2013年10月31日

死者のパブリシティ権

前回の記事でも書いたが,最高裁判決によると,
有名人の写真や氏名を広告に利用することは一定の場合許されない。
いわゆるパブリシティ権である。

 では,死亡した有名人の場合はどうなのであろうか,死者にパブリシティ権があるのかという問題である。

 この点について,明確に判断した裁判例は知られていない。

 関連する裁判例としては,名誉毀損が問題となったものであるが,死者に対する遺族の敬愛追慕の情は,一種の人格的法益として法の保護の対象となり,これを違法に侵害する行為は不法行為を構成するとしながらも,死後44年余を経ているという状況から,慰籍料の請求は認められないとした裁判例がある程度である。
(東京高裁 昭和54年3月14日http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/499D61694B682F1949256CFA0007B9C6.pdf

 最高裁は,パブリシティ権の本質を人格権としてとらえている。だとすれば、有名人が死亡すれば,人格が消滅する以上,パブリシティ権も消滅すると考えるのが自然であるのかもしれない。
 しかし,人格権は相続されないとしても,死者に対する名誉侵害が違法になる場合があるのであるから,死者に対するパブリシティ権侵害も違法になることはあると考えるべきなのが自然のように思える。

 とはいえ,著作権のように死後50年で権利が消滅するという規定がない以上,何年間死者のパブリシティ権が保護されるのかはっきりしないし,どのような条件で保護されるのかもはっきりしない。

 アメリカでは,死者のパブリシティ権について各州ごとに一定のルールが確立しており,死者のパブリシティ権ビジネスに多くの弁護士も関わっていると聞く。
 日本においても,法律ではっきりすることが必要であろう。


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posted by 内田清隆 at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2013年10月21日

物のパブリシティ権

 最高裁判決(http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/53415247.html)によると,有名人の写真や氏名を広告に利用することは一定の場合許されない。
 いわゆるパブリシティ権というものである。

 では,人ではなく,有名な「物」,例えば世界的に有名なスポーツカー,著名な建築物などを利用することはできるのであろうか,物のパブリシティ権と呼ばれる問題である。

 この点は,下級審でも判断が分かれていたのだが,最高裁平成16年2月13日判決(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120716670381.pdf)は,法律上は「物」となる競走馬の名称の使用について,
 物の名称の使用など,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法,著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その反面として,その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にしている。
 上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。

と判示して,物のパブリシティ権の存在について否定した。

 「あの伝説の競走馬,オグリキャップがついに復活!」と広告に用いることができるというわけである。

 最高裁によればパブリシティ権は「人格権に由来する権利の一内容」である。そして「人格権」は法的に保護されるが「馬格権」なるものは法的に保護されない以上,オグリキャップにはパブリシティ権がないということである。
 人と馬とを差別し,人を優遇するものであるが,法律をつくるのが人である以上,馬の権利は無視されてもやむを得ないということであろうか。

 もっとも,最高裁の判例が述べるように,場合により著作権法,商標法,不正競争防止法違反となる場合もあるので,注意が必要なことはいうまでもない。
 特に需要者に広く認識されている商品表示を,自社と何らかの関係があるかのように利用することは不正競争防止法違反になるので注意が必要である。


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posted by 内田清隆 at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2013年10月15日

みずほ銀行問題とキリストと親鸞

 みずほ銀行が暴力団関係者に対して融資をしていたという問題について,ある弁護士がブログに,「不正発見主義(不祥事はどうしても発生してしまうが,これを早期に発見して自浄能力によって解決し公表すること)にウエイトを置く」が重要であり,そのためには「敗者復活戦」や「報告者に対する報奨」が認められることが大切であると書いていた。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2013/10/post-b0b9.html 

 功利主義的な人間観に立てば,不正を発見した場合に
   それを伝えるメリット<それを隠すメリット
であれば,それを伝える人はいない。
 そうであれば,不正を伝えることに対して「報償」を与え,不正を伝えるメリットを増やすべきであり,また不正に関与した人間にも「敗者復活」の道を与え,不正を伝えることによって生じる不利益を小さくすることが必要であるということであろう。

 そう思うと宗教というものは,不正を告白するための見事なシステムを作り上げているのだと思う。
 キリスト教においては,自己の罪を悔い改め,それを告白すれば(特にカトリック教会においては,いわゆる「懺悔」を行えば),神はこれを許す。つまり,不正を伝えることで許され天国にいけるといった,十分な「報償」が与えられるということだ。
「もし、わたしたちが自分の罪を告白するならば,神は真実で正しいかたであるから,その罪をゆるし,すべての不義からわたしたちをきよめて下さる」(ヨハネの第一の手紙第1章9節)

 親鸞が歎異抄において「善人なおもて往生とぐ,いはんや悪人をや」(善人でさえ浄土へ生まれることができる,まして悪人は,なおさらだ)と説くのも,どんな罪を犯した人間であっても「敗者復活」することが可能であると説き,告白する強さを人間に与えようとしたのであろう。

 HONDAには「失敗表彰制度」があり,一番失敗した社員には「社長賞」まで与えられたという。そのような制度があれば,「失敗」を積極的に告白するようになるかもしれない。
 しかし,「私は横領しました!」といった不正を告白させるために,横領した人に賞を与えるというわけにもいくまい。

 そうなると本当に重要となるのは,「不正に関与した人間は『償い』はとらなければいけない,しかし,必ず『赦し』は得られる」という一種宗教的な信頼感なのかもしれない。


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posted by 内田清隆 at 09:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2013年10月10日

自炊代行は違法〜東京地裁平成25年9月30日

 所有者の代わりに紙の本を電子化するサービス,いわゆる「自炊」の代行は著作権侵害に当たるとして,代行業者に損害賠償などを命じる判決がでた。
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20131001115316.pdf

 一番の争点となったのは,複製の主体が,本の所有者なのか,代行業者なのかである。
 本の所有者が主体として複製することは「私的利用」として合法である。一方で,代行業者が主体として複製することは,私的利用ではないので著作権侵害として違法になる。

判決では,
「本件における複製は,書籍を電子ファイル化するという点に特色があり,電子ファイル化の作業が複製における枢要な行為というべきであるところ,その枢要な行為をしているのは,法人被告らであって,利用者ではない。」
と端的に指摘し,複製の主体は自炊代行業者であるとした。
 よって,自炊代行は違法であると判断されたのである。
 
 自炊は合法なのに,自炊代行は違法となるのは直観としてピンとこない。
 しかも,本を裁断して電子化を可能としても,本は売れなくなることはないであろうし,むしろ売れるようになるかもしれないと思うと釈然としないものがある。

 しかし,最高裁は,ロクラクU事件において,ユーザーが家で子機を操作して,テレビ番組を録画する場合にも,業者が管理している親機に自動的に保存され,ネットを経由して配信されている場合において,複製の主体は業者であるとしたのである。
 http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/43154433.html 
 その判例からすれば自炊代行において,代行業者が複製の主体とされるのは,妥当性はともかくとして,自然の帰結ではあろう。
 
 本件の代行業者は,自炊代行に反対する作家122名の作品について,「利用者の依頼があってもスキャン事業を行うことがない旨回答」,つまりオプトアウトすると述べていた。
 にもかかわらず,その後,それらの作家の作品のスキャンを依頼され,これを行ったようである。
 その態度をみて,裁判所が業者を悪質だと判断した可能性はある。
 しかし,判決の雰囲気からして,きちんとオプトアウトしていたとしても結論は変わらなかったのであろう。

 
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posted by 内田清隆 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法