2011年11月30日

システム開発と商法512条 

 システム開発をするとき,最初の契約段階で,正確にどれぐらい開発に手間がかかるのかを見積もるのは難しい。
 実際にやってみると予定より大幅に手間が増えることは多い。
 そして,予定より大幅に手間が増えた場合の追加報酬について,金額はもちろん支払うかすら決めてないことを理由に,よくもめるのである。
 では,そのような場合,追加報酬を請求することができるのであろうか。

 大阪地裁平成14年8月29日の判決では,
商法512条から,約束がなくても「原告(ユーザー)には,仕様変更部分について相当額の追加開発費支払義務が生じる」
として,増えた手間分の追加報酬請求権を認めた。

 以前のブログ「有料と聞いていなくても報酬の支払義務はあります」でも書いたたが,商法512条により,商人に何かをしてもらえば,約束がなくても相当の報酬を支払わないといけない。
 そこで,大阪地裁は同条を根拠に追加報酬請求を認めたのである。

 もっとも増えた手間分の追加報酬請求が認められるのは「仕様変更」がなされた場合である。
 東京地方裁判所平成7年6月12日判決は,システム作成の過程で当初予定された3万5000ステップが,10万ステップになったため,商法512条を根拠に追加報酬を請求したという事例である。
 その事例では,「原告の受託業務の規模が3万5000ステップであることを前提として委託代金額が決定された事実はない」,よって10万ステップは原告の受託業務の範囲内であり,商法512条による報酬請求権は認められないと裁判所は判断した。
 当初の予想以上に手間がかかる業務になったとしても,その原因が「仕様変更」ではなく,単に見積りの甘さであれば,追加報酬請求権が発生しないのは当然だろう。

 問題は,何が「仕様変更」であるかである。
 システム開発契約では最初の段階で仕様が完全に決まっていることは珍しい。
 そのため,手間が増大した場合,どこからが仕様変更によるものかの判断はとても大変である。

 それにより仕様変更かどうかで裁判では長く争われることになり,ユーザーもベンダーも長く続く裁判に疲れきる・・・といったことが少なくない。

 システム開発においては,どのような場合が仕様変更で幾らの追加報酬が発生するのかを,最初からしっかり決めておきたい。


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posted by 内田清隆 at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法
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