カリフォルニア州では、スポーツ賭博は違法であり、大谷選手の通訳の水原一平氏は、スポーツ賭博にお金をかけるという違法行為をしたといった内容の報道がなされている。
確かに、カリフォルニア州では、スポーツ賭博を合法化する法案が繰り返し否決されており、同州でスポーツ賭博が違法であることは、一般論としては間違いない。
しかし、同州においてスポーツ賭博自体が違法であるとしても、一般人がスポーツ賭博することが刑罰の対象といえるかは簡単に判断できる問題ではない。
スポーツ賭博に対する刑罰を決めているのは、カリフォルニア州刑法337aである。
https://codes.findlaw.com/ca/penal-code/pen-sect-337a/ 同条は、
the result, or purported result, of any trial, or purported trial, or contest, or purported contest, of skill, speed or power of endurance of person or animal, or between persons, animals, or mechanical apparatus.(「人や動物あるいは機械装置との間で行われる」「技能や速度や耐久力などの競い合いの結果」に対するギャンブルを規制する。
スポーツは、人間同士で行われる技能の競い合いであるから、スポーツ賭博は同条による規制の対象だ。
しかし、同条は、
(1)賭け元(book maker)になること
(2)ギャンブル場所や道具の保持
(3)賭けられた物の保管
(4)賭けの記録の保管
(5)賭け元に場所や人を提供すること
などを禁止している。
すなわち、同条は、賭けをする一般人を罰するためのものではない。
いわゆる「親」や「胴元」、つまりスポーツ賭博の運営者を罰するのが主目的の法律である。
もっとも、カリフォルニア州刑法337a(a)(6) は、
(every person who) Lays, makes, offers or accepts any bet or bets, or wager or wagersは罰せられると規定し、スポーツの結果について、賭けをすること(lay and make),賭けを申し出ること(offer)、賭けを受け入れること(accept)を刑罰の対象としている。
これを普通に読めば、スポーツに賭けをする一般人(今回の件でいう水原氏)も処罰の対象であり、一般的にもそのように解されているようだ。
しかし、同条文の趣旨からして、同条における「賭けをする」(make bets)とは、賭け元の行為を指し、一般人がスポーツ賭博をすることを指さないという解釈もあるようだ。
https://repository.uclawsf.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1230&context=hastings_business_law_journal 81頁参照
また、少なくとも、カリフォルニア州刑法337a(a)(6)により、スポーツ賭博に興じた一般人が刑事罰を受けるということは、カリフォルニア州では、ほとんどないことであるようだ。
それも踏まえて考えれば、カリフォルニア州でスポーツ賭博ビジネスをすることは明確に違法であるが、一般人がスポーツ賭博することが、すぐさま違法であるとはいい切れない。
ましてや、水原氏の場合がどうであるのか不明であるが、オンラインでスポーツ賭博に興じた場合、すなわち、カリフォルニア州から、他州の賭け元に送金した場合、同送金が違法になるのかが、はっきりしていないことは明確だ。
カリフォルニア州法が適用されるのは、カリフォルニア州内で、賭けをした (make bets)場合であるが、賭け金を他州に送金した場合に、カリフォルニア州で賭けをしたといえるのかどうかははっきりない。はっきりしないのであれば、刑罰法規は適用できないという考えの方が有力のようだ。
以上からして、水原氏が、仮にスポーツ賭博をしたのだとしても、それがスポーツ賭博を禁止するカリフォルニア州法に違反するかどうかは、簡単には判断できない問題だ(なお、一般人である水原氏が違法性を認識していたはずというのは言い過ぎだろう)。
ましてや、大谷選手が違法賭博に関わったとして、カリフォルニア州法に基づき罰せられる可能性はなさそうだ。
もっとも、現時点での報道によれば、カリフォルニア州ではなく、IRS(内国歳入庁)が動いているという話であり、違法賭博とは違う、脱税やマネーロンダリングが問題となっているのかもしれない。
私が受験した当時カリフォルニア州の司法試験では、カリフォルニア州刑法は試験の範囲外だったため、今回、水原氏の問題が気になって、報道により現時点で得られる情報をもとに、急いで調べてみたに過ぎないが、どうやら大谷選手がカリフォルニア州で刑事罰に処される可能性はなさそうである。
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