2010年06月16日

有料と聞いていなくても報酬の支払義務はあります−商法512条

 商売人に動いてもらった場合には,代金の話がないから無料だと勝手に考えてはいけない。
 商売人に動いてもらったら報酬が発生するのが原則である。
 無料であるという話がない限り,報酬がいくらであるのかは,事前に確認しておかなければならない。
 後から,「聞いていない!」と文句を言っても,「聞いていない方が悪い!」ということになってしまう。

 そんな恐ろしい法律が商法512条「報酬請求権」である。
 

 「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。」
という規定だ。


 一見すると当然のことをいっている規定にも思える。
 しかし,この規定により,商売人に何かをしてもらった場合には,契約や約束がなくても,報酬を支払わなければならなくなるのだ。
 何百万,何千万円という支払を命じた判決もある。
 「そんなにかかるなんて聞いていない!」という文句は通じない。
 聞いていなくても支払義務が生じてしまう恐ろしい法律があるのだ。

 商法512条がよく問題となるケースは,不動産の売買や賃貸の場面においてである。
 仲介業者に途中まで動いてもらったが,途中から仲介業者を通さずに直接に契約を結んだ又は別の仲介業者を通じて契約を結んだという事例である。
 そんな事例において,最初に動いてもらった仲介業者と契約を結んでいなくても,商法512条により,相当額の報酬の支払義務が命ぜられるケースが多い。
 
 私自身もこの条文には痛い目にあったことがある。
 私が代理した被告側が「代金額の合意はない!」と主張し,原告側が「代金500万円という約束があった!」ともめて裁判になった事例である。
 裁判終了後,相手の立証はできていないと思えた。そのため,裁判に勝てるのではないかと思っていた。

 ところが,裁判に負けたのである。

 そのとき,裁判所があげた条文が商法512条であった。
 裁判所の認定も代金額の合意はないというものであった。
 ところが,原告は商人である以上,報酬を支払う約束はなかったにしても,一定の報酬の支払義務があるとされてしまったのである。

 説明すれば長くなるが不当な不意打ち判決であったと今でも思っている。
 実際に,控訴審で,その結論が維持されたわけではない。

 しかしながら,商法512条の恐ろしさを思い知った事件でもあった。
 
 商人間では,契約(約束)が非常に重視される。
 にもかかわらず,商法512条が適用されると契約(約束)がないにもかかわらず,多額の報酬を支払わなくてはならなくなる場合があるのだ。

注意が必要だ。

「ただより高いものはない」

結局はそういうことだ。
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posted by 内田清隆 at 15:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法
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