2015年11月06日

江戸時代の破産 〜「あさが来た」の山王寺屋

NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」でヒロインの姉が嫁いだ両替商は倒産し,姉は悲劇的な生活に陥った。
そのシーンを見ていて,何やらいやなものを感じた。
借りたものを返すのは人の義理ではあるが,どれだけ頑張っても返せなくなるときもある。そのときのために破産制度がある。破産をすれば,ぜいたくな暮らしはできなくなるとしても,普通の日常生活は送れる。
にもかかわらず, 世間で余りに破産を悲劇的に描くため,破産を恐れて自殺する者がいなくならないのでは・・・などと感じた。

江戸時代においても,破産(当時の言葉でいう「分散」)は,実際のところさほど悲劇的なものではなかった。

明治初頭に作られた全国民事慣例類集の485頁以下に,各地の分散した者の取り扱いが書いてある。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/786945

なかには,
「表町に住むことを禁ずる」
「分散人は町村にて賤視し同等の交際をなさざる慣習なり」
「分散人は大に権利の劣る者としてその生涯は人の長たる職には選任さられざる」
「大いに権利の劣る者にて集会の席に発言することあたわず。婚姻することなくあるいは縁組せしものも離縁して交際を絶つ」
「多く他国へ出ることなれども,その町内に住居すれば大に権利の劣る者とし,尋常の交際をなさざることなり」
などという厳しい処遇が書かれているものもある。

しかし多数は,
「挽回の方法を付与する」「身代持直しを取り計らう」
「いったん『松前稼』と称し北海道に渡って身代を持ち直し帰る者あり」
「町村の交際において別段権利の劣るなき習慣なり」
「分散せし者も別段権利の劣ることなき例なり」
「分散せし者も別に権利の劣ることなく自ら謙遜して人の風下に立つ習慣があるのみ」
「町方にては・・別段賤視することなし」
とあり,さすがに大手を振っては歩けないにしても,人並みの生活は送ることができていたようである。
時代や場所で取り扱いが異なっており確実なことは言えないが,江戸時代においては破産者に対する制裁は緩やかであり,厳しくても所払いされるに過ぎなかったというのが通説である。

また,日本においては17世紀から,破産者はもっている資産をできる限り処分し破産をすれば,「免責」,すなわち,それ以上の返済をしないでよくなることが通例であった。
イギリス・アメリカが19世紀になって,フランス・ドイツが1990年代になって免責制度を取り入れたことを考えると,異常に早い。
破産は,破産者に罰を与えるためのものではなく,経済的更正のチャンスを与えるためのものであったわけだ。

つまり,江戸時代より,日本は破産者に寛容な社会だったのである。

「破産をすると選挙権を失うのでしょ?」「破産をしたら,周りの者にそのことが分かり,今の場所に住めなくなるのでしょ?」などと質問を受けることが多い。
しかし,弁護士・会計士など限られた職業につけなくなることを除けば,破産者に対する懲罰は存在していない。
失敗しても,再起を図るチャンスが与えられているのである。


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posted by 内田清隆 at 16:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 債権回収・管理
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