2012年07月19日

「私は誰と契約をしたのだろう?」 

 契約をしたのだから,その相手が分からないはずがないと思われるかもしれない。
 しかし,意外に簡単でない。
 裁判でも,Aさんに対して,「貸した2000万円を返せ」という訴えを起こしても,借りたのはAさんでなく,Aさんが経営する株式会社Bであるとして,敗訴するといったこともある。

特に,契約書が実態と異なる場合に問題になる。

 上の例でいえば,お金を受け取って使用したのは株式会社Bなのであるが,契約書ではAさん個人が借主の場合などには,どちらが契約者なのかの判断は難しい。
 書面上は借主がAであったとしても,実際にお金を受け取って使った人が借主であるとする裁判例もある。

 さらにそのよう場合,契約書上の借主が「株式会社B 代表取締役A」となっていれば,株式会社Bが契約の相手方であることは明白である。
 しかし,単に「株式会社B A」となっている場合はいっそう悩ましい。
 Aさんが株式会社Bの代表として契約しているのか,それとも単に株式会社Bに勤めているAさんが契約しているのか,判断は容易ではない。

 弁護士としては,契約当事者の取り間違えは,大変恥ずかしく何より恐ろしいミスだ。
 そこで,「契約の相手は誰ですか,AですかBですか」と必ず確認するのであるが,「私は誰と契約をしたのだろう?」と言われる方も少なくない。

 契約の相手がBであればAにいくら資産があっても,Bが破産すれば,まったく回収できないことになる。逆もまたしかりだ。

 当然すぎるほど当然なことであるが,契約をする際には,契約の相手が誰なのかを明確にしておく必要がある。
 そのためには,実態に合わせたきちんとした契約書を作ることが重要だ。


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posted by 内田清隆 at 16:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書作成

2012年07月11日

商法594条・595条〜ホテルで預けた品が盗まれたら?


商法594条により,ホテル,飲食店,サウナなどに客が物を預けたときに,その物が紛失したり壊れたりした場合には,ホテル等側は,不可抗力であることを証明しない限り,損害賠償責任を逃れられない。

裁判例では,ホテルの主人が盗難防止設備を設けていたにもかかわらず,暴力をもって侵入して客の物品を盗んでいった場合には不可抗力にあたるとしている。そのような特別な場合でなければ,ホテル等側が責任をもつということだ。

ただし,商法595条により,高価品については,客がホテル等に高価品であることを伝えて預けていないと,ホテル等側に重過失(注意をはなはだしく欠くこと)があった場合でないと責任を問えなくなる。

裁判例でも,最終的にはホテル側の重過失が認められたものの,約3000万円の宝飾品が入ったバッグを預けそれが盗まれたという事案で,客がホテルに高価品であることを伝えていなかったことが問題になったというものがある。当然のことながら,高価品を預ける際には,預ける先によく注意をうながすことが大切だ(そもそも3000万円の宝飾品を預けるというのもすごいことだが…)。

なお,商法594条3項により,ホテル等側は,「当ホテルでは預かり品の盗難・紛失については一切責任追いません」などの表示をしていても,責任を逃れることはできない。

裁判例でも,ホテル利用者がホテル従業員の指示によりホテル玄関前に駐車しホテルフロント従業員に車両の鍵を預けていたところ車両が盗まれた場合に,「駐車場での盗難については当ホテルは一切の責任を負いません」などの「免責の告示」を掲示してあったとしても,これにより本件自動車の盗難について免責を主張することはできないとされている(大阪地裁・平成12年9月28日)。

上記3000万円の宝飾品が盗難された例についても,宿泊約款には預かり品については,「予め種類や価額の明示がなかった場合には15万円を賠償上限とします」と書いてあったにもかかわらず,ホテル側は責任を負わされている。

ホテル,飲食店など人が集まる施設の経営者は,「張り紙をしてあるから安心」「約款に書いてあるから安心」などと油断していると,大きな責任を負わされるかもしれない。

高価品を預かることがありうる商売をする際には,きちんと保険に入るなど,適切な対応をしておかないといけない。

 
第五百九十四条  旅店、飲食店、浴場其他客ノ来集ヲ目的トスル場屋ノ主人ハ客ヨリ寄託ヲ受ケタル物品ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其不可抗力ニ因リタルコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス
2 客カ特ニ寄託セサル物品ト雖モ場屋中ニ携帯シタル物品カ場屋ノ主人又ハ其使用人ノ不注意ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ場屋ノ主人ハ損害賠償ノ責ニ任ス
3 客ノ携帯品ニ付キ責任ヲ負ハサル旨ヲ告示シタルトキト雖モ場屋ノ主人ハ前二項ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ス
第五百九十五条  貨幣、有価証券其他ノ高価品ニ付テハ客カ其種類及ヒ価額ヲ明告シテ之ヲ前条ノ場屋ノ主人ニ寄託シタルニ非サレハ其場屋ノ主人ハ其物品ノ滅失又ハ毀損ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス


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posted by 内田清隆 at 00:49| Comment(1) | TrackBack(0) | 商取引法

2012年07月02日

違法ダウンロードの罰則化

 著作権法改正によって違法にアップロードされた著作物をダウンロードすることが禁止されたものの,罰則がないためどこまでの意味があるのか・・・というブログ記事を書いたことがある。

 私と同じことを考えた人も多かったのであろう。著作権法改正案が本年6月20日に成立し,今秋10月1日からは,違法にアップロードされた動画・音楽などをダウンロードする行為に対し,懲役2年以下または200万円以下の罰金が科されることになった。

 著作権法については,多くの様々な問題点があるため,今後も改正が予定されているのだが,違法ダウンロードの罰則化だけが前倒しで実施された形だ。

 このような改正がなされたのはレコード業界の強い圧力によるものであり,十分な議論がなされていないという批判もある。しかしながら,違法にアップロードされた著作物をダウンロードすることを違法であると決めたところで,罰則がなければ,ほとんど意味がない。そう考えると違法ダウンロードに罰則を設けることは自然なことであろう。

 とはいえ,違法アップロードが野放しにされているような現状で,違法ダウンロードを取り締まろうとすることはかなり困難であろう。本気で取締りを行おうとすれば,警察権力の不当な私生活への介入を許すことにもなるだろう。

 そう思うと,法改正にどこまでの意味があるのかは,相変わらず疑問である。


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posted by 内田清隆 at 09:22| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法