2013年08月06日

土屋アンナ舞台降板事件と知的財産権違反の警告

http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20130806-1168788.html
 土屋アンナ(31)の初主演舞台「誓い〜奇跡のシンガー」が公演中止となった問題で、制作会社「タクト」が土屋に対して3000万円の損害賠償を求める民 事訴訟を東京地裁に起こすことが5日、分かった。「タクト」社長で演出家の甲斐智陽さんが「今週中に提出します」と明かした
 との報道があった。

http://anna-t.com/index.html
土屋アンナ氏側の言い分によると,
 原案の作者の方から「本件舞台の台本を見ていないうえ、承諾もしていない」という連絡があり、
不安に思い,出演を拒んだということらしい。

 制作会社が原案の作者の承諾なく,舞台化していたのであれば,公演は原案の作者の著作権侵害となる。
 その場合,同舞台に土屋アンナ氏が出演しないことは当然許されることであり,むしろ出演するわけにはいかないだろう。

 問題となるのは,原案の作者の承諾があったにもかかわらず,原案の作者が承諾をしていないと土屋アンナ氏に誤って述べていた場合である。


 似たような問題はよく起こる。
 B社が大手デパートと契約を結び,ある製品を大手デパートに大量に販売していた。
 ところが,その大手デパートに,A社から「B社の販売する製品は当社の特許権を侵害する製品であるので,販売を止めろ」という内容証明が届く。
 デパートがB社に確認すると,A社から特許権の実施の許諾を受けているといわれる。
 さてデパートはどうすべきなのか。販売を続けるべきか,販売を止めるべきか。
 デパート=土屋アンナ氏といった状況である。

 A社を信用して,B社との取引を止めるとB社に訴えられるかもしれない。
 B社を信用して,A社との取引を続けるとA社に訴えられるかもしれない。
 いずれかを判断せざるを得ないのだが,どちらを判断するにおいてもリスクはある。

 事前にそのような事態が生じた場合の対応について契約をしておけばリスクは減らせる。
 つまり事前に「知的財産権者から異議が出た場合には,その件が解決するまで販売(出演)を停止する」と契約を結んでおけば,取引を停止してもデパートはB社から訴えられることはないし,土屋アンナ氏は舞台に出演しなくても制作会社から訴えられる心配もない。

 しかし,大手デパートでもそんな契約はしていないし,ましてや芸能界の常識からしてそんな契約が交わされることは考えづらい。

 この訴訟はどうなるのであろうか。今後の進展を見守りたい。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2013年01月11日

自分の名前を使うことが犯罪なんて… 

「自分の名前だから商売に自由に使えるのは当然」,そう思うことはいたって自然である。
しかし,自分の名前であっても必ずしも自由に営業活動に利用してよいわけではない。

自己の氏名であっても著名な商号などと同じものを不正の目的をもって利用すれば不正競争防止法違反となり,最悪のケースでは懲役5年・罰金500万円の刑に処せられるのだ。
仮に当事務所名「内田清隆法律事務所」が全国的に有名だったとしよう(残念ながらまだそうではないが・・・)。その場合,私を気にいらないと思っている同姓同名の内田清隆弁護士が,当事務所の顧客を奪い私を苦しめるという不正な目的の実現のために「内田清隆法律事務所」をつくり営業活動することは,不正競争防止法に違反し許されないこととなる。

「不正な目的」があるという例外的な場合を考えれば,当然のことのように思えるが,自分の名前を使うことが犯罪になるとは,何とも不思議な気もする。

しかし,そうでもしておかないと,自分の子の名前を「日産」やら「シャネル」やら「三菱」として,ひと儲けしようとする悪い親が出てきてしまうかもしれない。そう思うと必要な規定なのであろう。

(もっとも,「不正の目的」という内心の意図は外からは簡単には分からないこともあり,裁判例で「不正の目的」が認定されることは少ない。そのため実際に問題になることはほとんどない。)


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

金沢市の人気ブログランキング
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。↑↑
posted by 内田清隆 at 15:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2012年02月08日

GKB47によるAKB48の商標権侵害

 テレビのニュースで,岡田副総理が,内閣府の自殺対策強化月間のキャッチフレーズ「GKB47宣言!」を不適当として撤回するとインタビューで答えていた。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120207-00000062-mai-pol
 てっきり「AKB48」のファンが,「自殺対策強化にアイドルグループの名前をもじるのはけしからん!」と怒ったのかと思ったが,ニュースによると「自殺の深刻さを十分にわきまえていない」という批判を受けて撤回したようである。


 ところで「AKB48」は登録商標である
商願2005-119042,商願2006-16476)。
(ちなみに商標登録によると読み方はエイケイビイフォーティエイトばかりではなく,エイケイビイヨンジューハチとも読むらしい)
 
 すると「AKB48」と「GKB47」が類似しているとして,商標権侵害にならないのかが気になるところだ。
  
 結論からいえばならない。

 商標権とは,登録する際に指定したサービス(役務)等について登録商標を独占的に使用できる権利である。
 そのため,指定されているサービス等と違うサービスであれば,登録商標と類似する商標を使用することもできるのである。

 「AKB48」という商標の指定役務は多岐にわたるが,「音楽ライブコンサートの企画・運営又は開催等の役務」等であり,「自殺対策強化及びその広報」といったサービスは指定されていない(当たり前だ)
 そのため,自殺対策強化のキャッチフレーズに「GKB47」を用いても商標権侵害にはならないのである。

  また,二つの商標が類似しているかを判断する際には目立つ1文字目は特に重視される。
  そして,1文字目が「A」と「G」と違っていることなどからすれば,類似しているともいいきれない。

  とはいえ,商標法違反にならなくても別の法律違反になることはある。
  実際に,安易に有名な名前のパロディーを用いて高額な損害賠償請求を受けた事案に関わったこともあった。  
  また,法律違反にならなくても本件のように社会的非難を浴びることもある。
  
  商売に有名な名前のパロディーを用いる際には,くれぐれも注意が必要ということであろう。
(きちんと調べておりませんので,本文の内容の正確性には責任を負いかねますことをご了承ください。)

↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↓↓参加しています。クリックでご協力お願いします。↓↓
金沢市の人気ブログランキング
posted by 内田清隆 at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2012年02月02日

ピンクレディーのパブリシティ権 最高裁平成24年2月2日

 有名人の写真を有名人に無断で使用してもいいのであろうか。
 ダメだとすればどのような場合ダメなのであろうか。

 この,いわゆるパブリシティ権(氏名・肖像から生まれる価値を支配する権利)の問題について,平成24年2月2日に最高裁の判決が出た。

 事案は,ある雑誌に掲載されたピンクレディーの写真を使ってピンクレディーの曲の振り付けを利用したダイエット法を紹介した「ピンク・レディー de ダイエット」という3頁の記事についてのものである。

最高裁は,
1 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,
2 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し
3 肖像等を商品等の広告として使用するなど,
専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合
に,パブリシティ権を侵害するものとして違法になると判断した。
 
そして,最高裁は,
昭和50年代に子供から大人に至るまで幅広く支持を受け,その当時,その曲の振り付けをまねることが全国的に流行したというのであるから,本件各写真の上告人らの肖像は,顧客吸引力を有するものといえる
としながらも(当たり前だ),
ピンク・レディーそのものを紹介するものではなく,前年秋頃に流行していたピンク・レディーの曲の振り付けを利用したダイエット法につき,その効果を見出しに掲げ,イラストと文字によって,これを解説するとともに,子供の頃にピンク・レディーの曲の振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するというもの
に過ぎず,写真も200頁の雑誌の3頁の中で使用されたにすぎず,また,小さな白黒写真であるため,
専ら上告人らの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず,不法行為法上違法であるということはできない
と判断した。

 商売でなければ使ってもいいし,商売でも少しぐらい使ってもいいということになるのであろうか。

 結局,どこまで許されるのかはっきりしないことには変わりがない。しかし,パブリシティ権について法律には規定がない。
 その意味で,最高裁がパブリシティ権侵害について一定の基準を打ち立てたことは,大きな意味があるのであろう。

↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↓↓参加しています。クリックでご協力お願いします。↓↓
金沢市の人気ブログランキング
posted by 内田清隆 at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2011年11月10日

アンパンマンパンを焼かないで!それは犯罪です!

 ジャムおじさんの許可なくアンパンマンパンを焼くことは,著作権法違反である。
 罰則は,十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金である。

以前も書いたが,キャラクターには著作権がある。
 そのため,その複製を作ることは,著作権侵害で違法なのである。

 実際にサザエさん,ポパイ,スヌーピー,キャンディキャンディなどたくさんのキャラクターの著作権侵害について訴訟になっているし,刑事事件になったケースも少なくない。

 ところがである。「アンパンマン」でグーグルで検索すると驚くべき結果が表示される。http://p.tl/SME4

 出てくる,出てくる,アンパンマンそっくりのパンが全国各地で非常にたくさん販売されているのである。
 小さなパン屋で売られているパンが多く,いちいち著作権者(恐らくはジャムおじさん)から許諾を受けて販売されているとは考えづらい。
 違法行為が蔓延しているのである。

 バイキンマンならともかくアンパンマンを違法行為に加担させるというのはいただけない。ジャムおじさんへの報告が必要だ。

 道路にゴミをポイ捨てすることは,「廃棄物の処理および清掃に関する法律」に違反する立派な犯罪である。にもかかわらず,ゴミをポイ捨てする人は後を絶たない。
 町にちょっとしたゴミを捨てることと同じように,小さな町のパン屋でアンパンマンパンを作ることは,日本人の常識として犯罪だと思われていないのだろう。

 しかしながら,違法は違法である以上,油断はできない。
 常識なんてものはいつ変わるかも分からないものなのである。
 
「これぐらい,みんなやっている」と裁判で主張する者は後を絶たない。しかし,「みんなやっている」の抗弁が認められたためしはない。

 まさか,ジャムおじさんが自分を訴えるなんて・・・,その甘さをジャムおじさんは厳しくついてくるかもしれない。
 すべてのジャムが甘いわけではない。 (かもしれない)


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↓↓参加しています。クリックでご協力お願いします。↓↓
金沢市の人気ブログランキング
posted by 内田清隆 at 14:23| Comment(1) | TrackBack(0) | 知的財産法

2011年10月05日

横綱同士のセメントマッチーアップルvsサムスン

 聞くところによると,一昔前の格闘技の世界では,横綱級の力のある者同士が本気で戦う勝負(セメントマッチ)はまずなかったらしい。
 力があり,大きな組織の代表になってしまえば,組織の看板を背負うことになる。
 そうなれば,無様に負ければ,組織全体に迷惑をかけることになる。
 お互いにそんなリスクを背負うわけにもいかないため,試合は,ある程度は決められた台本通りに進められ,お互いが大きく傷つけあわないようにしていたというわけだ。

 知的財産を巡る裁判の世界でも同じである。
 負けても失うことのない小さな会社と,巨大な会社との知的財産を巡る裁判は本気で戦われる。
 しかし,横綱級の会社同士が,知的財産を巡って「つぶしあい」というべき本気の争いをすることはまずない。
 互いに背負っているものが大きすぎ,勝つか負けるか分からない裁判にすべてをかけるといったリスクを背負うわけにもいかないからだ。

 ところが,アップルとサムスンの間の知的財産権での訴訟合戦は,どうも違う。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw124160
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23469420111004
 横綱級の会社同士の本気の「つぶしあい」,セメントマッチをやっているようだ。

 めったにみられない横綱級の会社同士の本気の訴訟合戦,どちらかがつぶれるまで行われる可能性まである。
 その行方は注目だ。

 昨日(日本時間の今日),iPhone4Sが発表された。
 アップルの好調は続くのであろうか。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↓↓参加しています。クリックでご協力お願いします。↓↓
金沢市の人気ブログランキング
posted by 内田清隆 at 08:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2011年08月18日

入れ墨の著作権と彫師の人格権

 自己の出版した「合格!行政書士 南無刺青観世音」という本の表紙に,自分の左太腿に入れた十一面観音立像の入れ墨の写真を彫師の承諾なく用いた者が,彫師から著作権侵害で訴えられた。
 そんな何とも珍しい事件の判決が,平成23年7月29日東京地裁でなされた。

 東京地裁は,彫師が
「構図の取り方や仏像の表情等に創意工夫を凝らし,輪郭線の筋彫りや描線の墨入れ,ぼかしの墨入れ等に際しても様々の道具を使用し,技法を凝らして入れ墨を施したことによるものと認められ,そこには原告の思想,感情が創作的に 表現されている
と判示して,彫師が入れ墨に著作権を有することを認め,原告に対して,35万円の損害賠償を命じた。

 一方,その本の中で,入れ墨が悪く扱われているため,原告は,
 「原告が精魂を込めて施した本件入れ墨に対する負の評価をしたものであり,専門技能者としての原告の人格権を侵害するものである。」
という訴えもした。
 結局,その訴えは認められなかったが,原告となった彫師の気持ちが伝わる訴えだ。
 
 著作権侵害の事件を扱うと,著作者が著作物に対して我が子への愛情のような強い気持ちを持っていることを知り,驚くことがある。
 彫師にとっても自分が作った入れ墨は我が子のようなもので,精魂を込めて施した入れ墨には強い誇りと愛情を持っているものなのだろう。

 著作権は基本的には財産権であり,著作者が著作物を支配し金儲けをすることを保護する権利である。
 しかし,それだけではなく,著作者が著作物に対してもつ愛情をみんなで大切にする,著作者人格権と呼ばれる著作権の精神的な側面も大事にする,そんな社会にしていきたいものである。

 
↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↓↓参加しています。クリックでご協力お願いします。↓↓
金沢市の人気ブログランキング
posted by 内田清隆 at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2011年06月28日

平成23年特許法改正2−フライングOK

 世の中に既に広く知られている発明や,公然と実施されたことがある発明については特許権を取得することはできない。
 そのため,特許となるような発明をしたものは,その発明をこっそりと実施し,誰にもその内容を言わずに,出願しなければいけない。

 ところが,これが意外に守られていないのである。
 出願前に,発明の内容を多数の者に話したり,発明商品を売却したりして,特許が無効になってしまうケースは多い。
 「フライングしてはいけない」,それは分かっているのだが,特許になるような発明は,良い発明が多い。
 ついつい,使ってしまいたくなるし,ついつい人に話してしまいたくなるのが人情なのかもしれない。

 ところが,特許法の改正により,発明者が自ら公表した場合(発明者の行為に起因する場合)であれば,その後6か月内に出願をすれば,特許権を取得することができるようになった(改正特許法30条)
 つまり,6か月までのフライングはOKとなったのである。

 フライング禁止による特許発明の無効は理不尽な場合が多い。
 学会で,自分の研究内容を発表してしまうと特許が無効になってしまう。そこで,特許出願してから発表しようと思っていたら,別の者が先に発表して手柄を取られてしまうなんてことがある。
 たった一度,特許出願前に,自分の発明の良さを知りたくて公然とこれを実施してしまったばかりに,特許が無効になってしまうのはかわいそうだ。

 世の中,理不尽な規則は多い。
 一つずつ直していかなければならない。

↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↓↓参加しています。クリックでご協力お願いします。↓↓
金沢市の人気ブログランキング
posted by 内田清隆 at 15:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2011年06月23日

平成23年特許法改正1ー終わらない裁判の終わり

 大震災の影響で,多くの法案が審議されないでいた。
 しかし,特許法は,きちんと予定通り改正され,平成23年6月8日に改正特許法が公布された。
 管総理大臣の元弁理士としてのプライドにかけて,法案を通した・・・,いうわけなのだろうか。

 改正点は多いが,「特許訴訟は終わらない」という恐怖がなくなったのは非常に良い改正だ。

 X社の特許侵害をA社が訴え,5年かけて,最高裁まで争い,X社が負けて1憶円を支払えという判決が確定したとしよう。
 ところが,その後,X社は,A社の特許無効審判請求を特許庁に行い,特許庁がA社の特許を無効とする審決をだしてしまう。
 そうなると,現在の法律では,特許権侵害訴訟の1億円を支払えという確定判決が再審により取り消されれてしまう可能性が大なのだ。

 無効審判請求には,時間的制限はない。
 しかも,無効審判請求は,特許に新規性がなかったという証拠さえ見つけてくれば,訴訟が終わったあとでも認められる可能性は十分にある。
 そのため,特許訴訟においては,最高裁の判決が確定した後でも,その判決が覆されてしまう可能性から逃れられないのだ。
 つまり,判決が確定しても「終わらない」のである。
 これはかなりの恐怖である。最高裁まで争って勝っても安心できないのでは,何のための訴訟制度だということになってしまう。

 そこで,新設されたのが特許法104条の4である。
 これにより特許権侵害訴訟の判決確定後に特許の無効審決が確定したとしても,
「特許は無効になった!」
と再審で主張できなくなったのである。

 終わりが見えないことは,本当につらいことである。
 終わりが見えるようになった,これは非常に大きな進歩だと思う。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↓↓参加しています。クリックでご協力お願いします。↓↓
金沢市の人気ブログランキング
posted by 内田清隆 at 15:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2011年03月18日

特許侵害保険

 特許侵害保険というものができたらしい。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110308/fnc11030801300001-n1.htm

  知的財産権侵害により訴えられた場合,その対応が非常に大変な場合は多いし,また,敗訴した場合の損害賠償が多額になる場合も多い。
その意味で知的財産権侵害に備える意味は大きい。

 しかし,その一方で,そのリスクは,企業により千差万別であり定量化することは非常に困難である。
 にもかかわらず,特許権侵害に対する保険を一般の保険商品として販売して,やっていけるのであろうかと心配してしまう。

 記事によると,「AIUは、顧客情報の漏洩、機密情報の漏洩、知的財産権の侵害を企業活動の『無形財産3大リスク』と位置付け、これらをまとめて補償する」とのことである。

 ネット社会が発展し,以前とは比較ができないほど簡単にしかも大量の顧客情報の漏えいが,どんな中小企業にも起こりうるようになった。
 そのリスクは,知的財産権の侵害とは異なり,非常に一般的なものだと思っている。
 そのため,私も,ありえないとは思っているのだが,万が一を考えて,個人情報が漏えいした場合に備えて保険に入っているし,そのような弁護士も少なくないだろう。

 今後は,知的財産権の侵害についても,同じように,どんな中小企業にも起こりうる一般的なものになるのであろうか?
 そう思ってみると,知的財産権侵害の警告を受けたという相談が増えているような気もしないではないのだが・・・。


↓↓弁護士ブログの人気ランキングです。色々な弁護士の見解を見ることができます。↓↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

↓↓参加しています。クリックでご協力お願いします。↓↓
金沢市の人気ブログランキング  
posted by 内田清隆 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年12月04日

中国産は真正品であらず? −並行輸入「内外品質の同一性」


以前
説明した通り「真正品の並行輸入」は合法である。

 では,日本で売られている正規商品と,異なる品質の商品を販売することが許されるのだろうか。
 例えば,キリンビールが日本用とアメリカ用で味付けを変えている場合,アメリカ用のビールを輸入して,日本で売ることに問題はないであろうか?

 先日あげた最高裁の平成15年2月27日の判例(フレッドペリー事件)では,「内外権利者の同一性」とともに,
「我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される」

ことつまり「内外品質の同一性」が,「真正品の並行輸入」にあたる条件とされた。

 分かったような分からないような基準である。
 上記のビールの例で考えると,結局は,どの程度に「味」が違うかが合法・違法の境目になるのであろうか?

 同事件では,フレッドペリー社から正式にライセンスを受けてポロシャツを製造していた業者が,「製造地域をシンガポール等に限定し,無断で下請に出さない」という条項に反して、中国等でポロシャツを下請生産した。
 そして,そのポロシャツ等を並行輸入することが許されるかが争点とされた。

 結論として,最高裁は,上記基準から,そのようなポロシャツを並行輸入することは違法としたのである。
 しかし,中国産というだけでシンガポール産と品質がかわるかは分からない。

「1万枚のポロシャツの生産だけを許したのに2万枚生産した場合はどうなるのか?」
「製造場所をシンガポール南部の工場に限っていたが,同工場が火事にあったので,北部の工場で製造された場合どうなるのか?」
など,どのような場合に「品質において実質的に差異がないと評価」できるかは未解決である。

 いずれにせよ正式にライセンスを受けて製造している業者から輸入する場合でも,「真正品の並行輸入」にあたらないリスクがあるということは,記憶しておくべきだ。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
↑↑弁護士がしているブログの人気ランキングです。色々な弁護士の見解を見ることができます。

金沢市の人気ブログランキング  
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。

Twitterボタン
posted by 内田清隆 at 09:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年11月19日

「本当の」ブランド品とは?−並行輸入「内外権利者の同一性」

 以前述べた通り,真正品の並行輸入は合法である。

 そこで紹介した最高裁平成15年2月27日の判例では,「真正品の並行輸入」というための条件として,「内外権利者の同一性」があげられている。正式には「当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一であるか・・・同一人と同視し得るような関係」があること

 例えば,日本ルイ・ヴィトン社がフランスのルイ・ヴィトン社が同じ商標を用いていたとしても,日本ルイ・ヴィトン社とフランスのルイ・ヴィトン社が実は無関係な会社であったとしよう。
 そのような場合では,日本ルイ・ヴィトン社とフランスのルイ・ヴィトン社の製品は,同じ「ルイ・ヴィトン」であっても出所が異なる。 
 そのため,そのような場合,日本ルイ・ヴィトン社商標の出所表示機能を守るため,フランスのルイ・ヴィトン社からバッグを輸入し日本で販売することは許されないことになるわけだ(実に複雑だ…。なお,架空の事例であり,ルイ・ヴィトンが実際どうだかは知らない)。

 そんなことあるのかなあと思っていたが,実際に事件にもなっている。
 靴で有名なコンバース社は破産し,新コンバース社になり,さらにナイキに買収されるなど複雑な経緯をたどったらしい。
 そして,現在では,日本の商標権者はアメリカの商標権者と無関係になっているらしい。
 そのため,アメリカにある新コンバース社の商品を日本に輸入して販売することは,偽造品の輸入同様許されないとする判決がなされたのである。
東京地裁平成21年7月23日
知財高裁平成22年4月27日

 コンバースはアメリカのブランドだと思いこんでいた。
 にもかかわらず,アメリカで正式に「コンバース」として売られているものを輸入し販売することが違法になるというのも何か解せない。
 一般の消費者が考える「本物」は,もしかすると輸入が禁止されるアメリカで販売されている「コンバース」なのかもしれない。
 しかし,それは「真正品の並行輸入」にはあたらないというのであるから,ややこしい話だ。
 
 「本物」って何なんだろう,そんなことを感じさせる事件だ。
 
 内外品質の同一性については→こちら


にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
↑↑弁護士がしているブログの人気ランキングです。色々な弁護士の見解を見ることができます。

金沢市の人気ブログランキング  
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。

Twitterボタン
posted by 内田清隆 at 08:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年11月15日

著作権侵害訴訟における損害

 知財高裁平成22年10月28日の判例は,CDの作成依頼を受けた被告が,原告に無断でそのCDを販売したとして,著作権侵害で訴えられた事例である。
 最終的に著作権侵害は認められたが,認められたのは,でき上がり見本7枚の販売価格の7割の1万4700円分だけであった。

 高等裁判所まで争って,勝訴したのに,もらえる金額はわずか1万4700円。
 原告は,さぞむなしかっただろう。
 著作権侵害で訴えるときいつも苦労するのは,相手方がどれだけ著作権侵害をしているのかが分からないということである。
 「ごきぶり1匹を見つければ,10匹いると思え」というが,著作権侵害の事実が発覚したとしても,それが氷山の一角である可能性は高い。
 にもかかわらず,損害賠償を受けられるのはその氷山の一角だけなのである。

 原告は,被告の不法行為を調査するのに相当の労力が必要となる。
 一方で,被告が謝罪をせずに事実を争ったために訴訟にまで発展するのである。
 にもかかわらず,1万4700円を賠償すれば,他に賠償する必要がないというのが公平といえるだろうか?

 私自身も苦い思い出がある。極めて困難な裁判に勝訴し,判決で不法行為をしたのは被告と認定してもらうことはできた。
 しかし,損害額は,30万円しか認められなかったのだ。
 弁護士費用を考えれば,泣き寝入りをした方が得という悲しい結論であった。
 
 不法行為に対する損害賠償請求訴訟を行った場合に,被害者が「泣き寝入りをした方が得」という事態が起こらないような制度の確立が望まれる。
 懲罰的損害賠償制度,弁護士費用の敗訴者負担制度etc,弊害も大きな精度であろうが,そのような制度が必要なのだと思う。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
↑↑弁護士がしているブログの人気ランキングです。色々な弁護士の見解を見ることができます。

金沢市の人気ブログランキング  
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。

Twitterボタン

posted by 内田清隆 at 11:23| Comment(1) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年11月10日

ミッフィーとキャッシーーキャラクターの著作権

 オランダの裁判所は,サンリオのキャラクター「キャシー」は「ミッフィー」を模倣した著作権侵害であるとして、関連製品の生産差し止めを命じたらしい。
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/101103/trl1011030121001-n1.htm

 以前,キャラクターの著作権侵害については,「かなり似ていても大丈夫,ほとんど同じだと著作権侵害になる。」とブログに書いたことがある。

 そこで,「キャシー」と「ミッフィー」を比べてみた。

 上記オランダの新聞に掲載されている画像で比べると「かなり似ている」。
 しかし,「ほとんど同じ」とまではいえないであろう。

 下記の写真を比べれば,かなり似ているとさえいえない。
ミッフィー http://p.tl/7SkF
キャッシー http://p.tl/6a57(写真右,左はキティちゃん)

 しかも,うさぎのキャラクターを描けば,どうしたって似通ってくる。
 それも考えると,日本の裁判所の判断であれば,著作権侵害とされなかった可能性が高いように思えるがどうであろうか。

 それにしても,ミッフィーの生みの親のブルーナさんが,まだご存命とは思わなかった。 
 自分が小さなころ読んでいたミッフィーの絵本を今は,子供が読んでいる。
 絵本のキャラクターは実に長命だ。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
↑↑弁護士がしているブログの人気ランキングです。色々な弁護士の見解を見ることができます。

金沢市の人気ブログランキング  
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。
posted by 内田清隆 at 08:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年11月08日

「真正品の並行輸入」は合法です。

 有名ブランド,例えば,ルイ・ヴィトンの有名な柄のバッグがフランスのデパートで日本の正規代理店よりずっと安く売られているのを発見したとしよう。
 「よしっ,これを日本でネットを通じて安く売れば,大儲けできるぞ」と考えて,日本の正規代理店などの了解を得ずに,日本でそのバッグの販売を始めた。
 法的に問題はないであろうか?

 商標権者の承諾がない限り他人の登録商標がつけられた商品を輸入することは商標法により禁止されている(商標法2条3項2号・25条)。
 有名ブランドは当然日本で商標登録がなされている。
 そうするとそのような商標がつけられた商品の輸入,いわゆる「真正品の並行輸入」は,形式的には商標法に違反する。

 しかし,最高裁は,平成15年2月27日,「真正品の並行輸入」は,商標法が保護する
  出所表示機能(どこを出所として提供されるものであることを分からせる機能),
  品質保証機能(ブランド品としての品質を有しているであろうと分からせる機能)
を害さないため,形式的には商標法違反であっても,違法にはならないことを明確にした。

 もっとも,合法なのは,「真正品の並行輸入」であることに注意が必要だ。
 もちろん,偽造品の輸入は違法である。
 そうでなくても,日本で売られている物と違う品質の物を輸入する場合も「真正品の並行輸入」にあたるのか,内外の商標権者が相当にちがう場合にも「真正品の並行輸入」にあたるのかどうかなどはっきりしない問題も多く,注意が必要である。
 次回以降説明していきたい。

  内外品質の同一性については→こちら

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
↑↑弁護士がしているブログの人気ランキングです。色々な弁護士の見解を見ることができます。

金沢市の人気ブログランキング  
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。

Twitterボタン

posted by 内田清隆 at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年09月10日

パテント・トロール

  パテント・トロールとは,表向きはソフトウェア開発などの事業を行っている。しかし,実は,個人などから特許権を買い集め,特許権侵害を理由に大企業から損害賠償金を得ることで生計を立てる中小企業や個人のことである。
 日本にも特許ゴロという言葉があるが,同じような意味だろう。
 
 「お前のこの商品はおれの特許を侵害しているぞ,誠意見せてくれなかったら,訴えるぞ!」とガラ悪く言えば特許ゴロで,法的に武装して訴訟により「損害賠償金を支払え」と求めればパテント・トロールになるのだろうか。
 いずれにせよ本質は同じである。

 前に,特許権侵害が訴訟になるのは,仲間割れパターンか取引先パターンが多いと説明した。
 しかし,最近では,このパテント・トロールあるいそれに近い者が訴訟を起こしているパターンも非常に多い。

 大手企業同士がつぶすかつぶされるかというリスクのある訴訟に臨むことは珍しい。
 しかも,大手企業同士であれば,ある事実を特許権侵害で訴えれば,別の事実で特許権侵害で訴えられるという恐れもある。
 しかも,お互いたくさんの特許を有しているため,クロスライセンスなど話合い解決のための手段も多い。
 そのため,大企業同士では,訴訟になる前に話合いで解決できる可能性も高い。

 ところがパテント・トロールは違う。
 パテント・トロールは,個人や小さな企業であり,失うものは何もない。
 訴訟に臨んでも,リスクは背負っておらず,利益を得る可能性があるだけだ。
 そのためリスクを恐れて訴訟をしないという選択はあり得ない。
 しかも,何も生産していない会社である場合も多く,別の事実で特許権侵害で訴えられる恐れもないし,クロスライセンスによる解決という手段もない。
 そのため話合いがつかず訴訟になる可能性が非常に高いのである。

 失うものがない相手ほど厄介な相手はいない。
 実は,私もある会社の破産管財人として,特許権侵害で大企業を訴えたことがあった。
 会社代表者は,明らかに特許権侵害であると言っていたが,私としては自信がない面もあった。
 しかし,破産する会社であり,失うものは何もない。
 話合いがつかなかったため,難しいことは考えずに,勝つ可能性があるということだけで訴訟を提起することになった。
 低額の賠償金の支払を受けて和解になったが,今思うとパテント・トロールに近い行動であったのだなあと思う。
(もっとも,今なら,金沢で訴訟ができないため,簡単には訴訟提起もできないが・・・。)

 失うものがない相手というのは一番恐ろしい相手だ。
 勝てるなら大企業相手の訴訟は気楽である。
 裁判に勝ちさえすれば,取りっぱぐれることはない。目指すことははっきりしている。
 一方,失うものがない相手との訴訟は,何とも気が重い。
 裁判に勝ったとしても何も得ることができないかもしれず,裁判に勝つことだけを目指すわけにはいかないからだ。
 
 ちなみにトロールとは北欧の伝説に現れる妖精である。(こんなのとかこんなの

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
↑↑弁護士がしているブログの人気ランキングです。色々な弁護士の見解を見ることができます。

金沢市の人気ブログランキング  
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。

Twitterボタン

posted by 内田清隆 at 20:54| Comment(2) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年09月03日

中国の知的財産権訴訟

  今日「有田焼」が中国で焼き物と無関係な人物により商標登録されてしまったとのニュース報道があった。
  中国では進出してきそうな日本の企業の商標を登録してしまい日本企業からお金をとることを商売とする商標トロールが多数いるようだ。

  今日、知的財産権の訴訟等を専門的にする大阪の弁護士から酒席で聞いた話だと中国の北京以外の裁判所は大変なことになっているらしい。
  日本企業と別の国の企業が訴訟をすると「どっちの会社が中国に尽くしてくれるの?」と紅衛兵あがりの裁判官からまず質問されたという。つまり、いきなり暗に賄賂を要求されたわけだ。
 そして、賄賂を拒否するとすみやかに敗訴になったという。
 ところが北京の裁判所は違うらしい。北京の裁判官は、エリートの集まりであり、国の恥にならないよう国際基準に従い公平に裁判するという。
 そのために,何とか北京で裁判ができるよう努力することが重要という話だった。

 中国に「日本の知的財産を侵害するな!」と言うと「日本も昔同じことしていただろ」とやりかえされるという話も聞いた。
 そういえば、自分が小さいころは日本も他国の真似、つまり知的財産を侵害して経済発展しているという批判がよくあった。

  中国の知的財産訴訟のやり方に不満を持つのも日本が進化した証なのだろう。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
↑↑弁護士がしているブログの人気ランキングです。色々な弁護士の見解を見ることができます。

金沢市の人気ブログランキング  
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。

Twitterボタン
posted by 内田清隆 at 23:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年08月06日

「コロンブスの卵なのか?」−特許権侵害訴訟でよくある話

 大阪地方裁判所平成22年7月22日判決では,地震になると扉が自動的にロックされ,地震の揺れがおさまるとロックが解除されるという収納を発明した者が原告になった。
 そして,原告が,同様の収納を販売している大手ハウスメーカー等を被告として,特許権侵害で訴えたという事件だ。
 結果は,原告の敗訴であった。

 原告は以下の通り主張した。

「本件特許発明の実施例である球と被告物件の感震体である倒立分銅は『振動するもの』として適宜選択可能な慣用手段である」「本件明細書に実施例として記載された球を,倒立分銅と中間体に置換して被告物件の構成にすることは当業者が容易に想到して実施できる」。

 原告特許と,被告の販売品の大きな違いは,揺れを感じる装置が「球」であるか「倒立分銅」であるかという点であった。
 そして,原告は,業者であれば「球」が思いつけば「倒立分銅」も簡単に思いつくのであるから,被告の販売品は原告特許を侵害すると主張したわけだ。

 これに対して,裁判所は,以下の通り判示した。つまり,「球」が思いついたからといって「倒立分銅」が思いつくとは限らないとして,原告の主張を排斥したのだ。

 「本件明細書には装置本体の振動エリアに収納した球を用いて係止体の回動を妨げるという技術思想しか開示されていないのであるから,たとえ当業者であったとしても,本件明細書の記載から被告物件の倒立分銅とラッチ保持具を用いた構成を実施できるものと認めることはできない。」

 特許権侵害をめぐる紛争では同じような流れになる場合が実に多い。
 つまり,「被告の製品は原告の特許を侵害している,微妙に違うがそんなことは原告の特許があれば誰だって思いつくことだ!」と原告が主張する。
 しかし,裁判所は,「誰だって思いつくとはいえない」として原告の請求を棄却するという流れだ。

 仮に,誰でも思いつくことであれば,開発者としては,それも含めて特許にしておかなければならない。
 そうしておかなかければ,「誰でも思いつくこととはいえない」と裁判所に考えられてしまう可能性は高い。
 
 もちろん,特許請求の範囲を広げると特許を取得するのが難しくなるという問題もあるのかもしれない。
 しかし,誰でも思いつく変更であれば,必ず誰かが思いついて真似をするわけであるから,そのような事項こそ特許に含めておかなければ特許の意味がなくなってしまう。

 にもかかわらず,「誰もが思いつく改良だ!」という主張がなされるという上記裁判と同じような争いは尽きない。
 実は,そのような争いになるときは,誰もが思いつく変更ではなく,ちょっとした変更であるがコロンブスの卵である変更がなされているのではないのだろうかと疑うことも多い。
 それとも,本当に誰もが思いつく変更であっても,特許の範囲に入れ忘れられることが多いのだろうか?

 上記裁判で裁判所は,以下の通り判示している。原告としては,被告製品は原告特許をより悪くしたものであり,そんな真似のされ方は想定できないと主張したのであろう。
 しかし,これもよくなされ,よく排斥される主張だ。
 改悪される場合も想定して特許を取得しておくことが重要ということであろう。

 被告物件におけるラッチ保持具は,地震終了時に収容物が扉側に倒れるなどして外方に付勢している場合に,ロック状態が解除されることを防ぎ,収容物が落ちることを防止するという機能を果たしているのであるから,被告物件の構成が本件特許発明の改悪にすぎないという原告の主張は当たっていない。」

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
↑↑弁護士がしているブログの人気ランキングです。クリックすると色々な弁護士の見解を見ることができます。

金沢市の人気ブログランキング  
↑↑参加しています。クリックでご協力お願いします。

Twitterボタン
posted by 内田清隆 at 08:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年07月31日

何の意味もない実用新案権−悪徳商法や詐欺のための権利?

 実用新案権について,覚えておくべきことは,原則として

 何の意味もない権利である

ということだ。

 実用新案権とは,特許を取れるほどではない高度でない発明に与えられる権利とされている。
 しかし,実用新案権の申請がなされると,何の審査もされないで登録がなされる。そのため,実際には,とても権利を与えるべきでない発明までもが実用新案として登録されているのだ。

 そのため,実用新案権に基づく権利行使,つまり誰かが自分の実用新案権を真似しているからやめさせようとするには,実用新案権を登録しているだけではできない。
 権利行使するには,新たに,特許庁から実用新案権がどの程度のものであるのかを評価した「技術評価書」というものを発行してもらい,それをつけてしなければならないのだ(弁護士であってもうっかりと技術評価書をつけないで実用新案権侵害に対する差止請求をしたりすることがある・・)。

 そして,技術評価書では,実用新案権について厳しい評価がなされることが多い,
 「昔からある技術の可能性が高く発明にあたるかは疑わしい」などと特許庁が評価することも多い。
 そのような評価書をつけて,実用新案権の権利行使をするわけにはいかない。
 そのため,実用新案権は,登録していても,いざ権利行使しようとすると全く使えないということが,よく起こる権利なのだ。

 「そんな権利に何の意味があるの?」と思われるかもしれない。
 実際に,そう思う人も増えてきており,年々実用新案権の登録件数は減る一方だ。
 

 実用新案権が利用されている場合をみると悪徳商法や詐欺に利用されているケースが多い。
 
 全く発明ともいえない健康器具などについて実用新案として登録して,「実用新案登録第1234567号」と宣伝する。
 それにより,何らかの効果があるものではないかと消費者を誤解させるのに役立っているというわけだ。

 もっと悪質な利用形態もある。
 小さな会社に対して,「この特許庁の出している広報を見てください。お宅の販売しているこの商品は私の持っている実用新案権を侵害していますよ。すぐに○円支払わないと大変なことになりますよ」などと言って,お金を巻き上げるのに利用されているのだ。

 このような詐欺や悪徳商法をなくすためには,実用新案権は基本的に何の意味もないという認識を国民が共有することが大切だ。

 同じことは,出願中の特許にもいえる。
 特許権は,特許庁の厳しい審査を通過して初めて与えられるものであり,基本的にきちんとした発明だけに与えられる。
 しかし,特許を出願するだけであれば,どんなものであってもできる。そして,多くの特許は,出願はされるものの実際には特許権を受けることができていないのである。
 出願中の特許とは,まだ特許として認められていないが,発明した人は特許の価値があると思っているということをあらわすに過ぎないと覚えておくべきだ。

↓他の弁護士の見解は↓            ↓ツイッターもしています↓
   にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  人気ブログランキングへ  Twitterボタン

posted by 内田清隆 at 12:40| Comment(1) | TrackBack(0) | 知的財産法

2010年06月12日

急がされる知的財産をめぐる裁判

 昨日,名古屋の後藤昌弘弁護士を講師としてお招きした北陸三県の弁護士や弁理士が集まる会合(弁護士知財ネット)に参加した。
 ブログには書けない裁判所の裏話から,知的財産訴訟の基本的なことまで,興味深い話をたくさんうかがった。
 特にためになった話は,知的財産をめぐる裁判では,非常に急がされる場合が多くあるという話であった。

 ある訴訟事件では,1回目の弁論期日の前に,裁判官から,原告は答弁書に反論があれば3週間以内に,被告は,それに対する反論があれば2週間以内に提出するよう指示された。
 そして,なんとそれ以上の主張は許されず,1回目の期日で裁判が終了してしまったという。
 普通の訴訟では,争いがある事件で1回で裁判が終わるということは考えられない。

 また,別の仮処分の事件では,形態を模倣したと訴えられた側は,3週間以内に反論を記載した書面を提出するよう裁判所から指示された。
 そして,裁判所は,その期限について1日たりとも延長を認めずに,速やかに決定をしたという話であった。
 複雑な事件であり,とても3週間で反論するのは困難な事件であったが,弁護士が徹夜して書面を作成して,何とか反論したという話であった。

 もちろん極端な事件であるという話であったが,そのようなケースがあるというだけで驚きであった。
 裁判所は,知的財産をめぐる裁判に時間がかかりすぎるという批判(あるいは外圧)を受けている。
 そのため,極端に裁判を急ごうとする方向性があるようだ。

 3週間で,先行研究に関する海外の文献を見つけ出すといっても困難な話である。
 警告書を受け,裁判が予想される場合にはもちろん,場合によっては,警告書などが来る以前から,しっかりと訴えられた際の準備をしておく必要があるということであろう。
 
 裁判を急ぎすぎることには反対であるが,忙しい現代社会において,以前ほど時間をかけられないのも当然であろう。
 
 なかなか厳しい時代になったものだ。

↓他の弁護士の見解は↓            ↓ツイッターもしています↓
   にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  人気ブログランキングへ  Twitterボタン

posted by 内田清隆 at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法