「A社開発」とA社の氏名を表示するよう求めた事件だった。

 判決にはならなかったが,裁判所の見解は,一般のプログラムにおいては,作成者の氏名を表示しないのが「慣行」だから,プログラム著作物において氏名表示権はないというものであった。
 そんな慣行はあるのだろうか?
 著作権法19条3項は,「公正な慣行に反しない限り、著作物の利用者は、著作者名の表示を省略することができる」としているが,別の著作者を表示をすることは,「公正な慣行」ではあるまい。

 コンピュータプログラムの著作権については,まだまだ,法的にはっきりしていない問題が多い。


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posted by 内田清隆 at 19:01| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2011年02月03日

複製の主体は総合的に観察して決めろ!?−「ロクラクU」事件

 先日のブログでのべたように,最高裁は,録画予約サービスにおいて,サービス提供者が録画の主体であると判示した。
 ユーザーは,自宅の子機で,気になるテレビ番組を録画して見ている。しかし,その録画されたテレビ番組は,一度は,サービス提供者が管理している親機に自動的に保存され,ネットを経由して配信されている。
 その場合には,法的には,「録画」しているのはユーザーでなくサービス提供書であるとしたわけだ。

  普通に考えると不自然だ。
 サービス提供者は,事務所に親機を置き,子機と接続してあげているだけで,それ以上は,何もしていない。
 普通に考えると「録画」しているのはユーザーであろう。
 
 では,なぜ最高裁は,このような不自然な結論を導き出したのであろうか?
 ヒントは,金築裁判官の以下の補足意見の中にあった。

 著作権法21条以下に規定された「複製」・・等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって, このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。

 つまり,最高裁は,「録画」という言葉から「かけ離れる」ことはできないが,多少はかけ離れた不自然な解釈でもよい。
 なぜなら,著作権法は著作権者の経済的利益を守るものであり,自然に解釈して,録画予約サービスを合法としては,テレビ番組製作者の経済的利益は守れないからである。
 そのように言いたいのだと思う。

 はたして,この考え方は妥当なのであろうか? 


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posted by 内田清隆 at 07:43| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2011年01月31日

「まねきTV」事件についで「ロクラクII」でも!


 最高裁は,平成23年1月18日の「まねきTV」事件判決に続き,平成23年1月20日の「ロクラクII」事件でも,大手テレビ局側を勝訴させ,ITを利用したテレビ番組の録画サービスを行うベンチャー企業を敗訴させた。
 http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20110121_421875.html

 ロクラクIIとは、親機を国内、子機を海外に設置して、 親機で録画した番組をインターネット経由で子機に配信するという仕組みである。
 そのようして録画(複製)することは「私的使用」であり,まったくの合法である。
 裁判で争われたのは,A社が親機・子機をまとめてユーザーにレンタルし,子機はユーザーが管理するが親機はA社が預かり管理している場合に,録画しているのがユーザーなのか,それともA社なのかという問題である。

 A社がテレビ番組を自分で録画し,それを販売することは違法であることに争いがない。
 問題となったのは,A社が親機の管理をしているが,録画はユーザーが子機のボタンを押すと自動的にできる場合にも,同じように「A社が録画している」といえ,違法ではないかという点である。

高裁の判断は,分かりやすい。
 以下の通り高裁は,
・親機をA社でなくユーザー自身が管理していたとしても同じように録画することはできる
・子機を動かして初めて録画ができ,子機を操作するのはユーザーだけ
 だから,録画しているのは子機を動かしているユーザーだと判断した。

「本件サービスにおいて、子機ロクラクを自由に操作し、好みのテレビ番組につきタイムシフト視聴を実現しているのは、利用者のみであり、子機ロクラクを操作するかしないかは、すべて利用者の意思に委ねられている」
「控訴人が親機ロクラクとその付属機器類を一体として設置・管理することは,結局,控訴人が,本件サービスにより利用者に提供すべき親機ロクラクの機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,主として技術的・経済的理由により,利用者自身に代わって整備するものにすぎず,そのことをもって,控訴人が本件複製を実質的に管理・支配しているものとみることはできない。」
「被控訴人らは,@本件サービスにおいては,子機ロクラクを用い,これが示す手順に従わなければ,親機ロクラクにアクセスしてテレビ番組の録画や録画されたデータのダウンロードを行うことができず,また,A控訴人は,親子機能を実現するための特別のファームウェアを開発して,これを親子ロクラクに組み込み,かつ,控訴人のサーバ等を経由することのみによって録画予約等が可能となるように設定しており,さらに,B親子ロクラクは,本件サービス又はこれと同種のサービスのための専用品とみることができる旨主張する。しかしながら,これらの事情は,いずれも,利用者が親機ロクラクを自己管理する場合(控訴人が本件複製を行っているものとみることができない場合)であっても同様に生じる事態を指摘するものにすぎないから,これらの事情をもって,控訴人が本件複製を実質的に管理・支配しているものとみることはできない。」

 
 ところが最高裁の判断は,以下の通り,まったく違うものであった。
 最高裁は,録画の指示を出すのがユーザーであっても,サービス提供者が,親機を管理していて,そこでテレビアンテナで受信した放送が複製される場合には(サービス提供者が何も手を出すことなく自動的にされるのだとしても!)録画しているのは利用者ではなく,サービス提供者としたのだ。

 「なんで?」
というのが素朴な感想である。少なくとも分かりやすい判決ではない。なぜ,こんな判決になるのか,それは次回に。

「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしていると いえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしてお り,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。」
 

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posted by 内田清隆 at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2010年11月05日

「屋台」産業としてのIT業界

 幼いころ縁日で,「セーターの毛玉取り」の実演販売を見たことがあった。
 ちょっとセーターをこするだけで奇跡のように毛玉が取れる不思議な機械。「まるで魔法だ!」と感動し,幼い自分には買う必要はまったくないのに,「凄いので買おうよ!」と両親に言った。
 すると両親は「屋台は明日にはいなくなる,商品が不良品でも文句を言えないからだめ」と言っていた。

 IT業界の店や会社が「屋台」のようなものであることは多い。
 実のオフィスを基本的にもたずに,ヴァーチャルなオフィスだけで仕事をしている会社もある。
 ネットショップでは,立派なホームページを持っていても実店舗がないことは普通のことである。

 最近,そのような点を用いた詐欺も何度か目にした。
 取引先にクレームのメールを送っても返事がなく,電話をしても通じない。
 しかたがなく,ネットに記載されている住所地に行くと,会社自体が存在していなかった。
 訴えようにも「距離の問題」もあり,泣き寝入りせざるを得ない,そんな例は少なくない。

 私の両親の言うように「屋台」には注意しなくてはならないのは事実であり,「屋台」の危険性を十分に理解したうえで,取引をすることが重要であろう。

 しかしながら,本来「屋台」であることはマイナスではないはずであり,今後「屋台化」は加速するであろう。
 IT業界において本来,距離は関係ない。
 メールやスカイプなど通信技術が発展している現在,人が集まって仕事をする理由も少ない。
 むしろ場所に拘束されない「屋台」としての経営は最先端のスタイルであり,未来のスタイルであるだろう。

 問題なのは,場所に拘束されないIT企業に対して,法的責任を追及することが困難である現状だ。
 それを悪用した商法を厳しく規制し,法的環境を整備し,場所に拘束されない「屋台」であっても,信用性が高められるようにしていていくことが必要なのだと思う。

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posted by 内田清隆 at 08:37| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2010年11月01日

IT革命がなくす距離と訴訟制度

 金沢で弁護士をしている私が関わる訴訟のほとんどは金沢地方裁判所で行われている。
 たまに,富山や福井など近隣県の裁判所にもいくが,それより遠くの裁判所に行くケースは少ない。

 最近気づいたのだが,遠くの裁判所にいく少ないケースの多くが「IT」がらみということだ。
 コンピュータプログラム作成やHP作成に関するトラブル,ネットを利用した取引等に関するトラブルは,容易に国境を超えるし,ましてや,県境などないに等しい。
 IT業界では,発展した通信技術を利用し,距離を気にせずに取引をしているのが通常だ。
 そのため遠隔地間で訴訟が行われる場合も多いのであろう。

 しかし,いざ,トラブルになった場合には,距離は重要な意味を持ってくる。
 例えば,訴訟をする場合だ。
 電話会議やテレビ電話を利用した証人尋問など,通信技術の発達を生かして遠隔地での訴訟がやりやすくはなってきている。
 しかし,訴訟のすべて電話会議やテレビ電話を利用して進められるわけではない。
 遠隔地で訴訟を起こそうと思えば,何回か遠隔地に行かなければならないのが通常だ。
 そうなると問題になるのが費用である。
 以前であれば,遠隔地との取引といえば大きな取引であった。
 そのため,相当の費用をかけてでも訴訟をする意味があった。
 ところが,今や,沖縄の業者が金沢のソフト作成業者に数十万円のソフト作成を依頼することも当たり前のようにある。
 数十万円の争いで,弁護士をつけて沖縄までいって訴訟をしても割が合わない。

 IT革命がなくす距離に訴訟制度が追いついていないのが原因だ。
 しかし,IT業界の変動はめまぐるしい。
 なかなか,追い付くのは難しそうでもある。

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posted by 内田清隆 at 20:52| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2010年07月21日

ロボット検索による知的財産権侵害の新時代

 「どうやって見つけたの!?」と最初は驚いたが,ロボットだとして納得した。
 今や,多くの会社がロボットにインターネット上をクロールさせ,自動的に商標,意匠,著作権等の知的財産権が侵害されていないかををチェックしている。
 ロボット検索により知的財産権侵害は新時代を迎えているのだ。

 以前,知的財産権侵害が問題になるケースの多くは,仲間割れパターンか取引先パータンのどちらかであった。
   会社が分裂して片割れがもう片割れを訴えるパターン
   取引先等の関係者を訴えるパターン
  がほとんどであったのだ。

 もちろん著名な事件では,それ以外のパターンもたくさんあった。
 しかし,著名でない商標や著作権については,以前であれば,石川県の企業がもっている権利が沖縄の著名でない会社が侵害していても,まず気づくことはありえなかった。
 そのため,そのような場合は問題にならず,問題なる場合は,ほとんどが,仲間割れパターンや取引先パターンといった関係者による知的財産権侵害だったのだ。

 ところがロボット検索時代になって状況は変わった。
 ロボットは,沖縄だろうが北海道であろうが,イスラエルであろうがボリビアであろうが,ネットがつながっている限り,距離に関係なく知的財産権侵害を自動的に見つけてくる。
 それにより,金沢の会社が全く知らない東京の会社から訴えられたり,金沢の会社が縁もゆかりもない大阪の会社を訴えるといったことも日常的に見られるようになってきた。

 既に知的財産権侵害の発見を商売化しているケースもあるらしいが,今後,ますますインターネット上における知的財産権侵害に対する監視は強まるだろう。
 
 ロボット検索により,知的財産権の価値が高まることを望むところだ。

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posted by 内田清隆 at 15:37| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法