2014年01月30日

英文契約書由来の完全合意条項の恐ろしさ

欧米の影響が増しているせいなのか,近年,英米法上の口頭証拠準則(Parol Evidence Rule)を具体化した完全合意条項が入った契約書を目にすることが多い。
典型的には以下のような条項である。

第○条 完全合意条項
本契約は、本件に関し、甲乙間の完全な合意と了解を取り決めたものであって、口頭であると書面であるとを問わず、本契約以前に成立した甲乙間の合意、了解、意図などの全てに優先し、取って代わるものである。
 

この条項に従えば,契約書締結以前の約束はすべて無視されることになる。

そのため,「○○ということで契約を結んだんじゃないか!証拠のメールもあるぞ!」と言ったところで,契約書に入っていなければ,効力がないということになる。

例えば,平成18年12月25日の東京高裁判決の事案では,
X社がY社に
「契約書の条項と条件は、他の会社との間の契約の条件と完全に同一です。」
「他の取引先と貴社の条件よりも有利な条件で契約を締結した場合には、必ず契約を見直します。」
と書面を送付していた。
にもかかわらず,この約束が無視されたため,Y社は,「他社と同じ条件にするということで契約を結んだんじゃないか!証拠の書面もあるぞ!」と主張した。
しかし,裁判所は,完全合意条項が存在するもののY社の主張する条件は契約書に載っていないということを理由として挙げ,Y社の主張を排斥した。

これは特に中小企業にとって恐ろしい条項であろう。すべての条件が盛り込まれたきちんとした契約書を作るためには,費用と時間が必要だ。しかしながら,それだけのコストをかけられない場合も多いし,信頼関係があるのでその必要はないと考えることも多い。
にもかかわらず,完全合意条項があると,契約書に載っていない条件は,すべて存在しないということになってしまうのだ。

安易に完全合意条項付の契約を結び,大きな不利益を受けないように気を付けないといけない。


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posted by 内田清隆 at 16:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書作成

2014年01月21日

契約書案は作るべきか,作らせるべきか 〜作成者不利の原則

「さあ契約を結ぼう」という時に,最初の契約書案を自ら作成すべきか,相手方に作成してもらった方がいいのか・・・悩ましい問題である。

典型的な契約であれば,過去に使った契約書を使いまわすことですむかもしれない。
しかし,特殊な契約の場合に,新たに契約書案を作るのは,結構手間がかかる。だとすれば,当然,作ってもらった方がよいということになる。

しかし,最初にできた契約書案が交渉のベースになる。
最初の契約書案を相手方が作ることになれば,当然その内容は相手方に有利にできているであろう。
そうすると,その後の交渉の主導権を相手方にとられかねない。
だとすれば,相手方が言い出す前に,「今度の契約ですが,こんな案でどうでしょうか?」と先に契約書案を作ってしまった方が有利ということになる。

英米法では,Contra Proferentemの原則=作成者不利の原則に基づき契約書は解釈されるといわれる。
文言があいまいで,二つ以上に解釈される契約においては,その契約書案を最初に作成したものが不利に解されるという原則である。
(正確には,同条項により利益を得るものに対して不利に解釈されるとされることが多いが,利益を得るものは通常は作成者である。)  
日本ではあまりいわれない原則であるが,民法改正において議論されているし,信義誠実の原則の一つとして,日本でも適用されない原則であるといえないこともない。
それを考えると,最初に契約書案を作ると不利になるということもまたあるのかもしれない。


結局のところ,契約書案を先に作るべきか相手方に作らせるべきかは,状況次第であり,状況を分析してどちらが得かを判断するしかない。
もっとも,力関係からして,「先に作りたくてもできない」ということも多い話ではあるが・・・。


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posted by 内田清隆 at 10:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書作成

2014年01月15日

建物の写真,ブログに載せていいの?

「当社の建物の写真を勝手にお前のブログに載せるな!」という苦情を受けたことがある方もいるかもしれない。
他人の建物の写真を,自身のブログやホームページなどに勝手に載せてもいいのであろうか?
結論からすると,基本的に構わない。

建物には著作権が生じる場合がある。しかし,著作権法46条には以下ように規定する。

(公開の美術の著作物等の利用)
第四十六条  ・・・建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。 ・・・
一 ・・・
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合

つまり,建物の著作権は,その建物と同じような建物を建築する場合など以外は,自由に利用が可能なのである。

また,有名な建築物にはパブリシティ権という厄介な問題も付きまとう。
しかし,パブリシティ権は,人について生じるものであり,建築物といった「物」には生じないというのが最高裁の判例である(http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/78754293.html)。

そのため,自分で撮影した他人の建物の写真をブログにアップすることは,原則として,法律上問題はないのである。
勝手に使われるのは気分が悪いようにも思えるが,誰もが自由に撮影できる建物について,あまり権利を及ぼされては,行動の自由が制限される。そう考えれば,合理的なのかもしれない。

正面.jpg


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posted by 内田清隆 at 09:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法