2010年10月26日

「常識」も「契約」になる?−最高裁平成22年10月14日

 契約書を結ばなくても,口頭でも契約は有効だ。
 しかし,平成22年10月14日の最高裁判決は,さらに一歩先をいく。
 契約書の条項に反した内容が,口頭での合意すらなくても,一般常識から契約の内容になるとしたのだ。

 その事件では,注文者が元請業者へ工事代金を支払うことを条件に元請業者が下請業者に工事代金を支払うという約束が書面においてなされていた。口頭でも,そのような話があったようだ。

 ところが最高裁は,
「下請負人が,自らは現実に仕事を完成させ,引渡しを完了したにもかかわらず,自らに対する注文者である請負人が注文者から請負代金の支払を受けられない場合には,自らも請負代金の支払が受けられないなどという合意をすることは,通常は想定し難い」
「したがって・・・当事者の意思を合理的に解釈すれば・・・(元請業者が)支払を受ける見込みがなくなったときは,その時点で本件代金の支払期限が到来することが合意されたものと解するのが相当である。」

と判示した。

 要するに,「注文者が元請に支払いをしない場合には工事代金はいらないよ!」と思う下請業者はいないのが常識だ。だから,書面上はそのような合意がされていても,「元請から注文者に代金が払われないことがはっきりしたときには,元請が下請に代金を払う」ということが,契約書にも口頭にも出てこなくても契約の内容になるとしたのだ。

 まったく常識的で妥当な判断ではある。
 しかし,「法律的にはどうなの?」という気がしないでもない。
 「常識」を共有し,強い信頼関係があるのであれば契約書を作る必要はない。契約書を作るのは,お互いの「常識」が同じであるという保証はないからだ。
 だとすれば,裁判所は,「常識」よりも「契約書」を重視すべきなのではないだろうか?
 日本の裁判所は,かなり常識を重視する。しかし,それは,日本人が「日本人としての常識を共有している」という幻想を持っているからではないだろうか?

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posted by 内田清隆 at 07:34| Comment(3) | TrackBack(0) | 商取引法
この記事へのコメント
内田先生、はじめまして。行政書士の竹永ともうします。偶然貴ブログにたどりつきましたが、大変興味深い内容で、勉強にもなり、思わずコメントしています。
特に、「常識を共有し・・・ているのであれば契約書をつくる必要はない。契約書をつくるのは、お互いの常識がおなじであるという保証はないからだ」
との部分には、深く共感いたしました。

良い情報をありがとうございます。お礼まで。
Posted by 竹永大 at 2010年10月26日 11:03
私も2010/11/1記事で取り上げましたが、町村泰孝教授の2010/10/15ブログで腑に落ちました。最高裁のような事案判断もなるほど合理性がないわけではないと
Posted by ろぼっと軽ジK at 2010年11月01日 18:49
ろぼっと軽ジK様。なるほど,「出世払い」が出世できないことがはっきりした場合にも支払わなくてはならないとされているのと同じと考えれば理解しやすいですね。
Posted by 内田 at 2010年11月01日 20:31
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