2025年10月06日

「みゃくみゃく」が弁護士業界に襲撃!?〜登録商標にみる多すぎる指定役務・商品


20251006みゃくみゃく.jpg
   商標権者:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
   登録番号:第6656708号
   特許情報プラットフォームhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/s0100 から

上記、大阪万博のマスコットキャラクター「みゃくみゃく」は、もちろん商標を取得されているが、指定役務又は指定商品が衝撃を受けるほど広い範囲となっている。
登録商標はすべての役務・商品について独占権が与えられるわけではなく、登録された「指定役務・商品」に限り独占的な使用が可能となる。
この点、図の「みゃくみゃく」は信じられない数の役務・商品を対象としていて驚いた。100や200ではなく数えられないような数の役務・商品を対象としているのである。

そのごくごく一部をあげると以下のような役務・商品である。
第3類  つけまつ毛
第5類  生理用ナプキン,おむつ,金属製養鶏用かご
第7類  陶工用ろくろ,消毒・殺虫又は防臭用散布機(農業用のものを除く。)
第8類  くわ,鋤,火ばし,まつ毛カール器
第9類  人工衛星,消防車
第10類 人工鼓膜用材料,しびん,病人用差込み便器,
第12類 落下傘
第13類 爆薬,戦車
第19類 養鶏用かご(金属製のものを除く。)
第21類 ねずみ取り器,はえたたき,ブラシ用牛毛・たぬきの毛・豚毛及び馬毛
第24類 遺体覆い,黒白幕,
第26類 つけあごひげ
第31類 鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。
第37類 原子力発電プラントの修理又は保守
第40類 核燃料の再加工処理
第45類 葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供

「みゃくみゃく」を商標とする、人工衛星から核燃料の再加工処理まで行う意思があるらしい。
「みゃくみゃく」を商標とした葬儀の執行や「しびん」や「おむつ」には魅力を感じないが、人それぞれなのだろうか。
基本的に指定役務・商品は、使用する意思がないと登録されない。
そうすると、爆薬や戦車にまで「みゃくみゃく」を使用する意思があるということだが、やめてほしいものだ。

さらに見ていくと
第45類 法律事務に関する情報の提供
についても登録がされていた! 
どうやら弁護士業界にまで「みゃくみゃく」は攻撃を仕掛けてくる意思がありそうだ。もしかしたら強力なライバルになるのかもしれない。


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2025年04月22日

八代亜紀のヌード写真付きCDの販売は法に触れるのか

あるレコード会社が、既に亡くなった八代亜紀さんのヌード写真付きCDを発売したことで、物議をかもしている。果たして、これは違法行為になるのであろうか。

死者に権利がないのは原則であるが、死者の名誉は法的に保護されており、その名誉を侵害すると名誉毀損罪(刑法230条)が成立する。
しかし、その処罰対象は、虚偽の事実を摘示した場合のみとされており、醜く加工したヌード写真であればともかく、本物のヌード写真であれば、同罪は成立しない。

下記のニュースによると、橋下徹弁護士が、著作権・著作者人格権に侵害可能性に言及したようであるが、写真の著作者は、撮影者である。そのため、八代亜紀さんが自撮りをしたといった特殊な事情がなければ、著作権法違反にはなり得ない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/87c07844624af35e456aa1a628c4080fea8b4d94

また、有名人の写真や氏名を広告に利用することは、一定の場合、いわゆるパブリシティ権侵害として許されない。しかし、パブリシティ権は人格権であるため、死者には存在しないという考えが有力だ。もっとも、パブリシティ権についてはそもそもの法律がないため、はっきりしたことは言えないところではある。
参考:http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/79562530.html

今回の件について一番の問題は、名誉やパブリシティというよりプライバシー侵害の点にあるであろう。しかし、プライバシー侵害についても法律はないため、どのような場合が違法になるのかは、はっきりしない。ましてや、死者のプライバシー侵害についてはほとんど議論にすらなっていない。ただ、普通に考えれば、当の本人が亡くなっている以上、プライバシー権侵害で訴えるのは難しそうだ。

なお、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)違反については、本人が亡くなっていても成立し得る。ただ、CDに付けられた写真が、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」(全裸又は半裸の状態で扇情的なポーズをとらせているものなど)に当たるのかという問題があるし、同法は申告罪であり、遺族が了承していれば、本人(死者)の意思に反していても、罪には問われないということになる。

結論的に、死者のプライバシーに関しては、法律の整備がなされておらず、よく分からない面が多いというのが回答になろう。
死者を大切にしないと、化けて出てきて生者を困らせるというのが日本の神話。法の整備を急ぎたい。


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2024年02月27日

有名商品(ブランド商品)を広告に使えるか

フェラーリの自動車をあるいはエルメスのバッグといった有名商品を、広告に使うことは許されるだろうか?
非常に難しい問題だ。

商標法
もちろん、有名商品の登録商標を、商標的に使用すれば、すなわち、商品の出所を表示するために用いれば、当然に商標法違反である。
まずは、商標を写さないように、あるいは写すとしても意匠的効果や装飾的効果だけをもたらすようにして商標的に使用しないことは当然必要である。

パブリシティ権
では、商標的に使用しなければ大丈夫なのであろうか。
物のパブリシティ権侵害http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/78754293.htmlについては、最高裁が明確に否定しており、一般論としては、心配する必要はないであろう。
もっとも、過去には認めていた裁判例も多数あり、最高裁がパブリシティ権侵害になるといったような、専ら他社商品の有する顧客吸引力の利用を目的とした場合まで不法行為が成立しないのかは明確ではない。
ただ、他人の商品を利用して、そのような広告を作ることは常識的には考えられないであろう。

意匠権・著作権
意匠権については、類似形状商品の製造・販売等が禁止されるだけであるので、意匠登録されている商品を使用しても意匠権侵害にはならない。

では著作権はどうであろうか。
工業製品については、原則として意匠権で保護されるべきものであるため、著作権が認められないとするのが一般の裁判例ではある。
そう考えれば、著作権侵害も心配することはないことになる。

しかし、工業製品であっても創作性があれば美術の著作物にあたるとする知財高裁の裁判例http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/164829131.htmlも存在する。その考えによれば、特別な形をした商品の広告利用は、著作物の複製として著作権侵害にあたることにもなり得る。

そのような場合、いわゆる写り込み(著作権法30条の2)として許容されないかが問題となる。
しかし、写り込みは@著作物の利用により利益を得る目的A分離の困難性B著作物が果たす役割などから正当な範囲内といえる場合にだけ許容されるものである。
広告においては、@有名商品を利用して利益を得る目的は明らかであるうえ、A意図的に有名商品を利用しているのであるから分離は極めて容易であり、写り込みとして許容されづらい。

そうなると、個人的には、著作権侵害という結論はあり得ないと思うが、著作権侵害が成立するかについては、学説・裁判例を注視する必要があり、簡単には判断できないというのが妥当な結論なのかもしれない。

不正競争防止法
不正競争防止法2条1項1号により、広く認識されている他人の商品等表示を使用し、他人の営業との混同を生じさせる行為は、違法となる。
一般論としては、他社の商品を広告に利用しても、営業の混同が生じることはないため、不正競争防止法違反にはならないといえるであろう。
しかし、使用方法によっては、誤解が生じることはあり得るため、注意が必要なことは確かだ。
(他人の著名な商品等表示を「自己の商品等表示として」使用すれば同2号の問題になるが、広告では普通、そんなことはない。)


他にも一般不法行為の成立も検討が必要かもしれない。
知的財産権の問題は得てしてそうだが、多数の法律が問題になる上、明確な回答がない場合が少なくない。
明確な回答がなければ委縮効果をもたらし、表現の自由が侵害されることになる。
積極的に立法で解決していくことが重要であろう。

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2022年02月13日

「第三者意見募集制度」〜自分とは違う世界 

2014年,知財高裁は,アップル対サムソン事件の審理の際に,Frand宣言に関して広く専門家からの意見を募集し,判決の参考にした。

裁判官といえども,すべてのことを知っているわけではない。
そこで,専門家の意見を幅広く聞こうとしたわけだ。

同判決の時点においては,法律はなく,事実上行われたにすぎなかった。
しかし,改正特許法により本年4月から,「第三者意見募集制度」という正式な制度として,裁判所は,広く一般に対し,意見を求められることになった。


先日,ベトナム人技能実習生が死体遺棄に問われている事件で,弁護団がホームページhttps://孤立出産.jp/ で,広く,出産直後の母親の精神についての専門的知識・経験をもっている人などの意見を求めているのを知った。

確かに,裁判官の知らない専門的な意見が必要となるのは,特許事件に限らない。
男性である私にとっても,出産した直後の母親の精神を知ることは難しい。


「裁判官は世間を知らない」などと批判されることがある。
しかし,どんな人間でも,知っている世界はごくわずかだ。
にもかかわらず,そのごくわずかな自分の身の回りの世界の常識で,すべてを判断しようとしがちだ。

しかし,多様性(ダイバーシティ)の重要性が謳われる現代,多様な価値観を認めること=自分の常識では判断できない世界があることを素直に認めることは大切だ。
そして,自分とは違う世界の人の意見を素直に聞く耳をもたなければならない。

そのために,「第三者意見募集制度」はとても有用であると思う。


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2021年09月14日

注目が集まる意匠権〜製品は「見た目」が9割

新規デザインを保護する権利である意匠権(design patent)が近年注目されているという話をセミナーで聞いた。
私は今まで,意匠権をめぐる紛争だけには関わったことがなかったので,意匠権が注目されているというのに少し驚いた。

調べてみると,確かにアメリカでは,2010年から2020年にかけて,意匠権の認可件数が2万2799件→3万4877件と約1.5倍に急増している。 
https://www.uspto.gov/web/offices/ac/ido/oeip/taf/us_stat.htm
  
一方,日本では,同じ期間に意匠権の登録件数は2万7438件→2万5873件と逆に若干減少していた。しかし,特許権の登録件数が22万2693件→17万6933件と大幅に減少していることと比較すれば,日本でも意匠権は少しは注目を集めているのかもしれない。
file:///C:/Users/%E5%86%85%E7%94%B0/AppData/Local/Temp/01-03-2.pdf

https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/syutugan_toukei_sokuho/document/index/202103_sokuho.pdf 


意匠権が注目されたきっかけは,例のアップル対サムスンの訴訟であるという。
私もブログ
記事1http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/48328583.html
記事2http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/57797121.html
に書いていたが,2011年から世界中で争われた両者の訴訟は,2018年まで続いた。

2018年5月24日にサンノゼの米連邦地方裁判所判決は,サムスンに約5億3900万ドル(約590億円)の支払を命じたが,うち意匠権侵害が約5億3330万ドル,特許権侵害についてはわずか532万ドルに過ぎなかった。
このように意匠権侵害で多額の損害賠償が認められる傾向は,2012年以降ずっと続いている。
この傾向を見て,「意匠権は意外に使える!」という認識が高まったというのである。

アップル対サムソンの訴訟で,意匠権侵害に多額の損害賠償が認められたのは,i-phoneが特に「見た目」にこだわった製品であったというのも理由の一つかもしれない。しかし,そもそもiPhoneが「見た目」にこだわっているのは,意匠の重要性が増しているからであろう。
また,意匠権侵害で多額の損害賠償が認められたのは,一般人が行う陪審員裁判において,見た目を比べればよいだけの意匠権侵害は,技術に関する難解な文言の解釈を必要とする特許権侵害よりも認められやすかったからであるとも言われる。
内田ブログiPhone.jpg
しかし,これも,分かりやすく・簡単な「見た目」を重要視する社会の傾向を表しているのであろう。

アメリカに比べ日本では,意匠権への注目度はまだまだ低い。
「中身」も大切だが「外見」も大切だ。中身がよければよいという思想に固執し,取り残されないようにしないといけない。


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2018年01月21日

現代将棋界と「知のオープン化」の果て 


特許を取得するためには、新規性とともに、産業上の利用可能性が必要である。
そのため,いかに独創的であっても,産業に利用できない将棋の戦法について特許を取ることはできない。

特許取得が可能であれば,あの革命的な戦法『藤井システム』の創設者藤井猛九段は多大な利益をあげていただろう。
しかしながら,実際には,藤井システムで一番勝ったのは羽生善治竜王であり,彼が一番利益をあげたのかもしれない。


2014年米国電気自動車の大手テスラモーターズは、自らの特許を広く一般に無料で利用させるというオープン化宣言をした。
すると2015年、トヨタ自動車も自社が持つ燃料電池車の関連特許約5680件の無償提供を発表し、さらにはパナソニックも自社が持つIOT関連特許などすべてを無償提供すると発表した。
特許の世界のオープン化である。 

自社の技術をオープンにすることで、市場への他社の参入を誘導し,自社技術を世界標準仕様,デファクトスタンダードにしようという企みはもちろんあるだろう。
しかしそればかりでなく、LINUXが明示するように、知を共有することで共同的創造作業が可能となり、より技術を発展させ人類を幸せに導くという利他的な思想もあるのであろう。

この知のオープン化の果てにはどんな世界が待つのであろう。

知のオープン化をいち早く行ったのが将棋界だ。
エポックメイキングとなったのは,1992年、名著「羽生の頭脳」の発売であった。
羽生竜王は,最先端の研究について惜しむことなく公開した。
そのため,同書はそれまでの将棋本とは異なり,プロ棋士が参考にする本となった。「羽生の頭脳」を読んでいないプロ棋士が同書のとおりに負けるといった事態を引き起こした。

以降,研究内容を隠さないのが将棋プロの主流へと変わり、知のオープン化が進むことになった。
孤独な研究を続けるプロ棋士は少数派となり,多くのプロ棋士は自らの研究内容を惜しみなく公開しつつ,共同研究をするようになったのだ。

近年の将棋界は,いわばイノベーションの嵐が吹き荒れている。
以前は,矢倉91手組を筆頭に,長手数,前例をなぞることが多かった。前例の上に改良手を加えるという研究にウェイトがおかれていた。
ところが,最近では,3手目から,5手目から新手が飛び出すことも珍しくない。
見たこともない戦型が毎週のように飛び出す。
「狭く深く」から「広く浅く」へ。「改良」から「革新」へと変わったわけだ。

知がオープン化され,共同研究が進むにつれて,穴は一人で掘る時代でなくなった。
人気のある穴には,次から次へと人がやってきて鉱脈を探す。しかし、そこで新鉱脈を見つけることは競争が激し過ぎて大変だし,見つけたとしても得られる利益は少ない。それだったら,誰も手を付けていない大地を掘った方がいい・・・そんな理由で将棋界に変革が生じたように思える。

藤井4段の29連勝、加藤一二三引退、羽生竜王の国民栄誉賞受賞と将棋界が熱い。これは、知のオープン化にともなう技術革新の成果といえるのではないだろうか。

産業界においても,このまま知のオープン化が進めば,次から次へと技術革新が進み,見たこともないアイディアが次々と現れるのか。楽しみである。


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2017年12月07日

色彩のみからなる商標

今年4月から「音」や「色」だけで商標登録することが可能になった。
しかし,登録のハードルはなかなか高いようだ。

この記事を書いた12月6日の段階で,色彩のみからなる商標が登録されたのは,トンボ鉛筆とセブンイレブンの2つに限られるようだ。

トンボ.jpg


セブンイレブン.jpg

「色彩のみからなる商標」は,基本として商標登録はできず,その色彩が使用された結果,誰の商品・役務であるかが分かるようになること,すなわち「使用による識別力」が必要とされている。

トンボ鉛筆もセブンイレブンも,相当有名なマークであり,確かに,強い識別力をもっている。
ここまで強い識別力がないと登録できないのだとすれば,かなり厳しいハードルといえよう。

実際に特許庁のホームページによると,少なくとも282件の申請があったものの,前述のとおり登録にたどり着いたものは,たったの2件である。
もっとも厳しいといわれている,単色により特定する方法での商標登録は0件だ。https://www2.j-platpat.inpit.go.jp/syutsugan/TM_AREA_A.cgi?0&1512633844484

「MONO」のブランド名で知られるトンボ鉛筆にしても,当初,文房具全体での登録を目指していたが,最終的に「消しゴム」に絞ったうえで登録されることになったようだ。

実は私も,当事務所のイメージカラーを商標登録をしたいと夢見ていたが,これではとても登録は不可能だと思った。

どんな運用になるのだろうかと思っていたが,かなりの大企業だけに意味のある制度であり,MONOやセブンイレブンのデザインをうっかり使ってしまうこともなさそうなので,今のところあまり気にする必要はなさそうだ。


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2017年09月04日

著作権侵害判断の避けられないあいまいさ

ファンの方には,怒られそうだが,レゲエに精通していない自分に取って,レゲエの歌は,全部同じに聞こえる。ズッチャカズッチャカ,チャカポコチャカポコ・・

キャプチャ.PNG

あるとき,テレビCMで利用している楽曲が,某有名アーティストの楽曲とよく似ているので,著作権(翻案権)を侵害していないか心配であるという相談を受けた。

 実際に聞いてみたところ,非常によく似ている。これは著作権侵害にあたると直感した。
 ところが,その曲を弊所の職員数名に聞かせてみると「全然違う」「まったく似ていない」そんな意見が多かった。
 自分はもともと音痴であり,音楽の著作権侵害については,自分の耳を信用しない方がいいなと思った。

 最高裁は,有名な「江差追分事件」の判決で,著作権(翻案権)を侵害するかどうかの判断は,
既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるか
 という基準によるべきであると判示した。
  しかし,極めてあいまいな基準というしかない。プロのミュージシャンと私のような音痴のようでは,表現上の本質的特徴を感得できるかどうかは大きく違ってくる。音楽的素養の有無によって,判断は大きく異なってしまうのだ。
 「通常の音楽的素養をもつ一般人」を基準とすべきなのであろう。 
しかし,裁判官が通常の音楽的素養をもっているとは限らない。
通常の音楽的素養をもっていない裁判官が,通常の音楽的素養をもつ一般人がどう考えるかを判断することは非常に困難だ。

 陪審員制のように,一般人が関わり,多数決で決めることが正しい判断につながるのかもしれない。
 「本質的な特徴を直接感得できた人,手をあげて」と聞いて,手が多く上がったら,著作権(翻案権)を侵害しているというわけだ。
 いい加減すぎる感じだが,裁判官による判断であってもそう違わないのではという気がする。


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2017年01月27日

ピコ太郎は歌えなくなるのか〜PPAPの商標問題

ピコ太郎で有名な「PPAP」を,無関係の会社が商標出願していたとしてニュースになっている。
http://www.asahi.com/articles/ASK1V3GMCK1VUCLV003.html


特許情報プラットフォームで,調べてみると,確かにエイベックスが商標出願する直前などに,商標出願がされているようだ。 

果たして,ピコ太郎は,PPAPを歌えなくなるのであろうか?

「需要者の間に広く認識されている商標」は,商標登録ができない(商標法4条1項10号)。PPAPが広く認識されていることは間違いないであろう。
しかし,PPAPは「商標」として認識されているわけではない。そのため,同項で却下するのは難しそうだ。

しかし,知財高裁平成24年5月31日判決によれば, 商標登録されるには 「現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標 ,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する」意思が必要であり,第三者に権利を売却する意思しかなければ商標登録できない。本件は,この点で却下される可能性は高そうだ。

また,仮に同項に当らないとしても,これほど有名になった言葉を関係ない人が商標登録するのは公序良俗上,問題だ。
「ポパイ」「がんばれニッポン」「トトロ」
といった「有名な商標」とはいえないが,非常に有名な言葉については,公序良俗違反(商標法4条1項7号)として,商標出願が却下されている。
同じ理由でPPAPの商標出願が却下される可能性も高そうだ。
いずれにせよ,登録は難しそうである。

しかも,登録されたとしても,ピコ太郎が歌えなくなることはあり得ない。
そもそも「PPAP」を歌うことは商標としての利用に当らないし,広く認識されている商標には先使用権があり(商標32条),後で別人に登録されたとしても,利用を続けられるからだ。

調べてみたら,「パン・パイナッポー・アッポー・パン」というパンが高校生に大人気という記事を見つけた。
http://rocketnews24.com/2016/10/21/815570/
法律問題としては,こちらの方が微妙で興味深い。


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2016年10月22日

パロディ商標の限界〜KUMAとPUMA

有名なPUMAの商標
PUMA.png
KUMA事件(知財高裁平成25年4月25日判決)では,下記商標は,PUMAの商標と外観上酷似しており,混同を生ずる恐れがあり,無効であるとされた。


KUMA.png
一方で, SHI-SA事件(知財高裁平成22年7月12日判決)では,下記商標は,PUMAの商標と外観上必ずしも類似するとはいえず,混同を生ずる恐れがあるとはいえないとして,有効であるとされた。


SHISA.png
KUMAとPUMAは「K」と「P」しか違わないが,「SHI−SA」と「PUMA」はスペルがだいぶ違う。また,「SHI−SA」の方には,「OKINAWA ORIGINAL・・・」など小さな文字でいろいろと書かれている。
それを考えれば,KUMAは似ている,SHI−SAは似ていないという判断もあり得ないとはいえない。しかし,かなり微妙な判断である。

 もしかすると,両社の態度が結論を変えさせたのかもしれない。
 KUMAは「本件商標以外にも,欧文字4つのロゴにピューマの代わりに馬や豚を用いた商標や,他の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願し,商品販売について著作権侵害の警告を受けたこともある」として,知財高裁は,「公正な取引秩序を乱し,商道徳に反する」とまで述べている。
 KUMAだけでなく「BUTA」や「UUMA」も使い,以前から注意されていたというわけである。

 一方でSHI−SAについては,「本件商標の跳躍するシルエットの動物図形には,沖縄を象徴するシーサーが沖縄から大きな舞台に跳び出してほしいという原告の願いが込められている」「パロディの趣旨で本件商標を創作した事実を認めるに足りる証拠は存しない」と判示している。
 
 ふざけた態度で作っているKUMAはだめだけど,まじめな態度で作っているSHI−SAはOKと裁判所が判断したというわけだ。
 しかし,それではパロディという行為自体が悪いということになってしまう。諸外国のようにパロディを広く認めるためには立法が必要であろうが,少なくともパロディだから悪いという価値判断はおかしいと思われる。

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2016年08月03日

著作権切れの絵画の写真

著作権が切れている絵画の写真を,誰の許可も得ないでホームページで公開することに問題はないのであろうか。
何度か訴訟でも争われているが,結論からいえば,原則問題がないということになる。

所有権侵害
まず,絵画の所有者に無断で絵画の写真を公開することが,絵画の所有者の所有権の侵害にならないかが問題となる。
この点が争われた有名な裁判が,いわゆる顔真卿事件である。
唐時代の書家である顔真卿の書の写真を,書の所有者に無断で発行した人が,所有者から所有権侵害で訴えられた。
28.8.3 図@.jpg

それに対して 最高裁は,
「博物館や美術館において、著作権が現存しない著作物の原作品の観覧や写真撮影について料金を徴収し、あるいは写真撮影をするのに許可を要するとしているのは、・・・所有権者が・・・原作品を所有していることから生じる反射的効果にすぎない」として,所有者に無断で芸術作品の写真を公開することは所有権の侵害にはならないことを明確にした。

写真の著作権侵害
また,写真の撮影者に無断で絵画の写真を公開することが,写真の撮影者の著作権の侵害にならないかが問題となる。
この点が争われた裁判が版画写真事件である。
ある雑誌に掲載されていた版画の写真を,撮影者の承諾も受けずに別の本に載せたところ,撮影者から著作権侵害で訴えられたという事件である。
28.8.3 図A.gif

裁判所は,「撮影対象が平面的な作品である場合には,正面から撮影する以外に撮影移置を選択する余地がない」「技術的な配慮も,原画をできだけ忠実に再現するためにされるものであって,独自に何かを付け加えるというものではない」として,版画の写真の著作物性を否定して訴えを棄却した。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/734/013734_hanrei.pdf

「写真の著作物」として著作権で保護されるためには,撮影者の創作性が表現されることが必要であるが,通常の絵画写真は,絵画の複製物であって,撮影者の創作性は表現されていないというわけである。

もっとも前者の所有権の問題については,確定した判例であるといってよいと思うが,後者の著作権の問題については微妙な点もある。
凹凸のある絵画である場合はどうか,光の当て方や露出などに工夫がみられる場合はどうか,どの程度の工夫があれば「創作性」があるといえるのかなど,未解決な問題も多い。
今後も注意して裁判例を見守っていきたい。


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2016年06月18日

田村善之先生のご講演

知財業界では知らない人のいない北海道大学教授の田村善之先生を,知財ネット北陸支部でお招きし,昨日は,そのご講演をうかがった。
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著作権法には,保守・修理等のための一時的複製(法47条の4)など,妙に細かい規定がある。
これらの規定がどのような力関係に創出されるのかを具体的にお話しいただいた。

一方に,著作権法改正に大きな利害関係をもつ巨大組織がある。
他方に,小さな利害関係しかもたない,しかし極めて多数の一般人がいる。
前者の巨大組織は,自己に有利な政策実現に向けて,積極的な活動を行う。
後者の多数の一般人は,何らの活動も行わない。
(「校庭でアンパンマンの雪だるまを作ること」が著作権侵害でないことを明確にするために,積極的に運動をする人はいない。)

その関係性により,著作権法では現実と乖離した偏った立法がなされるのだ。
「そんなにお話しされて大丈夫なのだろうか」と思うほど実名を挙げながら,具体的にお話しいただいた。
裁判官や立法府の考え方というものも理解でき,実に興味深かった。


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posted by 内田清隆 at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2015年10月02日

海洋堂のフィギュアは芸術か?〜応用美術と著作権

幼稚園生が書いた絵であっても「著作権」は認められる。著作権が成立するために,高度の芸術性は不要であるというのが通説だ。

ところが,「応用美術」=実用目的で製作された創作品については,「純粋美術」=専ら鑑賞目的で製作された創作品と異なる扱いを受ける。
「応用美術」については,「純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備している」こと,いわば,芸術的でないと著作権が認められないとするのが一般の裁判例だ。

 例えば,大阪高裁平成17年7月20日判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/446/009446_hanrei.pdf
は,海洋堂のフィギュアについて,これを「実用目的」だとしたうえで,妖怪フィギュアについては相当程度の美術性を備えているとして著作物とした一方,動物フィギュアについては,美的創作性はないとして,著作物ではないとした。

さる.jpg

常々,この結論には疑問を持っていた。

古来日本では,「用の美」こそを尊んできた。襖絵にしても屏風絵にしても,日本美術の多くは,実用品であり,実用品であるからこそ「美」であるとしてきたのである。
にもかかわらず,実用品は著作物ではないとすれば,すべての日本美術が否定されることになりかねない。

また,裁判官が美的創作性を備えているなどと判断できるのであろうか。
「美」とは何かについては,古来より多くの哲人たちが頭を悩ませてきた結論の出ない問題である。
「美的」かどうかなど,どうやって判断してよいのか私にはわからない。

海洋堂のつくる猿に,どのような実用目的があるのか分からないし,十分に美的であると思うのは,自分一人ではないだろう。

知財高裁平成27年4月18日判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/044/085044_hanrei.pdf
は,この点につき画期的だ。
「茶の湯に用いられる茶碗などの茶碗は,実用品であるが・・・著作権法によって保護されることは明らかである。」
「応用美術が,量産される実用品に用いる目的で作成されることは,著作物として保護されるために特別な要件を課す根拠にはならない。」
として,
いす.jpg

椅子であっても,著作物であると判示した。

実に妥当な判決だと思う。


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posted by 内田清隆 at 10:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2015年04月04日

新しい商標受付開始

4月1日から音商標,動き商標,色彩のみからなる商標など,新しい商標の出願受け付けが始まった。

さっそく,特許庁も,特許情報プラットフォームという,新しい検索システムを設けて,音商標,動き商標なども検索できる体制を整えた。

今日,現在登録されている新しい商標は以下だけのようある。


うーん,音感の無い私にはわからない・・・
posted by 内田清隆 at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2014年09月03日

アセアン諸国の模倣品対策と特許権侵害の刑事告訴

 先日,ジェトロ金沢https://www.jetro.go.jp/jetro/japan/kanazawa/で,別の弁護士と共に「海外ビジネスに取り組む際の留意点」という内容のセミナーを行わせていただいた。
 その際にうかがったジェトロ知的財産課アドバイザーによる東南アジアにおける模倣品対策のお話が,具体的な実例も多く大変興味深かった。

 各国の税関における水際対策の概要については,
インドネシア:水際対策前に訴訟が必要か「未決定」
マレーシア :水際対策前の訴訟は著作権の場合は不要と「解される」
という非常に曖昧なものであった。

 詳しく話を聞いてみると,法律は存在しても,上記両国では水際対策は実際には機能していない状況であるため,実際どのように運用されるのかよく分からないという話であった。
 そのお話を聞き,アセアン諸国は法律整備が遅れていることを改めて感じた。

 しかし,考えてみれば,日本でも似たような状況はある。
 あるデータによれば,特許権侵害を刑事事件として,検挙した件数は平成25年において全国で1件しかない。
 特許権侵害について刑事罰を定める法律は存在しても,実際には機能していない状態であるといえよう。
http://www.npa.go.jp/safetylife/seikeikan/niseburando.pdf#search=%27%E8%AD%A6%E5%AF%9F+%E7%9F%A5%E7%9A%84%E8%B2%A1%E7%94%A3%27 4頁

 そう思うと,当然のことながら,「法律の内容」だけでなく「実際の運用」を知らないと適切な判断はできないことを改めて感じた。
 ついつい弁護士は,「法律はこうなっている」という点ばかりに目を向けてしまいがちだが,実際問題としてどこまで効果的なのかという視点を忘れないようにしたい。


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posted by 内田清隆 at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2014年07月24日

自分の会社名が商標登録されている!〜商標の先使用権

最近,長年使っている会社名が,別の会社によって商標登録されてしまったことが分かった。
 そして,その別の会社から,その商標の利用を差し止めるよう請求された。
 しかし,長年使っている会社名がついた商品から,会社名をはずさなければいけないのだろうか。

 商標法32条により,誰かに商標登録される前から使用している商標は,誰かが商標登録したとしても使用を続けることが可能だ。
 しかし,これには重要な要件がある。
 その要件は,その商標が,「需要者の間に広く認識」されていること
(周知性),つまり有名である必要があるというものだ。
 
 この周知性の要件は,なかなか厳しい。
 全国的に有名である必要はないとされている。
 しかし,2,3の市町村で知られている程度ではダメで,少なくとも複数の県で知られている程度は必要と考えられている。
 もちろん,知る人ぞ知るというレベルでは足りず,それなりの人が知っている必要がある。
 
「会社名は登記されているのだから,自由に使えるのでは?」と考えられるかもしれない。
 しかし,登記されている会社名を名刺に記載するのは自由であっても,「商標として」使用することはできなくなる。

 会社名が商標として使えなくなると,パッケージの変更,広告の変更,看板の変更などを余儀なくされることになり,その損害は大きい。

 そう考えると,会社名,商店名を付ける前に,事前に商標登録されていないかをきちんとチェックしておくべきである。
 また,登録されていないのであれば,登録するようにすべきであろう。


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posted by 内田清隆 at 14:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2014年06月14日

中山信弘先生のご講演

先週の土曜日に「著作権法」などの著作で有名な知的財産法の大家,中山信弘先生のご講演を拝聴した。

極めて分かりやすくかつ熱意あふれる講演で,とても感銘を受けた。

特に印象的だったのは,どうせ権利濫用で切ればいいのだからフェアユース規定など必要ないと思っていたのだが,そうではないという話であった。

グーグルは法的にグレーな行為を行い続け,多数の訴訟を抱えながらも,自らが正義と思う行動を行い,訴訟で勝ち続けることで,現在の地位を築いた。
日本企業も,グレーな行為を避けるばかりでなく,大胆な挑戦を続けていかなければ,今後日本はダメになる。
そのために著作権法が足かせになるようなことだけはあってはならない。
フェアーとされる行為は許されることを法律上,明らかにしなければ,企業を委縮させ,著作権法が足かせになる恐れがある。
そのようなお話であった。

我々弁護士も「法的にグレーだからやめておいた方がいいよ」などと安易なアドバイスをしがちである。
しかし,きちんとリスクを判断し伝えながらも,正義であると思ったことは積極的に勧められるような,大胆で挑戦的な弁護士になりたいものである。
70歳にお近いと伺った中山信弘先生が日本を変えようとする熱意にあふれているお姿を拝見し,40歳になったばかりの自分が挑戦心を失うわけにはいかない。
そう強く感じさせる講演であった。


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2014年04月09日

他人の契約書をコピペしていいの?〜契約書の著作権

契約書案を作るときに,誰かが作った契約書を少しだけ修正して,契約書案を作ってもいいのであろうか?
「契約書」に著作権があるのであれば,無断複製として著作権侵害になる。
一方で,「契約書」に著作権がないのであれば,自由に利用しても問題ないということになる。
では,「契約書」に著作権はあるのであろうか。

結論からして,基本的に著作権はない。
誰かが作った契約書を少しだけ修正して契約書案を作っても原則OKである。

古い裁判例であるが,

東京地裁昭和40年8月31日判決は,「(契約書案には)思想は,何ら表示されていのであって・・・著作権の生ずる余地はない」「契約条項の取捨選択にいかに研究努力を重ねたにせよ,その苦心努力は,著作権保護の対象とはなり得ない」として,船荷証券の原案という特殊事例であるが,契約書には著作権がない旨を述べている。

東京地裁昭和62年5月14日判決においても,「(契約書案の内容は)思想または感情を創作的に表現したものであるとはいえないから,著作物ということはできない」として,契約書案の著作物性を否定している。

著作権法の大家,中山信弘先生も,その判決に対する解説において
「作成に多大な労力や知識を必要とするとしても,契約の内容に関する苦労であり,表現についての創作でないことが多い。」として,著作権法で保護されるのは,創作的表現である以上,「契約書は著作物とならない場合が多いと考えられる。」
「相当特徴ある表現がなされていない限り…著作物性は否定される」(ジュリスト・989号・106頁)と結論付けている。

何時間も考え抜いて作りだした契約書案を他人が自由に利用できるというのは,悲しいものがある。しかし,逆に,他人が作った契約書案をコピペできないとなすれば,とても大変だ。
そう思うと,契約書の文案に強い著作権を与えないというのはバランスのよい結論なのであろう。

https://www.youtube.com/watch?v=1eC6WK8MRw8

第20回サムネイル➀.JPEG
youtube始めました!
posted by 内田清隆 at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2014年03月05日

オリンピックと「金」の話〜アンブッシュマーケティング

 ソチオリンピックでは,羽生結弦選手が見事に「金」メダルを獲得したところであるが,本ブログはマネー=お「金」の話。

 2020年のオリンピックの開催地に東京が選出されたこともあり,オリンピックを利用した宣伝や広告を考える業者は少なくない。

 しかし,JOC・日本オリンピック委員会は,「・・・オリンピックのイメージ等の無断使用…は法的にも罰せられます。」とホームページに堂々と表示し,公式スポンサー以外の便乗広告=アンブッシュマーケティングを厳しく取り締まる姿勢を明確にしている。
http://www.joc.or.jp/about/marketing/noambush.html 
「オリンピック」「がんばれ!日本!」「TOKYO2020」等については商標登録されており,これらを無断で商標として使用できないことは当然である。
 しかし,「オリンピックのイメージ」を無断使用することは法的に罰せられるのであろうか。
 「おめでとう東京」「日本選手、目指せ金メダル!」「日本代表、応援します!」といった表現までもすべてNGになるとの報道もされたらしいが,本当であろうか。

ウソである。

 問題となるのは不正競争防止法であろうが,同法2条1項2号は,著名な商標等表示と同一若しくは類似のものの使用を禁止するに過ぎない。「オリンピックのイメージ」が「著名な商品等表示」でないのは当然だ。
 また,同法2条1項1号は,「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を禁止するが,それも「商品等表示を使用」する場合に限られるのであり,「オリンピックのイメージ」の利用はこれに含まれない。

 もちろん,状況によっては不正競争防止法違反になる場合があることは否定できないが,正確には「・・・オリンピックのイメージ等の無断使用・・・は法的にも罰せられることが,あり得ないわけではありません。」であり,少なくとも「罰せられます」といい切ることは明らかに誤りである。

 公式スポンサーから多額のお「金」を払ってもらうために,誇張した表現を用いてでもアンブッシュマーケティングを取り締まろうとしているのかもしれない。
 しかし,JOCから訴えられるかもしれないと思っては,中小企業はオリンピックをイメージするような広告は一切できなくなってしまうのであり,JOCの態度は不当に委縮効果を与えている。
 まさか,JOCも地元商店街が「●●選手・金メダルおめでとう!」というセールをすることまで,禁止したいわけではないだろう。

 どこまで許されどこから許されないのか,責任ある団体としてJOCは納得できる基準を明確にすべきであろう。


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posted by 内田清隆 at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2014年01月15日

建物の写真,ブログに載せていいの?

「当社の建物の写真を勝手にお前のブログに載せるな!」という苦情を受けたことがある方もいるかもしれない。
他人の建物の写真を,自身のブログやホームページなどに勝手に載せてもいいのであろうか?
結論からすると,基本的に構わない。

建物には著作権が生じる場合がある。しかし,著作権法46条には以下ように規定する。

(公開の美術の著作物等の利用)
第四十六条  ・・・建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。 ・・・
一 ・・・
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合

つまり,建物の著作権は,その建物と同じような建物を建築する場合など以外は,自由に利用が可能なのである。

また,有名な建築物にはパブリシティ権という厄介な問題も付きまとう。
しかし,パブリシティ権は,人について生じるものであり,建築物といった「物」には生じないというのが最高裁の判例である(http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/78754293.html)。

そのため,自分で撮影した他人の建物の写真をブログにアップすることは,原則として,法律上問題はないのである。
勝手に使われるのは気分が悪いようにも思えるが,誰もが自由に撮影できる建物について,あまり権利を及ぼされては,行動の自由が制限される。そう考えれば,合理的なのかもしれない。

正面.jpg


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