2010年07月31日

何の意味もない実用新案権−悪徳商法や詐欺のための権利?

 実用新案権について,覚えておくべきことは,原則として

 何の意味もない権利である

ということだ。

 実用新案権とは,特許を取れるほどではない高度でない発明に与えられる権利とされている。
 しかし,実用新案権の申請がなされると,何の審査もされないで登録がなされる。そのため,実際には,とても権利を与えるべきでない発明までもが実用新案として登録されているのだ。

 そのため,実用新案権に基づく権利行使,つまり誰かが自分の実用新案権を真似しているからやめさせようとするには,実用新案権を登録しているだけではできない。
 権利行使するには,新たに,特許庁から実用新案権がどの程度のものであるのかを評価した「技術評価書」というものを発行してもらい,それをつけてしなければならないのだ(弁護士であってもうっかりと技術評価書をつけないで実用新案権侵害に対する差止請求をしたりすることがある・・)。

 そして,技術評価書では,実用新案権について厳しい評価がなされることが多い,
 「昔からある技術の可能性が高く発明にあたるかは疑わしい」などと特許庁が評価することも多い。
 そのような評価書をつけて,実用新案権の権利行使をするわけにはいかない。
 そのため,実用新案権は,登録していても,いざ権利行使しようとすると全く使えないということが,よく起こる権利なのだ。

 「そんな権利に何の意味があるの?」と思われるかもしれない。
 実際に,そう思う人も増えてきており,年々実用新案権の登録件数は減る一方だ。
 

 実用新案権が利用されている場合をみると悪徳商法や詐欺に利用されているケースが多い。
 
 全く発明ともいえない健康器具などについて実用新案として登録して,「実用新案登録第1234567号」と宣伝する。
 それにより,何らかの効果があるものではないかと消費者を誤解させるのに役立っているというわけだ。

 もっと悪質な利用形態もある。
 小さな会社に対して,「この特許庁の出している広報を見てください。お宅の販売しているこの商品は私の持っている実用新案権を侵害していますよ。すぐに○円支払わないと大変なことになりますよ」などと言って,お金を巻き上げるのに利用されているのだ。

 このような詐欺や悪徳商法をなくすためには,実用新案権は基本的に何の意味もないという認識を国民が共有することが大切だ。

 同じことは,出願中の特許にもいえる。
 特許権は,特許庁の厳しい審査を通過して初めて与えられるものであり,基本的にきちんとした発明だけに与えられる。
 しかし,特許を出願するだけであれば,どんなものであってもできる。そして,多くの特許は,出願はされるものの実際には特許権を受けることができていないのである。
 出願中の特許とは,まだ特許として認められていないが,発明した人は特許の価値があると思っているということをあらわすに過ぎないと覚えておくべきだ。

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posted by 内田清隆 at 12:40| Comment(1) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年06月12日

急がされる知的財産をめぐる裁判

 昨日,名古屋の後藤昌弘弁護士を講師としてお招きした北陸三県の弁護士や弁理士が集まる会合(弁護士知財ネット)に参加した。
 ブログには書けない裁判所の裏話から,知的財産訴訟の基本的なことまで,興味深い話をたくさんうかがった。
 特にためになった話は,知的財産をめぐる裁判では,非常に急がされる場合が多くあるという話であった。

 ある訴訟事件では,1回目の弁論期日の前に,裁判官から,原告は答弁書に反論があれば3週間以内に,被告は,それに対する反論があれば2週間以内に提出するよう指示された。
 そして,なんとそれ以上の主張は許されず,1回目の期日で裁判が終了してしまったという。
 普通の訴訟では,争いがある事件で1回で裁判が終わるということは考えられない。

 また,別の仮処分の事件では,形態を模倣したと訴えられた側は,3週間以内に反論を記載した書面を提出するよう裁判所から指示された。
 そして,裁判所は,その期限について1日たりとも延長を認めずに,速やかに決定をしたという話であった。
 複雑な事件であり,とても3週間で反論するのは困難な事件であったが,弁護士が徹夜して書面を作成して,何とか反論したという話であった。

 もちろん極端な事件であるという話であったが,そのようなケースがあるというだけで驚きであった。
 裁判所は,知的財産をめぐる裁判に時間がかかりすぎるという批判(あるいは外圧)を受けている。
 そのため,極端に裁判を急ごうとする方向性があるようだ。

 3週間で,先行研究に関する海外の文献を見つけ出すといっても困難な話である。
 警告書を受け,裁判が予想される場合にはもちろん,場合によっては,警告書などが来る以前から,しっかりと訴えられた際の準備をしておく必要があるということであろう。
 
 裁判を急ぎすぎることには反対であるが,忙しい現代社会において,以前ほど時間をかけられないのも当然であろう。
 
 なかなか厳しい時代になったものだ。

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posted by 内田清隆 at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年05月14日

キャラクターの著作権

先日,ある会社から製作したCMキャラクターが有名テレビ番組のキャラクターの著作権を侵害してると訴えられないかという相談を受けた。
キャラクターにも著作権があり,模倣すれば著作権侵害になることに争いはない。問題は,どのような場合著作権侵害になるかである。この点,多くの裁判例では,原著作物の「表現上の本質的特長を直接感得できるような場合」に著作権侵害になるとしているが,分かったようでよく分からない表現である。
そこで,いくつかの具体的裁判例を調べてみた。

1 下記ファイルの最後の部分にある被告博士は原告博士の著作権侵害ではないとされた(東京地裁・平成20年7月4日)。
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080711092033.pdf
2 また,有名な「ケロケロケロッピ事件」では,下記のリンク内の別紙1は別紙2の著作権を侵害していないとされた(東京地裁・平成12年8月29日)。
http://www.courts.go.jp/tenpu/pdf7/F1FD6C82FA9CECFF49256A77000EC3A5-1.pdf
3 キャラクターというより商品であるが,判決の終わりの方にある原告商品は被告商品の著作権を侵害するものとされた。(東京地裁・平成21年03月26日)。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080711092534.pdf
4 これまた,キャラクターとは少し違うイラストであるが,下記リンク内の別紙2は別紙1の著作権を侵害しないとされた(大阪地裁・平成21年03月26日)。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090327103042.pdf

いかがであろうか。私の感想は1番=「かなり似ている」,2番=「かなり違う」,3番=「ほとんど同じ」,4番=「かなり似ている」というものである。
そうなると,私が見て,かなり似ていても大丈夫,ほとんど同じだと著作権侵害になるということになる。「そんないい加減な判断しかできないのでは困る!」と言われそうが,どうしても主観的要素が強くなり,結果が予想できない,それがキャラクター等の著作権侵害の問題点であることは間違いない。
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posted by 内田清隆 at 06:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法