2021年09月14日

注目が集まる意匠権〜製品は「見た目」が9割

新規デザインを保護する権利である意匠権(design patent)が近年注目されているという話をセミナーで聞いた。
私は今まで,意匠権をめぐる紛争だけには関わったことがなかったので,意匠権が注目されているというのに少し驚いた。

調べてみると,確かにアメリカでは,2010年から2020年にかけて,意匠権の認可件数が2万2799件→3万4877件と約1.5倍に急増している。 
https://www.uspto.gov/web/offices/ac/ido/oeip/taf/us_stat.htm
  
一方,日本では,同じ期間に意匠権の登録件数は2万7438件→2万5873件と逆に若干減少していた。しかし,特許権の登録件数が22万2693件→17万6933件と大幅に減少していることと比較すれば,日本でも意匠権は少しは注目を集めているのかもしれない。
file:///C:/Users/%E5%86%85%E7%94%B0/AppData/Local/Temp/01-03-2.pdf

https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/syutugan_toukei_sokuho/document/index/202103_sokuho.pdf 


意匠権が注目されたきっかけは,例のアップル対サムスンの訴訟であるという。
私もブログ
記事1http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/48328583.html
記事2http://uchida-houritsu.sblo.jp/article/57797121.html
に書いていたが,2011年から世界中で争われた両者の訴訟は,2018年まで続いた。

2018年5月24日にサンノゼの米連邦地方裁判所判決は,サムスンに約5億3900万ドル(約590億円)の支払を命じたが,うち意匠権侵害が約5億3330万ドル,特許権侵害についてはわずか532万ドルに過ぎなかった。
このように意匠権侵害で多額の損害賠償が認められる傾向は,2012年以降ずっと続いている。
この傾向を見て,「意匠権は意外に使える!」という認識が高まったというのである。

アップル対サムソンの訴訟で,意匠権侵害に多額の損害賠償が認められたのは,i-phoneが特に「見た目」にこだわった製品であったというのも理由の一つかもしれない。しかし,そもそもiPhoneが「見た目」にこだわっているのは,意匠の重要性が増しているからであろう。
また,意匠権侵害で多額の損害賠償が認められたのは,一般人が行う陪審員裁判において,見た目を比べればよいだけの意匠権侵害は,技術に関する難解な文言の解釈を必要とする特許権侵害よりも認められやすかったからであるとも言われる。
内田ブログiPhone.jpg
しかし,これも,分かりやすく・簡単な「見た目」を重要視する社会の傾向を表しているのであろう。

アメリカに比べ日本では,意匠権への注目度はまだまだ低い。
「中身」も大切だが「外見」も大切だ。中身がよければよいという思想に固執し,取り残されないようにしないといけない。


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posted by 内田清隆 at 17:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 知的財産法

2021年07月17日

現代奴隷禁止条項とSDGs条項

自らが暴力団に関与していないことを誓約し,誓約に違反した場合に契約解除や損害賠償に応じる・・・いわゆる暴排条項は,この10年の間に著しく普及した。
最近では,暴排条項のない契約書をみる方が珍しいくらいだ。

暴排条項の流行の後,この5年で急にみるようになった条項が現代奴隷禁止条項である。
主に欧米の大企業によるものであるが,取引先やその傘下に人身取引や奴隷的労働・強制労働の禁止を誓約させ,違反があれば契約解除するという条項だ。

現代奴隷というと,遠いアフリカの鉱山やカカオ農園の話で,自分たちとは関係がないイメージがあるかもしれない。しかし,グローバル化が進む現在,アフリカは遠い国ともいっていられない。
しかも,日本においても,「技能実習生」や「留学生」といった外国人を中心に,強制的な労働により搾取される「現代奴隷」が何万人もいると政府も認めているのであるから,とても他人事ではない。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsintorihiki/dai4/honbun.pdf



さらに最近みるようになった条項が,SDGs遵守条項とでもいうべきものである。
例えば,東京オリンピック委員会は,SDGs実現のためとして,取引先に求める下記の調達コードを発表した。
https://gtimg.tokyo2020.org/image/upload/production/bl54yjizbsym6v5zuu6i.pdf

同内容を要約すると,東京オリンピックのサプライヤーになるためには,
・環境を守るために省エネ,低炭素エネルギーの利用,容器包装の低減,生物多様性の保全に努め,
・人権を守るために,国際的人権基準を順守し,差別・ハラスメントを行わず,地域住民等の権利侵害を行わず,女性・障がい者・子ども・マイノリティーの権利を尊重し,
・適正な労働がなされるよう,労働者の結社の自由を守り,強制労働・児童労働に関与せず,適正な賃金を払い,長時間労働をさせず,
・適正な経済活動を行う,すなわち,贈収賄を行わず,談合・ダンピングを行わず,紛争・犯罪と関連のない原材料だけを使用し,差別的な広告を行わず,個人情報を守るシステムを整える

必要があるということだ。 

https://www.unic.or.jp/files/sdg_poster_ja_2021.pdf
SDGs.png

大雑把に要約してこれであり,実物を読むと長い!と感じてしまうが,今後はこのような長大なSDGs順守条項がどんな契約書にも入れられるようになるのかもしれない。

SDGsの重要性に異論はないし,そのためにSDGs順守条項を設けることもよいことだとは思う。
しかし,契約書チェックを業とする弁護士として,暴排条項のチェックに加えて極めて長大なSDGs条項をチェックするのは大変面倒だ・・・と消極的なことを思ってしまう。

いっそのこと法律で決めてもらえれば楽なのだが,「法律を超えて倫理を考えています!」というアピールが重要なのであるから,盛りだくさんの契約書チェックから解放される日はなかなか来なそうだ。


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posted by 内田清隆 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書作成

2021年06月17日

竜樹菩薩作「大智度論」における窃盗罪の構成要件

日本の窃盗罪(占有離脱物横領を含む)が成立するには,通説によれば,
@故意に
A他人の財物を
B自己の物にする意思をもって
C占有を取得すること
が必要である。

@から,他人の物を持ち帰ったとしても,自分の物と誤解していたのであれば窃盗罪は成立しない。
Aから,自分の財物,例えば空き地に放置されている盗まれた自分の自転車を取り返しても窃盗罪は成立しない。
また,「物」でないもの,例えばカリオストロの城のルパン3世のように他人の「心」を盗んでも窃盗罪は成立しない。
Bから,すぐに返すつもりで,少しだけ他人の自転車に乗っても窃盗罪は成立しない。
Cから,万引きするつもりで商品を手に持っても,自分のカバンに入れたり,手に持ったまま店から出るなどして「占有を取得」しなければ窃盗罪は成立しない。


日本が弥生時代又は古墳時代であった頃に,竜樹菩薩ことナーガールジュナが記したと伝わる仏教思想の百科事典「大智度論」に以下のような文章が出てきた。

他人のものだと知りながら,盗みの心を生じ,物をもとあったところから離して,その物を我に属させること,これを「盗み」と名付ける。・・・その物の存在するところからその物を離さないならば(盗みではない)。

竜樹菩薩は,
「盗み」の罪の成立要件として
@他人のものだと知りながら=故意
A他人ものを≒他人の財物を
B盗みの心をもって≒自己の物にする意思をもって
Cもとあったところから離して我に属させること ≒占有の取得
が必要であるとしたわけであるが,非常に現在と近い分析である。

「汝,盗むなかれ」は,モーゼの十戒にも出てくる世界共通の教えである。
しかし,キリスト教世界では,
神に禁ぜられている方法によって、・・・隣人のものを、自分のものにしようとする、一切の悪いこと、企てを、盗みとよばれるのです。これらに、すべての貪欲、不必要な浪費をも、加えるべきです。
この戒めはこの世の法的問題だけでなく、神に禁じられているものは全ていけない、盗みであると言います。
参考:http://www.jcu-sapporo.com/bible/20150802/
といったように宗教的・道徳的教えとすることが多いのではないかと思う。

仏教とは,直感的・非現実的な教えであるといったイメージをもっていたが,意外に分析的・現実的な思想なのかもしれない。

菩薩.jpg

それにしても,竜樹菩薩が
「自分のものだと誤解したのだから,盗みでない!」
「これは,もともと自分の物であったのだから盗みではない!」
「返すつもりであったから盗みではない!」
「いや確かに手はかけたけど,まだ持ち去っていないから盗みでない!」
と現在と同じような弁解をする人に対して,罪に当たるのかどうかを決めていたというのは,何とも不思議な気がする。
 人間とは実に変わらないものだ。


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2021年05月13日

 新型コロナを理由に賃料を支払わなくてもよいか

「新型コロナでお客さんが来ないから家賃が払えない。払わないとダメなのか」という問題がよく生じている。

 ニューヨーク連邦裁判所において,その点について大規模に争われた訴訟(The Gap Inc. v. Ponte Gadea New York, LLC)で重要な決定が出された。
https://casetext.com/case/gap-inc-v-ponte-gadea-ny-llc

原告は,「GAP」や「Banana Republic」といったアメリカ最大の衣料品小売店を営むギャップ社。ニューヨークマンハッタンの超一等地に店舗を構えていたが,新型コロナ及びそれに伴う政府規制により家賃が払えなくなったとして,契約終了の確認を求めた裁判である。問題となる賃料は1億円を超えるらしい。

ギャップ社は
@賃貸借契約における「災害casualtyにより利用不能になった場合は解除できる」という規定が適用できる。
A予見不能の不可抗力により営業が不可能になった場合には契約を解除できる。
など様々な主張をしたが,裁判所は,同主張を却下した。

その理由は,大雑把にいえば,
@「災害」とは,火事や地震のように物理的な被害を生じさせる1回的なできごとをいうので本件はそれに当たらない
A予見不能の不可抗力で契約目的が全く達せなくなった場合は契約を解除できるが,不要不急のビジネスの停止命令は予見できるし,車まで商品を手渡す方式(curbside pick up)で経営はできるので,契約目的が全く達せなくなったとはいえない
コロナを理由に・・・.jpg
といったものだ。
ニューヨークの惨状を考えると,賃借人にかなり厳しい判断に思える。


では,日本法ではどう考えられるのであろう。

考え方の基本は同じであろう。
上記裁判例における@もそうだが,基本となるのは契約規定の解釈である。
例えば「新しい伝染病で売上が激減した場合は賃料を支払わないでいい」という規定があれば,賃料を支払わなくてよくなるのは当然のことだ。
しかし,困ったことに,そのような明確な特約は普通は存在しない。

また,日本法でも不可抗力により休業が余儀なくされ,貸す債務が履行不能になれば,賃料を支払わなくてよいとされている。
しかし,どのような場合であれば不可抗力による履行不能といえるのかははっきりしない。

欧米では新型コロナにおける賃料問題に関してだけでも膨大な裁判例が公開されている。そのため,その裁判例を参考にすれば,契約規定をどう解釈すべきか,どのような場合新型コロナを不可抗力といえるかについて,ある程度予想がつく。
しかし,欧米と比較して新型コロナがそこまで流行していないせいか,日本人の訴訟を嫌うメンタリティが原因かはわからないが,日本では同様の裁判例がほとんどない。

そのため,「新型コロナを理由に賃料を支払わなくてもよいか?」という質問に対しては,多くの場合「何とも言えない」と回答するしかなさそうである。


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2021年04月12日

小室圭さんの説明文書の非凡さと弁護士の書く文書

「弁護士が書く文書はだめだって批判されているよ」と妻に言われた。
眞子さまと婚約したと報道されている小室圭さんが発表した家族の金銭トラブルに関して説明する文書のことらしい。
https://static.tokyo-np.co.jp/pdf/article/be3a3b78d655997547c8ba44e242b2d2.pdf

私はそのトラブルについては何も知らないのだが,どんな「文書」なのかが気になり,さっと読んでみた。

驚いた。
まず,気づくのは尋常でない文字のぎっしり感である。
裁判所が標準とする文書は37文字×27行=999文字である。ところが,小室さんの文書は,46行×42文字=1932文字であり,約2倍の文字を1ページに詰め込んできているのである。
これは弁護士が普通に書く常識的な文書ではない。

スタイルも極めて独自である。
冒頭に要約部分として「文書の概要」が4ページ,本文が7ページ,脚注部分が13ページという構成である。
本文が7ページしかないのに,要約が4ページというのは尋常ではない。
30ページを超えるような文書の場合,我々も裁判所から要約をつけるように言われることがある。しかし,7ページの文書には要約はつけないのが普通だ。

そして,何よりも異様なのが,本文を超える脚注の多さである。
確かにアメリカの法曹界では脚注が多いほど価値があるとよく言われ,本文と同じくらい脚注があることも少なくはない。
しかし,そうであっても脚注が本文よりずっと長いというのは通常はあり得ない。
               
さらに驚くのが,普通は脚注は文字を小さくし行間を狭くするのだが,小室さんの文書では脚注部分で逆に行間を広げていることだ(本文の行数46行,脚注の行数32行)。
本文より脚注を読みやすくするレイアウトというのも,かなり非凡な発想だ。


トラブルの内容や小室さんが置かれている状況を知らないため,何を目的として非凡なスタイルで文書を作成したのかは分からない。しかし,小室さんがただ者でないことだけは間違いないようだ。


小室さんは,2019年に社会起業家のためのクラウドファンディングに関する法規制についての論文を米国の法律専門誌『NY Business Law Journal』に発表した。
https://onl.tw/tCcwy1d の68頁以下

その末尾にはこのような記載がある。
「信頼は目でみることはできません。しかし,信頼の喪失は致命的であることを常に留意しなければいけません・・・」
果たして小室さんはこの文書で信頼を得ることができるのであろうか。
非凡な人間が,非凡であるというだけの理由で排斥されることはあって欲しくないものだ。


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2021年03月20日

「反差別」社会〜米国の現状と日本の未来

進む「反差別」
人種差別に反対するBLM運動がアメリカで活発になっていますが,アメリカでは,性差別,人種差別等あらゆる差別に対して強い社会的非難が向けられています。
そういえば,カリフォルニア州の弁護士資格を得る際に,まず最初に「差別を行わない」という宣誓をさせられ,人間がいかに無意識的に偏見をもっているかという内容の差別についての研修を受講しなければいけませんでした。
トランプ元大統領の強い支持基盤は,「差別,差別って細かいことうるせー!」「黒人や女性が優遇されて逆に俺たちが差別されているぞ!」と思う白人男性達でしたが,選挙で勝ったのはバイデン大統領でした。そう思うと,この反差別の潮流は今後も進むことでしょう。

差別の経済リスク
日本でも,反暴力団運動が進み,暴力団との関係があるとされただけで,突然,銀行から取引を停止されるというリスクが高まっています。
同じようにアメリカでは,「差別的」であると会社がみなされることは致命的なリスクになり得ます。そのため,アメリカの大手企業は,「人種差別・男女差別を行わない」,「差別を行う企業とは取引をしない」という条項を契約に盛り込み,実際に差別的と疑われる企業との取引を速やかに停止しています。

森会長辞任に見る日本の未来
森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会元会長は,女性差別的な発言をしたとして辞任しました。印象的であったのは,国内よりも,アメリカのマスコミによる強い批判を受けて,辞任に追い込まれたという点でした。
今後,アメリカの大手企業と取引をする日本企業は明確に反差別の姿勢を打ち出す必要がでてくるでしょう。
そして,そのような日本企業と取引をする企業も同様の反差別の姿勢を打ち出す必要がでてきますから,アメリカ企業と取引をしない日本企業もひとごとではなくなります。

差別主義との批判を受ければ,経済社会からの撤退に追い込まれる・・・怖い世の中になりそうです。


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2021年01月07日

明けましておめでとうございます。

2020年,世界は,新型コロナウイルスの大流行という未曽有の事態に
見舞われましたが,何が起ころうと時は歩みを止めないもので,2021年という新しい年を迎えることになりました。

「大学」(薪を背負った二宮金次郎が読んでいる本)に,私の好きな「日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり」という言葉があります。
天地(自然)は,決してとどまることを知らず,日々に変化していきます。
我々人間も,立ち止まることなく,天地とともに歩みを進めていきたいものです。

昨年末,当事務所は,ホームページをリニューアルいたしました。
http://www.uchida-houritsu.com/
これを機に,改めて基本に立ち返り,高度・上質な法的サービスを提供できるよう,日々進化していく所存です。
今年も何卒よろしくお願い申し上げます。


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2020年11月21日

日本におけるブラックライブズマター

米国では,ブラックライブズマターとして,人種差別に反対するデモや暴動が継続して起こっている。その発端は,警察官による黒人への不当な対応にある。
私も,以前アメリカで夜中に車を運転していた際に,ピストルを手にした複数の警察官に車から降ろされて,「フリーズ」と叫ばれながら,壁に手を付けさせられ,身体検査をされたことがあった。米国警察官の対応の問題をテレビで見聞きするたびに,その時の異常な恐怖感を思い出す。

日本では無縁の話だと思っていたが,金沢市在住のある白人から似たような話を聞いた。
夜間に自転車で普通に走っていたら,突然進行方向の歩道にパトカーが乗り上げて停車し,降りてきた警察官に取り囲まれて職務質問をされたという話だ。
自分は多くの日本人と肌の色が違うから理由もなく職務質問される,いきなり警察官に囲まれて逃げられないようにして質問されるのは非常な恐怖であると怒っていた。

また,こうも言っていた。「日本では逮捕されたら保釈はされない。証拠を捏造されて裁判されることになる。裁判されたら無罪になることはない。外国人だと特にそうだと聞いた。恐ろしい国だ」と。
私は,さすがにそれは言い過ぎだと反論しだが,一面真実を現わしていることも確かである。
少なくとも,多くの外国人など見た目が少数派の日本在住者がそのように日本をとらえていることは確かだ。

確かに,アメリカとは異なり,日本で警察官が外国人を殺したという話はほとんど聞かない。そう考えれば,日本はアメリカよりましとも思える。
しかし,アメリカは極めて多数の異人種がまじりあっている国である。そのため,黒人といってもアジア人といっても膨大な人数がいて,その声は大きい。
一方,日本では,アジア系,しかもヤマト民族が圧倒的多数を占め,少数人種の声は小さい。
そう考えると,意外に日本の闇はアメリカよりも深いのかもしれないと思った。

生まれた所や皮膚や目の色で
いったいこの僕の何が分かるというのだろう。 
 ・・・こんなはずじゃなかっただろ? 
歴史が僕を問いつめる。
まぶしいほど青い空の真下で
 (THE BLUE HEARTS 「青空」)


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2020年11月03日

誠実協議条項の新たな可能性

誠実協議条項といわれるものが契約書に入れられる場合は多い。
「本契約の解釈について疑義が生じた場合は、甲乙は、本契約の趣旨に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。」といった条項である。

以前「誠実協議条項があるのに,突然訴訟をされた!これは同条項違反として損害賠償請求できないか?」と相談を受けたことがある。
結論からいうと難しい。
というのも誠実協議条項については,当事者の心構えを示したものに過ぎず,法的な義務を発生させないというのが一般的な考え方だからである。

私も当然のようにそのような考え方をしていたのだが,よくよく考えてみれば,これはおかしいと思えてきた。
契約書は本来,心構えを示すために作られるものではなく,法的な義務を明確にさせるために作られるものである。
また,訴訟といった手段にすぐに訴えることを禁止し,まずは誠実に協議することを義務付けることは決しておかしなことではない。

このようなことを思ったきっかけは,極めて精微な誠実協議条項を目にする機会があったためである。
その条項では大雑把にいうと
・紛争が生じた場合にはまず話合いの機会をもちたいと担当が書面を送ること
・同書面が送られた場合には他方は話合いの場に立つ義務があること
・話合い開始後30日以内に,双方は関係証拠を相手に開示すること
・上記書面を送って30日以内に回答がない場合には調停を申し立てることができること
・その場合の調停に要する費用は回答しなかった側の負担になること
・同調停が成立しなかった場合に初めて訴訟を提起できること
など,誠実に協議するとはどのような手続を踏まなければいけないか,それに違反した場合にはどのような罰則があるのかが詳細に記載されていた。

 このような誠実協議条項であれば,法的効力が否定されることはないであろう。

 民事訴訟は,正確さを求めるためスピード感に欠き,またコストもかかる手続である。
 そのため,もちろんケースバイケースであるが,紛争解決方法として最善であるとはいえない場合が多い。

 それを考えれば,契約書作成段階において,誠実協議義務は法的に意味がないとして無視するのではなく,逆に法的に意味のあるものに作り替えていく努力が必要なのかもしれない。

 いずれにしても,契約書作成において,いつもある一般条項は当然のものとして読み飛ばしがちだが,その意味を考えることを忘れないようにしたい。


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posted by 内田清隆 at 15:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書作成

2020年08月19日

小池百合子のキャッチ―なフレーズ

小池百合子東京都知事のキャッチフレーズ作りのうまさには感心する。
新型コロナに関し「不要不急」「密です」「ステイホーム」「ウィズコロナ」「東京アラート」・・・,次から次へとキャッチ―な言葉を流行らせてしまう。

いったいどこにその秘密があるのか考えてみたが,いずれも,ちょっとイラッとさせる,思わず突っ込みたくなってしまう言葉なのである。

「ステイホーム」「ウィズコロナ」「東京アラート」などは,日本語でいけるところを意味なくカタカナにすることで,「何でカタカナなの?日本語で言えよ!」と思わず突っ込みたくなる。
昔から横文字を使うことでカッコつけるということはあったが,カッコいいというより,無意味にカタカタ語を挿入している。
ルー大柴の「藪からスティック」「寝耳にウォーター」と同じ路線である。

「不要不急」「密」に関しては,まっとうな日本語だが,普通は書き言葉で余り口語では使わない。
「いつまでも不要不急なことしていないで,勉強しなさい!」と子供を怒るお母さんはいない。「昨日遊園地に行ったら,とても密でした」などとは少なくともコロナ前は口にする人はいなかっただろう。
そんな口語ではあまり使われない言葉をあえてカジュアルに口に出すので,「何それ?」と思わず突っ込みたくなるのだろう。
最近あまりみないがトータルテンボスという漫才コンビが「忍びねえなあ〜」「やんごとねえ!」「存じねえよ!」といった突っ込みで笑いをとっていたが,それと同じ路線である。

総じて,分かるようで分からない謎めいた言葉を使うとキャッチーになるのかもしれない。
「繁華街」ではなく「夜の街」,「密集」ではなく「密」,「家にいる」ではなく「ステイホーム」と。

これらのルールで「夏休み」を少しキャッチーに変えようと試みた。
「炎節ホリデー」「夏サバティカル」「サマー静養」「エスィティバルバケーション」・・・ルールだけでなく,センスがないとなかなか難しいようだ。

キャッチフレーズだけで中身がなければ仕方がないとはいえ,人を引き付ける言葉の使い方は身に付けたいものだ。



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2020年06月27日

アメリカ社会の深い闇

新型コロナが日本の100倍流行しているアメリカで,マスクもろくにせずに,各地でデモや暴動が起きているのはどうしてなのだろう? 
その背景を調べていると,Netifixが無料公開している「憲法第13条」というドキュメンタリーに遭遇しました。
https://youtu.be/krfcq5pF8u8

「アメリカでは,受刑者の労働力で利益を得ている企業が政府に圧力を加えることで受刑者が急増。今では,黒人男性の3人に1人が生涯に1度は刑務所に入れられ強制労働させられており,奴隷制と同じ状態になっている。」
「アメリカでは,犯罪のほとんどは司法取引で終わっており,正式裁判になるのはわずか3%。その大きな理由はお金の問題。多くの貧しい黒人が無罪であっても有罪答弁をしている。」
といった内容でした。

正直,この番組がどこまで信用できるのかは分かりません。
しかし,普通のテレビドラマやハリウッド映画で映されるのは,アメリカの光の部分ばかりであって,その背後には,目を背けたくなるような闇の部分があることは事実なのでしょう。
そうでないと,アメリカでなぜ繰り返し暴動が起こっているのか説明が付きません。

弁護士の仕事をしていると,自分のこんなにも近くに,こんなにも深い闇があったのか・・・と驚かされることが何度かありました。
そう考えると,深い闇は,アメリカにではなく,すぐそこにもあるのかもしれません。


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2020年01月06日

民事執行法の改正

民法改正の陰に隠れて,ほとんどニュースにもなっていませんが,4月から改正民事執行法が施行されます。

裁判で勝つと,「判決書」がもらえて,相手方の財産を差し押さえることが可能です。しかしながら,裁判所は相手方の財産がどこにあるのか探すのには協力してくれません。そのため,相手方の財産が見つからず,裁判で勝ったにもかかわらず,結局は泣き寝入りすることも少なくありませんでした。

裁判所に相手方を呼び出し,財産状況を開示させるという制度はあったのですが,開示しなかった場合でも最大で30万円の科料の制裁を受けるだけのため,実質的には機能していませんでした。

そこで,新しい民事執行では,支払命令を受けた当事者は,裁判所に対して財産状況を正確に述べないと最大6ヶ月の懲役になるという厳しい罰則制度ができました。
また,裁判所が金融機関や市町村に,預貯金の有無や給与の支払先等の情報を提供するよう命令するという制度もできました。

法律がそうだったのだから仕方ありませんが,私はいつも,判決を出してその後は放置という裁判所のあり方に疑問を持ってきました。いかに,正しい判決を出したとしても,その判決を現実にする手段がなければ,絵に描いた餅に過ぎません。
正しい裁判が行われることは重要ですが,その裁判が無視されてしまっては,決して正義は実現されません。

この法改正をきっかけに,少しでも裁判制度がより正義の実現に寄与できたらと願うばかりです。


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2019年05月29日

カリフォルニア州司法試験に合格

2019年2月に行われたカリフォルニア州司法試験bar examに合格しました。

今思うと,自分自身の甘過ぎる考えにあきれますが,そんなには難しくない試験だという噂を聞いたことから「日本とアメリカといえども,十数年も実際に弁護士をしている自分が学生に負けるはずはないであろう」と妙な自信をもってしまい勉強を始めました。

ところが,実際に勉強を始めてみると余りに難しく,あっという間に自信は粉々に散り「変な挑戦しなければよかったか…」と後悔と反省の毎日でした。

よくよく考えてみれば3年間ロースクールで勉強したアメリカ人でもそう簡単ではない試験,日本人の私の英語力で受験するとすれば相当大変なのは当然のことでした。
それなりに自信のあった英語力も,アメリカ人と競えば,中学生レベル・・・もしかすると小学生レベルかもしれない・・・と痛感させられました。

そうはいっても,ある程度勉強を進めてしまったため,あきらめるのも難しい決断となってしまい,時間が過ぎ,ここまできたら合格したいと思うようになり,想定を大幅に上回る勉強を続けている状況となっていました。

45歳も過ぎて挑戦させてもらえただけでも幸運なのですが,結果的に合格できたことは,何とまあ幸運なのかと,非常に嬉しく思っています。

果たして,この受験で得た知識がどこまで役に立つのかという問題もあるのですが,せっかくですから,少しでも皆様のお役に立てることができたらと思っております。いや立てたい,立てねばと思っております。

http://ca-barexam.sblo.jp/ 受験生向けにカリフォルニア州司法試験合格体験記を書いています。


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2018年08月26日

島津斉彬の富国強兵

内田清隆の「隆」は西郷隆盛の「隆」です・・・と説明することが多かったため,西郷隆盛には何となく昔から親近感を持っていた。

それもあって,大河ドラマ「西郷どん」を見始めたのだが,西郷以上に心惹かれたのが渡辺謙演じる,島津斉彬であった。

黒船来航以前に西欧列強の圧迫により必ずや乱世となることを予見し,西欧技術を積極的に取り入れ,反射炉の建設を軌道に乗せ,マントをまとって葡萄酒を飲む姿は何ともカッコよかった。

明治維新を引っ張る人物がどうして鹿児島にあのように多く出たのかと思ったことはあったが,このままではいけないと思った斉彬が,教育を重視し身分にとらわれずに人材を育成したことによるのだろう。

乱世が間近に迫れば,「富国強兵」をいうことは誰でもできる。
しかし,誰も乱世を予想していないなかで,誰よりも早く,現実的な危機感をもって「富国強兵」を実行することは並大抵のことではない。

私も,せめて,現状の平和が続くと安易に考えず,危機感を失わず,固定観念にとらわれずに積極的に新しいものを取り入れる精神を見習っていきたい。


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posted by 内田清隆 at 17:22| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2018年04月24日

「言ったもん勝ち」のアメリカ的発想

英米法を少し本格的に勉強している。

その中で、どうしても慣れないのが「間違っていても何でもいいから言わないとダメ!」というアメリカ流の考え方だ。
米国司法試験では、余計なことを書いても、間違ったことを書いても減点されることはないそうだ。
一方で、言うべきことを書かないと大きく減点されるため、ともかく関係がありそうなことは何でも書いておくというのが基本になる。
とはいえ、なかなか間違っているかもしれないことをともかく書いてみるということはできないものだ。

そういえば以前米国の弁護士から、法廷で見た新人弁護士の面白い行動を聞いたことがある。
証人尋問では「異議あり」と述べて「誘導尋問です」と異議の理由を示すのだが、異議の理由をすぐに示すのは難しい。
そこで、新人弁護士は「異議あり」「誘導,重複,侮辱的,論争的,伝聞,誤導・・・尋問のいずれかです」とすべての理由を挙げていたというのである。
「そんな人いるかな〜」と笑って聞いていたのだが、アメリカ的にはそれほどおかしくないのかもしれない。
「間違ってもいい」「言わないよりは言った方がいい」、だから可能性のあることは全部言うという発想がアメリカ的なのだ。

思えば幼い頃から、「無駄口を叩くな」「余計ないことを言うな」と教育され、口に出さなくても理解し合える関係が理想の関係だと教わって生きてきた気がする。
しかし、「言わなくても当然分かるだろ!」ということが伝わっておらずに、紛争や裁判になるケースは多い。確かに口に出さずに理解し合うのは難しい。
そう思うと、アメリカ的な、間違っているかもしれないけれども関係するかもしれないことは、何でもともかく言っておくという姿勢にも一理あるのかもしれない。

言い過ぎればうっとうしくなるが、「言わなくても分かるだろう」が原因の誤解を生じさせないよう、少しはアメリカ的発想を身につけていきたいものだ。


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posted by 内田清隆 at 09:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 弁護士雑感