2026年06月02日

実はもっとも“民主的”かもしれない法──イスラム法の正体

 世界の法体系を、大きく3つに分けるとすれば、シヴィル・ロー(大陸法)、コモン・ロー(英米法)、シャーリア(イスラム法)になるであろう。
日本法は大陸法に近いため、もちろんシヴィル・ローには詳しいし、コモン・ローも専門的に勉強した。しかし、イスラム法となるとまるで知らないことに気がついた。
 
 息子に、「法学者で有名な人って誰?」と聞かれて、美濃部達吉や我妻栄を挙げたが、(当然ながら)知らないようで、「法学者は有名な人いないんだね」と言われてしまった。
 イスラムの知識人を代表するイスラム世界では超有名なガザーリーは法学者であるし、イブン・ハルドゥーンもイブン・バットゥータも法学(フィクフ)を基礎教養として修めていた。一方日本では、法律を学んだ有名人を探すのは難しい。
 そんなところから興味をもち、イスラム法のことを少し調べてみると、色々と面白い発見があった。

1 話合いで決まる法
 イスラム法において法源は、過去の判例ではなく、「コーラン(クルアーン)」や「ハディース(ムハン マドの言行録)」である。イスラム法では、飲酒が禁止されるが、それは「コーランに書いてあるから」と言われる。しかし、実際には、それほど単純ではない。

 確かにコーランには
「酒と賭け事、偶像と占い矢は、忌み嫌われる悪魔の業である。これを避けなさい。恐らくあなたがたは成功するであろう。」(5章90節)
と記載があり、酒を全面的に禁じているように見える。
しかし、一方で
「信仰する者よ、あなたがたが酔った時は、自分の言うことが理解できるようになるまで、礼拝に近付いてはならない。」(4章43節)
との記載もあり、飲みすぎや深酒を禁じているだけだとも思える。
さらに、
「楽園を描いてみよう。そこには腐ることのない水を湛える川、味の変ることのない乳の川、飲む者に快い酒の川、純良な蜜の川がある。」(47章15節)
と、酒を素晴らしいものだとする記載まである。
※翻訳はいずれもhttp://www2.dokidoki.ne.jp/islam/quran/quran000.htmから引用

 そうなると、このように一見すると矛盾しているように思えるコーランをどのように解釈するのかという問題は避けられない。
 また、人々が直面する問題の中には、コーランやハディースに直接答えが書かれていないものも少なくない。さらに、インターネットのように、イスラム成立当時には存在しなかった新しい問題も次々に生まれる。

 そこで、ウラマー(法学者)が話合い、ムスリム共同体で合意した事項(イジュマー)が、実際上は、法源になることになる。もちろん、ムスリム共同体が一つであった時代はとうの昔に終わり、たくさんのイスラム「国家」ができている現在、全ムスリム共同体で話し合うのは不可能だ。しかし、今でも、国会でも裁判官の集まりでないウラマーで話し合って合意した内容が重要な法源になる国は多い。

 もちろん、理念的には、真の立法者である神の意志を、人間が探っているにすぎないということになるが、実質的には、(敬虔なムスリムには怒られるかもしれないが)人間が適切なルールを話し合って決めているに非常に近いといえるだろう。

ウラマーのイラスト.png

2 英米法と大陸法の間
 このようにあいまいな方法で、「法」が定まるイスラム法の世界は、古典的には、成文法をもたない。「法律」というと文章に書かれた「固い」ものだと思い込む、我々大陸法系の国民からすると驚くべきことだが、英米法も伝統的には同じように成文法をもたない。その方が、世間の変化に柔軟に対応できるというメリットがあるのだろう。

 一方で、英米法の理論的な問題点は、多数の話合いを通さずに、裁判官が恣意的にルールを作ることができてしまうおそれがあるということであろう(現実には、多くの国・州でそのようなことはないが)。

 これに対して、イスラム法では、多数のウラマーの合意を重視することで、裁判官の恣意的判断を防止することができる。そう考えると、英米法と大陸法のバランスを取った良い制度といえるかもしれない(なお、理念的な話で、実際は、理念より、現実の政治体制の方が重要であることは言うまでもない)。

 英米法系の国では、刑法犯でも、成文法ではなく裁判例によって犯罪が形成されていた分野が存在した(コモンロー犯罪)。大げさに言えば、強盗が5年以上の懲役になるかは成文法ではなく、裁判所が作り上げてきた過去の裁判例から、なんとなく決めていたことになる。これでは、余りに恣意的になりすぎるということで遅くとも20世紀以降は英米法の国でも刑法については議会が合意により作成した制定法によりルールを明確にするのが常識的になったが、イスラム法では、この点、一歩先に行っていたとも評価できるであろう。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2025年11月18日

ロボット裁判官による未来の法廷

ロボット裁判官の登場
アメリカの刑事事件の裁判では、5年以上前から、再犯予測をするAI「COMPAS」が現実に利用されている。

近年、以前から噂されていた「ロボット裁判官」が現実味を帯びてきたというニュースをよく目にするようになった。

既に訴訟の勝訴確率を有料で判断するサービスは日本にも存在する。
https://justice.legalai.co.jp/#/top
あるイスラエルのメーカーの発表によると、同メーカーの開発したソフトは85%の精度で、どちらが勝訴するかを的中させる。結構な精度だ。
https://israel21c.org/ai-software-predicts-if-a-legal-case-a-winner-or-no-hoper/

それらからすれば、AIが裁判になるような争いについて、相当に説得的な判断を下すことは、既に可能なのであろう。

ロボット裁判官の流行
労働審判は従前の訴訟と比較して、いい加減で不正確である。しかしながら、時間がかからず費用もかからないという大きなメリットがあるということで大流行している。
そうだとすれば、少々精度が低くても、圧倒的に早くて費用もかからないAI裁判官の需用はすぐにでもありそうだ。

ロボット裁判官を強制するとなれば倫理的な問題もあるし法改正も必要である。しかし、双方の合意でロボット裁判官を使用するということは、すぐにでも可能だし、時間と費用の節約のためにすぐにでも行われそうだ。

未来の法廷
すでに、多くの弁護士が生成AIを業務に使っており、近いうちに、ロボット裁判官だけでなく、ロボット弁護士が活躍する時代も近いのかもしれない。

まだどこの国でも行われていないであろうが、将来的には、AIそれ自体が、原告や被告になるということもあり得るかもしれない。

そうなった場合の未来の法廷では、ロボットの権利を守るため、ロボット弁護士同士が議論し、ロボット裁判官が判断することになる。
「何それ?」「何の意味があるの?」と思ってしまうが、それは古い人間中心主義に害されている古い人間だからなのかもしれない。

「昔の人間って『議論』してたんだってね」「すごいよね〜昔の人たちって」といった会話がなされる未来は、もうすぐそこだ。

ChatGPT Image 2025年9月16日 15_42_29.png


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

2025年02月25日

犯罪減少社会

令和5年版犯罪白書を信じるのであれば、平成15年頃をピークに、刑法犯の認知件数や検挙件数は、激減している。
犯罪全体.PNG
 
窃盗犯の激減がすごいが、殺人、強盗、放火といった凶悪犯も軒並み減少しており、特殊詐欺など一定の犯罪を除き、ほとんどの犯罪が大きく減少している。
殺人.PNG
強盗.PNG
放火.PNG

20年前からすでに、日本は治安のよい犯罪の少ない社会と言われていた。悪いことばかり大きく報道されるためイメージがわかないかもしれないが、その犯罪の少ない社会からさらに、犯罪は激減しているのである。
いうまでもなく、犯罪が少ない社会とは、安心・安全な素晴らしい社会である。この統計からすれば、日本はさらに素晴らしい未来に向かっているといえるであろう。

刑事事件は、弁護士にとって「儲かる」事件ではないので、刑事事件の減少により法律事務所が経営難に陥ったという話は聞かないが、もし「儲かる」事件であったとしたらそのような話が出てきても不思議じゃない激減ぶりだ。

そういえば、最近、少年非行が減ったため、若い弁護士が少年事件を経験できなくなっていることが、弁護士の教育上問題であるといった意見を弁護士会で聞いたことがある。

そこで調べてみたが、確かに統計上も少年事件は激減している。

少年事件.PNG

こうしてみると、尾崎豊が「15の夜」でデビューした昭和58年頃がピーク。今や、その10分の1程度にまで減っている。つまり、誰も、盗んだバイクで走り出さなくなったわけだ。

そういえば、世の中の高齢化と共に、私が最近担当した刑事事件をみても犯罪者の高齢化を感じる。
原因は他にも色々あるだろうが、子どもたちが悪いことをしなくなり、犯罪をするような人間は年寄りだけになってきたというのが、犯罪減少の一つの理由だろう。

日本がよい方向に向かっている証拠だと思う反面、なんだか社会の活力がなくなっているようにも思え、少しだけノスタルジーも感じてしまう。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 16:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2025年01月12日

法廷ジョーク集

アメリカでは、弁護士ジョークだけでなく、法廷ジョークも人気があります。
確かに、大真面目に行われる法廷だからこそ、笑ってしまうようなやり取りがなされることがあります。ジョークは、実際にあった話を元にしているのかもしれません。

弁護士 : そのとき、何が起こったのですか?
証人  : 彼は私に「顔を見られた以上、お前を殺すしかない」と言いました
弁護士 : それで、彼はあなたを殺したのですか?
証人  : いいえ
・・・確かに、当たり前すぎることを確認のために聞いてしまうことはあります。「令和元年というのは令和1年ということですか?」という無意味な尋問が先日ありました。

弁護士 : あなたの誕生日はいつですか?
証人  : 6月18日です
弁護士 : 何年のですか?
証人  : 毎年です。
・・・よく考えてみると難しい話で、「誕生日」には2つの意味があるんですね。

弁護士 : あなたはこの町で人生のすべてを過ごしたということでいいですか?
証人  : まだです。
・・・1文目は「Have you lived in this town all your life?」、2文目はnot yetなのですが、和訳してしまうとあまり面白くないかもしれません。

最後に上手く訳せないのですが、
弁護士 : 答えは簡単ですから、すぐに答えてくださいね
     あなたはなんという学校に行っていましたか
証人  : 簡単・・・
・・・原文は、”your answer must be oral”と言われた上で、学校名を聞かれて“oral…”と答えるというものですが、少し変えてみました。
 「インドの主食はなんですか」という質問に「はい、そうです」と回答するというのと同じパターンでいかにもあり得なそうな話ですが―

裁判官「それでは、住所を言ってください」
被告人「住所」
裁判官「そうではなくてあなたの住所を言ってください」
被告人「あなたの住所」
といったやりとりは聞いたことがあります・・・

引用元
https://onward.justia.com/april-fools-lawyer-jokes-courtroom-funnies/


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 14:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2024年11月26日

アメリカ弁護士ジョーク分析

アメリカでは(イギリスでも)、弁護士に関するジョークLawyer Jokesが非常に人気で、一つの分野を形成している。

「金に汚い」弁護士
ジョークで一番多いのは、弁護士はお金のことばかり考えていて「金に汚い」というものだ。
・・・・・
質問者「あなたの弁護士報酬は3回の相談で10万円だそうですね?」
弁護士「その通りです」
質問者「それはいくらなんでも高いんじゃないですかね。」
弁護士「確かに、そうかもしれません。それでは、最後の質問をどうぞ。」
・・・・・
Q 弁護士とバッファローは何が違う?
A 弁護士の方がよりチャージする(The lawyer charges more.)
※チャージchargeに「体当たりをする」と「費用を請求する」の2つの意味があるのをかけている。
・・・・・
弁護士「裁判官、新しい証拠が発見されたので、高等裁判所に控訴したいです。」
裁判官「どんな新しい証拠が見つかったのですか?」
弁護士「裁判官、依頼者はまだ1000ドル持っていることが発見されました。」
  
「正直でない」弁護士
ジョークで二番目に多いのは「弁護士は正直でない」というものだ、
・・・・・
Q サンタクロースと妖精と正直な弁護士と年取った酔っ払いが歩いているとき、全員が同時に20ドルが落ちているのを発見しました。誰がそれを拾ったでしょう?
A もちろん年取った酔っ払いです。他の3つは、架空の生き物です。
・・・・・
あるお母さんと男の子が墓地を歩いていると、「ここに正直な男、弁護士が眠るhere lies a lawyer and an honest man」と書かれている墓碑がありました。それを見た男の子が言いました。
「お母さん、どうしてこの墓地には二人の人が埋葬されているの?」
※here lies a lawyer and an honest manは、「一人の弁護士と一人の正直な男」とも、「弁護士で正直な男」とも読めるが、弁護士が正直なはずがないから、前者と判断したというジョーク。

「地獄に落ちる」弁護士
金に汚く、正直でない弁護士、地獄に落ちるしかなくなります・・・
・・・・・
あるエンジニアが間違って地獄に落とされました。そのエンジニアは地獄にエレベータをつけて、地獄の池に橋を作り、ジャクジーを作り、地獄は快適になっていきました。
神様「おい悪魔。そのエンジニアはうちに来るはずの人だぞ」
悪魔「いまさらいってもどうしようもない」
神様「おいエンジニアをこちらに戻さないと、お前を裁判にかけるぞ」
悪魔「お前はどうやって弁護士を探すつもりだい?」
※弁護士が天国にいるはずがないから探せないという趣旨のジョーク・・・
・・・・・
弁護士と教皇が天国に行きましたが、弁護士の部屋の方が教皇の部屋より立派でした。
そこで弁護士は聖ペテロに言いました「教皇よりも立派な部屋で驚いたよ」。
聖ペテロは言いました
「ここには教皇はたくさんいますので、もう飽き飽きしていました。でも、弁護士は初めてですから」。


英米の弁護士はどうしてこんなに嫌われているのでしょうか?日本でも弁護士のイメージが悪くなっているということは聞きますが、ここまで嫌われてはいないでしょう。
これだけジョークがあるということは、それだけ弁護士という存在が人々の生活に浸透している証拠なのかもしれませんが、地獄には落ちないように襟を正して行動していきたいものです。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2023年10月21日

とても便利な「法令用語日英標準対訳辞書」

法務省は、法律用語をどのように英語に翻訳するべきかについてのサイトを作成している。
https://www.japaneselawtranslation.go.jp/en/dicts/download
いわば公定訳であり、非常に参考になる。

全単語が網羅された「法令用語日英標準対訳辞書」は無料でダウンロードすることも可能だ。
https://www.japaneselawtranslation.go.jp/en/dicts/download

読んでみると色々と面白いのだが、日本語では難しいが、英語では簡単になる単語がたくさんあることに気付いた。
意匠design 複製物copy 風説rumor 評決vote  労役場workhouse 督促demand 謄本copy 煤煙soot and smoke 聴取hearing 審問hearing 思料するconsider 情を知ってknowingly 支弁payment 減殺reduction 毀棄destruction 勧奨encouragement 永小作権farming right等々、英語だとずいぶん簡単な言葉になる。
特に、囲障fence 準則rules 威力forceなどは日本語では無意味に難しい言葉を使っているなあと感じさせられた。

その他、本文main clause 補正correction 正本original 成年者adult 引渡delivery 廃棄物waste 任命権者appointer 準ずるequivalent 積み立てるreserve 立会いattendance 等々難しい単語ではないものの、英語にしろと言われたらなかなかできないなあと思わせられる単語も多い。
博徒habitual gamblerなど見事な訳だ。

残念ながら素晴らしい試みにもかかわらず、そこまで知られていないようにも思える。
法律用語を翻訳する必要が生じた場合には、まず確認したいサイトだ。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑



posted by 内田清隆 at 17:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2023年07月27日

謎の法律業界用語集4

以下の記事の続き
謎の法律業界用語集1
http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/39406502.html
謎の法律業界用語集2
http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/39416916.html
謎の法律業界用語集3
http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/54066903.html

書証
 「証拠となるべき文書」の意味で普通使われる。文書の証拠→文書証拠→書証と略されるに至ったらしい(文書を証拠資料とするための証拠調べ手続というのが本来の意味らしいが、あまりその意味では使われない)。
 とにかく、噛みやすくて発音しづらい用語で、話す前に若干緊張してしまう。「骨粗しょう症訴訟、書証の証書で勝訴」という早口言葉を普段から練習して、いざというきに噛まないように備えたい。

赤い本
 赤本といえば、一般には毎年発行される大学入試の過去問題集のことを指すことが多いが、法律業界では毎年発行される「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」を指す。交通事故訴訟で損害額を算定する際には必ず必要となる本だ。
 表紙に「赤い本」と書かれており、「赤本」でなく「赤い本」が公式だが、どちらの名称もよく使われる。
 ちなみに「青本」も必携。私は集めていないが「緑本」「黄色本」もあるらしい。揃えると戦隊ものになりそうだ。

期(き)
 法曹界における業界経験年数をはかる物差し、それが「期」である。
 法曹になるためには、司法研修所を卒業する必要があるが、昭和22年に司法研修所に入所した「1期」以下、すべての法曹には「期」がつけられている。平成13年に司法研修所を出た私は「54期」、令和5年には「76期」が生まれる。
 「自分の方が期が上」「あの人の期って知ってる?」「期にこだわらない」といったように用いる。
 「キ」と聞いて「木」でも「気」でもなく、「期」が出てくるようであれば法曹関係者と考えてよいだろう。

懈怠  
 義務を怠ることを意味する言葉。業界では、「けたい」と読む。
 「任務懈怠」=任務を怠ること、「通知の懈怠」=通知をし忘れること、「懈怠約款」=支払を怠った場合に適用となる約束、といった用語で用いられる。
 昔、「かいたい」と読んだら、「『けたい』と読むんですよ。これくらいは、常識ですよ!」と笑われたことがあるのだが、改めて辞書を引くと「かいたい」という読み方もあるらしい・・・。

期日
 裁判所で開催される当事者が出頭して行われる手続の日を、業界では、まとめて「期日」と呼ぶ。
 弁護士が「その日は期日がありまして…」と言えば、裁判所に行く予定があるという意味であるし、裁判官が「次回の期日までに・・・」と言えば、次回裁判所に集まる日までにという意味である。
 非常によく使われるため、もはや業界用語だと分かっていない人も多い。
 
ブル弁
 ブルジョワ弁護士の略。歴史を感じさせる用語だ。大きな会社の企業案件を担当し高収入を得ている弁護士を指し、軽蔑的に用いることもあるが、羨望や親しみを込めて用いることもある。
 初めて聞いた時、ブルっている、ブルブル震える情けない弁護士の事なのかと思ってしまった。

スタッフ
 法テラスに常時勤務する「スタッフ弁護士」のことをいう。語源は謎である。原則としてお金のない人のための扶助事件や国選事件だけを扱い,その代わりに法テラスから給料をもらう、一種の公務員弁護士である。
 昔は「スタッフ弁護士」と呼んでいたと記憶しているが、最近では「スタッフ」と短縮されることも多い。狩野英孝の「スタッフゥー」の影響でホストを想像してしまうので、正式名称で呼ぶべきであろう。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2022年06月21日

同性婚訴訟・日米判決の違い〜結婚は死を超えるもの?

本年6月20日,大阪地裁は同性婚を認めないことは憲法違反に当たらないという判断を示した。
https://www.call4.jp/file/pdf/202206/d27041ab04ff5452f38d3caf5c17b0dd.pdf
の6頁によれば,
異性間の婚姻は、男女が子を産み育てる関係を社会が保護するという合理的な目的により歴史的、伝統的に完全に社会に定着した制度
であるが,
同性間の人的結合関係にどのような保護を与えるかについてはなお議論の過程
であるそうだ。

同性婚を認めないことは憲法違反に当たるとした札幌地裁令和3年3月17日判決も結婚に対する考え方は似ている。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/200/090200_hanrei.pdf
の40頁によれば,
婚姻とは,婚姻当事者及びその家族の身分関係を形成し,戸籍によってその身分関係が公証され,その身分に応じた種々の権利義務を伴う法的地位が付与されるという,身分関係と結び付いた複合的な法的効果を同時又は異時に生じさせる法律行為
であるそうだ。

これらと比較すると,同性婚を認めないことは憲法違反であるとした有名な2015年6月26日米連邦最高裁判決は,だいぶ雰囲気が違う。
https://www.supremecourt.gov/opinions/14pdf/14-556_3204.pdf
の28頁によれば
No union is more profound than marriage, for it embodies the highest ideals of love, fidelity, devotion, sacrifice,and family.
In forming a marital union, two people become something greater than once they were.
As some of the petitioners in these cases demonstrate, marriage embodies a love that may endure even past death.

どんな結合も結婚ほど深淵ではない。結婚は,愛,貞節,犠牲,そして家族の最高位の理想を具体化する。
結婚をすることで,二人の人間は以前より偉大になる。
今回の申立人の何人かが示したように,
結婚は死さえも超える愛を具体化する

ものであるそうだ。

私は同性婚には肯定的であるが,結婚が米国最高裁がいうほど素晴らしいものであると裁判所で訴える自信は正直ない。日本人の限界であろうか・・・


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 18:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2021年06月17日

竜樹菩薩作「大智度論」における窃盗罪の構成要件

日本の窃盗罪(占有離脱物横領を含む)が成立するには,通説によれば,
@故意に
A他人の財物を
B自己の物にする意思をもって
C占有を取得すること
が必要である。

@から,他人の物を持ち帰ったとしても,自分の物と誤解していたのであれば窃盗罪は成立しない。
Aから,自分の財物,例えば空き地に放置されている盗まれた自分の自転車を取り返しても窃盗罪は成立しない。
また,「物」でないもの,例えばカリオストロの城のルパン3世のように他人の「心」を盗んでも窃盗罪は成立しない。
Bから,すぐに返すつもりで,少しだけ他人の自転車に乗っても窃盗罪は成立しない。
Cから,万引きするつもりで商品を手に持っても,自分のカバンに入れたり,手に持ったまま店から出るなどして「占有を取得」しなければ窃盗罪は成立しない。


日本が弥生時代又は古墳時代であった頃に,竜樹菩薩ことナーガールジュナが記したと伝わる仏教思想の百科事典「大智度論」に以下のような文章が出てきた。

他人のものだと知りながら,盗みの心を生じ,物をもとあったところから離して,その物を我に属させること,これを「盗み」と名付ける。・・・その物の存在するところからその物を離さないならば(盗みではない)。

竜樹菩薩は,
「盗み」の罪の成立要件として
@他人のものだと知りながら=故意
A他人ものを≒他人の財物を
B盗みの心をもって≒自己の物にする意思をもって
Cもとあったところから離して我に属させること ≒占有の取得
が必要であるとしたわけであるが,非常に現在と近い分析である。

「汝,盗むなかれ」は,モーゼの十戒にも出てくる世界共通の教えである。
しかし,キリスト教世界では,
神に禁ぜられている方法によって、・・・隣人のものを、自分のものにしようとする、一切の悪いこと、企てを、盗みとよばれるのです。これらに、すべての貪欲、不必要な浪費をも、加えるべきです。
この戒めはこの世の法的問題だけでなく、神に禁じられているものは全ていけない、盗みであると言います。

参考:http://www.jcu-sapporo.com/bible/20150802/
といったように宗教的・道徳的教えとすることが多いのではないかと思う。

仏教とは,直感的・非現実的な教えであるといったイメージをもっていたが,意外に分析的・現実的な思想なのかもしれない。

菩薩.jpg

それにしても,竜樹菩薩が
「自分のものだと誤解したのだから,盗みでない!」
「これは,もともと自分の物であったのだから盗みではない!」
「返すつもりであったから盗みではない!」
「いや確かに手はかけたけど,まだ持ち去っていないから盗みでない!」
と現在と同じような弁解をする人に対して,罪に当たるのかどうかを決めていたというのは,何とも不思議な気がする。
 人間とは実に変わらないものだ。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 14:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2021年03月20日

「反差別」社会〜米国の現状と日本の未来

進む「反差別」
人種差別に反対するBLM運動がアメリカで活発になっていますが,アメリカでは,性差別,人種差別等あらゆる差別に対して強い社会的非難が向けられています。
そういえば,カリフォルニア州の弁護士資格を得る際に,まず最初に「差別を行わない」という宣誓をさせられ,人間がいかに無意識的に偏見をもっているかという内容の差別についての研修を受講しなければいけませんでした。
トランプ元大統領の強い支持基盤は,「差別,差別って細かいことうるせー!」「黒人や女性が優遇されて逆に俺たちが差別されているぞ!」と思う白人男性達でしたが,選挙で勝ったのはバイデン大統領でした。そう思うと,この反差別の潮流は今後も進むことでしょう。

差別の経済リスク
日本でも,反暴力団運動が進み,暴力団との関係があるとされただけで,突然,銀行から取引を停止されるというリスクが高まっています。
同じようにアメリカでは,「差別的」であると会社がみなされることは致命的なリスクになり得ます。そのため,アメリカの大手企業は,「人種差別・男女差別を行わない」,「差別を行う企業とは取引をしない」という条項を契約に盛り込み,実際に差別的と疑われる企業との取引を速やかに停止しています。

森会長辞任に見る日本の未来
森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会元会長は,女性差別的な発言をしたとして辞任しました。印象的であったのは,国内よりも,アメリカのマスコミによる強い批判を受けて,辞任に追い込まれたという点でした。
今後,アメリカの大手企業と取引をする日本企業は明確に反差別の姿勢を打ち出す必要がでてくるでしょう。
そして,そのような日本企業と取引をする企業も同様の反差別の姿勢を打ち出す必要がでてきますから,アメリカ企業と取引をしない日本企業もひとごとではなくなります。

差別主義との批判を受ければ,経済社会からの撤退に追い込まれる・・・怖い世の中になりそうです。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2020年11月21日

日本におけるブラックライブズマター

米国では,ブラックライブズマターとして,人種差別に反対するデモや暴動が継続して起こっている。その発端は,警察官による黒人への不当な対応にある。
私も,以前アメリカで夜中に車を運転していた際に,ピストルを手にした複数の警察官に車から降ろされて,「フリーズ」と叫ばれながら,壁に手を付けさせられ,身体検査をされたことがあった。
米国警察官の対応の問題をテレビで見聞きするたびに,その時の異常な恐怖感を思い出す。

日本では無縁の話だと思っていたが,金沢市在住のある白人から似たような話を聞いた。
夜間に自転車で普通に走っていたら,突然進行方向の歩道にパトカーが乗り上げて停車し,降りてきた警察官に取り囲まれて職務質問をされたという話だ。
自分は多くの日本人と肌の色が違うから理由もなく職務質問される,いきなり警察官に囲まれて逃げられないようにして質問されるのは非常な恐怖であると怒っていた。

また,こうも言っていた。「日本では逮捕されたら保釈はされない。証拠を捏造されて裁判されることになる。裁判されたら無罪になることはない。外国人だと特にそうだと聞いた。恐ろしい国だ」と。
私は,さすがにそれは言い過ぎだと反論しだが,一面真実を現わしていることも確かである。
少なくとも,多くの外国人など見た目が少数派の日本在住者がそのように日本をとらえていることは確かだ。

確かに,アメリカとは異なり,日本で警察官が外国人を殺したという話はほとんど聞かない。そう考えれば,日本はアメリカよりましとも思える。
しかし,アメリカは極めて多数の異人種がまじりあっている国である。そのため,黒人といってもアジア人といっても膨大な人数がいて,その声は大きい。
一方,日本では,アジア系,しかもヤマト民族が圧倒的多数を占め,少数人種の声は小さい。
そう考えると,意外に日本の闇はアメリカよりも深いのかもしれないと思った。

生まれた所や皮膚や目の色で
いったいこの僕の何が分かるというのだろう。 
 ・・・こんなはずじゃなかっただろ? 
歴史が僕を問いつめる。
まぶしいほど青い空の真下で
 (THE BLUE HEARTS 「青空」)


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2020年06月27日

アメリカ社会の深い闇

新型コロナが日本の100倍流行しているアメリカで,マスクもろくにせずに,各地でデモや暴動が起きているのはどうしてなのだろう? 
その背景を調べていると,Netifixが無料公開している「憲法第13条」というドキュメンタリーに遭遇しました。
https://youtu.be/krfcq5pF8u8

「アメリカでは,受刑者の労働力で利益を得ている企業が政府に圧力を加えることで受刑者が急増。今では,黒人男性の3人に1人が生涯に1度は刑務所に入れられ強制労働させられており,奴隷制と同じ状態になっている。」
「アメリカでは,犯罪のほとんどは司法取引で終わっており,正式裁判になるのはわずか3%。その大きな理由はお金の問題。多くの貧しい黒人が無罪であっても有罪答弁をしている。」
といった内容でした。

正直,この番組がどこまで信用できるのかは分かりません。
しかし,普通のテレビドラマやハリウッド映画で映されるのは,アメリカの光の部分ばかりであって,その背後には,目を背けたくなるような闇の部分があることは事実なのでしょう。
そうでないと,アメリカでなぜ繰り返し暴動が起こっているのか説明が付きません。

弁護士の仕事をしていると,自分のこんなにも近くに,こんなにも深い闇があったのか・・・と驚かされることが何度かありました。
そう考えると,深い闇は,アメリカにではなく,すぐそこにもあるのかもしれません。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 16:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2018年04月24日

「言ったもん勝ち」のアメリカ的発想

英米法を少し本格的に勉強している。

その中で、どうしても慣れないのが「間違っていても何でもいいから言わないとダメ!」というアメリカ流の考え方だ。
米国司法試験では、余計なことを書いても、間違ったことを書いても減点されることはないそうだ。
一方で、言うべきことを書かないと大きく減点されるため、ともかく関係がありそうなことは何でも書いておくというのが基本になる。
とはいえ、なかなか間違っているかもしれないことをともかく書いてみるということはできないものだ。

そういえば以前米国の弁護士から、法廷で見た新人弁護士の面白い行動を聞いたことがある。
証人尋問では「異議あり」と述べて「誘導尋問です」と異議の理由を示すのだが、異議の理由をすぐに示すのは難しい。
そこで、新人弁護士は「異議あり」「誘導,重複,侮辱的,論争的,伝聞,誤導・・・尋問のいずれかです」とすべての理由を挙げていたというのである。
「そんな人いるかな〜」と笑って聞いていたのだが、アメリカ的にはそれほどおかしくないのかもしれない。
「間違ってもいい」「言わないよりは言った方がいい」、だから可能性のあることは全部言うという発想がアメリカ的なのだ。

思えば幼い頃から、「無駄口を叩くな」「余計ないことを言うな」と教育され、口に出さなくても理解し合える関係が理想の関係だと教わって生きてきた気がする。
しかし、「言わなくても当然分かるだろ!」ということが伝わっておらずに、紛争や裁判になるケースは多い。確かに口に出さずに理解し合うのは難しい。
そう思うと、アメリカ的な、間違っているかもしれないけれども関係するかもしれないことは、何でもともかく言っておくという姿勢にも一理あるのかもしれない。

言い過ぎればうっとうしくなるが、「言わなくても分かるだろう」が原因の誤解を生じさせないよう、少しはアメリカ的発想を身につけていきたいものだ。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 09:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2017年09月12日

「記録化」社会による裁判所の崩壊 

信号を無視したのはAかBか、、、それが分からないことで裁判が長期化する例は多かった。
 軽微な物損事故において、信号が何色であったか分からないために何年も裁判をしていると、不誠実ながら不毛感を感じることもあった。

 しかし,社会は変わりつつある。
 交差点付近の防犯カメラなどから、事故時の信号の色が分かることが増えた。
 最近ではドライブレコーダーの映像から、事故時の信号の色が分かることも多い。
 技術の進歩により,不毛を感じさせるような長い裁判が減ってきたのである。

 また、スマホのように,多くの人々がもてる簡易に録音・録画できる装置が増えた。
 昔は,長時間の録音をすると、テープの量が膨大になりその管理が大変であった。
 しかし今では,何時間にも及ぶ録画内容がごく小さな媒体にすべて記録できてしまう。
 そのため,録音・録画媒体が,種々の裁判に提出されることも非常に増えた。

 考えてみると,裁判の多くは,「信号が青だったのか赤だったのか」,「保証すると言ったのか言わなかったのか」といった,過去の事実の内容について争いがあるため起こるものだ。
 人間の行動の全てが録音・録画されていれば,ほとんどの裁判は不要になり,裁判所は閑古鳥が鳴くようになるであろう。
 そうなれば「裁判」をするのはもはや裁判官ではなく,録音・録画を調査するロボットだ。
現在の裁判所は不要となる。

 裁判になると分かるが,街には,すでに驚くほど多くのカメラが設置されており,人々の行動の多くがカメラに捉えられている。
 人間の行動の全てが録音・録画され,裁判所が不要となる社会の到来も,そう遠くないのかもしれない。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 09:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2017年07月11日

崩壊する「弁護士」ブランド

1991年には約1万4000人だった弁護士数が2016年には約3万7000人へと急増した。
一方で法科大学院の入学者数は2004年度の約7万2000人から2016年度には約8000人まで急減し、定員割れとなる大学院が散見されるようになった。

ライセンス生産で売上を拡大する一方で、ブランド価値の減少に苦しむ高級ブランドを見ているようだ。
バーバリーは三陽商会とのライセンス契約を打ち切り、金沢市の老舗百貨店からも撤退した。
ライセンス契約で売上は増大し知名度も上がったが、「高級」ブランドとしての評価が薄まることを心配したのだろう。

弁護士もその数を急激に増やし過ぎてしまい、ブランド価値は大きく低下してしまった。
それによって法科大学院にも人が集まらなくなっているのだろう。

これは由々しき問題だ。

弁護士のブランド価値が下がる
→いい人が弁護士にならない
→いっそう弁護士のブランド価値が下がる
→いっそう人が集まらない
という負のスパイラルの行く先には司法制度の崩壊。
「法」ではなく「力」が支配する世界だ。

司法制度が信頼を得るためには、弁護士という職業のブランド価値を高めることも大切だろう。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 13:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2016年02月09日

覚せい剤密売人の教える「商売のコツ」


 以前覚せい剤の密売人から,「商売のコツ」を聞く機会がありました。

 その密売人のいう「商売のコツ」とは
誠実性 
 適正な利益を受ける。1万円で仕入れたものを2万円で売ったり,量をごまかしたり,混ぜ物をしたりしては信用を失い,最終的には顧客が離れる
心遣い
 注射器をもっていないようであれば注射器をプレゼントし,急に必要と言われれば家まで届けるといった細やかな心遣いが重要である
スピード 
 欲しいと言われれば,できる限り急いで渡すこと。「明日でいいだろ〜」という気持ちが良くない。今欲しいという顧客の気持ちを考えてあげないといけない。
といったことでした。

 「どうやったら警察に捕まらないのか」ということが麻薬密売のコツかと思っていましたが,どんな商売にも通じる真面目なものでした。
 自身も覚せい剤中毒でもある密売人が,そんな真面目に商売をしているとは,なんだか驚きでした。
 どうして,その真面目さを正しい方向に活かせなかったものか…。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 10:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2015年08月17日

王陽明と訴訟

 私が敬愛する王陽明は,仕事が忙しくて勉強ができないと言うある裁判官に対してこう答えている。

 我何ぞ嘗て爾(なんじ)をして簿書訴獄を離了(はな)れて,懸空に去りて学を講め(きわめ)しめんや
 その応対の無状に因りて,この怒心を起すべからず。
 他(かれ)の言語の円転なるに因りてこの喜心を生ずべからず。
 自己の事務の煩冗なるに因りて,意に従いて荀旦(こうしょ)に之を断ずべからず。
 ただ此の心一毫も偏倚(へんい)有りて人の是非を曲げんとことを恐るるは,這れ(これ)便ち(すなわち)是れ格物致知なり(伝習録下巻・18条)

 (私がいつ,訴訟事件の処理を離れて勉強を極めなさいと言ったか。
  当事者の態度が悪いからと言って腹を立てるな。
  当事者がうまいことを言うからと言って喜ぶな。
  仕事が忙しいからと言っていい加減に処理するな。
  このように良心に偏りがなく,是非を誤らないようひたすら留意することこそが勉強である。)

  「仕事が忙しい!勉強する時間がない!」という言い訳は,古来から多くの人が言っているらしい。
 「それは言い訳だ。仕事を離れて勉強などない。誠実に仕事をすることこそが勉強だ!」と王陽明は言う。
 「事上磨練」にして「知行合一」,王陽明の言葉はいつも身に染みる。

  しかし思うのは,陽明がこのようなことをいうということは,
   当事者の態度が悪いと怒る裁判官
   当事者から気の利いたことを言われて喜ぶ裁判官
   仕事が忙しいからと言って手を抜く裁判官
 が昔はたくさんいたということだ。
  いや,今も変わらないのかもしれない。
  それは,弁護士でも同じことであろう。
  心しておきたい。

↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2015年06月06日

懲罰的損害賠償の可否

昨今,日本弁護士連合会は,「抑止的付加金制度」という名称で,不法行為において,実際に生じた損害額以上の賠償金を被害者に支払うことを加害者に命ずる制度を検討している。
http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2012_06/p02-19.pdf
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/17th_keynote_report_11.pdf
これは名称は異なるが,米国で認められている懲罰的損害賠償と同様の制度である。米国では,3倍賠償と呼び,一定の悪質な不法行為に対しては,懲罰として実際に生じた損害額の3倍の金額の支払を命じている。

私は,かかる制度の導入に強く賛成したい。
理由は,「正しい人が損をしない」社会の実現に必要だからに尽きる。

「無断駐車した場合には罰金1万円を頂きます」というはり紙は法的には無効である。現在の法律では,基本的には,無断駐車に対しても,実際に生じた損害=妥当な駐車料金の賠償が可能なだけである。
1日1000円の駐車場に1日無断駐車された場合には,1000円の損害賠償しか請求できない。
つまり,無断駐車であっても,契約をして駐車する人と同じだけの駐車料金を払えばよいのであり,ばれなければ,1円も払わなくてよいのである。ばれてしまっても,ばれるまでに使用した時間分だけ通常の駐車料金を支払えば済む。これで,公平といえるであろうか。

私の関わった案件でこんなことがあった。
依頼者の商標権を侵害している製品が市場に出回っていることが判明した。少なくとも10個は販売されていた。
そこで,出処を突き詰め,相手方に賠償を求めたが,相手方は責任を否認した。
そのため,訴訟を提起し,ようやく勝訴した。

しかし,認められた賠償額は,製品10個分の妥当なライセンス料だけであった。10個分についてライセンス契約を結んだ場合と同じライセンス料に過ぎない。
しかも,相手方が販売した個数が10個というのは相当に疑わしいにもかかわらず,販売を証明できた10個分のライセンス料しか受け取れないのである。
苦労に苦労を重ねて裁判をしても,このような結果である。
これで,公平といえるのであろうか。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2014年05月07日

話の下手な弁護士〜「対決」から書面中心の「口頭弁論」 

 テレビドラマの影響によるものだと思われるが,「弁護士=話が上手」というイメージが強いようだ。しかし,実際は意外に弁護士は話が下手なのである。

 裁判,特に民事訴訟では,ほとんどが「書面主義」である。
 「口頭弁論」期日と呼ばれ,建前としては,口頭で議論を戦わせる場とされているにもかかわらず,現実には,「本日提出した書面の通りです」とだけ述べ,「口頭弁論」は書面を交換するだけで5分で終わる場となり下がっている。
 そのため,私も含めて多くの弁護士は,実は,書面を書くのは上手であるが,話は上手でもないのである(もちろん,話が上手な弁護士も多いが,それは,裁判で上手になったものではない。)。

 しかし,どうも,これは昔からそうであるようだ。

26.5.7 ブログ.jpg

 先日読んだ「日本人と裁判」という本によると,鎌倉時代から,日本の裁判は書面審理が中心の何年もかかる手続きであった。
 そして「対決」と呼ばれた口頭で議論を交わす場は,書面審理の補助としてだけ運用されていたそうだ。
 今の日本の裁判とあまり変わりがない。

  私も,法廷で堂々と弁論するテレビでみる弁護士に憧れていたところもあり,「口頭弁論」が「書面の通りです」という場になっていることに納得がいかないでいた。
 しかし,考えてみれば,口頭より書面の方が「あれを言い忘れた」というミスを防げるし,後から振り返って何が議論されたか正確に分かるといったメリットも多い。
 書面による議論と口頭による議論のバランスが大事なのであろう。

 とはいえ,文書を書くのは上手だが,話は下手というのでは,弁護士としての魅力に欠ける。
 裁判が書面主義であっても,堂々と口頭で意見を述べる能力は磨きたいものだ。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑

posted by 内田清隆 at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2014年02月10日

映画「カーズ」に見る米国裁判〜「所払い」と「32,000$」

 先日,ディズニー映画「カーズ」のDVDを子供と一緒に見ていたところ,
街を壊した主人公のマックィーンが,刑事裁判にかけられていた。

51KQ1YYBV9L._SL500_AA300_.jpg
カーズ [DVD]  http://p.tl/3G_d

 その刑事裁判では,裁判官のドックハドソンが,「街追放」という判決を出そうとしていたところ,急きょ現れたカルフォリニア出身の美人?女性弁護士サリーの熱意あふれる弁論により,最終的には「社会奉仕命令」という判決が下されたのである。

 アメリカの刑事裁判において社会奉仕命令が出されるということは知っていたが,日本にない種類の判決であり,少し違和感を覚えた。
 それ以上に違和感を覚えたのが,当初出されようとしていた「街追放」という判決である。

 「遠山の金さん」や「大岡越前」では,よく,善良な町民が「江戸所払い=江戸追放」の判決を受けていたが,アメリカでは今でも所払いなどという判決はあるのだろうか?
 そう思い,少し調べてみたところ,「所払い」は現存するようだ。ある弁護士がブログに,最近,「ヒューストンカウンティからの追放=所払い」という珍しい判決を受け,ジョージア州最高裁は,同判決を合法であると維持したと書いていた。
http://www.houstonda.org/houston-county-law-school/banishment-from-houston-county.html
 さすが,アメリカ・・・という思いがする。

 また,それと同時に驚いたのは,サリーの弁護料である。設定からすると,国選弁護人のようであるが,その弁護料は3万2000ドル=320万円以上である。
 日本では,本件のような軽微な案件の国選弁護人の報酬は10万円はしないし,私選弁護人だとしても100万円でもあり得ない額である。
 
 そのようなアニメを見て育つアメリカの子供たちは,裁判に対する考えも日本の子供たちとは違ってくるのだろうなあと思った。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感