2012年04月27日

Googleドライブとクラウドの法律問題

 グーグルは,今月25日,5GBまで無料のオンラインストレージ「Googleドライブ」の提供を発表 した。
 現在私が愛用しているDROPBOXであると無料は2GBまでであるため,かなりお得感がある。
 オンラインストレージの抱える大きなリスクの一つは,その運営主体の倒産による情報の消滅だ。しかし,グーグルであれば簡単に倒産しないだろうと信用されるだけのブランド力があろう。
 そう考えると,愛用者としては,DROPBOXの今後が心配である。


 とはいえ,なかなか,仕事では,オンラインストレージなどのクラウドは使いづらい。
 
 法律的には,クラウドの利用が,個人データの「委託」にあたり,個人情報保護法22条に基づき,本人の同意がいるのではないかという問題がある。
 また,本人の同意がいらないとしても,クラウドサービス事業者の必要かつ適切な監督が求められる可能性もある。しかし,グーグルを適切に監督することなど実際上不可能だ。

 しかしながら,私が実際上,活用できない理由は,そのような法律的な問題点ではない。
 一番,気になるのは,セキュリティーだ。
 友人からは,「個人が保管するより,グーグル等のクラウド事業者に保管してもらった方が安全だよ」と言われた。しかし,何の保証もしてくれないクラウド事業者に極秘データを預けるというのは,やはり抵抗がある。

 さらに,気になるのが,人的な問題である。IDとパスワードが盗まれてしまえば,グーグルに落ち度はなくとも,一瞬にして,すべての情報が奪われてしまう。
 「●●社は近く破産する」「●●は過去に重大な犯罪を行ったことがある」・・・,そんな法律事務所がもつ機密情報が私の事務所から一瞬にして流出するかもしれない。そう思うと,なかなか利用に踏み切れない。
 これにしても,クラウドを利用しなくても,泥棒に入られることを思えばあり得ることなのであるから,合理的に考えると,クラウドを利用しない理由にはならないのかもしれない。
 しかし,理性ではそう思っても,不安を覚えてしまう。

 毒見をさせるようで卑怯な気もするが,多くの会社が導入するようになり問題が生じないようであれば,私も仕事でもオンラインストレージの導入を検討することにしよう。


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posted by 内田清隆 at 18:46| Comment(0) | TrackBack(0) | IT法

2012年04月24日

「法廷戦略」を読んで

入門「法廷戦略」という本を最近読んだのだが,実に感銘を受けた。
無題3.png
直接的には裁判員裁判における弁護活動を教える本なのであるが,すべての訴訟活動,さらには,生き方についても役に立つ内容であった。

シンプルで具体的な目標を設定せよ

「正当防衛だから無罪という主張をしてできるかぎり無罪獲得を目指してまず頑張り,それが無理でも情状を主張してできるかぎり刑務所に入る時間を短くさせよう。」という目標など最悪だという。
目標は,「情状を主張して懲役3年執行猶予5年の判決を目指す」といったシンプルで具体的なものでなければ実現できない。
確かに,「できるかぎり経費を削減して,売り上げを伸ばそう」などという目標は,「一生懸命やろう」というのと同じで,具体的な行動に結びつかない。
シンプルで具体的な目標を設定しないと,どのような行動をとるかなどという戦略を作りようもないというわけである。
 
すべての行動において,獲得目標を意識して行動せよ 

シンプルで具体的な目標を設定すれば,各手続きを漫然と行うことはなくなり,一つ一つの行動について獲得目標を明確にした戦略的な行動をとることができる。
例えば,「法廷に入り椅子に座る」という行動であっても,「正当防衛で無罪」が獲得目標であれば,胸を張って力強く入場する必要があろうし,「情状を主張して刑を軽くする」という目的であれば,目を伏せがちに被告人と共に反省している様子で入場する必要があるかもしれない。
獲得目標を意識しないで,最終弁論をする弁護人はいないであろう。しかし,一挙手一投足まで,獲得目標を意識しなければいけないというわけだ。
当たり前のことであるが,自分ができていたかと言われれば,自信はない。

考えてみれば,裁判員裁判に限られることではない。すべての訴訟,いや人生において,「自分が一体何をしたいのか」という目標を明確にし,すべての行動において,その目標を意識して行動するというのは,とても大切なことなのであろう。


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2012年04月16日

法律事務所におけるアイパッド化の限界

大阪の裁判所に行くことがあった。
事件の記録が分厚いファイル5冊にもなっていて重いなあと思い,すべてをPDF化しクラウドに保存して,必要なときにはiPadで見ることができるようにして,裁判所に向かった。
相手方代理人は,重いスーツケースを転がしてきた(これまでの自分もそうだった)。
一方こちらの手荷物はといえば,財布とiPadだけ。「なんてスマートなんだ」,そう自画自賛しながら,法廷に臨んだ。

しかし・・・。

裁判官 「ちょっと,訴状を見てもらえますか。15ページの下の方の記載についてですが…」
相手方代理人 「はい」
私 「ちょっと,待ってください。」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方代理人の視線が痛い。ようやくPDFが開かれる。

私 「はい,お待たせしてすみません」
裁判官 「これは提出いただいた甲第15号証の証拠と矛盾しませんか」
相手方代理人 「本当ですね。」
私 「ちょっと,待ってください。」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方の視線が痛い。ようやくPDFが開かれる。

私 「すみません,甲第5号証ですか?」
裁判官 「いいえ,甲第15号証です。」
私 「(げっ,間違えた)」

20秒の沈黙・・・,裁判官と相手方の視線が痛い,ようやくPDFが開かれると思ったら,なぜか甲第16号証。あわてて,操作したためタッチミスが続き1分以上の沈黙の末,ようやくPDFが開かれる。

私 「本当ですね。でも,この点は・・・・」

40秒の沈黙・・・・・・

私 「訴状の18ページで説明しております。」
裁判官 「では次に答弁書の5ページによると・・・」

20秒の沈黙・・・,この辺で,裁判官と相手方代理人の「紙のファイル持って来いよ,どれだけ待たせるんだよ」という心の声が聞こえ始めた。

 とはいえ,私はその後も視線にめげることなく,裁判官と相手方代理人を待たせ続けたのだが,やはり,まだまだ,紙の事件記録を持たずに裁判所に行くのは難しいようだ。


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posted by 内田清隆 at 19:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感

2012年04月02日

内々定取り消しは違法になるか?その2

以前のブログでも紹介した内々定の取消しが不法行為に当たるとした福岡地裁判決は福岡高裁でも,維持されたものの,慰謝料額は,75万円から20万円に下げられたようである(福岡高裁平成23年2月16日判時2121号137頁)。

75万円でも低額だと思っていたのだが,20万円は実に低額に思われる。私自身が就職活動をしていた頃は遠い昔となってしまったので,「内々定」がどのような意味を持つのかが定かでなくなってしまったが「内々定」とはそんなものなのかもしれない。
しかし,地方裁判所,高等裁判所と争って20万円では弁護士費用にも大きく満たないであろう。そうすると,実際上,内々定取消しについて,訴訟で争うのは不可能に近いということになる。

本件は,会社の経営状況が悪化したというのが内々定を取り消した重要な理由のようであるが,「重要情報の提供となりかねない経営状況の詳細説明は困難であった」という会社の主張は理解できる。内々定を出したとはいえ,経営状況がどれほど悪化しているのかを詳細に説明するのは,風評被害が生じる恐れもあるところであり,会社としては行いづらいであろう。

しかしながら,裁判になってしまい,判決が公開されれば,よりいっそうの風評被害が生じる恐れもある。それを考えると,広く出回る恐れがある書面で詳細に説明するのでなく,口頭で親切に説明し,何とか理解を求めることが必要なのであろう。

内々定取消しによる慰謝料額がいくら低額であるからといって,採用するという意思をいったん見せた後に取り消す場合は,誠意を尽くさないといけない。当たり前のことであるが,忘れてはならないことであろう。


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2012年03月26日

賃貸人の破産と賃借権

  以前に賃貸人が破産しても,敷金については心配する必要性はあまりないという話を述べた。とはいえ,賃貸人が破産すれば困るのは事実だ。
1番困るのは,賃貸人が破産した場合には,賃借人は,明け渡しをせざるを得なくなる場合があるということだ。

 賃貸人が破産すると,賃貸人が所有していた不動産は任意売却される場合も多い。その場合は,敷金返還請求権を含めて,賃借権も新たに不動産を取得した人に引き継がれるから心配はいらない。
しかし,任意売却が進まずに,抵当権を設定していた銀行が,その不動産を競売に出すことになった場合,抵当権設定より後に,引渡しを受けた賃借人は,競売が終了して,6ヶ月以内に明渡しをしないといけない(民法395条)。
 
  また,上記のように,競売になった場合には,敷金返還請求権は,新たに不動産を取得した人には引き継がれない。そのため,賃借人は,明け渡しをせざるを得なくなった上に,敷金が戻ってこないという羽目になる可能性もある。

  破産後競売が終了し,明け渡しをせざるを得なくなるまでには,早くても2年近い年月がかかる。だから,あわてる必要はないのであるが,それにしても,賃借物件を明け渡さざるを得なくなる可能性があることは大きな問題である。

  抵当権が設定されていない物件はほとんどない。そうすると,ほとんどの賃貸借において,賃貸人が破産した場合には明け渡しを余儀なくされる可能性があることは頭においておきたい。


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posted by 内田清隆 at 08:40| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2012年03月15日

ホットコーヒー裁判

 録画して楽しみにしていた「ホットコーヒー裁判の真相〜アメリカの司法制度〜」http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/120305.htmlを見た。

 ドライブスルーで買ったコーヒーをこぼして膝をやけどした女性がマクドナルドを訴えたという有名な事件のドキュメンタリーである。
 陪審員はマクドナルドに286万ドル(約2億3000万円)の賠償を命じた。最終的には裁判官がそれを減額させ64万ドル(約5120万円)の賠償額となった。

「コーヒーこぼした自分が悪いんだろ?」
「コーヒーこぼしてやけどして2億って悪い冗談だろ?」
「訴訟社会アメリカの病理を明らかにする訴訟だ」
そんな一般的な見方に警笛をならす番組であった。

1 やけどは皮膚移植が必要なほど深刻なもので,医療費も1万ドルを越えていた(確かに写真で見ても正視できないようなグロテスクなやけどであった)
2 マクドナルドのコーヒーの温度は通常より高い85度とマニュアルで決められていた
3 そのため数百件以上のやけどの苦情があったにもかかわらずマクドナルドは対策を取らなかった
ことを考えれば,そもそも判決自体はおかしくないというのが第1のポイントだ。

 第2のポイントは大企業の陰謀である。
 ホットコーヒー裁判以降,このようなおかしな裁判をなくすため,多くの「市民集団」が立ち上がった。そして,損害賠償限度額を設けるなどして不当な訴訟を減らすような運動を始めた。マスコミもこれに追随し,非常識な裁判としてホットコーヒー裁判を連日報道した。
 ところが,実は,それが大企業の陰謀だというのである。
 「市民集団」とは名ばかりで,大企業から大量の資金が流れ込んでおり,実際に運動をしている「市民」は存在しない・・・,マスコミも広告主たる大企業の機嫌をとるためにホットコーヒー裁判の内容を捻じ曲げて報道した・・・,さらには,大企業側は,最高裁の人事にまで関与し,大金をつぎ込み消費者側の裁判官のネガティブキャンペーンを行い,更には消費者側の裁判官を刑務所に送るべく恐るべき陰謀を・・・。
 
 番組を見て「ホットコーヒー裁判」=「アメリカの訴訟社会は異常」というステレオタイプな見方は改めるべきであると反省した。

 しかしである。本当か?というのが正直な感想である。
 「コーヒーは熱いからこそ美味しい。だからこぼせば火傷する。飲む人はこぼさないよう気をつけるべきである。」というのは,大企業が陰謀をはたらくまでもない世界の常識ではないのであろうか。
 
 少なくとも私は「コーヒーは熱いからこぼさないように」「こぼしてやけどしても熱すぎるコーヒーを入れた人のせいにしてはいけない」と子どもに教える。
 「こぼしてやけどしたら熱すぎるコーヒーを入れた人を訴えられないかを検討すべきだ」などとは決して教えないであろう。

 そもそも,私はぬるいコーヒーは嫌いなのである。
 やけどのリスクがあってもマックのコーヒーは「HOT!!」であってほしい。


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posted by 内田清隆 at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2012年03月09日

破産と敷金

賃貸人が破産するという話を聞いた人から「多額の敷金や保証金は戻ってくるのか!?」そんな相談を何回か受けたことがある。

結論からいえば,基本的には心配はいらない。

 賃貸不動産が売却されれば,敷金返還請求義務は,新たに不動産を取得した人に引き継がれる。
 そのため,今の賃貸人が破産しても,明渡し時に新賃貸人に対して,敷金の返還を請求することが可能である。

  もちろん,賃貸人が破産するからといって,賃貸不動産がすぐに売却されるとは限らない。
  しかし,破産法第70条により,賃借人は、賃料を支払う際に,敷金返還請求権の額まで弁済額を寄託するよう請求することができる。
そして、明け渡す際には,賃借人は、支払済みの賃料債務と敷金返還請求権を相殺し,寄託した賃料の返還を請求することができるのである。

(参考) 破産法第七十条  停止条件付債権又は将来の請求権を有する者は、破産者に対する債務を弁済する場合には、後に相殺をするため、その債権額の限度において弁済額の寄託を請求することができる。敷金の返還請求権を有する者が破産者に対する賃料債務を弁済する場合も、同様とする。

賃貸人が破産しても,賃料の支払いを拒めるわけではない。
しかし,破産後に支払う賃料額をプールしておいてもらい,明渡し時に発生する返還敷金と相殺できるということだ。
 もちろん,プールされる賃料が敷金に満たない場合には,損失が発生することになるが,多くないケースであろうから,きちんとした手続きをとっていれば,それほど心配することはない。


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2012年03月02日

橋下市長による職員のメール調査の合法性

 弁護士でもある橋下大阪市長が,問題視する職員の政治・組合活動の実態解明のために,市職員のメールの内容を秘密裏に調査しているというニュースが最近あった。

 橋下市長は「法的に問題はない」と言っているが本当であろうか。

 以前のこのブログにも記事(これこれ)を書いたのだが,従業員のメールを会社は監視(モニタリング)することができるかという問題である。

 経済産業省のガイドラインには
「あらかじめ労働組合等に通知し、必要に応じて、協議を行うことが望ましい。・・・労働者等に周知することが望ましい。」と記載されている(30ページ)。
 すると,橋下市長の調査は「望ましくない」ということになるが,「望ましくない」からといって「法的に問題がある」ということにはならない。

 上記ブログ記事にも書いたが,古い裁判例では,メールの監視の合法性については緩やかな基準で認めており,
@専ら個人的な好奇心等から監視した場合
A社内の管理部署その他の社内の第三者に対して監視の事実を秘匿したまま個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合,
など特別な場合でなければ従業員のメールの監視は違法にならないとしている。

 しかしながら,橋下市長のメール調査は,かなり秘密裏に行われているようであり,上記緩やかな基準でもAに反する違法なものと評価されかねない。

 そもそも,プライバシー権がうるさく主張されている中,上記裁判例の緩やかな基準が今後も維持されるのかも疑わしい。

 そうなると橋下市長のメール調査の合法性について相談を受けたとすれば,「裁判をしてみないと確実なことはいえないが,違法と評価される可能性が相当に高い」と回答することになるであろう。
(もっとも上記ニュースが事実であるかは確認していない。)

 政府とけんかをする気であればともかく,利益を追求する私企業としては,従業員のメールを監視するにしても,
・就業規則等の明文のルールにして,
・それを従業員に周知しておくこと

がリーガルリスクを減らすために最低限必要であろう。

 今後ますますメールの重要性が高まる中,メールの監視の必要性も高まる。
 きちんとしたルールを作ることが重要となろう。


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posted by 内田清隆 at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題

2012年02月20日

謎の法律業界用語集3

以前にも謎の法律業界用語集1謎の法律業界用語集2で紹介したが,縷々,蓋し,措信など,法曹界でしかほとんど見かけない謎の法律業界用語を説明しよう。


苟も
「いやしくも」と呼ぶ。「仮にも」という意味である。

訴えの提起が不法行為を構成するか否かを判断するに当たっては、苟も裁判制度の利用を不当に制限する結果とならないよう慎重な配慮が必要である。(東京高等裁判所・平成10年1月20日)という具合に使う。

古語に近いが,当業界では立派に現役である。

恥ずかしながら,その昔,どうして,法律文書には,タケノコがよく出てくるのだろうと思っていた。
「筍(タケノコ)」ではなく「苟(イヤシク)」であるから注意がいる。

事件
弁護士が依頼を受けて裁判所における手続きの対象になっている案件のことを,当業界ではどんな場合でも「事件」と呼ぶ。

お金を返せという裁判を起こせば,「貸金返還請求事件」である。

「最近やった事件で,面白いのがありまして・・・」
「今,どれぐらい事件もってるの?」
「昨日は5回相談があったけど一件も事件にならなかった」
というように使う。
 ついつい日常的に使い,「えっ,事件?!」と驚かれる。

ケイバイ
「競売」のことである。一般には「キョウバイ」というが業界ではケイバイと呼ぶ。

「この間のケイバイでさあ」と言うと,「おっ,こいつ分かっているな」と一目置かれるが,「この間のキョウバイでさあ」というと「素人だな」となめられる結果になったりする。(とはいえ,私は信念でキョウバイと読んでいるが,たまに恥ずかしい。)
同じように,遺言も「ユイゴン」ではなく「イゴン」である。

ソクドク
どこかの事務所に勤務することなく,すぐに独立する弁護士のことをいう。
「即独」と書く。

「●●弁護士はソクドクだっけ」「そうだよ」といった具合に用いる。
初めて聞いた時,「ソク毒」と言っているのかと思い,ずいぶん酷いことをいうなあと思ったものだ。

いんめん
被疑者が警察官に対して述べたことを聞き取った内容を記した書面のことである。

略語を使うのは好きではないのだが,正式名称は,
司法警察員の面前における供述を録取した書面(司法警察員面前調書)・・・。
略語もやむを得ない。
KS(Keisatsu Statementの頭文字)ともいう。
調書を作ることを「調書を巻く」ともいう。昔は巻物に記載していたのだろうか。

郵券
郵便切手のことである。 

「ユウケン買ってきて」「ユウケン代も結構な額になるなあ」という具合に使う。
裁判所の職員が「ユウケン足りないですよ」と言うことで,法律事務所の新人事務職員がキョトンとするのを見て楽しむという習慣がある(かもしれない)。


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posted by 内田清隆 at 10:36| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2012年02月08日

GKB47によるAKB48の商標権侵害

 テレビのニュースで,岡田副総理が,内閣府の自殺対策強化月間のキャッチフレーズ「GKB47宣言!」を不適当として撤回するとインタビューで答えていた。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120207-00000062-mai-pol
 てっきり「AKB48」のファンが,「自殺対策強化にアイドルグループの名前をもじるのはけしからん!」と怒ったのかと思ったが,ニュースによると「自殺の深刻さを十分にわきまえていない」という批判を受けて撤回したようである。


 ところで「AKB48」は登録商標である
商願2005-119042,商願2006-16476)。
(ちなみに商標登録によると読み方はエイケイビイフォーティエイトばかりではなく,エイケイビイヨンジューハチとも読むらしい)
 
 すると「AKB48」と「GKB47」が類似しているとして,商標権侵害にならないのかが気になるところだ。
  
 結論からいえばならない。

 商標権とは,登録する際に指定したサービス(役務)等について登録商標を独占的に使用できる権利である。
 そのため,指定されているサービス等と違うサービスであれば,登録商標と類似する商標を使用することもできるのである。

 「AKB48」という商標の指定役務は多岐にわたるが,「音楽ライブコンサートの企画・運営又は開催等の役務」等であり,「自殺対策強化及びその広報」といったサービスは指定されていない(当たり前だ)
 そのため,自殺対策強化のキャッチフレーズに「GKB47」を用いても商標権侵害にはならないのである。

  また,二つの商標が類似しているかを判断する際には目立つ1文字目は特に重視される。
  そして,1文字目が「A」と「G」と違っていることなどからすれば,類似しているともいいきれない。

  とはいえ,商標法違反にならなくても別の法律違反になることはある。
  実際に,安易に有名な名前のパロディーを用いて高額な損害賠償請求を受けた事案に関わったこともあった。  
  また,法律違反にならなくても本件のように社会的非難を浴びることもある。
  
  商売に有名な名前のパロディーを用いる際には,くれぐれも注意が必要ということであろう。
(きちんと調べておりませんので,本文の内容の正確性には責任を負いかねますことをご了承ください。)

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posted by 内田清隆 at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2012年02月02日

ピンクレディーのパブリシティ権 最高裁平成24年2月2日

 有名人の写真を有名人に無断で使用してもいいのであろうか。
 ダメだとすればどのような場合ダメなのであろうか。

 この,いわゆるパブリシティ権(氏名・肖像から生まれる価値を支配する権利)の問題について,平成24年2月2日に最高裁の判決が出た。

 事案は,ある雑誌に掲載されたピンクレディーの写真を使ってピンクレディーの曲の振り付けを利用したダイエット法を紹介した「ピンク・レディー de ダイエット」という3頁の記事についてのものである。

最高裁は,
1 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,
2 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し
3 肖像等を商品等の広告として使用するなど,
専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合
に,パブリシティ権を侵害するものとして違法になると判断した。
 
そして,最高裁は,
昭和50年代に子供から大人に至るまで幅広く支持を受け,その当時,その曲の振り付けをまねることが全国的に流行したというのであるから,本件各写真の上告人らの肖像は,顧客吸引力を有するものといえる
としながらも(当たり前だ),
ピンク・レディーそのものを紹介するものではなく,前年秋頃に流行していたピンク・レディーの曲の振り付けを利用したダイエット法につき,その効果を見出しに掲げ,イラストと文字によって,これを解説するとともに,子供の頃にピンク・レディーの曲の振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するというもの
に過ぎず,写真も200頁の雑誌の3頁の中で使用されたにすぎず,また,小さな白黒写真であるため,
専ら上告人らの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず,不法行為法上違法であるということはできない
と判断した。

 商売でなければ使ってもいいし,商売でも少しぐらい使ってもいいということになるのであろうか。

 結局,どこまで許されるのかはっきりしないことには変わりがない。しかし,パブリシティ権について法律には規定がない。
 その意味で,最高裁がパブリシティ権侵害について一定の基準を打ち立てたことは,大きな意味があるのであろう。

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posted by 内田清隆 at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2012年01月27日

無償で行う少数派株主の追い出し

 全体の株式の3分の1以下しか有していない少数株主の権利は驚くほど弱い。
 全体の3分の2以上を有している株主は,
・株主総会の特別決議で定款変更を行い,
・「全部取得条項付種類株式」(長い・・)に株式を変更し,
・少数株主の有する株式を強制的に「無償で」取得することが可能である。
 多数派は,いつでも少数株主を追い出すことができるのだ。

 もちろん「無償なんて納得できるか!」という株主は,裁判所に公正な価格を決めてもらい(会社法172条2項),その価格を受け取ることができる。
 しかし,もらえるのはお金だけであり,株式が無効化されることに変わりはない。
 しかも,その価格の決め方については明確なルールもない。会社が配当を中止し,決算書上で債務超過にしてしまえば,おそらくは,「無償」が公正な価格ということになるだろう。
 かくして少数株主は,一銭も受け取ることなく,株式だけを奪われてしまうことになるのである。

 全部取得条項付種類株式が導入された平成18年の会社法改正直後のことである。
 ある会社で創業社長が亡くなり,長男が社長になった。
 しかし,長男が所有していた株式は30%に過ぎなかった。そのため,他の株主であった相続人や従業員が結託し,長男を社長の座から追い落としたということがあった。
 さらに,その後すぐに,全部取得条項付種類株式を利用し,長男の所有している株式すべてが無償で会社に取得されてしまった。
 債務超過に近い会社であったため無償であっても仕方がないということで争わないことにしたのだが,所有する株式が一方的に無償で奪われてしまうという事実に何とも理不尽さを感じたものである。

 少数株主のもっている株式などほとんど価値がない,そう思うしかないのであろう。

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posted by 内田清隆 at 11:51| Comment(1) | TrackBack(0) | 商取引法

2012年01月20日

裁判で勝つと弁護士費用は相手が払うの?

 「裁判で勝ったなら,自分の弁護士費用を相手に払ってもらえないのか?」という質問をよく受ける。

 残念ながら日本では,交通事故の被害者など特別の場合を除いて,弁護士費用を相手方に請求することはできない。
 そこで,そう答えると「おかしい!」と言われる方は少なくないし,私自身も「おかしい」と思うことも少なくない。
 裁判で相手が悪いことが確定しても弁護士費用は自分が負担しないといけない,確かに正義にかなわない場合はある。

 しかしである。立ち読みした本のデータなので不確かであるが,
「あなたが裁判で勝った場合,あなたの弁護士費用は相手方が払うべきだと思いますか?」
 という質問に対して「はい」が8割であったらしい。
 ところがである,
「あなたが裁判で負けた場合,相手方の弁護士費用はあなたが払うべきだと思いますか?」
 という質問に対しては
 「はい」はわずか4割
であったらしい。

 負けた場合は相手の弁護士費用は負担したくないが,勝った場合は自分の弁護士費用を負担させたい。今さらながらであるが,人間とは実に自己中心的なものである。

 そう思うと,「裁判で負けた場合,相手方の弁護士費用も払わないといけないのか?」という質問を受けることは非常に少ない。
 
 人間とは,自分に都合が良いことばかり想像するものらしい。「自己中心的で都合が良い」といえばマイナスイメージだが,実は「自分を大切にしてポジティブに考える」ということ。それでいいし,人類は,いつまでも,そういう生き物なのだろう。

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2012年01月11日

重すぎる検索ワード

昨年12月31日の当ブログの検索ワードランキング

1 自殺
2 懲戒解雇の取り消し 公務執行妨害
3 私製手形
4 解雇の仕方
5 倒産しそうな会社
6 弁護士 金沢
7 懲戒解雇
8 給与減額の理由
9 商法511条
10 勤務中 飲酒 解雇理由

大晦日の検索に重いキーワードがならんでいることに,衝撃を受けました。

職業がら仕方がないとはいえ,つらいものがあります。

去年のことは去年で終わり,新たな1年になりますように。


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2012年01月07日

「食べログやらせ」は違法か?

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

 昨日テレビを見ていたら,モザイクをかけられたある飲食店のオーナーが
「罪の意識が薄く,ついやってしまった」
と業者に頼んで食べログにやらせ記事を書いてもらったことを反省していた。

 しかし,やらせ記事を書いてもらうことは基本的に法的には「罪」にはならず,罪の意識は薄くて間違っていない。

 最近はやりのいわゆる「ステマ」=ステルスマーケティングの違法性の問題である。

 消費者庁は,「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」として,
ただし、商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。
という見解を示している。

 回りくどい言い方だが,要するに
 基本的には違法でないが,やりすぎたら違法になるかもしれないという程度なのである。

 米国では
、連邦取引委員会(FTC)が2009年12月に「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」 を公表し 
 広告主からブロガーに対して商品・サービスの無償での提供や記事掲載への対価の支払いがなされた場合、FTC法第5条で違法とされる「欺瞞的な行為又は慣行」として広告主は同法に基づく法的責任を負う
 との基本的に違法であるという解釈指針を示しているらしい。
 イギリスでもネットでやらせ記事に対して法的規制が行われ始めたと聞く。
  
 日本でも,何らかの法的規制は必要なのではないだろうか。サクラなんて昔からある話ではある。しかし,ネットを通じたサクラの影響力は昔のサクラとは比較できない。

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posted by 内田清隆 at 11:13| Comment(2) | TrackBack(0) | IT法