2021年05月13日

 新型コロナを理由に賃料を支払わなくてもよいか

「新型コロナでお客さんが来ないから家賃が払えない。払わないとダメなのか」という問題がよく生じている。

 ニューヨーク連邦裁判所において,その点について大規模に争われた訴訟(The Gap Inc. v. Ponte Gadea New York, LLC)で重要な決定が出された。
https://casetext.com/case/gap-inc-v-ponte-gadea-ny-llc

原告は,「GAP」や「Banana Republic」といったアメリカ最大の衣料品小売店を営むギャップ社。ニューヨークマンハッタンの超一等地に店舗を構えていたが,新型コロナ及びそれに伴う政府規制により家賃が払えなくなったとして,契約終了の確認を求めた裁判である。問題となる賃料は1億円を超えるらしい。

ギャップ社は
@賃貸借契約における「災害casualtyにより利用不能になった場合は解除できる」という規定が適用できる。
A予見不能の不可抗力により営業が不可能になった場合には契約を解除できる。
など様々な主張をしたが,裁判所は,同主張を却下した。

その理由は,大雑把にいえば,
@「災害」とは,火事や地震のように物理的な被害を生じさせる1回的なできごとをいうので本件はそれに当たらない
A予見不能の不可抗力で契約目的が全く達せなくなった場合は契約を解除できるが,不要不急のビジネスの停止命令は予見できるし,車まで商品を手渡す方式(curbside pick up)で経営はできるので,契約目的が全く達せなくなったとはいえない
コロナを理由に・・・.jpg
といったものだ。
ニューヨークの惨状を考えると,賃借人にかなり厳しい判断に思える。


では,日本法ではどう考えられるのであろう。

考え方の基本は同じであろう。
上記裁判例における@もそうだが,基本となるのは契約規定の解釈である。
例えば「新しい伝染病で売上が激減した場合は賃料を支払わないでいい」という規定があれば,賃料を支払わなくてよくなるのは当然のことだ。
しかし,困ったことに,そのような明確な特約は普通は存在しない。

また,日本法でも不可抗力により休業が余儀なくされ,貸す債務が履行不能になれば,賃料を支払わなくてよいとされている。
しかし,どのような場合であれば不可抗力による履行不能といえるのかははっきりしない。

欧米では新型コロナにおける賃料問題に関してだけでも膨大な裁判例が公開されている。そのため,その裁判例を参考にすれば,契約規定をどう解釈すべきか,どのような場合新型コロナを不可抗力といえるかについて,ある程度予想がつく。
しかし,欧米と比較して新型コロナがそこまで流行していないせいか,日本人の訴訟を嫌うメンタリティが原因かはわからないが,日本では同様の裁判例がほとんどない。

そのため,「新型コロナを理由に賃料を支払わなくてもよいか?」という質問に対しては,多くの場合「何とも言えない」と回答するしかなさそうである。


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posted by 内田清隆 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法
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