2012年10月28日

アマゾン・キンドル (Amazon Kindle)と独占禁止法

Amazon.comが製造・販売する電子ブックリーダーアマゾン・キンドル (Amazon Kindle) 向けの電子書籍ストア「Kindleストア」が10月25日にオープンし,5万冊以上の日本語書籍の売り出しが開始された。

一般に,小売店における再販売価格を拘束することは,独占禁止法違反になるが,書籍については「著作物再販適用除外制度」が設けられており,出版社が本の価格を決定し,本屋が定価販売を余儀なくされたとしても,独占禁止法違反にはならない。
ところが,公正取引委員会は,電子書籍については「著作物再販適用除外制度」は適用されないという見解を示している。                        
参照 よくある質問コーナー(独占禁止法関係)Q14 
http://www.jftc.go.jp/dk/qa/index.html

そうすると,「Kindleストア」を通じて出版社が電子書籍を販売する場合には,出版社による価格拘束は許されないことになりそうだ。そうなれば,「電子書籍はとても安くなるのでは!」と期待される。

もっとも,委託販売の形式をとるかもしれない。その場合,Amazonは単なる取次に過ぎず,実質的に出版社が販売していると認められれば,出版社が価格を指示しAmazonがそれに従うという形式をとっても違法にはならない。そのような方法で,定価販売が続く可能性も高い。

しかし,流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針
http://www.jftc.go.jp/dk/ryutsutorihiki.html
によれば,実質的に出版社が販売していると認められるには,
委託販売の場合であって、受託者は、受託商品の保管、代金回収等についての善良な管理者としての注意義務の範囲を超えて商品が滅失・毀損した場合や商品が売れ残った場合の危険負担を負うことはないなど、当該取引が委託者の危険負担と計算において行われている場合
に該当する必要がある。

しかし,電子書籍という商品が滅失・毀損することはあり得ないし,売れ残りということも実質的には考えられない。そうなると,どのような場合であれば,独占禁止法違反になるのかは予測困難だ。

電子書籍のような形のないものの委託販売は増えており,同様の問題で,私自身も判断に迷ったことも少なくはない。早く明確な基準が作られる必要がありそうだ。

本好きとしては,電子書籍になって価格が下がることは歓迎であるものの,価格の低下により良書が出版されなくなることはあってほしくないと思う。



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posted by 内田清隆 at 21:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法

2012年10月22日

発信者情報開示の限界と効用

インターネット上,名誉毀損,プライバシー侵害がなされた場合,教科書的には,プロバイダに対して発信者情報開示請求を行い,名誉毀損などをしている発信者のIPアドレスなどを明らかしてもらうことになる。

ところが,この発信者情報開示請求というのは使い勝手がよくない。

発信者情報開示請求をすると,プロバイダは発信者に対して,情報を開示してよいか尋ねることになるのである。しかし,「あなたの書き込みが名誉毀損だから,訴えようとしている人がいるので,あなたの情報を教えてあげていいですか?」と聞かれて「どうぞ!」と答える人はいない。
 そうすると当然,プロバイダは慎重になる。発信者が何と言おうと名誉毀損は明らかだから開示するというケースは少ない。そのため,なかなか発信者情報の開示を受けられないのである。

これでは意味のない制度では・・・と思っていたが,先日ある弁護士の講演を聞いたところ,意味がないわけではないようだ。
発信者情報開示請求をすると,発信者に誰かが裁判の準備を進めていますという連絡がいくことになる。それにより、発信者が違法な書き込みを控えることが期待できるというのだ。

なるほど,確かにそういう使い方もある。それにしてもネット上の人権侵害の救済には手間と時間がかかる。もう少し簡単な制度とプロバイダの良心を期待したい。

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posted by 内田清隆 at 08:33| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2012年10月15日

あなたを誰よりも知るグーグルは裁判所の言うことを聞かない 2

 ある人物が自分の名前をグーグルで検索しようとすると「〇山〇男、暴力団」「〇山〇男、犯罪者」といったように、サジェスト機能により,犯罪行為を連想させる単語が検索候補にあげられることを不服としてグーグルを訴えた。
 その結果,東京地裁はグーグルに対して今年3月19日にサジェスト機能の停止を命じた。ところが残念なことに,グーグルはこの決定を無視しているらしい。

  関係者によると,政府は,ビッグデータを利用したターゲットマーケティングを、厳しく規制していこうとしているらしい。
  しかし,日本法で規制しようとも,グーグルがそれに従うとは思えない。
 そうなれば、いかにビッグデータの取得や利用を規制しても日本人の新たなビジネスチャンスを奪うだけの結果になりかねない。
 ビッグデータのもつプライバシー侵害の危険性は驚くベきものがある。しかし、新しいものに過度に脅えることなく,上手に付き合うことが重要だろう。

 私の実家がある浦和は,明治時代に機関車に脅え,鉄道の通過を認めなかったため,埼玉の中心的地位を大宮に奪われた苦い歴史がある。
 その二の舞は避けたい。


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posted by 内田清隆 at 08:55| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2012年10月10日

あなたを誰よりも知るグーグルは裁判所の言うことを聞かない 1

 どうして,アマゾンは,こうも自分の趣味を分っているのだろうと感心していた方がいらっしゃるかもしれないが,今,1番あなたのことを知っているのはグーグルかもしれない。

 グーグルは今年,プライバシーポリシーを変更し,あらゆるメディアが取得したデータをー元管理していくことに決めた。それにより一層,利用者の嗜好に合わせた広告を提供していくことになろう。

 グーグルの提供する便利な機能を使っていれば,あなたが昨日どこにいたのか,あなたが何を検索したのか,あなたが誰とメールのやりとりをしているのか,あなたがどんな文章を書いているか,グーグルはすべてお見通しである。

  グーグルはそのビッグデータと呼ばれる莫大なデータから,家族すら知らない,あるいはあなた自身すら気付いていない,本当のあなたを分析してくれる。
 そして,そんなあなたにふさわしい最高の商品を提案してくれるのだ。
 夢のような話である。


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posted by 内田清隆 at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2012年10月01日

弁護士はしつこい!?


 以前に比べると,スピードアップされたとはいえ,裁判には時間がかかる。
 真っ向から争いのある事件だと1年以内に終わることはまずない。そして,裁判のクライマックスは終盤にあり,弁護士は依頼を受けてから1年以上も経って,受任当時以上に燃えていたりする。

 依頼者の立場から考えると,依頼して1年であれば,実際に問題が発生したのは1年以上・・・もっと前ということもある。そうすると、弁護士はめらめらと燃えているのに,当事者である依頼者が醒めてきてしまったなんてことも珍しくない。
実際に問題が起こったときには熱く燃えていた依頼者も「何年も前の話だから,もういいなあ。」といった感じになってしまうのである。

 人間,いつまでも怒り続けてもいられない。そう考えると,当たり前の反応だ。
 逆に何年も前の出来事に対して,仕事とはいえ,いつまでも燃え続けている弁護士というのは,何ともしつこく根に持つ輩であると我がことながら嫌になったりする。

 先日,東日本大震災の復興に関わっている弁護士の講演を聞く機会があった。世間が東日本大震災のことを忘れ始めていることに強い危機感を持っていた。そして,弁護士はいつまでも過去を忘れずに着実に歩みを進められる存在であり,それが復興において大事なことだと力説されていた。

 そうか!と思った。しつこく根に持つなどと後ろ向きに捉える必要はない。過去を忘れることなく着実に歩みを進める・・・そんな弁護士でありたい。


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posted by 内田清隆 at 00:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感