2018年01月21日

現代将棋界と「知のオープン化」の果て 


特許を取得するためには、新規性とともに、産業上の利用可能性が必要である。
そのため,いかに独創的であっても,産業に利用できない将棋の戦法について特許を取ることはできない。

特許取得が可能であれば,あの革命的な戦法『藤井システム』の創設者藤井猛九段は多大な利益をあげていただろう。
しかしながら,実際には,藤井システムで一番勝ったのは羽生善治竜王であり,彼が一番利益をあげたのかもしれない。


2014年米国電気自動車の王手テスラモーターズは、自らの特許を広く一般に無料で利用させるというオープン化宣言をした。
すると2015年、トヨタ自動車も自社が持つ燃料電池車の関連特許約5680件の無償提供を発表し、さらにはパナソニックも自社が持つIOT関連特許などすべてを無償提供すると発表した。
特許の世界のオープン化である。 

自社の技術をオープンにすることで、市場への他社の参入を誘導し,自社技術を世界標準仕様,デファクトスタンダードにしようという企みはもちろんあるだろう。
しかしそればかりでなく、LINUXが明示するように、知を共有することで共同的創造作業が可能となり、より技術を発展させ人類を幸せに導くという利他的な思想もあるのであろう。

この知のオープン化の果てにはどんな世界が待つのであろう。

知のオープン化をいち早く行ったのが将棋界だ。
エポックメイキングとなったのは,1992年、名著「羽生の頭脳」の発売であった。
羽生竜王は,最先端の研究について惜しむことなく公開した。
そのため,同書はそれまでの将棋本とは異なり,プロ棋士が参考にする本となった。「羽生の頭脳」を読んでいないプロ棋士が同書のとおりに負けるといった事態を引き起こした。

以降,研究内容を隠さないのが将棋プロの主流へと変わり、知のオープン化が進むことになった。
孤独な研究を続けるプロ棋士は少数派となり,多くのプロ棋士は自らの研究内容を惜しみなく公開しつつ,共同研究をするようになったのだ。

近年の将棋界は,いわばイノベーションの嵐が吹き荒れている。
以前は,矢倉91手組を筆頭に,長手数,前例をなぞることが多かった。前例の上に改良手を加えるという研究にウェイトがおかれていた。
ところが,最近では,3手目から,5手目から新手が飛び出すことも珍しくない。
見たこともない戦型が毎週のように飛び出す。
「狭く深く」から「広く浅く」へ。「改良」から「革新」へと変わったわけだ。

知がオープン化され,共同研究が進むにつれて,穴は一人で掘る時代でなくなった。
人気のある穴には,次から次へと人がやってきて鉱脈を探す。しかし、そこで新鉱脈を見つけることは競争が激し過ぎて大変だし,見つけたとしても得られる利益は少ない。それだったら,誰も手を付けていない大地を掘った方がいい・・・そんな理由で将棋界に変革が生じたように思える。

藤井4段の29連勝、加藤一二三引退、羽生竜王の国民栄誉賞受賞と将棋界が熱い。これは、知のオープン化にともなう技術革新の成果といえるのではないだろうか。

産業界においても,このまま知のオープン化が進めば,次から次へと技術革新が進み,見たこともないアイディアが次々と現れるのか。楽しみである。


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posted by 内田清隆 at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法