2025年07月29日

生成AI使用は弁護士の義務? 〜ChatGPTと弁護士倫理

アメリカでは2023年アビアンカ航空事件Mata v. AviancaでChatGPTがでっちあげた存在しない過去の裁判例をそのまま証拠として提出した弁護士が懲戒となり大きなニュースになった。
同じ問題は、オーストラリアでも起こっており、アメリカでは今年もウォールマートの訴訟で同じような問題が起こった。これらの事件で、生成AIの利用と弁護士倫理の関係は急速にクローズアップされるようになった。

参考:オーストラリアでの実情
https://www.theguardian.com/law/2025/feb/10/fake-cases-judges-headaches-and-new-limits-australian-courts-grappling-with-lawyers-using-ai-ntwnfb
参考:ウォールマート訴訟
https://www.reuters.com/legal/legalindustry/lawyers-walmart-lawsuit-admit-ai-hallucinated-case-citations-2025-02-10/

とはいえ、上記の問題は生成AIがよく出力する虚偽の事実を裏付けもなく使用してはいけないという、生成AIの利用にあたっての基本的なルールを逸脱したに過ぎないともいえる。
しかし、生成AIを弁護士業務に使っていると微妙な問題はその他にも色々と出てくる。
・生成AIに質問をしても守秘義務に違反しないのか?
・生成AIを使用したことを依頼者に伝えないことは誠実義務に違反するか?
など、生成AIと弁護士倫理の関係については気になる問題が多い。

そんなことが気になって調べてみたら、アメリカではさらに先へと議論が進んでおり、これらの問題は後回しにされていた。
すなわち、生成AIと弁護士倫理に関するアメリカ法曹協会(ABA)の公式見解は、「生成AIを使う場合」にどのような場合弁護士倫理違反になるかという問題は後回しにして、その逆の問題から議論を進めていたのである。
つまり、
「生成AIを使わないこと」は弁護士倫理違反にならないか
という問題である。

参考:アメリカ法曹協会公式見解512号(2024年7月29日)
https://www.americanbar.org/content/dam/aba/administrative/professional_responsibility/ethics-opinions/aba-formal-opinion-512.pdf#page=3

最終結論は、将来的に技術発展により、ある分野においては生成AIを使わなければ弁護士倫理違反になる可能性があるが、現在のところそこまでではないというものではあった。

しかし、一方で、弁護士は、生成AIの専門家になる必要はないとしても、必要な知識を取得し、利用するかしないかについて、適切に選択する必要があるともされており、もはや生成AIを無視することは弁護士倫理違反になるという見解を示していた。

好むにせよ好まないにせよ、今後は、生成AIについてきちんと学んでおかないと弁護士失格になるというわけだ。
どうせ学ばなければいけないのであれば、楽しんで学んでいきたいものだ。


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posted by 内田清隆 at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法
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