2017年09月12日

「記録化」社会による裁判所の崩壊 

信号を無視したのはAかBか、、、それが分からないことで裁判が長期化する例は多かった。
 軽微な物損事故において、信号が何色であったか分からないために何年も裁判をしていると、不誠実ながら不毛感を感じることもあった。

 しかし,社会は変わりつつある。
 交差点付近の防犯カメラなどから、事故時の信号の色が分かることが増えた。
 最近ではドライブレコーダーの映像から、事故時の信号の色が分かることも多い。
 技術の進歩により,不毛を感じさせるような長い裁判が減ってきたのである。

 また、スマホのように,多くの人々がもてる簡易に録音・録画できる装置が増えた。
 昔は,長時間の録音をすると、テープの量が膨大になりその管理が大変であった。
 しかし今では,何時間にも及ぶ録画内容がごく小さな媒体にすべて記録できてしまう。
 そのため,録音・録画媒体が,種々の裁判に提出されることも非常に増えた。

 考えてみると,裁判の多くは,「信号が青だったのか赤だったのか」,「保証すると言ったのか言わなかったのか」といった,過去の事実の内容について争いがあるため起こるものだ。
 人間の行動の全てが録音・録画されていれば,ほとんどの裁判は不要になり,裁判所は閑古鳥が鳴くようになるであろう。
 そうなれば「裁判」をするのはもはや裁判官ではなく,録音・録画を調査するロボットだ。
現在の裁判所は不要となる。

 裁判になると分かるが,街には,すでに驚くほど多くのカメラが設置されており,人々の行動の多くがカメラに捉えられている。
 人間の行動の全てが録音・録画され,裁判所が不要となる社会の到来も,そう遠くないのかもしれない。


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2017年07月11日

崩壊する「弁護士」ブランド

1991年には約1万4000人だった弁護士数が2016年には約3万7000人へと急増した。
一方で法科大学院の入学者数は2004年度の約7万2000人から2016年度には約8000人まで急減し、定員割れとなる大学院が散見されるようになった。

ライセンス生産で売上を拡大する一方で、ブランド価値の減少に苦しむ高級ブランドを見ているようだ。
バーバリーは三陽商会とのライセンス契約を打ち切り、金沢市の老舗百貨店からも撤退した。
ライセンス契約で売上は増大し知名度も上がったが、「高級」ブランドとしての評価が薄まることを心配したのだろう。

弁護士もその数を急激に増やし過ぎてしまい、ブランド価値は大きく低下してしまった。
それによって法科大学院にも人が集まらなくなっているのだろう。

これは由々しき問題だ。

弁護士のブランド価値が下がる
→いい人が弁護士にならない
→いっそう弁護士のブランド価値が下がる
→いっそう人が集まらない
という負のスパイラルの行く先には司法制度の崩壊。
「法」ではなく「力」が支配する世界だ。

司法制度が信頼を得るためには、弁護士という職業のブランド価値を高めることも大切だろう。


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2016年02月09日

覚せい剤密売人の教える「商売のコツ」


 以前覚せい剤の密売人から,「商売のコツ」を聞く機会がありました。

 その密売人のいう「商売のコツ」とは
誠実性 
 適正な利益を受ける。1万円で仕入れたものを2万円で売ったり,量をごまかしたり,混ぜ物をしたりしては信用を失い,最終的には顧客が離れる
心遣い
 注射器をもっていないようであれば注射器をプレゼントし,急に必要と言われれば家まで届けるといった細やかな心遣いが重要である
スピード 
 欲しいと言われれば,できる限り急いで渡すこと。「明日でいいだろ〜」という気持ちが良くない。今欲しいという顧客の気持ちを考えてあげないといけない。
といったことでした。

 「どうやったら警察に捕まらないのか」ということが麻薬密売のコツかと思っていましたが,どんな商売にも通じる真面目なものでした。
 自身も覚せい剤中毒でもある密売人が,そんな真面目に商売をしているとは,なんだか驚きでした。
 どうして,その真面目さを正しい方向に活かせなかったものか…。


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2015年08月17日

王陽明と訴訟

 私が敬愛する王陽明は,仕事が忙しくて勉強ができないと言うある裁判官に対してこう答えている。

 我何ぞ嘗て爾(なんじ)をして簿書訴獄を離了(はな)れて,懸空に去りて学を講め(きわめ)しめんや
 その応対の無状に因りて,この怒心を起すべからず。
 他(かれ)の言語の円転なるに因りてこの喜心を生ずべからず。
 自己の事務の煩冗なるに因りて,意に従いて荀旦(こうしょ)に之を断ずべからず。
 ただ此の心一毫も偏倚(へんい)有りて人の是非を曲げんとことを恐るるは,這れ(これ)便ち(すなわち)是れ格物致知なり(伝習録下巻・18条)

 (私がいつ,訴訟事件の処理を離れて勉強を極めなさいと言ったか。
  当事者の態度が悪いからと言って腹を立てるな。
  当事者がうまいことを言うからと言って喜ぶな。
  仕事が忙しいからと言っていい加減に処理するな。
  このように良心に偏りがなく,是非を誤らないようひたすら留意することこそが勉強である。)

  「仕事が忙しい!勉強する時間がない!」という言い訳は,古来から多くの人が言っているらしい。
 「それは言い訳だ。仕事を離れて勉強などない。誠実に仕事をすることこそが勉強だ!」と王陽明は言う。
 「事上磨練」にして「知行合一」,王陽明の言葉はいつも身に染みる。

  しかし思うのは,陽明がこのようなことをいうということは,
   当事者の態度が悪いと怒る裁判官
   当事者から気の利いたことを言われて喜ぶ裁判官
   仕事が忙しいからと言って手を抜く裁判官
 が昔はたくさんいたということだ。
  いや,今も変わらないのかもしれない。
  それは,弁護士でも同じことであろう。
  心しておきたい。

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2015年06月06日

懲罰的損害賠償の可否

昨今,日本弁護士連合会は,「抑止的付加金制度」という名称で,不法行為において,実際に生じた損害額以上の賠償金を被害者に支払うことを加害者に命ずる制度を検討している。
http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2012_06/p02-19.pdf
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/17th_keynote_report_11.pdf
これは名称は異なるが,米国で認められている懲罰的損害賠償と同様の制度である。米国では,3倍賠償と呼び,一定の悪質な不法行為に対しては,懲罰として実際に生じた損害額の3倍の金額の支払を命じている。

私は,かかる制度の導入に強く賛成したい。
理由は,「正しい人が損をしない」社会の実現に必要だからに尽きる。

「無断駐車した場合には罰金1万円を頂きます」というはり紙は法的には無効である。現在の法律では,基本的には,無断駐車に対しても,実際に生じた損害=妥当な駐車料金の賠償が可能なだけである。
1日1000円の駐車場に1日無断駐車された場合には,1000円の損害賠償しか請求できない。
つまり,無断駐車であっても,契約をして駐車する人と同じだけの駐車料金を払えばよいのであり,ばれなければ,1円も払わなくてよいのである。ばれてしまっても,ばれるまでに使用した時間分だけ通常の駐車料金を支払えば済む。これで,公平といえるであろうか。

私の関わった案件でこんなことがあった。
依頼者の商標権を侵害している製品が市場に出回っていることが判明した。少なくとも10個は販売されていた。
そこで,出処を突き詰め,相手方に賠償を求めたが,相手方は責任を否認した。
そのため,訴訟を提起し,ようやく勝訴した。

しかし,認められた賠償額は,製品10個分の妥当なライセンス料だけであった。10個分についてライセンス契約を結んだ場合と同じライセンス料に過ぎない。
しかも,相手方が販売した個数が10個というのは相当に疑わしいにもかかわらず,販売を証明できた10個分のライセンス料しか受け取れないのである。
苦労に苦労を重ねて裁判をしても,このような結果である。
これで,公平といえるのであろうか。


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2014年05月07日

話の下手な弁護士〜「対決」から書面中心の「口頭弁論」 

 テレビドラマの影響によるものだと思われるが,「弁護士=話が上手」というイメージが強いようだ。しかし,実際は意外に弁護士は話が下手なのである。

 裁判,特に民事訴訟では,ほとんどが「書面主義」である。
 「口頭弁論」期日と呼ばれ,建前としては,口頭で議論を戦わせる場とされているにもかかわらず,現実には,「本日提出した書面の通りです」とだけ述べ,「口頭弁論」は書面を交換するだけで5分で終わる場となり下がっている。
 そのため,私も含めて多くの弁護士は,実は,書面を書くのは上手であるが,話は上手でもないのである(もちろん,話が上手な弁護士も多いが,それは,裁判で上手になったものではない。)。

 しかし,どうも,これは昔からそうであるようだ。

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 先日読んだ「日本人と裁判」という本によると,鎌倉時代から,日本の裁判は書面審理が中心の何年もかかる手続きであった。
 そして「対決」と呼ばれた口頭で議論を交わす場は,書面審理の補助としてだけ運用されていたそうだ。
 今の日本の裁判とあまり変わりがない。

  私も,法廷で堂々と弁論するテレビでみる弁護士に憧れていたところもあり,「口頭弁論」が「書面の通りです」という場になっていることに納得がいかないでいた。
 しかし,考えてみれば,口頭より書面の方が「あれを言い忘れた」というミスを防げるし,後から振り返って何が議論されたか正確に分かるといったメリットも多い。
 書面による議論と口頭による議論のバランスが大事なのであろう。

 とはいえ,文書を書くのは上手だが,話は下手というのでは,弁護士としての魅力に欠ける。
 裁判が書面主義であっても,堂々と口頭で意見を述べる能力は磨きたいものだ。


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2014年02月10日

映画「カーズ」に見る米国裁判〜「所払い」と「32,000$」

 先日,ディズニー映画「カーズ」のDVDを子供と一緒に見ていたところ,
街を壊した主人公のマックィーンが,刑事裁判にかけられていた。

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カーズ [DVD]  http://p.tl/3G_d

 その刑事裁判では,裁判官のドックハドソンが,「街追放」という判決を出そうとしていたところ,急きょ現れたカルフォリニア出身の美人?女性弁護士サリーの熱意あふれる弁論により,最終的には「社会奉仕命令」という判決が下されたのである。

 アメリカの刑事裁判において社会奉仕命令が出されるということは知っていたが,日本にない種類の判決であり,少し違和感を覚えた。
 それ以上に違和感を覚えたのが,当初出されようとしていた「街追放」という判決である。

 「遠山の金さん」や「大岡越前」では,よく,善良な町民が「江戸所払い=江戸追放」の判決を受けていたが,アメリカでは今でも所払いなどという判決はあるのだろうか?
 そう思い,少し調べてみたところ,「所払い」は現存するようだ。ある弁護士がブログに,最近,「ヒューストンカウンティからの追放=所払い」という珍しい判決を受け,ジョージア州最高裁は,同判決を合法であると維持したと書いていた。
http://www.houstonda.org/houston-county-law-school/banishment-from-houston-county.html
 さすが,アメリカ・・・という思いがする。

 また,それと同時に驚いたのは,サリーの弁護料である。設定からすると,国選弁護人のようであるが,その弁護料は3万2000ドル=320万円以上である。
 日本では,本件のような軽微な案件の国選弁護人の報酬は10万円はしないし,私選弁護人だとしても100万円でもあり得ない額である。
 
 そのようなアニメを見て育つアメリカの子供たちは,裁判に対する考えも日本の子供たちとは違ってくるのだろうなあと思った。


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2013年10月15日

みずほ銀行問題とキリストと親鸞

 みずほ銀行が暴力団関係者に対して融資をしていたという問題について,ある弁護士がブログに,「不正発見主義(不祥事はどうしても発生してしまうが,これを早期に発見して自浄能力によって解決し公表すること)にウエイトを置く」が重要であり,そのためには「敗者復活戦」や「報告者に対する報奨」が認められることが大切であると書いていた。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2013/10/post-b0b9.html 

 功利主義的な人間観に立てば,不正を発見した場合に
   それを伝えるメリット<それを隠すメリット
であれば,それを伝える人はいない。
 そうであれば,不正を伝えることに対して「報償」を与え,不正を伝えるメリットを増やすべきであり,また不正に関与した人間にも「敗者復活」の道を与え,不正を伝えることによって生じる不利益を小さくすることが必要であるということであろう。

 そう思うと宗教というものは,不正を告白するための見事なシステムを作り上げているのだと思う。
 キリスト教においては,自己の罪を悔い改め,それを告白すれば(特にカトリック教会においては,いわゆる「懺悔」を行えば),神はこれを許す。つまり,不正を伝えることで許され天国にいけるといった,十分な「報償」が与えられるということだ。
「もし、わたしたちが自分の罪を告白するならば,神は真実で正しいかたであるから,その罪をゆるし,すべての不義からわたしたちをきよめて下さる」(ヨハネの第一の手紙第1章9節)

 親鸞が歎異抄において「善人なおもて往生とぐ,いはんや悪人をや」(善人でさえ浄土へ生まれることができる,まして悪人は,なおさらだ)と説くのも,どんな罪を犯した人間であっても「敗者復活」することが可能であると説き,告白する強さを人間に与えようとしたのであろう。

 HONDAには「失敗表彰制度」があり,一番失敗した社員には「社長賞」まで与えられたという。そのような制度があれば,「失敗」を積極的に告白するようになるかもしれない。
 しかし,「私は横領しました!」といった不正を告白させるために,横領した人に賞を与えるというわけにもいくまい。

 そうなると本当に重要となるのは,「不正に関与した人間は『償い』はとらなければいけない,しかし,必ず『赦し』は得られる」という一種宗教的な信頼感なのかもしれない。


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2013年09月09日

「被告」は悪くない

 無罪推定の原則というものがある。
 有罪か無罪かは,裁判所が決めるのであるから,その判決があるまでは、刑事事件の被告(法律用語では「被告人」)は,無罪とみなさなければいけないという原則である。

 ところが,マスコミでは,「被告」=犯罪者と扱われることが多い。そのため,多くの人が「被告」とは悪いことをした人だと認識している。

 民事事件では訴えた人が原告,訴えられた人が被告である。
 民事事件の紛争では,訴える準備をしていたら先に訴えられるということもよくある。
 どちらが先に訴えでるかで原告と被告は逆転するのであり「被告」という名称には深い意味はないのである。

 しかし,「被告」=悪い人というイメージが定着しているため,そうも割り切れない。
「なにも悪いことをしていないのに被告呼ばわりするとは失礼だ!」
「なんで俺が被告と呼ばれないといけないのか!」

と呼び方から争いが生じてしまう。

 「『被告』は悪くない。」という認識が早く定着すればいい。

 それが難しいのなら「ディフェンダント」と横文字で呼ぶのはどうだろう。
 
 「被告内田」と言われるより「ディフェンダント内田〜!」と言われる方が,なんとなくかっこいいよくテンションもあがるような気がする。


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2013年07月22日

サルカニ合戦のカニを弁護した弁護士の話


  サルカニ合戦のカニは,雄弁で名高い某弁護士の弁護にもかかわらず,死刑になったそうである。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/140_15196.html 

 いわれてみれば,至極当然である。いかにサルの態度が悪かろうが,復讐として殺してしまうことを正当化する法理論はない。
 そもそもサルがひどいといっても,サルはわざとカニをつぶしたわけではないのであろうから,復讐され殺されるべきほどひどいともいえない
(なお,最近はカニやサルは怪我をする程度で,サルは反省して平和に暮らすと改作されたものが多く出回っているようだが,カニはサルにつぶされ圧死し,サルは臼につぶされ圧死するというお話を前提としている)。

 
 その弁護士がふるっている。

 芥川氏によれば,
 蟹の弁護に立った,雄弁で名高い某弁護士も,裁判官の同情を乞うよりほかに,策の出づるところを知らなかったらしい。
 その弁護士は気の毒そうに,蟹の泡を拭ってやりながら,「あきらめ給え」と云ったそうである。
 もっともこの「あきらめ給え」は,死刑の宣告を下されたことをあきらめ給えと云ったのだか,弁護士に大金をとられたことをあきらめ給えと云ったのだか,それは誰にも決定出来ない。

とのことである。

 裁判官の同情を乞うよりほかに策のない案件に弁護士が直面する場合は多い。
 そんなときどうすれば良いのか皆悩むのが常であるが,泡を拭ってやりながら「あきらめ給え」と言うとは。。。


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2013年02月22日

「かちかち山」にみる復讐の快楽

 残酷な昔話は多々あれど,かちかち山ほど極悪非道,人倫無視の昔話は寡聞にして知らない。
 「食人」という強烈なテーマで幕をあける。
 タヌキ汁にされそうになったタヌキは,縄をほどいたお婆さんを撲殺した上,それだけで飽き足らず,お婆さんの肉を骨から外し,これを鍋で煮ることで,自己を捕えたお爺さんに,「ばばぁ汁」を食わせる。何ともおぞましい復讐劇である。
 これに対するウサギの復讐も残虐を極める。タヌキの背中に負わせた薪に火をつけ,背中一面に大やけどという重傷を負わせ,さらにそこに唐辛子をすり込み絶望的な苦痛を与え,最後には,泥の船に乗せて溺死させてしまうのである。 

 「正々堂々と一騎打ち」という我々の知るサムライ魂とはおよそ無縁の陰湿かつ冷酷な世界観がそこにはある。

 そんなかちかち山だが,江戸時代には大人気を博していたそうである。
 思えば,同じく江戸時代に大人気だった「忠臣蔵」も我々の知るサムライ魂に反する残酷な話である。
 確かに,吉良上野介は悪い人間であったのかもしれない。しかし,屈強な47人もの男たちが正々堂々と戦いもせず,深夜に寝込んでいる高齢の吉良を襲い,惨殺したのである。

 人間とは残虐な生き物であり,残虐な復讐を好むのかもしれない。だからこそ,忠臣蔵やかちかち山が長年人気を博しているのであろう。

 裁判とは実に残酷な制度だと感じることがある。
 民事事件であれば強制的に財産を奪うことができるし,刑事事件であれば強制的に命さえ奪うことができる。
 それは法に則った正式な制度であり,何ら恥ずべきものではない。しかし,その中に,残虐な復讐心が紛れ込んでいることもまた間違いない。
 法に則っているのであるから,どんな厳しい行為であっても正義であると盲信して,残虐性から目をそむけ,残虐な復讐心に流され過ぎないようにしなければいけないと改めて思った。


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2012年12月03日

憲法改正案と知的財産権

自民党が憲法改正草案を発表した。
http://www.jimin.jp/policy/pamphlet/pdf/kenpou_qa.pdf

その中で,自民党は憲法29条を
旧 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める
新 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。

と変更しようとしている。

国家の根本ルールである憲法において,わざわざ「知的財産権」の規定を設けたということは,知的財産権を重要視するという強い思いの表れかと期待したが,どうやらその逆らしい。

自民党のパンフレットでは,
29 条2 項後段に、「知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない」と規定しました。特許権等の保護が過剰になり、かえって経済活動の過度の妨げにならないよう配慮することとしたものです。
と解説されている。

解説からすると,自民党は知的財産権の保護を過剰にしないために憲法改正が必要だと考えているようだ。

知的財産権の保護を強めれば,知的財産権を得ることが経済的利益に直結する。そうなれば,国民の知的創造力は向上することになるというのが素直な考えだと思う。
「知的財産権の保護を強め過ぎて国民の知的創造力の向上にマイナスにならないようにしよう」という考えは,理解しづらい。

私が思う素直な考えは,経済的利益=「金」で人が動く・・・というさもしい思想の表れであり,新憲法はもっと崇高なもので人は動くと考えているということであろうか。
実に理解しづらい内容だ。

憲法改正は個人的には必要だと思っているのだが,本改正案には賛成できない。というより理解しづらい面が多々ある。考えてみると,現行憲法でも理解しづらい面が多々ある。
シンプルで分かりやすいものにしようとしても,いろいろな人の意見を取り込んでいくうちに,次第に玉虫色の理解しづらい内容になってしまうのかもしれない。

根本ルールを決めるということは実に難しいものだ。

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2012年10月01日

弁護士はしつこい!?


 以前に比べると,スピードアップされたとはいえ,裁判には時間がかかる。
 真っ向から争いのある事件だと1年以内に終わることはまずない。そして,裁判のクライマックスは終盤にあり,弁護士は依頼を受けてから1年以上も経って,受任当時以上に燃えていたりする。

 依頼者の立場から考えると,依頼して1年であれば,実際に問題が発生したのは1年以上・・・もっと前ということもある。そうすると、弁護士はめらめらと燃えているのに,当事者である依頼者が醒めてきてしまったなんてことも珍しくない。
実際に問題が起こったときには熱く燃えていた依頼者も「何年も前の話だから,もういいなあ。」といった感じになってしまうのである。

 人間,いつまでも怒り続けてもいられない。そう考えると,当たり前の反応だ。
 逆に何年も前の出来事に対して,仕事とはいえ,いつまでも燃え続けている弁護士というのは,何ともしつこく根に持つ輩であると我がことながら嫌になったりする。

 先日,東日本大震災の復興に関わっている弁護士の講演を聞く機会があった。世間が東日本大震災のことを忘れ始めていることに強い危機感を持っていた。そして,弁護士はいつまでも過去を忘れずに着実に歩みを進められる存在であり,それが復興において大事なことだと力説されていた。

 そうか!と思った。しつこく根に持つなどと後ろ向きに捉える必要はない。過去を忘れることなく着実に歩みを進める・・・そんな弁護士でありたい。


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2012年04月16日

法律事務所におけるアイパッド化の限界

大阪の裁判所に行くことがあった。
事件の記録が分厚いファイル5冊にもなっていて重いなあと思い,すべてをPDF化しクラウドに保存して,必要なときにはiPadで見ることができるようにして,裁判所に向かった。
相手方代理人は,重いスーツケースを転がしてきた(これまでの自分もそうだった)。
一方こちらの手荷物はといえば,財布とiPadだけ。「なんてスマートなんだ」,そう自画自賛しながら,法廷に臨んだ。

しかし・・・。

裁判官 「ちょっと,訴状を見てもらえますか。15ページの下の方の記載についてですが…」
相手方代理人 「はい」
私 「ちょっと,待ってください。」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方代理人の視線が痛い。ようやくPDFが開かれる。

私 「はい,お待たせしてすみません」
裁判官 「これは提出いただいた甲第15号証の証拠と矛盾しませんか」
相手方代理人 「本当ですね。」
私 「ちょっと,待ってください。」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方の視線が痛い。ようやくPDFが開かれる。

私 「すみません,甲第5号証ですか?」
裁判官 「いいえ,甲第15号証です。」
私 「(げっ,間違えた)」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方の視線が痛い,ようやくPDFが開かれると思ったら,なぜか甲第16号証。あわてて,操作したためタッチミスが続き1分以上の沈黙の末,ようやくPDFが開かれる。

私 「本当ですね。でも,この点は・・・・」

40秒の沈黙・・・・・・

私 「訴状の18ページで説明しております。」
裁判官 「では次に答弁書の5ページによると・・・」

20秒の沈黙・・・,この辺で,裁判官と相手方代理人の「紙のファイル持って来いよ,どれだけ待たせるんだよ」という心の声が聞こえ始めた。

 とはいえ,私はその後も視線にめげることなく,裁判官と相手方代理人を待たせ続けたのだが,やはり,まだまだ,紙の事件記録を持たずに裁判所に行くのは難しいようだ。


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2012年03月15日

ホットコーヒー裁判

 録画して楽しみにしていた「ホットコーヒー裁判の真相〜アメリカの司法制度〜」http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/120305.htmlを見た。

 ドライブスルーで買ったコーヒーをこぼして膝をやけどした女性がマクドナルドを訴えたという有名な事件のドキュメンタリーである。
 陪審員はマクドナルドに286万ドル(約2億3000万円)の賠償を命じた。最終的には裁判官がそれを減額させ64万ドル(約5120万円)の賠償額となった。

「コーヒーこぼした自分が悪いんだろ?」
「コーヒーこぼしてやけどして2億って悪い冗談だろ?」
「訴訟社会アメリカの病理を明らかにする訴訟だ」
そんな一般的な見方に警笛をならす番組であった。

1 やけどは皮膚移植が必要なほど深刻なもので,医療費も1万ドルを越えていた(確かに写真で見ても正視できないようなグロテスクなやけどであった)
2 マクドナルドのコーヒーの温度は通常より高い85度とマニュアルで決められていた
3 そのため数百件以上のやけどの苦情があったにもかかわらずマクドナルドは対策を取らなかった
ことを考えれば,そもそも判決自体はおかしくないというのが第1のポイントだ。

 第2のポイントは大企業の陰謀である。
 ホットコーヒー裁判以降,このようなおかしな裁判をなくすため,多くの「市民集団」が立ち上がった。そして,損害賠償限度額を設けるなどして不当な訴訟を減らすような運動を始めた。マスコミもこれに追随し,非常識な裁判としてホットコーヒー裁判を連日報道した。
 ところが,実は,それが大企業の陰謀だというのである。
 「市民集団」とは名ばかりで,大企業から大量の資金が流れ込んでおり,実際に運動をしている「市民」は存在しない・・・,マスコミも広告主たる大企業の機嫌をとるためにホットコーヒー裁判の内容を捻じ曲げて報道した・・・,さらには,大企業側は,最高裁の人事にまで関与し,大金をつぎ込み消費者側の裁判官のネガティブキャンペーンを行い,更には消費者側の裁判官を刑務所に送るべく恐るべき陰謀を・・・。
 
 番組を見て「ホットコーヒー裁判」=「アメリカの訴訟社会は異常」というステレオタイプな見方は改めるべきであると反省した。

 しかしである。本当か?というのが正直な感想である。
 「コーヒーは熱いからこそ美味しい。だからこぼせば火傷する。飲む人はこぼさないよう気をつけるべきである。」というのは,大企業が陰謀をはたらくまでもない世界の常識ではないのであろうか。
 
 少なくとも私は「コーヒーは熱いからこぼさないように」「こぼしてやけどしても熱すぎるコーヒーを入れた人のせいにしてはいけない」と子どもに教える。
 「こぼしてやけどしたら熱すぎるコーヒーを入れた人を訴えられないかを検討すべきだ」などとは決して教えないであろう。

 そもそも,私はぬるいコーヒーは嫌いなのである。
 やけどのリスクがあってもマックのコーヒーは「HOT!!」であってほしい。


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posted by 内田清隆 at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2012年01月20日

裁判で勝つと弁護士費用は相手が払うの?

 「裁判で勝ったなら,自分の弁護士費用を相手に払ってもらえないのか?」という質問をよく受ける。

 残念ながら日本では,交通事故の被害者など特別の場合を除いて,弁護士費用を相手方に請求することはできない。
 そこで,そう答えると「おかしい!」と言われる方は少なくないし,私自身も「おかしい」と思うことも少なくない。
 裁判で相手が悪いことが確定しても弁護士費用は自分が負担しないといけない,確かに正義にかなわない場合はある。

 しかしである。立ち読みした本のデータなので不確かであるが,
「あなたが裁判で勝った場合,あなたの弁護士費用は相手方が払うべきだと思いますか?」
 という質問に対して「はい」が8割であったらしい。
 ところがである,
「あなたが裁判で負けた場合,相手方の弁護士費用はあなたが払うべきだと思いますか?」
 という質問に対しては
 「はい」はわずか4割
であったらしい。

 負けた場合は相手の弁護士費用は負担したくないが,勝った場合は自分の弁護士費用を負担させたい。今さらながらであるが,人間とは実に自己中心的なものである。

 そう思うと,「裁判で負けた場合,相手方の弁護士費用も払わないといけないのか?」という質問を受けることは非常に少ない。
 
 人間とは,自分に都合が良いことばかり想像するものらしい。「自己中心的で都合が良い」といえばマイナスイメージだが,実は「自分を大切にしてポジティブに考える」ということ。それでいいし,人類は,いつまでも,そういう生き物なのだろう。

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posted by 内田清隆 at 10:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2011年09月22日

被告人役に挑戦

修習生が主催する模擬裁判に被告人役で参加した。

検察官から
「あなたの言っていることはめちゃくちゃじゃないですか!」
「本当に反省しているのですか!」

と厳しく問い詰められ,
被害者参加人からは
「被告人を殺してやりたいという気持ちがあります」
と言われ,
最後に,
「被告人を懲役15年に処するのが相当」
と求刑を受けるという,散々にいじめら続けられた2日間であった。

 弁護士をしている以上,いつも自分は,弁護士役である。
本人役というのは何とも新鮮で,いい勉強になった。

 法廷でもいつもと違う席に座らされた。
 弁護人役も検察官役も裁判官役も複数いるのだが,被告人役だけはぽつんと一人。
 みんな,ハイバックの革張りの立派なソファに着席して前には立派な木製の机がある。
 被告人だけは,安っぽいベンチに座らされて,前には,コロコロと転がる簡易の机しかない。
 何とも心細く,孤独感を感じる席であった。

 そんな孤独な席に座らされてるからこそ,弁護人役に対して心からすがる気持ちが芽生えた。
 自分を救ってくれる唯一の人間として,何とも頼もしく覚え,熱心に弁護活動をしてくれるのが心より嬉しかった。

 模擬裁判でもそうなのだから,実際の裁判では,もっとそうだろう。
 そのことを忘れずに,気を引き締めて毎日の裁判に臨もう。

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posted by 内田清隆 at 14:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2011年09月16日

裁判員裁判では笑いを取る

 オスカーワイルドは,耽美的で退廃的な作風で知られる19世紀英国の作家・詩人である。
 ワイルドは,当時,重罪とみなされていた同性愛の罪を巡る裁判で,無罪を主張したが敗訴し,刑務所に収監されることになった。

 その有名なワイルド同性愛訴訟の記録を読んでみた。

 色々と面白かったのだが,一番驚いたのは,陪審員に対する冒頭陳述や弁論で,弁護人が,さかんに「笑いを取り」にいっていることであった。

「クインズベリー卿は,その夜大きな野菜の束を持って,あらわれました(哄笑)。」
などと,記録には,法廷で笑いを取った弁論のあちこちに(哄笑)と書いている。

 残念ながら,アメリカンジョークならぬ19世紀英国ジョークが,私には,いまいち理解できない。しかし,弁護人が積極的に笑いを取りに行く姿勢には驚かされた。さすがユーモアとウィットを大事にする国である。


 先日経験した裁判員裁判で,裁判員から,「冒頭陳述では,緊張しすぎていて,弁護人が何を言っているのか分からなかった」という感想を耳にした。
 冒頭陳述は裁判の最初で行われる。そのため,弁護人も,冒頭陳述時点では,まだ緊張している。だから,その緊張が裁判員にうつってしまったのかもしれない。

 そこで,今度,裁判員裁判で冒頭陳述を行う際には,19世紀英国の弁護人に負けないよう,笑いを一つは取って,裁判員の緊張を和らげてみたいところだ。

 あの静まり返った厳粛な雰囲気でユーモアを発揮しても,笑いを取るのはかなり困難であることは疑い得ない。
 それを考慮すると,笑いを取るには,「並々ならぬ胆力」「卓越した技術」が要求されることであろう。
 
 何事もできると思えばできる。
 ぜひ,挑戦して成功させてみせたい。


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posted by 内田清隆 at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2011年09月12日

裁判では勝ち過ぎてはいけない?

相手を絶望と怒りに駆り立てるほど痛めつけてはならない。
やむを得ず人を痛めつける場合、その復讐を恐れる必要がなくなるまで徹底的に叩き潰さなければならない。

(マキャベリ「君主論」)

 マキャベリが想定していた国家間の戦争とは異なり,裁判で相手を「徹底的に叩き潰す」ことは,普通はできる話ではない。
 だからであろうか,裁判では「勝ち過ぎてはいけない」といわれることも多い。
 勝ち過ぎて,相手を絶望と怒りに駆り立てる直前で和解することが理想という考えである。

 訴訟,執行,また別の訴訟,仮差押,破産申立,不当差押を巡る訴訟・・・,そんなことを10年近くも繰り返した事件があった。
 「勝ち過ぎ」による,恨みがそのような長期化の原因であった。

 まさに,消耗戦となり,経済的には,お互いが損をしてしまう事件であった。
 ところが,驚いたことに,お互いともに,そのことを後悔する様子はなかった。
 つまり,「徹底的に叩き潰す」覚悟をもって,やっていたわけだ。
 そうであれば,「勝ち過ぎ」を恐れる必要はないだろう。

 しかし,そこまでの覚悟もないのに,裁判で「勝ち過ぎ」てしまうのは確かに問題だ。
 そこで相手に与えた恨みは,必ず,いつか,自分に跳ね返ってきてしまう。
 
 そのことを分かっていながら,
  徹底的に叩き潰すつもりでやるのか,
  そこまで痛みつける前に話合いで終わらせるのか,

とても難しい問題である。


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posted by 内田清隆 at 10:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2011年08月31日

隠れた法定証拠法則

 法定証拠主義という制度がある。
 「お金を貸した」という事実を裁判官が認定するには,証拠として,借用書を提出しなければいけないと法律でなっているといった具合に,「一定の事実の認定にあたっては必ず一定の証拠に基づかなければならない」と法律が定めている制度である。

 日本は,法定証拠主義をとっていない。
 そのため,借用書がなくても「お金を貸したから返せ」という裁判をすることはできるし,本人の証言だけからでも「お金を貸した」という事実を認めることは可能である。
 どんなものでも証拠になり,どんな証拠からお金を貸したという事実を認めてもよい,そのような制度を自由心証主義という。

 ところが実際の裁判官において,借用書などがなければ,貸金返還訴訟で勝つのは難しい。
 特に,一般人ならともかく,商売人であればまず不可能だ。
 裁判所は,「商売人が借用書もなしにお金を貸すことはあり得ない」という経験則をまず曲げない。
 そのため,実際上には,「商売人が貸金返還訴訟を行うには,借用書を提出しなければならない」という法定証拠主義が採用されたのと同じことになっている。
 
 「自由心証主義といっても,結局は,法定証拠主義と変わらない!」と不満を持っていたのだが,それが公平なんだと逆に怒られたことがある。

 つまり,借用書も取らずお金を貸す方が悪いという理屈である。
 借用書も取らずに貸す方が悪いのだから,実際にお金を貸していたのだとしても,返してもらえなくても公平を害することはないという理屈である。

 言われてみればそうなのかもしれない。
 しかし,そうなのだとすれば,「借用書がなければお金を返せという訴訟はできません」と法律で決めてくれた方が分かりやすい気もするのだが・・・。

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posted by 内田清隆 at 10:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感