2021年07月17日

現代奴隷禁止条項とSDGs条項

自らが暴力団に関与していないことを誓約し,誓約に違反した場合に契約解除や損害賠償に応じる・・・いわゆる暴排条項は,この10年の間に著しく普及した。
最近では,暴排条項のない契約書をみる方が珍しいくらいだ。

暴排条項の流行の後,この5年で急にみるようになった条項が現代奴隷禁止条項である。
主に欧米の大企業によるものであるが,取引先やその傘下に人身取引や奴隷的労働・強制労働の禁止を誓約させ,違反があれば契約解除するという条項だ。

現代奴隷というと,遠いアフリカの鉱山やカカオ農園の話で,自分たちとは関係がないイメージがあるかもしれない。しかし,グローバル化が進む現在,アフリカは遠い国ともいっていられない。
しかも,日本においても,「技能実習生」や「留学生」といった外国人を中心に,強制的な労働により搾取される「現代奴隷」が何万人もいると政府も認めているのであるから,とても他人事ではない。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsintorihiki/dai4/honbun.pdf



さらに最近みるようになった条項が,SDGs遵守条項とでもいうべきものである。
例えば,東京オリンピック委員会は,SDGs実現のためとして,取引先に求める下記の調達コードを発表した。
https://gtimg.tokyo2020.org/image/upload/production/bl54yjizbsym6v5zuu6i.pdf

同内容を要約すると,東京オリンピックのサプライヤーになるためには,
・環境を守るために省エネ,低炭素エネルギーの利用,容器包装の低減,生物多様性の保全に努め,
・人権を守るために,国際的人権基準を順守し,差別・ハラスメントを行わず,地域住民等の権利侵害を行わず,女性・障がい者・子ども・マイノリティーの権利を尊重し,
・適正な労働がなされるよう,労働者の結社の自由を守り,強制労働・児童労働に関与せず,適正な賃金を払い,長時間労働をさせず,
・適正な経済活動を行う,すなわち,贈収賄を行わず,談合・ダンピングを行わず,紛争・犯罪と関連のない原材料だけを使用し,差別的な広告を行わず,個人情報を守るシステムを整える

必要があるということだ。 

https://www.unic.or.jp/files/sdg_poster_ja_2021.pdf
SDGs.png

大雑把に要約してこれであり,実物を読むと長い!と感じてしまうが,今後はこのような長大なSDGs順守条項がどんな契約書にも入れられるようになるのかもしれない。

SDGsの重要性に異論はないし,そのためにSDGs順守条項を設けることもよいことだとは思う。
しかし,契約書チェックを業とする弁護士として,暴排条項のチェックに加えて極めて長大なSDGs条項をチェックするのは大変面倒だ・・・と消極的なことを思ってしまう。

いっそのこと法律で決めてもらえれば楽なのだが,「法律を超えて倫理を考えています!」というアピールが重要なのであるから,盛りだくさんの契約書チェックから解放される日はなかなか来なそうだ。


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2020年11月03日

誠実協議条項の新たな可能性

誠実協議条項といわれるものが契約書に入れられる場合は多い。
「本契約の解釈について疑義が生じた場合は、甲乙は、本契約の趣旨に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。」といった条項である。

以前「誠実協議条項があるのに,突然訴訟をされた!これは同条項違反として損害賠償請求できないか?」と相談を受けたことがある。
結論からいうと難しい。
というのも誠実協議条項については,当事者の心構えを示したものに過ぎず,法的な義務を発生させないというのが一般的な考え方だからである。

私も当然のようにそのような考え方をしていたのだが,よくよく考えてみれば,これはおかしいと思えてきた。
契約書は本来,心構えを示すために作られるものではなく,法的な義務を明確にさせるために作られるものである。
また,訴訟といった手段にすぐに訴えることを禁止し,まずは誠実に協議することを義務付けることは決しておかしなことではない。

このようなことを思ったきっかけは,極めて精微な誠実協議条項を目にする機会があったためである。
その条項では大雑把にいうと
・紛争が生じた場合にはまず話合いの機会をもちたいと担当が書面を送ること
・同書面が送られた場合には他方は話合いの場に立つ義務があること
・話合い開始後30日以内に,双方は関係証拠を相手に開示すること
・上記書面を送って30日以内に回答がない場合には調停を申し立てることができること
・その場合の調停に要する費用は回答しなかった側の負担になること
・同調停が成立しなかった場合に初めて訴訟を提起できること
など,誠実に協議するとはどのような手続を踏まなければいけないか,それに違反した場合にはどのような罰則があるのかが詳細に記載されていた。

 このような誠実協議条項であれば,法的効力が否定されることはないであろう。

 民事訴訟は,正確さを求めるためスピード感に欠き,またコストもかかる手続である。
 そのため,もちろんケースバイケースであるが,紛争解決方法として最善であるとはいえない場合が多い。

 それを考えれば,契約書作成段階において,誠実協議義務は法的に意味がないとして無視するのではなく,逆に法的に意味のあるものに作り替えていく努力が必要なのかもしれない。

 いずれにしても,契約書作成において,いつもある一般条項は当然のものとして読み飛ばしがちだが,その意味を考えることを忘れないようにしたい。


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2016年07月21日

英文契約書の分かりづらさ〜その2 謎の繰り返し

 以前,英文契約書にはラテン語由来の非日常的な単語が多数使われるという話をしたが,英文契約書の理解を妨げるもう1つの原因は,同じ意味の言葉の並列という謎の現象である。
each and every      =every それぞれの
act and deed       =act 行為
final and conclusive   =final 最終的な
new and novel      =new 新しい
など,1つでよい単語をなぜか2つ並列させることで,文章を長くし分かりづらくさせている。

 この現象も,フランス語(又はその元のラテン語) の英語への影響によるものであるらしい。
 イングランドにおける公式法律用語は,18世紀まではフランス語であった。
 そのため法律用語をフランス語から英語にしようとした時,フランス語由来の単語を使うか元々の英語由来の単語を採用するかが問題になった。
 そして,最終的に「面倒だ,両方使ってしまえ!」ということになり,同じ意味の言葉の並列という謎の現象が発生したらしい。
参考 http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2013-04-09-1.html

 なんとも,乱暴かつ迷惑な話である。

 しかし,日本語でも同じような事情はあるのかもしれない。
 法律用語で欠陥のことを「瑕疵」というが,「瑕」も「疵」も,もともとは不完全なところを意味する同じ意味の言葉である。
 「損害賠償」も損したこと及び害を受けたことの賠償という意味であるが,「損」と「害」という同じような意味の言葉を羅列したものである。
 「委任」とは「委ねる」ことであり「任せる」ことであり,これもまた同じような意味の言葉を羅列したものに過ぎない。
 
 同じような言葉を繰り返すことは,分かりやすく伝えるためには必要であり,ある程度はやむを得ないことなのであろう。


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2016年03月04日

英文契約書の分かりづらさ〜謎のラテン語

英語ができても,英文の契約書を理解することは大変である。
その原因の一つは,英文の契約書ではラテン語由来の借用語が使われるためである。
 ●bona fide   =善意の
  例 bona fide third party=善意の第三者  
 ●pro rata   =按分計算で
  例 on a monthly pro-rata basis=月割りで
 ●lex fori    =法廷地法
 ●inter alia   =とりわけ,なかんずく
 ●force majeure =不可抗力
などなど,おそらく普通のアメリカ人も分らないのではないかという単語が多用されることが少なくない。
 
 実は,昨今の日本における外来語のように,英単語の半数以上は,フランス語及びその元であるラテン語からの借用語である。
 11世紀にフランスのノルマンディー公がイングランドを征服して以来,英国人が「フランスの言葉ってカッコいい!」として,どんどんラテン語系の単語を取り入れ続けてきたためである。
 こうして,契約書という威厳が必要な書類に,普段使わないカッコいい外国由来の言葉がどんどん使われるようになってしまった。

 考えてみれば,日本語の契約書でも事情は変わらないかもしれない。
 契約書を「甲と乙とは」で始めるのが通常だが,「甲」「乙」などいまどき契約書以外では目にしない。
 「不可抗力」も「善意の第三者」も「法廷地法」も普通の日本人が日常使う言葉ではない。
 中国の言葉を「カッコいい!」「威厳がある!」と当時の日本人が感じたため,それを借用して作り出した単語が日本語の契約書でも多用されているのである。

 「もっと分かりやすい単語を使うべきだ!」と思うのは私だけでないようで,最近では,英文契約書では,以前よりラテン語由来の単語が使われるケースは少なくなってきた。
 日本語の契約書でもそうあるべきであろう。


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2014年11月26日

契約書のタイトルのもつ法的意味

契約書のタイトルをどうしたらいいかという相談をよく受ける。
「合意書がいい?それとも契約書?あるいは覚書とか念書がいい?」といった相談だ。

 結論からいえば,法的にはほとんどの場合どれでもいい。
契約書のタイトルが法的意味をもつことはほとんどないためだ。

 システム開発などにおいては,その契約が準委任契約であるか請負契約であるかについてもめることも少なくはない。
 しかし,「準委任契約書」と書いてあっても,本文の内容が請負契約となっていれば,それは法的には「請負契約」であり,逆もまた同様である。

 判断が微妙な場合,タイトルが意味を持つこともあり得なくはないが,圧倒的に重要なのは,当然のことながら中身である。

 逆にいえば,タイトルで油断してはいけないということである。
 「合意メモ」といった軽いタイトルであっても,中身によっては立派な契約であり,重い法的意味を持つかもしれない。
 「贈与契約書」といったタイトルであっても,中身が売買契約であれば,売買契約書であり,無料で何かをもらうつもりであったとしても,代金を払わなければいけなくなるかもしれない。

 ふさわしいタイトルを考えることに意味はあるが,その重要性は低い。
 それに頭を悩ませるくらいであれば,契約書の中身をよく読まないといけないということである。


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2014年09月22日

契約書に著作権はあるの?

先日,契約書には基本的に著作権はないという投稿をした。
http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/92790905.html

契約書に附帯する約款・規約なども同様に考えてよいはずである。

しかし,東京高等裁判所平成26年7月30日判決では,規約に著作物性を認めている。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/445/084445_hanrei.pdf

 東京高裁も,基本的には規約においては,「著作物性は否定される場合が多い」としながらも,「全体として作者の個性が表れているような特別な場合」には著作物性が認められるとした。そこまでは,異論はないだろう。

問題は,そのあてはめである。
東京高裁は,
原告規約文言は,疑義が生じないよう同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述するなどしている点(例えば,腐食や損壊の場合に保証できないことがあることを重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言4と同7,浸水の場合には有償修理となることを重ねて規定した箇所が見られる原告規約文言5の1の部分と同54,修理に当たっては時計の誤差を日差±15秒以内を基準とするが,±15秒以内にならない場合もあり,その場合も責任を負わないことについて重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言17と同44など)
を指摘し,同規約は全体として作者の個性が表れているとして,著作権法の保護の対象としたのである。

規約本文が見られないのでなんともいえないが,規約において,同じことを重ねて記述することは珍しいことではないだろう。にもかかわらず,それだけで「全体として作者の個性が表れている」というのには違和感を感じる。

判決文を見る限り,長文の規約をほとんどデッドコピーしたという事案のようである。
規約には,基本的に著作権はないとしても,長文のものをデッドコピーすることは,相当にリスクがあると考えた方がよいのかもしれない。


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2014年07月07日

秘密保持契約(NDA)と違約金条項

秘密保持契約書は,多くの企業間で,頻繁にやりとりされている。
 そのため,ないがしろにされていることも多いのであるが,いうまでもなく重要な契約である。

 秘密保持契約違反に関する事件に関わり,いつも悩ましく思うのは,損害額の証明である。
 
 秘密保持契約に違反し,秘密が漏洩されたとしても,直接的に損害を受ける場合は少ない。
 漏洩された秘密がどのように利用されたかについては,調べようもないことが通常であり,どのような損害が生じたのか分からないというのがその理由の一つである。 
 また,ゴキブリが一匹見つかれば百匹いると考えるべきであり,一件秘密が漏洩されたことが発覚すれば,その他にも多数の秘密が漏洩されていることが普通である。しかし,それらについても調べようがないのがもう一つの理由である。
 
 そのため,秘密保持契約において,違約金についての条項を入れておくべきだと思うことはしばしばであるが,これがなかなか難しい。
 「秘密保持義務違反があった場合には,甲は,乙に,違約金として,●●●万円を支払うものとする」
といった条項は,生々しすぎて入れづらいことが多い。
 また,秘密保持義務違反といっても,様々なバリエーションが考えられるところであり,最低の違約金を定めるのも難しいという理由もある。

 しかしながら,秘密保持契約に違反しても,損害が証明できず,ごく少額の損害賠償しか受けられないことは少なくない。
 少なくとも,重要な秘密を開示する場合には,入れづらくても違約金の定めをしておくことが重要であろう。


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2014年01月30日

英文契約書由来の完全合意条項の恐ろしさ

欧米の影響が増しているせいなのか,近年,英米法上の口頭証拠準則(Parol Evidence Rule)を具体化した完全合意条項が入った契約書を目にすることが多い。
典型的には以下のような条項である。

第○条 完全合意条項
本契約は、本件に関し、甲乙間の完全な合意と了解を取り決めたものであって、口頭であると書面であるとを問わず、本契約以前に成立した甲乙間の合意、了解、意図などの全てに優先し、取って代わるものである。
 

この条項に従えば,契約書締結以前の約束はすべて無視されることになる。

そのため,「○○ということで契約を結んだんじゃないか!証拠のメールもあるぞ!」と言ったところで,契約書に入っていなければ,効力がないということになる。

例えば,平成18年12月25日の東京高裁判決の事案では,
X社がY社に
「契約書の条項と条件は、他の会社との間の契約の条件と完全に同一です。」
「他の取引先と貴社の条件よりも有利な条件で契約を締結した場合には、必ず契約を見直します。」
と書面を送付していた。
にもかかわらず,この約束が無視されたため,Y社は,「他社と同じ条件にするということで契約を結んだんじゃないか!証拠の書面もあるぞ!」と主張した。
しかし,裁判所は,完全合意条項が存在するもののY社の主張する条件は契約書に載っていないということを理由として挙げ,Y社の主張を排斥した。

これは特に中小企業にとって恐ろしい条項であろう。すべての条件が盛り込まれたきちんとした契約書を作るためには,費用と時間が必要だ。しかしながら,それだけのコストをかけられない場合も多いし,信頼関係があるのでその必要はないと考えることも多い。
にもかかわらず,完全合意条項があると,契約書に載っていない条件は,すべて存在しないということになってしまうのだ。

安易に完全合意条項付の契約を結び,大きな不利益を受けないように気を付けないといけない。


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2014年01月21日

契約書案は作るべきか,作らせるべきか 〜作成者不利の原則

「さあ契約を結ぼう」という時に,最初の契約書案を自ら作成すべきか,相手方に作成してもらった方がいいのか・・・悩ましい問題である。

典型的な契約であれば,過去に使った契約書を使いまわすことですむかもしれない。
しかし,特殊な契約の場合に,新たに契約書案を作るのは,結構手間がかかる。だとすれば,当然,作ってもらった方がよいということになる。

しかし,最初にできた契約書案が交渉のベースになる。
最初の契約書案を相手方が作ることになれば,当然その内容は相手方に有利にできているであろう。
そうすると,その後の交渉の主導権を相手方にとられかねない。
だとすれば,相手方が言い出す前に,「今度の契約ですが,こんな案でどうでしょうか?」と先に契約書案を作ってしまった方が有利ということになる。

英米法では,Contra Proferentemの原則=作成者不利の原則に基づき契約書は解釈されるといわれる。
文言があいまいで,二つ以上に解釈される契約においては,その契約書案を最初に作成したものが不利に解されるという原則である。
(正確には,同条項により利益を得るものに対して不利に解釈されるとされることが多いが,利益を得るものは通常は作成者である。)  
日本ではあまりいわれない原則であるが,民法改正において議論されているし,信義誠実の原則の一つとして,日本でも適用されない原則であるといえないこともない。
それを考えると,最初に契約書案を作ると不利になるということもまたあるのかもしれない。


結局のところ,契約書案を先に作るべきか相手方に作らせるべきかは,状況次第であり,状況を分析してどちらが得かを判断するしかない。
もっとも,力関係からして,「先に作りたくてもできない」ということも多い話ではあるが・・・。


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2013年07月10日

合弁契約とロシアンルーレット条項

 A社とB社が出資して合弁企業を作ったとしても,A社とB社との意見が対立して,合弁企業の経営を進めることができなくなるという状況(いわゆるデッドロック)が生じる場合がある。
 合弁契約を締結する際には,そのような状況を打開するためのいわゆるデッドロック条項が入れられることになるのだが,そのネーミングが面白い。

 有名なのは,通称ロシアンルーレット条項である。
 ロシアンルーレット条項とは,一方当事者が株式の単価を決定し,他方当事者に対して,その単価で相手の所有する株式全部を相手から買い取るか,その価格で自己の所有する株式全部を相手に売却するかの選択を迫れるようにするという条項である。
 例えば,A社がB社に対して「A社の有する株式を1株100円で買い取れ」と申し出る。B社はこれを承諾することもできるし,これを拒絶して,逆にB社の有する株式を1株100円でA社に買い取らせることが可能となる。

 ロシアンルーレットとは,拳銃に一発だけ弾薬を装填し,適当にシリンダーを回転させてから自分の頭に向け引き金を引くという恐怖のゲームである。
  A社は,高く株式を売却しようとすると逆にB社に申し出を拒絶され,高い値段でB社の株式を買い取らざるを得なくなるという恐れがある。
 その恐怖は,自分の頭に向け弾が出るかもしれない拳銃を引く恐怖と似ているし,売却しようと申し出したのに,逆に購入しなければいけなくなる点が,自分に拳銃を引く行為に似ている点からつけられたネーミングであろう。
 なかなか,ひどいネーミングだと思う。

テキサスシュートアウト条項というのもある。
 テキサスシュートアウト条項とは,双方当事者が,第三者に売却希望価格を書いた紙を封をして渡し,封を同時にあけて,高い値段をつけた方がその値段で相手方の有する株式を購入できるようになるという条項である(なお別の条項をテキサスシュートアウト条項と呼ぶ人もいて,結構適当である)
 例えば,A社が「1憶円」,B社が「2億円」として入札すると,B社はA社の有する株式を2億円で買い取ることになる。

 テキサスシュートアウトとは,ラスベガスでもっとポピュラーなポーカーのルールである。相手がつける売却希望価格を予想する点が,ポーカーで相手の手の内を予想する点に似ているためのネーミングであろう。

 日本において,法律用語が「おいちょかぶ条項」やら「ちんちろりん条項」などとネーミングされることは考えづらい。
 しかし,アメリカの法律の本では,まじめに「ロシアンルーレット条項とは?」「テキサスシュートアウト条項とは?」などと説明されているのだ。

 アメリカでは,契約や商取引を,ギャンブル同様のゲームととらえているともいえるし,逆にギャンブルを契約や商取引同様の真面目な頭脳戦であるととらえているのかもしれない。

 そう考えると,法律用語にもいろいろと国民性があらわれるものだ。


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2012年07月19日

「私は誰と契約をしたのだろう?」 

 契約をしたのだから,その相手が分からないはずがないと思われるかもしれない。
 しかし,意外に簡単でない。
 裁判でも,Aさんに対して,「貸した2000万円を返せ」という訴えを起こしても,借りたのはAさんでなく,Aさんが経営する株式会社Bであるとして,敗訴するといったこともある。

特に,契約書が実態と異なる場合に問題になる。

 上の例でいえば,お金を受け取って使用したのは株式会社Bなのであるが,契約書ではAさん個人が借主の場合などには,どちらが契約者なのかの判断は難しい。
 書面上は借主がAであったとしても,実際にお金を受け取って使った人が借主であるとする裁判例もある。

 さらにそのよう場合,契約書上の借主が「株式会社B 代表取締役A」となっていれば,株式会社Bが契約の相手方であることは明白である。
 しかし,単に「株式会社B A」となっている場合はいっそう悩ましい。
 Aさんが株式会社Bの代表として契約しているのか,それとも単に株式会社Bに勤めているAさんが契約しているのか,判断は容易ではない。

 弁護士としては,契約当事者の取り間違えは,大変恥ずかしく何より恐ろしいミスだ。
 そこで,「契約の相手は誰ですか,AですかBですか」と必ず確認するのであるが,「私は誰と契約をしたのだろう?」と言われる方も少なくない。

 契約の相手がBであればAにいくら資産があっても,Bが破産すれば,まったく回収できないことになる。逆もまたしかりだ。

 当然すぎるほど当然なことであるが,契約をする際には,契約の相手が誰なのかを明確にしておく必要がある。
 そのためには,実態に合わせたきちんとした契約書を作ることが重要だ。


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2011年11月23日

事業用賃貸借の中途解約と違約金

 期間20年,賃料月50万円でオフィスビルを借りたとしよう。
 その場合,中途解約をするには,残期間分の賃料を違約金として支払わなくてはならないと契約書に定められている場合も多い。
 すると,10年で解約し明け渡したとしても,
 50万×12か月×10年=6000万円
を支払わなければならなくなる。

 これは公平だろうか。
 明け渡した後,貸主がすぐに別の借主をみつければ,貸主は,そこから賃料50万円をもらえるようになり,賃料の二重取りができる。

 その問題を扱った東京地方裁判所平成8年8月22日の判決の事案では,
 貸主は,残期間3年2か月分の賃料額の違約金の支払いを求め,
 借主は「高すぎて不公平だ!」と主張し争った。
 最終的に裁判所は,「3年2か月分の違約金はあまりに高額すぎて,公序良俗に違反する」として,賃料1年分だけの違約金の支払を命じた(それでも1900万円だが…)。

 結構,良くありそうな問題で,自分も同じような争いにかかわったことがある。ところが,裁判例が少なくて,どうなるかよく分からない。

 ただ,上記裁判における賃料1年分の違約金というのも相当の金額である。
 借りる側としては,ともかく,賃貸借契約を結ぶ際には,中途解約時の違約金に注意である。

 経営が悪化して中途解約をしようとしても違約金が高くできず,最後は,会社も倒産…。そんなこともある。
 くれぐれも注意したいものである。


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2010年05月01日

英文の契約書

 今日は,ゴールデンウィークの初日。
以前からはじめたかったブログをはじめることにしました。
 今日は事務所は休みだったのですが,英文契約書の作成という余り扱わない仕事をしていました。
 スペルのミスは,自動的にパソコンが指摘してくれる,分からない単語は,すぐにコピペして検索すれば回答が出る,英文の契約書の書式も世界中のネットから幾らでダウンロード可能。
 便利な時代になり,我々の仕事も大分変わってきました。
 そんな刻一刻とかわる時代をブログと共に追いかけていけたらと思っております。

 ご相談は,こちら→http://www.uchida-houritsu.com/
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