2013年04月25日

労働者の無断欠勤と解雇

無断欠勤を続ける労働者を解雇する場合,何日ぐらいの無断欠勤であれば解雇できるのであろうか?

 「労働者の責に帰すべき事由」に基づき解雇予告手当なしで即時解雇するためには,労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受ける必要がある。
 そして労働基準監督署では,「2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」であるかどうかという基準に従い,解雇予告除外認定をしている。
(参考)
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/seido/kijunhou/shikkari-master/pdf/kaiko.pdf
 そうすると,一応は「2週間以上正当な理由なく無断欠勤し,出勤の督促に応じない場合」であれば,即日解雇が可能と考えられそうである。

 裁判例はさまざまである。

 平成24年4月27日の最高裁判例では,40日の無断欠勤であっても解雇(諭旨退職の懲戒処分)は無効であると判示している。
 精神的疾患が疑われ,「妄想と思われる問題が解決しない限り出勤しない」とあらかじめ使用者に伝えていたという特殊事情が存在した場合であるが,なかなか厳しい。

 昭和60年5月24日東京地裁判決は,経歴詐称での解雇を認めた事例であるが,17日間の無断欠勤があったとしても,仕事熱心であったなどの事情を考慮すると,無断欠勤を理由とする解雇は無効であると判示している。かなり微妙な例に思える。

 平成6年5月30日大阪地裁判決は,職場でもめて2日間の職場放棄(無断欠勤)を理由とする解雇を無効と判示している。同じく平成7年10月31日山形地裁判決も職場でもめて1日間の無断欠勤を理由とする解雇を無効と判示している。よほど特別な事情がない限り1日,2日の無断欠勤で解雇することは不可能であろう。

 解雇を有効とする裁判例がなかなか見つからなかったが,6ヶ月の無断欠勤を理由に解雇を認めている平成2年11月8日横浜地裁判決があった。しかしながら,6ヶ月の無断欠勤が解雇理由にならないはずもないであろう。

 結論として,何日間の無断欠勤であれば解雇できるということはいえず,無断欠勤に至った事情によって,いろいろと異なるというしかなさそうである。

この記事を書いていたら,1月下旬から行方不明無断欠勤を続けた珠洲警察署の20代男性巡査長を分限免職とすることになったという4月18日の報道を発見した。http://www.hab.co.jp/headline/news0000011479.html分限免職は,勤務実績などを理由に公務員を退職させる制度で,懲戒処分ではない。詳しい事情は分からないが上記最高裁判所の判例を踏まえて3か月の無断欠勤でも懲戒免職はできないと判断したのかもしれない。


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posted by 内田清隆 at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題

2013年04月21日

電王戦−コンピュータが人間を圧倒

 プロ棋士5人と5種類のコンピュターが対戦する将棋電王戦は,3勝1敗1分とコンピュータ側の圧勝で終わった。
 昨日行われた最終局,人類代表は,三浦弘行八段。プロ棋士の中でも10人しかいない現役A級棋士である。
 一方のコンピュータ側の代表は,GPS将棋。670台のコンピュータから構成されるクラスターマシン。1秒間に2億5000万手を読むモンスターマシンである。

 いかにモンスターマシンでも,最後に勝つのは三浦八段と信じていたが,結果をみるとGPS将棋の圧勝。
 三浦八段は王手をかけることすらできず,GPS将棋の堅牢な矢倉囲いは乱されることすらなかった。
 その圧倒的なコンピュータの強さには私だけでなく,プロ棋士すら恐怖していた。

 作家で医師の海堂尊氏は,「医学の現場ではカルテも電子化され,コンピュータなしでは治療できない。コンピュータに支配されているともいえる(笑)」と最終局を見てコメントしていたが,弁護士の分野でも,そんな時代がくるのかもしれない。

 15年前にコンピュータが人間のプロ棋士を圧倒する時代が来るとはとても信じられなかった。
 15年後にはコンピュータの作成する訴状が,人間の弁護士が作成する訴状より,ずっと完成度の高いものになっているのかもしれない。


 SF作家アシモフの提唱したロボット三原則の第1条は,
  ロボットは人間に危害を加えてはならない
というものである。

 コンピュータに惨敗したプロ棋士は,打ちひしがれ,ときに涙を流す者さえいた。
 もはやロボット3原則は,SF世界だけのものではないのかもしれない。


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posted by 内田清隆 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2013年04月16日

グーグルのサジェスト機能に対する損害賠償命令

 ある人物が自分の名前をグーグルで検索しようとすると,
「〇山〇男、暴力団」「〇山〇男、犯罪者」
 といったように,サジェスト機能により犯罪行為を連想させる単語が検索候補にあげられることを不服としてグーグルを訴えたことは以前のブログでも紹介した。

 今朝の新聞によると,東京地裁は,昨日,本件につき,グーグルに対して,表示の差止と慰謝料30万円の支払を命じる判決を言い渡したようである。

 以前ブログで紹介した時点では,「仮」処分であったわけであるが,正式裁判によっても,差止が認められたというわけだ。

 報道によると,裁判所は、「表示によって男性の名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害に当たる違法な投稿記事を容易に閲覧しやすい状況をつくり出している」と指摘し,原告の請求を認めたらしい。

 裁判所の仮処分命令をグーグルが無視したため,原告は,困難な訴訟を提起することになり,ようやく勝訴判決を得たのである。
 弁護士費用だけでも30万円ではとても足りないであろう。
 にもかかわらず慰謝料30万円というのはあまりに低額に思える。 
 
 裁判所は,自己の出した仮処分命令をグーグルに無視されるという,いわば屈辱を味わっている。その上での判決なのであるから,もっと厳しいものであってもよいのではないかというのが感想だ。

 判決内容の詳細を知った後に,しっかりと判決の妥当性を確認したい。

 ちなみに「内田清隆」でグーグル検索をしてみると,サジェストされるのは,今現在では,「犯罪者」でも「悪徳」でもなく,「法律事務所」「弁護士」「ブログ」「facebook」であった。まずは,一安心である。
 「イケメン」「美男子」がサジェストされないことに対しては若干の不満も残るが,「内田清隆」で検索が行われた場合には「イケメン」をサジェストすべきだとグーグルを訴えても,残念ながら勝訴の見込みはないといわざるを得なそうである。

 
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posted by 内田清隆 at 09:01| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法