2021年05月13日

 新型コロナを理由に賃料を支払わなくてもよいか

「新型コロナでお客さんが来ないから家賃が払えない。払わないとダメなのか」という問題がよく生じている。

 ニューヨーク連邦裁判所において,その点について大規模に争われた訴訟(The Gap Inc. v. Ponte Gadea New York, LLC)で重要な決定が出された。
https://casetext.com/case/gap-inc-v-ponte-gadea-ny-llc

原告は,「GAP」や「Banana Republic」といったアメリカ最大の衣料品小売店を営むギャップ社。ニューヨークマンハッタンの超一等地に店舗を構えていたが,新型コロナ及びそれに伴う政府規制により家賃が払えなくなったとして,契約終了の確認を求めた裁判である。問題となる賃料は1億円を超えるらしい。

ギャップ社は
@賃貸借契約における「災害casualtyにより利用不能になった場合は解除できる」という規定が適用できる。
A予見不能の不可抗力により営業が不可能になった場合には契約を解除できる。
など様々な主張をしたが,裁判所は,同主張を却下した。

その理由は,大雑把にいえば,
@「災害」とは,火事や地震のように物理的な被害を生じさせる1回的なできごとをいうので本件はそれに当たらない
A予見不能の不可抗力で契約目的が全く達せなくなった場合は契約を解除できるが,不要不急のビジネスの停止命令は予見できるし,車まで商品を手渡す方式(curbside pick up)で経営はできるので,契約目的が全く達せなくなったとはいえない
コロナを理由に・・・.jpg
といったものだ。
ニューヨークの惨状を考えると,賃借人にかなり厳しい判断に思える。


では,日本法ではどう考えられるのであろう。

考え方の基本は同じであろう。
上記裁判例における@もそうだが,基本となるのは契約規定の解釈である。
例えば「新しい伝染病で売上が激減した場合は賃料を支払わないでいい」という規定があれば,賃料を支払わなくてよくなるのは当然のことだ。
しかし,困ったことに,そのような明確な特約は普通は存在しない。

また,日本法でも不可抗力により休業が余儀なくされ,貸す債務が履行不能になれば,賃料を支払わなくてよいとされている。
しかし,どのような場合であれば不可抗力による履行不能といえるのかははっきりしない。

欧米では新型コロナにおける賃料問題に関してだけでも膨大な裁判例が公開されている。そのため,その裁判例を参考にすれば,契約規定をどう解釈すべきか,どのような場合新型コロナを不可抗力といえるかについて,ある程度予想がつく。
しかし,欧米と比較して新型コロナがそこまで流行していないせいか,日本人の訴訟を嫌うメンタリティが原因かはわからないが,日本では同様の裁判例がほとんどない。

そのため,「新型コロナを理由に賃料を支払わなくてもよいか?」という質問に対しては,多くの場合「何とも言えない」と回答するしかなさそうである。


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2021年04月12日

小室圭さんの説明文書の非凡さと弁護士の書く文書

「弁護士が書く文書はだめだって批判されているよ」と妻に言われた。
眞子さまと婚約したと報道されている小室圭さんが発表した家族の金銭トラブルに関して説明する文書のことらしい。
https://static.tokyo-np.co.jp/pdf/article/be3a3b78d655997547c8ba44e242b2d2.pdf

私はそのトラブルについては何も知らないのだが,どんな「文書」なのかが気になり,さっと読んでみた。

驚いた。
まず,気づくのは尋常でない文字のぎっしり感である。
裁判所が標準とする文書は37文字×27行=999文字である。ところが,小室さんの文書は,46行×42文字=1932文字であり,約2倍の文字を1ページに詰め込んできているのである。
これは弁護士が普通に書く常識的な文書ではない。

スタイルも極めて独自である。
冒頭に要約部分として「文書の概要」が4ページ,本文が7ページ,脚注部分が13ページという構成である。
本文が7ページしかないのに,要約が4ページというのは尋常ではない。
30ページを超えるような文書の場合,我々も裁判所から要約をつけるように言われることがある。しかし,7ページの文書には要約はつけないのが普通だ。

そして,何よりも異様なのが,本文を超える脚注の多さである。
確かにアメリカの法曹界では脚注が多いほど価値があるとよく言われ,本文と同じくらい脚注があることも少なくはない。
しかし,そうであっても脚注が本文よりずっと長いというのは通常はあり得ない。
               
さらに驚くのが,普通は脚注は文字を小さくし行間を狭くするのだが,小室さんの文書では脚注部分で逆に行間を広げていることだ(本文の行数46行,脚注の行数32行)。
本文より脚注を読みやすくするレイアウトというのも,かなり非凡な発想だ。


トラブルの内容や小室さんが置かれている状況を知らないため,何を目的として非凡なスタイルで文書を作成したのかは分からない。しかし,小室さんがただ者でないことだけは間違いないようだ。


小室さんは,2019年に社会起業家のためのクラウドファンディングに関する法規制についての論文を米国の法律専門誌『NY Business Law Journal』に発表した。
https://onl.tw/tCcwy1d の68頁以下

その末尾にはこのような記載がある。
「信頼は目でみることはできません。しかし,信頼の喪失は致命的であることを常に留意しなければいけません・・・」
果たして小室さんはこの文書で信頼を得ることができるのであろうか。
非凡な人間が,非凡であるというだけの理由で排斥されることはあって欲しくないものだ。


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2021年03月20日

「反差別」社会〜米国の現状と日本の未来

進む「反差別」
人種差別に反対するBLM運動がアメリカで活発になっていますが,アメリカでは,性差別,人種差別等あらゆる差別に対して強い社会的非難が向けられています。
そういえば,カリフォルニア州の弁護士資格を得る際に,まず最初に「差別を行わない」という宣誓をさせられ,人間がいかに無意識的に偏見をもっているかという内容の差別についての研修を受講しなければいけませんでした。
トランプ元大統領の強い支持基盤は,「差別,差別って細かいことうるせー!」「黒人や女性が優遇されて逆に俺たちが差別されているぞ!」と思う白人男性達でしたが,選挙で勝ったのはバイデン大統領でした。そう思うと,この反差別の潮流は今後も進むことでしょう。

差別の経済リスク
日本でも,反暴力団運動が進み,暴力団との関係があるとされただけで,突然,銀行から取引を停止されるというリスクが高まっています。
同じようにアメリカでは,「差別的」であると会社がみなされることは致命的なリスクになり得ます。そのため,アメリカの大手企業は,「人種差別・男女差別を行わない」,「差別を行う企業とは取引をしない」という条項を契約に盛り込み,実際に差別的と疑われる企業との取引を速やかに停止しています。

森会長辞任に見る日本の未来
森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会元会長は,女性差別的な発言をしたとして辞任しました。印象的であったのは,国内よりも,アメリカのマスコミによる強い批判を受けて,辞任に追い込まれたという点でした。
今後,アメリカの大手企業と取引をする日本企業は明確に反差別の姿勢を打ち出す必要がでてくるでしょう。
そして,そのような日本企業と取引をする企業も同様の反差別の姿勢を打ち出す必要がでてきますから,アメリカ企業と取引をしない日本企業もひとごとではなくなります。

差別主義との批判を受ければ,経済社会からの撤退に追い込まれる・・・怖い世の中になりそうです。


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2021年01月07日

明けましておめでとうございます。

2020年,世界は,新型コロナウイルスの大流行という未曽有の事態に
見舞われましたが,何が起ころうと時は歩みを止めないもので,2021年という新しい年を迎えることになりました。

「大学」(薪を背負った二宮金次郎が読んでいる本)に,私の好きな「日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり」という言葉があります。
天地(自然)は,決してとどまることを知らず,日々に変化していきます。
我々人間も,立ち止まることなく,天地とともに歩みを進めていきたいものです。

昨年末,当事務所は,ホームページをリニューアルいたしました。
http://www.uchida-houritsu.com/
これを機に,改めて基本に立ち返り,高度・上質な法的サービスを提供できるよう,日々進化していく所存です。
今年も何卒よろしくお願い申し上げます。


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2020年11月21日

日本におけるブラックライブズマター

米国では,ブラックライブズマターとして,人種差別に反対するデモや暴動が継続して起こっている。その発端は,警察官による黒人への不当な対応にある。
私も,以前アメリカで夜中に車を運転していた際に,ピストルを手にした複数の警察官に車から降ろされて,「フリーズ」と叫ばれながら,壁に手を付けさせられ,身体検査をされたことがあった。米国警察官の対応の問題をテレビで見聞きするたびに,その時の異常な恐怖感を思い出す。

日本では無縁の話だと思っていたが,金沢市在住のある白人から似たような話を聞いた。
夜間に自転車で普通に走っていたら,突然進行方向の歩道にパトカーが乗り上げて停車し,降りてきた警察官に取り囲まれて職務質問をされたという話だ。
自分は多くの日本人と肌の色が違うから理由もなく職務質問される,いきなり警察官に囲まれて逃げられないようにして質問されるのは非常な恐怖であると怒っていた。

また,こうも言っていた。「日本では逮捕されたら保釈はされない。証拠を捏造されて裁判されることになる。裁判されたら無罪になることはない。外国人だと特にそうだと聞いた。恐ろしい国だ」と。
私は,さすがにそれは言い過ぎだと反論しだが,一面真実を現わしていることも確かである。
少なくとも,多くの外国人など見た目が少数派の日本在住者がそのように日本をとらえていることは確かだ。

確かに,アメリカとは異なり,日本で警察官が外国人を殺したという話はほとんど聞かない。そう考えれば,日本はアメリカよりましとも思える。
しかし,アメリカは極めて多数の異人種がまじりあっている国である。そのため,黒人といってもアジア人といっても膨大な人数がいて,その声は大きい。
一方,日本では,アジア系,しかもヤマト民族が圧倒的多数を占め,少数人種の声は小さい。
そう考えると,意外に日本の闇はアメリカよりも深いのかもしれないと思った。

生まれた所や皮膚や目の色で
いったいこの僕の何が分かるというのだろう。 
 ・・・こんなはずじゃなかっただろ? 
歴史が僕を問いつめる。
まぶしいほど青い空の真下で
 (THE BLUE HEARTS 「青空」)


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2020年11月03日

誠実協議条項の新たな可能性

誠実協議条項といわれるものが契約書に入れられる場合は多い。
「本契約の解釈について疑義が生じた場合は、甲乙は、本契約の趣旨に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。」といった条項である。

以前「誠実協議条項があるのに,突然訴訟をされた!これは同条項違反として損害賠償請求できないか?」と相談を受けたことがある。
結論からいうと難しい。
というのも誠実協議条項については,当事者の心構えを示したものに過ぎず,法的な義務を発生させないというのが一般的な考え方だからである。

私も当然のようにそのような考え方をしていたのだが,よくよく考えてみれば,これはおかしいと思えてきた。
契約書は本来,心構えを示すために作られるものではなく,法的な義務を明確にさせるために作られるものである。
また,訴訟といった手段にすぐに訴えることを禁止し,まずは誠実に協議することを義務付けることは決しておかしなことではない。

このようなことを思ったきっかけは,極めて精微な誠実協議条項を目にする機会があったためである。
その条項では大雑把にいうと
・紛争が生じた場合にはまず話合いの機会をもちたいと担当が書面を送ること
・同書面が送られた場合には他方は話合いの場に立つ義務があること
・話合い開始後30日以内に,双方は関係証拠を相手に開示すること
・上記書面を送って30日以内に回答がない場合には調停を申し立てることができること
・その場合の調停に要する費用は回答しなかった側の負担になること
・同調停が成立しなかった場合に初めて訴訟を提起できること
など,誠実に協議するとはどのような手続を踏まなければいけないか,それに違反した場合にはどのような罰則があるのかが詳細に記載されていた。

 このような誠実協議条項であれば,法的効力が否定されることはないであろう。

 民事訴訟は,正確さを求めるためスピード感に欠き,またコストもかかる手続である。
 そのため,もちろんケースバイケースであるが,紛争解決方法として最善であるとはいえない場合が多い。

 それを考えれば,契約書作成段階において,誠実協議義務は法的に意味がないとして無視するのではなく,逆に法的に意味のあるものに作り替えていく努力が必要なのかもしれない。

 いずれにしても,契約書作成において,いつもある一般条項は当然のものとして読み飛ばしがちだが,その意味を考えることを忘れないようにしたい。


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2020年08月19日

小池百合子のキャッチ―なフレーズ

小池百合子東京都知事のキャッチフレーズ作りのうまさには感心する。
新型コロナに関し「不要不急」「密です」「ステイホーム」「ウィズコロナ」「東京アラート」・・・,次から次へとキャッチ―な言葉を流行らせてしまう。

いったいどこにその秘密があるのか考えてみたが,いずれも,ちょっとイラッとさせる,思わず突っ込みたくなってしまう言葉なのである。

「ステイホーム」「ウィズコロナ」「東京アラート」などは,日本語でいけるところを意味なくカタカナにすることで,「何でカタカナなの?日本語で言えよ!」と思わず突っ込みたくなる。
昔から横文字を使うことでカッコつけるということはあったが,カッコいいというより,無意味にカタカタ語を挿入している。
ルー大柴の「藪からスティック」「寝耳にウォーター」と同じ路線である。

「不要不急」「密」に関しては,まっとうな日本語だが,普通は書き言葉で余り口語では使わない。
「いつまでも不要不急なことしていないで,勉強しなさい!」と子供を怒るお母さんはいない。「昨日遊園地に行ったら,とても密でした」などとは少なくともコロナ前は口にする人はいなかっただろう。
そんな口語ではあまり使われない言葉をあえてカジュアルに口に出すので,「何それ?」と思わず突っ込みたくなるのだろう。
最近あまりみないがトータルテンボスという漫才コンビが「忍びねえなあ〜」「やんごとねえ!」「存じねえよ!」といった突っ込みで笑いをとっていたが,それと同じ路線である。

総じて,分かるようで分からない謎めいた言葉を使うとキャッチーになるのかもしれない。
「繁華街」ではなく「夜の街」,「密集」ではなく「密」,「家にいる」ではなく「ステイホーム」と。

これらのルールで「夏休み」を少しキャッチーに変えようと試みた。
「炎節ホリデー」「夏サバティカル」「サマー静養」「エスィティバルバケーション」・・・ルールだけでなく,センスがないとなかなか難しいようだ。

キャッチフレーズだけで中身がなければ仕方がないとはいえ,人を引き付ける言葉の使い方は身に付けたいものだ。



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2020年06月27日

アメリカ社会の深い闇

新型コロナが日本の100倍流行しているアメリカで,マスクもろくにせずに,各地でデモや暴動が起きているのはどうしてなのだろう? 
その背景を調べていると,Netifixが無料公開している「憲法第13条」というドキュメンタリーに遭遇しました。
https://youtu.be/krfcq5pF8u8

「アメリカでは,受刑者の労働力で利益を得ている企業が政府に圧力を加えることで受刑者が急増。今では,黒人男性の3人に1人が生涯に1度は刑務所に入れられ強制労働させられており,奴隷制と同じ状態になっている。」
「アメリカでは,犯罪のほとんどは司法取引で終わっており,正式裁判になるのはわずか3%。その大きな理由はお金の問題。多くの貧しい黒人が無罪であっても有罪答弁をしている。」
といった内容でした。

正直,この番組がどこまで信用できるのかは分かりません。
しかし,普通のテレビドラマやハリウッド映画で映されるのは,アメリカの光の部分ばかりであって,その背後には,目を背けたくなるような闇の部分があることは事実なのでしょう。
そうでないと,アメリカでなぜ繰り返し暴動が起こっているのか説明が付きません。

弁護士の仕事をしていると,自分のこんなにも近くに,こんなにも深い闇があったのか・・・と驚かされることが何度かありました。
そう考えると,深い闇は,アメリカにではなく,すぐそこにもあるのかもしれません。


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2020年01月06日

民事執行法の改正

民法改正の陰に隠れて,ほとんどニュースにもなっていませんが,4月から改正民事執行法が施行されます。

裁判で勝つと,「判決書」がもらえて,相手方の財産を差し押さえることが可能です。しかしながら,裁判所は相手方の財産がどこにあるのか探すのには協力してくれません。そのため,相手方の財産が見つからず,裁判で勝ったにもかかわらず,結局は泣き寝入りすることも少なくありませんでした。

裁判所に相手方を呼び出し,財産状況を開示させるという制度はあったのですが,開示しなかった場合でも最大で30万円の科料の制裁を受けるだけのため,実質的には機能していませんでした。

そこで,新しい民事執行では,支払命令を受けた当事者は,裁判所に対して財産状況を正確に述べないと最大6ヶ月の懲役になるという厳しい罰則制度ができました。
また,裁判所が金融機関や市町村に,預貯金の有無や給与の支払先等の情報を提供するよう命令するという制度もできました。

法律がそうだったのだから仕方ありませんが,私はいつも,判決を出してその後は放置という裁判所のあり方に疑問を持ってきました。いかに,正しい判決を出したとしても,その判決を現実にする手段がなければ,絵に描いた餅に過ぎません。
正しい裁判が行われることは重要ですが,その裁判が無視されてしまっては,決して正義は実現されません。

この法改正をきっかけに,少しでも裁判制度がより正義の実現に寄与できたらと願うばかりです。


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2019年05月29日

カリフォルニア州司法試験に合格

2019年2月に行われたカリフォルニア州司法試験bar examに合格しました。

今思うと,自分自身の甘過ぎる考えにあきれますが,そんなには難しくない試験だという噂を聞いたことから「日本とアメリカといえども,十数年も実際に弁護士をしている自分が学生に負けるはずはないであろう」と妙な自信をもってしまい勉強を始めました。

ところが,実際に勉強を始めてみると余りに難しく,あっという間に自信は粉々に散り「変な挑戦しなければよかったか…」と後悔と反省の毎日でした。

よくよく考えてみれば3年間ロースクールで勉強したアメリカ人でもそう簡単ではない試験,日本人の私の英語力で受験するとすれば相当大変なのは当然のことでした。
それなりに自信のあった英語力も,アメリカ人と競えば,中学生レベル・・・もしかすると小学生レベルかもしれない・・・と痛感させられました。

そうはいっても,ある程度勉強を進めてしまったため,あきらめるのも難しい決断となってしまい,時間が過ぎ,ここまできたら合格したいと思うようになり,想定を大幅に上回る勉強を続けている状況となっていました。

45歳も過ぎて挑戦させてもらえただけでも幸運なのですが,結果的に合格できたことは,何とまあ幸運なのかと,非常に嬉しく思っています。

果たして,この受験で得た知識がどこまで役に立つのかという問題もあるのですが,せっかくですから,少しでも皆様のお役に立てることができたらと思っております。いや立てたい,立てねばと思っております。

http://ca-barexam.sblo.jp/ 受験生向けにカリフォルニア州司法試験合格体験記を書いています。


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2018年08月26日

島津斉彬の富国強兵

内田清隆の「隆」は西郷隆盛の「隆」です・・・と説明することが多かったため,西郷隆盛には何となく昔から親近感を持っていた。

それもあって,大河ドラマ「西郷どん」を見始めたのだが,西郷以上に心惹かれたのが渡辺謙演じる,島津斉彬であった。

黒船来航以前に西欧列強の圧迫により必ずや乱世となることを予見し,西欧技術を積極的に取り入れ,反射炉の建設を軌道に乗せ,マントをまとって葡萄酒を飲む姿は何ともカッコよかった。

明治維新を引っ張る人物がどうして鹿児島にあのように多く出たのかと思ったことはあったが,このままではいけないと思った斉彬が,教育を重視し身分にとらわれずに人材を育成したことによるのだろう。

乱世が間近に迫れば,「富国強兵」をいうことは誰でもできる。
しかし,誰も乱世を予想していないなかで,誰よりも早く,現実的な危機感をもって「富国強兵」を実行することは並大抵のことではない。

私も,せめて,現状の平和が続くと安易に考えず,危機感を失わず,固定観念にとらわれずに積極的に新しいものを取り入れる精神を見習っていきたい。


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2018年04月24日

「言ったもん勝ち」のアメリカ的発想

英米法を少し本格的に勉強している。

その中で、どうしても慣れないのが「間違っていても何でもいいから言わないとダメ!」というアメリカ流の考え方だ。
米国司法試験では、余計なことを書いても、間違ったことを書いても減点されることはないそうだ。
一方で、言うべきことを書かないと大きく減点されるため、ともかく関係がありそうなことは何でも書いておくというのが基本になる。
とはいえ、なかなか間違っているかもしれないことをともかく書いてみるということはできないものだ。

そういえば以前米国の弁護士から、法廷で見た新人弁護士の面白い行動を聞いたことがある。
証人尋問では「異議あり」と述べて「誘導尋問です」と異議の理由を示すのだが、異議の理由をすぐに示すのは難しい。
そこで、新人弁護士は「異議あり」「誘導,重複,侮辱的,論争的,伝聞,誤導・・・尋問のいずれかです」とすべての理由を挙げていたというのである。
「そんな人いるかな〜」と笑って聞いていたのだが、アメリカ的にはそれほどおかしくないのかもしれない。
「間違ってもいい」「言わないよりは言った方がいい」、だから可能性のあることは全部言うという発想がアメリカ的なのだ。

思えば幼い頃から、「無駄口を叩くな」「余計ないことを言うな」と教育され、口に出さなくても理解し合える関係が理想の関係だと教わって生きてきた気がする。
しかし、「言わなくても当然分かるだろ!」ということが伝わっておらずに、紛争や裁判になるケースは多い。確かに口に出さずに理解し合うのは難しい。
そう思うと、アメリカ的な、間違っているかもしれないけれども関係するかもしれないことは、何でもともかく言っておくという姿勢にも一理あるのかもしれない。

言い過ぎればうっとうしくなるが、「言わなくても分かるだろう」が原因の誤解を生じさせないよう、少しはアメリカ的発想を身につけていきたいものだ。


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2018年01月21日

現代将棋界と「知のオープン化」の果て 


特許を取得するためには、新規性とともに、産業上の利用可能性が必要である。
そのため,いかに独創的であっても,産業に利用できない将棋の戦法について特許を取ることはできない。

特許取得が可能であれば,あの革命的な戦法『藤井システム』の創設者藤井猛九段は多大な利益をあげていただろう。
しかしながら,実際には,藤井システムで一番勝ったのは羽生善治竜王であり,彼が一番利益をあげたのかもしれない。


2014年米国電気自動車の大手テスラモーターズは、自らの特許を広く一般に無料で利用させるというオープン化宣言をした。
すると2015年、トヨタ自動車も自社が持つ燃料電池車の関連特許約5680件の無償提供を発表し、さらにはパナソニックも自社が持つIOT関連特許などすべてを無償提供すると発表した。
特許の世界のオープン化である。 

自社の技術をオープンにすることで、市場への他社の参入を誘導し,自社技術を世界標準仕様,デファクトスタンダードにしようという企みはもちろんあるだろう。
しかしそればかりでなく、LINUXが明示するように、知を共有することで共同的創造作業が可能となり、より技術を発展させ人類を幸せに導くという利他的な思想もあるのであろう。

この知のオープン化の果てにはどんな世界が待つのであろう。

知のオープン化をいち早く行ったのが将棋界だ。
エポックメイキングとなったのは,1992年、名著「羽生の頭脳」の発売であった。
羽生竜王は,最先端の研究について惜しむことなく公開した。
そのため,同書はそれまでの将棋本とは異なり,プロ棋士が参考にする本となった。「羽生の頭脳」を読んでいないプロ棋士が同書のとおりに負けるといった事態を引き起こした。

以降,研究内容を隠さないのが将棋プロの主流へと変わり、知のオープン化が進むことになった。
孤独な研究を続けるプロ棋士は少数派となり,多くのプロ棋士は自らの研究内容を惜しみなく公開しつつ,共同研究をするようになったのだ。

近年の将棋界は,いわばイノベーションの嵐が吹き荒れている。
以前は,矢倉91手組を筆頭に,長手数,前例をなぞることが多かった。前例の上に改良手を加えるという研究にウェイトがおかれていた。
ところが,最近では,3手目から,5手目から新手が飛び出すことも珍しくない。
見たこともない戦型が毎週のように飛び出す。
「狭く深く」から「広く浅く」へ。「改良」から「革新」へと変わったわけだ。

知がオープン化され,共同研究が進むにつれて,穴は一人で掘る時代でなくなった。
人気のある穴には,次から次へと人がやってきて鉱脈を探す。しかし、そこで新鉱脈を見つけることは競争が激し過ぎて大変だし,見つけたとしても得られる利益は少ない。それだったら,誰も手を付けていない大地を掘った方がいい・・・そんな理由で将棋界に変革が生じたように思える。

藤井4段の29連勝、加藤一二三引退、羽生竜王の国民栄誉賞受賞と将棋界が熱い。これは、知のオープン化にともなう技術革新の成果といえるのではないだろうか。

産業界においても,このまま知のオープン化が進めば,次から次へと技術革新が進み,見たこともないアイディアが次々と現れるのか。楽しみである。


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2017年12月07日

色彩のみからなる商標

今年4月から「音」や「色」だけで商標登録することが可能になった。
しかし,登録のハードルはなかなか高いようだ。

この記事を書いた12月6日の段階で,色彩のみからなる商標が登録されたのは,トンボ鉛筆とセブンイレブンの2つに限られるようだ。

トンボ.jpg


セブンイレブン.jpg

「色彩のみからなる商標」は,基本として商標登録はできず,その色彩が使用された結果,誰の商品・役務であるかが分かるようになること,すなわち「使用による識別力」が必要とされている。

トンボ鉛筆もセブンイレブンも,相当有名なマークであり,確かに,強い識別力をもっている。
ここまで強い識別力がないと登録できないのだとすれば,かなり厳しいハードルといえよう。

実際に特許庁のホームページによると,少なくとも282件の申請があったものの,前述のとおり登録にたどり着いたものは,たったの2件である。
もっとも厳しいといわれている,単色により特定する方法での商標登録は0件だ。https://www2.j-platpat.inpit.go.jp/syutsugan/TM_AREA_A.cgi?0&1512633844484

「MONO」のブランド名で知られるトンボ鉛筆にしても,当初,文房具全体での登録を目指していたが,最終的に「消しゴム」に絞ったうえで登録されることになったようだ。

実は私も,当事務所のイメージカラーを商標登録をしたいと夢見ていたが,これではとても登録は不可能だと思った。

どんな運用になるのだろうかと思っていたが,かなりの大企業だけに意味のある制度であり,MONOやセブンイレブンのデザインをうっかり使ってしまうこともなさそうなので,今のところあまり気にする必要はなさそうだ。


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2017年10月20日

No.1

随分前であるが,公正取引委員会は,
「No.1表示に関する実態調査報告書」
http://www.yakujihou.com/content/pdf/2-D2.pdf
というものを出したことがある。

「顧客満足No.1」「No.1法律事務所」「地域No.1」・・・
我々が目にする広告には「No.1」という表示がよく使われている。
これが不当な有利性・優位性の表示として消費者を誤信させ,景表法上の問題を発生させていないかについて調査したものである。

結論としては,No.1表示が不当表示とならないためには,
@No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
A調査結果を正確かつ適正に引用していること
の両方の要件を満たす必要がある。

「顧客満足度No.1」といった表示は多いが,この場合の@客観的な調査としては,アンケートで顧客に意見を聞く必要が出てくる。
その際には,
・調査対象を自社の関係者に限らずに無作為に抽出する
・統計的客観性を確保できるだけの人数を準備する
・自社に有利になるような調査項目を設定しない
などに配慮する必要がある。
 古い報告書だが,現在でも同じことは当てはまるであろう。

余談であるが,同調査のもとになったアンケート調査は,公正取引委員会の消費者モニター(消費者取引適正化推進員194名)を調査対象者としている。
つまり,調査対象者は自組織の関係者に限っており,無作為に抽出していないのである。

本調査報告書の意見に従えば,同アンケート調査は,客観的な調査とはいえないダメな調査ということになるのだが・・・。


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posted by 内田清隆 at 11:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 商取引法