2012年04月27日

Googleドライブとクラウドの法律問題

 グーグルは,今月25日,5GBまで無料のオンラインストレージ「Googleドライブ」の提供を発表 した。
 現在私が愛用しているDROPBOXであると無料は2GBまでであるため,かなりお得感がある。
 オンラインストレージの抱える大きなリスクの一つは,その運営主体の倒産による情報の消滅だ。しかし,グーグルであれば簡単に倒産しないだろうと信用されるだけのブランド力があろう。
 そう考えると,愛用者としては,DROPBOXの今後が心配である。


 とはいえ,なかなか,仕事では,オンラインストレージなどのクラウドは使いづらい。
 
 法律的には,クラウドの利用が,個人データの「委託」にあたり,個人情報保護法22条に基づき,本人の同意がいるのではないかという問題がある。
 また,本人の同意がいらないとしても,クラウドサービス事業者の必要かつ適切な監督が求められる可能性もある。しかし,グーグルを適切に監督することなど実際上不可能だ。

 しかしながら,私が実際上,活用できない理由は,そのような法律的な問題点ではない。
 一番,気になるのは,セキュリティだ。
 友人からは,「個人が保管するより,グーグル等のクラウド事業者に保管してもらった方が安全だよ」と言われた。しかし,何の保証もしてくれないクラウド事業者に極秘データを預けるというのは,やはり抵抗がある。

 さらに,気になるのが,人的な問題である。IDとパスワードが盗まれてしまえば,グーグルに落ち度はなくとも,一瞬にして,すべての情報が奪われてしまう。
 「●●社は近く破産する」「●●は過去に重大な犯罪を行ったことがある」・・・,そんな法律事務所がもつ機密情報が私の事務所から一瞬にして流出するかもしれない。そう思うと,なかなか利用に踏み切れない。
 これにしても,クラウドを利用しなくても,泥棒に入られることを思えばあり得ることなのであるから,合理的に考えると,クラウドを利用しない理由にはならないのかもしれない。
 しかし,理性ではそう思っても,不安を覚えてしまう。

 毒見をさせるようで卑怯な気もするが,多くの会社が導入するようになり問題が生じないようであれば,私も仕事でもオンラインストレージの導入を検討することにしよう。


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posted by 内田清隆 at 18:46| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2012年04月24日

「法廷戦略」を読んで

入門「法廷戦略」という本を最近読んだのだが,実に感銘を受けた。
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直接的には裁判員裁判における弁護活動を教える本なのであるが,すべての訴訟活動,さらには,生き方についても役に立つ内容であった。

シンプルで具体的な目標を設定せよ

「正当防衛だから無罪という主張をしてできるかぎり無罪獲得を目指してまず頑張り,それが無理でも情状を主張してできるかぎり刑務所に入る時間を短くさせよう。」という目標など最悪だという。
目標は,「情状を主張して懲役3年執行猶予5年の判決を目指す」といったシンプルで具体的なものでなければ実現できない。
確かに,「できるかぎり経費を削減して,売り上げを伸ばそう」などという目標は,「一生懸命やろう」というのと同じで,具体的な行動に結びつかない。
シンプルで具体的な目標を設定しないと,どのような行動をとるかなどという戦略を作りようもないというわけである。
 
すべての行動において,獲得目標を意識して行動せよ 

シンプルで具体的な目標を設定すれば,各手続きを漫然と行うことはなくなり,一つ一つの行動について獲得目標を明確にした戦略的な行動をとることができる。
例えば,「法廷に入り椅子に座る」という行動であっても,「正当防衛で無罪」が獲得目標であれば,胸を張って力強く入場する必要があろうし,「情状を主張して刑を軽くする」という目的であれば,目を伏せがちに被告人と共に反省している様子で入場する必要があるかもしれない。
獲得目標を意識しないで,最終弁論をする弁護人はいないであろう。しかし,一挙手一投足まで,獲得目標を意識しなければいけないというわけだ。
当たり前のことであるが,自分ができていたかと言われれば,自信はない。

考えてみれば,裁判員裁判に限られることではない。すべての訴訟,いや人生において,「自分が一体何をしたいのか」という目標を明確にし,すべての行動において,その目標を意識して行動するというのは,とても大切なことなのであろう。


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posted by 内田清隆 at 10:05| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2012年04月16日

法律事務所におけるアイパッド化の限界

大阪の裁判所に行くことがあった。
事件の記録が分厚いファイル5冊にもなっていて重いなあと思い,すべてをPDF化しクラウドに保存して,必要なときにはiPadで見ることができるようにして,裁判所に向かった。
相手方代理人は,重いスーツケースを転がしてきた(これまでの自分もそうだった)。
一方こちらの手荷物はといえば,財布とiPadだけ。「なんてスマートなんだ」,そう自画自賛しながら,法廷に臨んだ。

しかし・・・。

裁判官 「ちょっと,訴状を見てもらえますか。15ページの下の方の記載についてですが…」
相手方代理人 「はい」
私 「ちょっと,待ってください。」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方代理人の視線が痛い。ようやくPDFが開かれる。

私 「はい,お待たせしてすみません」
裁判官 「これは提出いただいた甲第15号証の証拠と矛盾しませんか」
相手方代理人 「本当ですね。」
私 「ちょっと,待ってください。」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方の視線が痛い。ようやくPDFが開かれる。

私 「すみません,甲第5号証ですか?」
裁判官 「いいえ,甲第15号証です。」
私 「(げっ,間違えた)」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方の視線が痛い,ようやくPDFが開かれると思ったら,なぜか甲第16号証。あわてて,操作したためタッチミスが続き1分以上の沈黙の末,ようやくPDFが開かれる。

私 「本当ですね。でも,この点は・・・・」

40秒の沈黙・・・・・・

私 「訴状の18ページで説明しております。」
裁判官 「では次に答弁書の5ページによると・・・」

20秒の沈黙・・・,この辺で,裁判官と相手方代理人の「紙のファイル持って来いよ,どれだけ待たせるんだよ」という心の声が聞こえ始めた。

 とはいえ,私はその後も視線にめげることなく,裁判官と相手方代理人を待たせ続けたのだが,やはり,まだまだ,紙の事件記録を持たずに裁判所に行くのは難しいようだ。


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posted by 内田清隆 at 19:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2012年04月02日

内々定取り消しは違法になるか?その2

以前のブログでも紹介した内々定の取消しが不法行為に当たるとした福岡地裁判決は福岡高裁でも,維持されたものの,慰謝料額は,75万円から20万円に下げられたようである(福岡高裁平成23年2月16日判時2121号137頁)。

75万円でも低額だと思っていたのだが,20万円は実に低額に思われる。私自身が就職活動をしていた頃は遠い昔となってしまったので,「内々定」がどのような意味を持つのかが定かでなくなってしまったが「内々定」とはそんなものなのかもしれない。
しかし,地方裁判所,高等裁判所と争って20万円では弁護士費用にも大きく満たないであろう。そうすると,実際上,内々定取消しについて,訴訟で争うのは不可能に近いということになる。

本件は,会社の経営状況が悪化したというのが内々定を取り消した重要な理由のようであるが,「重要情報の提供となりかねない経営状況の詳細説明は困難であった」という会社の主張は理解できる。内々定を出したとはいえ,経営状況がどれほど悪化しているのかを詳細に説明するのは,風評被害が生じる恐れもあるところであり,会社としては行いづらいであろう。

しかしながら,裁判になってしまい,判決が公開されれば,よりいっそうの風評被害が生じる恐れもある。それを考えると,広く出回る恐れがある書面で詳細に説明するのでなく,口頭で親切に説明し,何とか理解を求めることが必要なのであろう。

内々定取消しによる慰謝料額がいくら低額であるからといって,採用するという意思をいったん見せた後に取り消す場合は,誠意を尽くさないといけない。当たり前のことであるが,忘れてはならないことであろう。


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posted by 内田清隆 at 10:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題